文太と真堂丸

だかずお

文字の大きさ
142 / 159

~ 漆黒 ~

しおりを挟む



ウオォオオオオオオオオーッ

現在戦場の要の場所にいる二人、太一と氷輪は既に限界に近い程、急速に体力が奪われていた。
先ほど来たばかりの俺がたったこの短期間にもう限界だと。氷輪は自分に向かい叫んでいた。
道来はどれ程の間、ここを死守していたんだ?
俺に出来るのはほんの数分の時間稼ぎか?
こんな場所を一人で?
とにかく、このままじゃまずい。
俺と太一じゃあもうここは死守出来ないぞ、奴らがこの道を抜けてしまう。

道来さん正直やばいかもしれねぇ「ちっ、ちくしょおおおおおおおおっ」限界を感じた太一が叫ぶ。

ギラッ

太一の真横「その首もらったあ」大帝国の兵が刀を振りかざすが、直後に地面に倒れる。

「もうお終いか太一?」

「おっ、お前は空」
かつて一山の道場で道来、太一と死闘を繰り広げた空がそこには立っていた。
空は戦場に着き、すぐに道来と太一を見つけこの場所に向かっていた。
その行動は空の二人に対する想いをそのまま表していた。

「俺も手伝う、真堂丸さんが戻るまで踏ん張るぞ」

太一と氷輪の瞳に力が戻る「おおっ」

氷輪は思う、もう一度、他の人間達とこんな風に向き合い共に戦うとはな。
秀峰さん、人生とは不思議なものだ。
あんたを尊敬し敬愛してた俺が今、あんたの敵だった者達に力を貸し戦っている。
あんたはそんな俺をどう思うだろうな?

ヒュンッ ヒュンッ  ヒュンッ   ビュンッ

互いに睨み合い、上空からの矢を躱しながら向き合うのは道来と龍童子。
「思った以上の手練れだな貴様」龍童子が睨みつける様に言った。

「お前もな」

「時間が惜しい一撃で蹴りを付けようじゃないか」

「そうだな」

ヒュオオオオオオオオー

大帝国の兵、助けに来た者達は手伝おうにも二人の間合いには近づけないでいた。
入れば即、殺されるだろう、だがそれよりも、まるで二人がこう言っている様に感じられたのだ。

絶対に邪魔をするな

互いに動かず硬直状態が続いている。


一方、菊一の所

女郎蜘蛛を、菊一、ガルゥラ、陸、海が囲んでいる

「悪いがお前にもう勝ち目はない」菊一が言った。

「どうやらその様だね」

「だがねぇ、お前達はとんでもない勘違いをしている」

「笑わせるな、貴様の間合いに俺たち全員が入ってるってことだろう。承知の上だ」ガルゥラが武器を向ける。

「危険はある、だがお前の敗北は確実だ」

「アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッ」突如を声をあげ笑い出す女郎蜘蛛。

ザッ

その瞬間四人は同時に飛び出した。

「この女郎蜘蛛様を舐めすぎたわね」

「なっ」

それは予想以上に凄まじい技だった、女郎蜘蛛の回転と共に真空の斬撃が円を描く様に回転したのだ。
この時すでに女郎蜘蛛の首は菊一、ガルゥラによって斬り落とされていたが、と、同時に四人共、自身の首がはねられる事を理解した。

その刹那

ザッ

何者かが自分達の足を引っ張り瞬時に地面に倒れていたのだ。
おかげで斬撃を躱し、死は免れる。
いや、免れたと思われた。
足を引っ張り皆を助けていたのは夏目
夏目の最初の一言に頭が真っ白になったのは菊一

「すまない」

ハッ 辺りを見回した。

ポタポタッ

手が届かなかった。

辺りには首の無くなった、陸の死体が転がっていた。

「陸、陸」声をあげ泣き叫ぶ海

ギリッ
すぐに立ち上がる菊一
「陸の命を無駄にしないぞ」

「ああ」ガルゥラが立ち上がる。

戦場には次々と死体の山が積み上がっていく、一人一人の人間に友が、家族が、両親がいるのだ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーー

