文太と真堂丸

だかずお

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~ 静寂の夜 ~

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決闘の行われた日の夜
静寂と言う言葉がぴったりな程、静かな夜であった。
真堂丸が目を覚ます。
自分は生きているんだな、今回も生きながらえた
横から声がする。

「真堂丸」

「文太か」

「身体は大丈夫?」

「ああ、休めばじきに良くなるだろう」

「一斎は大丈夫か?」

「うん、今は雪さんに看病されて、ぐっすり眠ってる」

「そうか」

「まだ、少し休んでるといいよ」

「ああ」

凄まじい、死闘だった。正直今は、終わって心から安堵している。
連戦に重ねる連戦、これ程、身体を酷使して真堂丸の身体は大丈夫なのだろうか?
この先どれほど戦う事になるのだろうか?
そんなことを考えると、心配が止まらなくなる。
真堂丸が刀を持たなくてもいい時が、くればいい、争いが終わればいい、僕はそんなことを切に願っていた。
その夜は綺麗な満月が空に顔を覗かしていた。

本当に静かな夜

どこまでも静寂が続く静かな夜

道来は、二人の決闘を頭の中で、あれからずっと、何度も何度も振り返っている。
本当に信じられない程の二人の実力、今だに感動、興奮が抑えられない。
何度も何度も振り返り、何度も、何度も、好物を味わい咀嚼するかの様に思い返す。
あれを見れた、嬉しさ、感動 これは自身の心に永遠に残るだろう。
道来は心底、二人を尊敬し、憧れ、また自身も二人に追いつくように、これから、刀の稽古に励むのだろう。
見つけた二つの偉大な背中
道来は二人の男に感謝をし、美しい満月を見上げた。

太一、一之助と、しんべえ 彼らもまた、目の前で繰り広げられた、あの死闘を今だに思い返している。

「あー正直俺よぉ、何度もちびりそうになったよ、何度もあいつが負けちまうんじゃないかって、心底怖くなった」しんべえが言う

「あっしもそうさ」

「だけど、そんな時、何度も文太を見たんだ。あいつを見たら、大丈夫なんだって、そう、また思えて来たんだ」

「俺もだよ、真の兄貴が死んじまうって、何回も思った。でも、文太の兄貴を見てると、言葉じゃない、なにかが全身から伝わってくるんだ。大丈夫 真堂丸を信じろって」

「終わって良かった。もう、こんな死闘ねぇよな?大丈夫だよな」しんべえが言った。

「俺やだぜ、仲間が死んじまうなんてよぉ」

「大丈夫でごんすよ、しんべえ」

「それにしても、綺麗な満月でごんすねぇ、大帝国との戦いが終わったら、みんなで国を旅してまわりたいでごんすねぇ、刀を置いて」一之助が月を見ながら微笑んだ。

「そいつは、最高だ。ぜってぇ行こう。なぁ太一」

「ああ、そうだな」

夜も更けた頃、真堂丸は起き上がり、外に出た。
一人、景色を見つめている。
心地よい風が肌に触れ、何とも感慨深い気持ちがわくその時、背後に気配を感じた。

「真堂丸様、弟を救ってくれ、本当にありがとうございました」

振り返ると、頭を下げた雪が立っている

「すまなかった、弟の身体を失わせた」

「いえ、弟も覚悟の上です、それに真堂丸様は失わせたのではありません、あなたは弟の一番大切なものを取り戻してくれました」

「?」

「こころ です」

美しい満月の明かりに、雪の白く透き通る様な肌が照らされている。
その表情は優しく、月の明かりの下、微笑んでいた。
その表情は、まるで月の様に真堂丸を明るく照らす。
真堂丸は月を静かに見上げた。

時、同時刻

鬼道の元に伝書鳩が届く。
「鬼道様、一斎の監視役から手紙が届きました」

すぐさま、手に取り読み始める
「なっ、何だとっ」

それは、一斎が真堂丸に敗れた事を記す内容であった。
ばっ、馬鹿な あの一斎が。
真堂丸、まさか、これ程までの男だったのか。
この時点で、鬼道の計画は大きく狂う、大きな誤算。
一斎を使い、真堂丸、三國人を始末する予定が。

