ブラインドワールド

だかずお

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『宇宙の流れ』

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「光堂???」

それは、ずっと探し求めていた、多村達の世界の光堂であった。
(ここからは、分かりづらくなるので、多村達の世界の光堂の事をコードーと表記する)

「お前、一体こんなとこで何を?」

「久しぶりだな、多村、ペレー」

コードは光堂を見つめ、ため息まじりに呟いた
「彼は言ったところで分からない、それは俺自身が一番分かってる」

光堂は怒り、地球を支配していると言う、トカゲのエイリアンの映像に今にも飛びかかろうとしていた。

「お前どうしてここに?それに?」
多村は久しぶりに会うコードーの変貌ぶりにも、驚きを隠せなかった。

「どうしてこんな所にいるウキか?」
ペレーもずっと行方知らずだったコードーの突然の出現に驚いている。

「多村、 ペレー!詳しい話は後だ」

「トンプス、彼らの星に光堂を連れて行ってくれ」

トンプスはすぐさま 準備をし、光堂に行くよと、光のフラッシュみたいな感じの物を体から発光させ合図した。
「あっちに小型の宇宙船がある、着いてきて」
光堂はトカゲのような種族の住む惑星に行く為、すぐさまトンプスについていく。

「おい行かせて大丈夫なのかコードー?」多村は言った

コードーは真顔だった
「殺されるかもな」

「なんだと?トンプスが守ってくれるんだろ?」

「彼は操縦士 まともに戦うことなど出来ない」

「何だよ」多村は急いで光堂達を追っかけた。

それにしても、なんてチームなんだ。
そんな危険な状況下に行けと指示を受けて、ためらいもなく行くトンプス。
何故なにひとつコードーの意見に質問も疑問も、疑いすら、いだかず船を出すんだ。
走りながら多村は感じていた、その後をマサとマナも追った。

驚いていたのはペレー自身だった。
身体が動かないのである、動物の悲しい性なのだろうか?
先程の映像に映った絶対的な強者。
いわば、捕食者に本能的に恐怖を抱き動けないのであった。
それはピラミッドのあの男の時とは、比にもならない程のものだった。

ペレーの目からは涙がこぼれていた
どうして どうして 身体が動かないウキか、仲間が危ないっていうのに怖いウキか?
あまりの悔しさと情けなさに涙が止まらなかった。
しかし、ペレーはあきらめなかった。
動かない足を必死に引きずるように這いつくばりながら光堂の後に向かって進もうとしている
「今行くウキよー」

宇宙人達は黙ってペレーを見ていた。
ペレーは仲間の元に向かうんだと、動かない身体をひきずっては、自分が情けなく、悔し涙を流し叫んだ。

「うおおおぉぉぉおお」
それはペレーが生まれて初めて叫ぶウキー以外の叫び声。
その直後だった、ペレーの身体は恐怖、恐れを超越し再び動きはじめたのだ。

「ペレー、何も自分を責める事はない、全てのプロセスは完璧だ。お前は自分自身の楔を今断ち切った。
このタイミングのおかげで彼らは救われるんだよ、ありがとう」コードーは微笑んだ。

彼は知っていたのだ、こうなることによって、みんなが成長するプロセスを。
「行くぞペレー」コードーは言った

ペレーは真っ直ぐ前を向き頷く
宇宙人達は、その一部始終を優しく微笑み、見守っていた。

光堂達はUFOに乗り彼らの星に向かっている。
驚きを隠せなかったのは、多村だった。
自分は今朝トンプスに操縦を教わり、やり方はすでに大体把握していた。
自分はセンスがあり、すぐにでもトンプスより上手に出来る自信もあったはずだった。
しかし彼の動作、判断の的確さ、こんな完璧な動きは生まれて初めて見るものだった、こんな男がいたのか。
すごい判断力に的確な操縦 凄すぎる・・・
多村の足は感動と驚嘆で震えていた。
天才?それはまるで神の技術でも見ている様だった。

「トンプスさん、天才ですね俺には到底まねできない」

トンプスは笑って言った
「君は私を超えていくよ、私は知っている」

多村は心の底から、感動していた。
彼はコードーを信頼し、すぐさま死ぬかもしれない場所に出向いている。
トンプスには分かっていたんだ、コードーには何か意図があることを、絶対的な信頼で成り立っているチーム、それは最強のチームワークだった。
多村の心は、こんな奴らがいたのかと心が踊るような感動で震えていた。
本当にすごい……

船は突然止まる

その瞬間だった。
光堂は一人飛び出るように、外に走って行ってしまった。

「落ちついて」マサが叫んだ時には、すでに遅かった

光堂は叫んでいる「地球の人達を何だと思っているんだぁぁぁ」

直後、すぐに外を見たマナは思わず声をあげてしまう
「うそっ」

何万匹という、体長何メートルもある、爬虫類のような存在達が立っているのだ。
彼らは光堂を見つけては嘲り笑っている。

「トンプスさん何とかしなきゃ」マサが慌てながら言う

外を見ていたマナが「どうなってるの?」と驚きを隠せない

何故なら、その存在達に近づき向かっていた、光堂の身体が突然宙に浮いたからだ。

「なんだっ」
光堂は慌てている、そして今の自分には何も出来ない、彼らに何も通用しない事をすぐさま悟った。

「彼らはサイキック能力もつかう」トンプスが落ち着きながら言った。

「どうすれば?」多村も、マサも、今まさに光堂を助けに外に向かおうとした瞬間だった。
一つのUFOが到着したのだ
中には、ペレー、コードー、さきほどの宇宙船のメンバーが見えた。

その直後だった
光堂の身体は地面に下り
一瞬の光と共に、彼らは先程いた基地のような船にワープしたのだった。
ヒュオオオーーーンッ
凄まじい耳鳴りのようなものを感じた直後、光堂の瞳は閉じた。
どうやら、光堂は眠っているようだ

「さてと、ちょうどいいかもしれないなマサに話がある、重要な話だ。みんなも聞いて欲しい」コードーは真剣な表情を向け、みんなに言った。

「光堂が起きるまで待たなくて良いウキか?」

「俺自身には話さない」コードーが言う。

「重要な話?」

「そうだ」
コードーの口から、彼らの道の分岐点が今語られようとしていた。
それは光堂には、その時が来るまで決して知らされることのない事実でもあった。
光堂以外、他の仲間だけが知らされる事実
そう、今まさに大きくこの先の未来を変える、転換期の場に彼らは立っていたのだ。



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