「ああ、やっぱあんた強えぇは」
真っ赤な刀を手放し、生き絶える寸前の男は大帝国の幹部鳳凰。

「ったく、これが俺の最後かよ」
瞳は半分閉じかけている。

「お前も強かった」雷獣の身体からは血が流れていた。

「ふっ、最後の救いは生まれて初めて褒められた事だ」 ドサッ

雷獣は背を向け歩き出した。
「お前と俺は似ていた、違った形で出会っていたら、友になれたかもな」
雷獣は沢山の人間の死体を見つめる。
俺達は一体何と戦っているんだ、怪物か?悪魔か?
同じ人間じゃねえか、ちきしょう、ちきしょう

ちきしょおおおっ

ヒュオオオオオオオオー

ザッ
先に動いたのは道来

「見切った、もらったぞ道来」

スパアアンッ

ズバッ

「すまないな、この戦場で殺さずを誓ったが、幹部相手には出来なかった」

「笑わせるな、斬られたのは貴様だ。じきに血が噴き出す」

ブシュウウウウウウウウウウウッ

道来の身体から血が流れる

「はっはっは、ほらな道来っ」

ブシュウウウウウウウウウウウウウウウウウーーッ
龍童子の身体から血が噴き出し、そのまま倒れた。
「バッ馬鹿な」

「貴様の様な敵にこの龍童子があっ」

ドサッ
「悲しいな、これが殺し合いではなく試合だったら」

「龍童子、私はお前達を敵だとは思ってはいない」
「意味分かるか?」
道来の顔は悲しげな表情だった。

その時、大きな音が辺りに響き渡る
「うがあああああああ、三國人の旦那あああっ」

血を流し地面に倒れたのはバピラだった。
ズゴオオオオオオオオオオオオオオオンッ

皆の視線が真堂丸に向く。

「真堂丸」

「信じらんねぇ、あのバピラをやりやがった」

夏目の瞳は潤んでいる「あっ、あいつが真堂丸か」

「あいつが一山の言っていた」
夏目の瞳にはこの時しっかりと希望が映っていた。

「私もまだまだ行くよ」

真堂丸の姿を見て、皆の士気が高まる。

「行くぞおおおおおっ」

「おおおおおおおおおおオオオオーーーーーーッ」

「なっ、なんと言うことじゃ、幹部が自分以外全滅じゃと」夜叉が発狂したかの様に叫ぶ。

ザッ

夜叉の周りを囲んだのは

一之助、清正、青鬼、洞海

「ふーっ、助かったぜ」平門が言った。

「さあ、どうする夜叉よ」誠が刀を構える

「この夜叉が貴様等などに殺されるか」
ズバッ
夜叉はそう言い、自身の心臓に刀を突き刺し自害したのだ。
小さなため息ひとつ、誠は吐いた。

ヒュンッ
戦場の要の場所に真堂丸が戻ってくる。
「真の兄貴」

「お前達大丈夫か?」

「真の兄貴こそ」

「久しぶりです」頭を下げる空

こいつがあの真堂丸、氷輪は真堂丸が側に立つことにより感じるなんとも説明し難い、圧倒的な安心感に包まれ驚いていた。

「真堂丸」道来も戻ってきた。

「これ以上、死者を出さない為に戦を終わらせる、ここは俺が引き受けるから、お前達は鬼道を捕らえるんだ、それで終わらせよう」
皆は微笑んだ。
真堂丸の言葉に、この戦の終わりを予期したからだ。