「くそがあああっ、 真堂丸 真堂丸 真堂丸めーっ」
その場にいた部下は叩き斬られていた。

「大帝国を舐めるなよ、この鬼道の恐ろしさを思い知らせてやる、必ず貴様らは皆殺しだ」

「最後に笑うのは、この鬼道千閣様なのだあああっ」

もう一つのうごめく三つからなる巨大な闇

三國人は笑っている

「貴様も駄目だ」
スパアアンッ

転がる死体の山
「使い物にならんな」

「幹部として使える奴を探してるんだが、さすがに鬼神級はそうそう、いるものではないな」

「おいっ、テメェラもしっかりやらねえと殺すぞ」

血まみれになりながら鍛えあげられていたのは、現大帝国の幹部達だった。
「ぐわあああああああっ、死んでしまう」

「うぎゃああああああっ、三國人様 これでは死んでしまいます」

「ぬるい奴らめ、なら死ね」

「こんな事で死ぬくらいなら、貴様らは必要ない」

「再び、最強の大帝国をつくりなおしだ」

「我々がこの地を力と恐怖で支配する」

「アッハッハ 民よ、人間よ 恐怖しろ、貴様らにとって最高の時代がやってくるぞ」

三國人の足元には百をこえる人間の死体が転がっていた。

山の中、菊一と、洞海は身を潜めている。
菊一から、米が殺された事を聞いた洞海は泣いていた。

「ちきしょお、米さん」

「すいません、菊一さん、俺怖くて何にも出来なかった」

「謝ることはない、あいつは鬼神や白竜など、本物の化け物を育てる様な奴らだ。初めて対峙して身がすくむのは無理もない」

「それに、俺たちが立ち向かっても、殺されていただろう、俺たちは米に救われた」

「正直あいつらを前にして、何にも出来なかった。ただただ怖くて、全くなにも出来ず、あんな奴らを相手に、一体俺はどうしたら」

「一人で背負おうとするな、お前にしか出来ないことが必ずある、お前はそれをすればいい。あいつらがいるだろう」

洞海の脳裏に、文太や真堂丸、仲間達の姿が浮かぶ。
そうだ彼らがいる。

そうだ彼らがいるんだ。
洞海の瞳には力強さが戻っていた。

菊一はそれを見て、微笑む。
「必ず、大帝国は近い内に動いてくるぞ、俺たちは今、力を貸してくれる人達を少しでも多く集めるんだ」

「はいっ」洞海の力強い返事が辺りに響き渡る

場面は変わり
高い木の上から地を見下ろしているのは、ガルゥラの姿。

けっ、今更この俺が人間と手を組むとは。

人間

俺は貴様らが大嫌いだ。
一山、俺はお前だったから、嫌いな人間とでも一緒に居たんだ。
ああ、確かに似ているさ、奴らは、お前に。
ガルゥラは自身が再び人間を好きになるのを怖れた。
俺は一人で構わない、人間を好きになり、結局また嫌いになる この繰り返しに嫌気がさす。
信じたと思えば、また裏切られ、やはり俺はお前達人間が嫌いだ。

人間の手により失われた多くの自然、木々、植物、動物達、貴様らはいったいどこまで手に入れれば満たされる?欲深き人間どもよ。
いつの時代も変わらぬ、同じ種族で戦、戦、殺し合い、何千年たっても、殺し合い以外の解決法を見つけることすら出来ぬ、愚か者どもめ。
貴様らが殺し合い、死ぬのは勝手だが、その為に多くの自然や生き物が死に、失われるのを黙ってみてられん。
大帝国、こいつらが国を支配すれば、間違いなくこの国は終わるだろう、それはあきらかな事だった。
力や恐怖で支配する、その先に残る世界など容易く想像出来る。
ガルゥラから見ている人間はとても滑稽に見えた。
自分達で貨幣制度たるものを社会の基盤に導入し、貨幣にこそ価値を置き、そこから生じる、限りない欲望、格差や競争、そこに物質欲丸出しで争い、地球の資源を枯渇させ、汚染させ自分達の住む場所である環境を破壊する。
人間は何とも愚かだ。
我々鳥族とは全く違う。
人間自身がつくった制度により苦しめられ、ねずみのように回り続け、支配されている 笑ってしまう。
しかし、ガルゥラは立ち上がる、それは、人間の為ではない、愛する地球や自然、動物の為。


各々の想いを乗せ、時代は勢いよく流れる


ゴゴゴゴゴゴゴゴオオー



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