「おうっ 終わらせるぞ」

「行くぞ」

皆が散り散りになる

太一が振り返る「真の兄貴、戦が終わったら絶対にみんなで旅にでも行きましょうね、約束ですよ」

真堂丸は優しく微笑んだ。
ビュン  ビュン  ビュン  矢は雨の様に降り注いでいる

「奴らを殺せーーーーーーーーーーっ」

真堂丸の仲間達も意図を察した様だった。

「今が絶好の機会、この機に鬼道を捕らえる」菊一が言う

「ああっ」頷くガルゥラ、夏目

キインッ

「この機を逃すな」叫び走るのは、誠、続く清正、平門。

一之助達も動き出す。
急がなければ、先生の負担が大きすぎる、あの怪物を倒した直後、あの要の場所を一人守るなんて。
時間との勝負。
急ぐでごんす、鬼道どこだっ。

鬼道の唇からは血が流れでていた。
怒り 猛烈な怒り。
この俺が逃げるだと、くそがあああっ、くそがああああっ。
鬼道は兵の中、後方に走り向かっていたのだ。

その姿を上空に飛んだガルゥラがとらえる。
「いたぞ、鬼道はあそこだ」

皆の視線がその声と同時に鬼道をとらえる。

いっせいに全力で走り出した、ザッ 

菊一が鬼道を守る兵達を刀ではじき飛ばす。
「行けっ」

すぐに前を向かう夏目

「行かせるかあ」

キインッ夏目が兵を止め、後ろを振り向かずに言った。
「行けっ」

ザッ
すぐに前に向かう、誠、清正、平門
「うおおおおおおおおおおおおーーっ、大帝国先鋭部隊の名にかけてここは絶対に通さん」隊長黒七が刀を向ける。

キインッ  キインッ  ズバッ
光真組の三隊長の連携は見事だった。
黒七は地面に倒れこむ。

「行けっ、鬼道はそこだ、お前達」

ザッ

背後から抜け出たのは、道来、一之助、太一
彼らの周りの敵を薙ぎ倒し、援護していたのは、青鬼、空、海、氷輪、洞海

「このまますぐそこだ、お前達行けーーーーっ」青鬼が敵をはじき叫んだ。

ザッ

バアアンッ
ヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオーー

目の前に正座していたのは鬼道千閣の姿

「笑わせるなよ、この鬼道が逃げる?そんな必要が何処にある」

スッ
鬼道が立ち上がる
「たった三匹の雑魚相手に逃げる必要が何処にある?」

ギロッ

凄まじい殺気

道来は拳を強く握りしめ、呼吸を整える。
こいつは一山さんとやりあっていた程の実力者。
私に勝てるか?
いや、勝たねばならん。

「絶望的な力の差を見せてやる」

道来は足の震える太一に気づいていた。
一之助の身体も強張り硬くなっている。
無理もない、この凄まじい殺気。
無意識に本能的に身体は理解してしまっていた。
自分にこの者を捕らえるのは不可能だと。

ザッ 道来が前に出る「下がっていろ」

「ばっ馬鹿な道来殿」 「道来さん俺も」

「下がれ」道来が怒鳴る様に叫んだ

「良い判断だな、あの二人もし今前に出ていたら首を跳ねていたところだ」

ゾクッ
「道来君と言ったか?どれ腕を見てやろう」

「うおおおおおおおおおおーーーーっ」

キインッ
「残念、実力的にまだ俺には勝てない」

ニヤリ 「万全の状態だったとしても」

「くっ、くそおおおおおおおおおおっ」
キインッ キインッ  キンッ
「俺を捕らえたきゃな、それ相応の実力者を連れてこいやああああっ」凄まじい形相で叫んだ鬼道

ちきしょう、嘘だろ?ここまできて鬼道を捕らえられない、太一の身体は震えていた。
恐怖で?違う、先ほどからの震えはあまりの悔しさにだった。

その時

「死ね鬼道」上空から鬼道に刀を向けていたのはガルゥラだった。

「それを俺が」

「気づいていないと思ったか」

「んっ、何っ?」鬼道は何かに驚いた。

ガシッ

言葉を失ったのは道来を含め、その光景を見つめていた者達すべて。

そして誰より、ガルゥラだった。

ガルゥラの背後、何者かが翼を掴んでいたのだ。

直後

グシャャアアアアアアッ

嫌な音が辺りに響き渡る

「ぐわああああっ」

ガルゥラの翼は引きちぎられていた。

「ガルゥラ」

「おいおい、バピラがやられてる、信じらんないねぇ」それは女の巨体の怪物。
三國人のかつての仲間の最後の一人。

「ああ、皆殺しにしてやるよゴミ共」


ギロッ


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

対米戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。 そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。 3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。 小説家になろうで、先行配信中!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...