文太と真堂丸

だかずお

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~ 受け継がれたもの ~

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そう

私の人生はいつも太一と一緒だった。

いつも そこに太一が居た。

「道来さん、また稽古ですか?」

「ああ」

「刀一筋も良いですけど、奥さんでも、もらって夫婦で暮らすなんてのも良いんじゃないですか?」

「私に女は要らん」

「ふぅー道来さんらしい、布団敷いときますよ」

お前はずっと私について来てくれた、どんな時もずっと私を慕い、愛想もつかさず。
血の繋がりはないが、それ以上の強い繋がりで繋がっている そんな気持ちでいた。
そんなお前が私の前から消え、居なくなってしまうなんて、絶対にあってはならない、いや、考えられない事

頭の整理がつかない

とにかく怖かった

太一を失う事が

ああ   私の人生からお前が消えたら私は・・・

笑える 笑える 笑える 笑えるな道来
なにが覚悟を決めろだ。いざって時に何も決まってなかったのは己ではないか。
この戦場で、本気で守れ通せると思ってたか?
こんな瞬間が訪れるかも知れないと想像出来なかったか?
いや、何度も何度もしたさ。

だけど本当にそんな

こんな状況で覚悟以上に本心が出る

もう太一を救う術がない   全く何も  

ああ  真っ暗闇の絶望に全てを塞がれた。

たった今、目の前に広がる現実

「道来さん、みんな ありがとう」涙を流し微笑んだ太一の表情が妙に印象的だった。

「ちきしょうっ、なんでだよ、なんであいつとの思い出が頭の中に今、こんなにも思い浮かぶんだよ」

「馬鹿野郎、あいつと俺は喧嘩しかしてねぇのに、なんでこんなにも思い出が止まらない、太一 死んじゃ嫌だーーーーーー」しんべえは涙を垂れ流しながら必死に叫んでいた。

「しんべえ」太一の瞳にも涙が溢れる。

「うおおおおおおおおおおおおっ」一之助は自身に向かい必死に叫び続ける。
一之助っ、今立てないでまた大事な者を失うつもりか?
暗妙坊主に殺された妻と子供の様に、また友を殺されるのを見過ごすつもりか?道来殿の前で太一さんを殺させるつもりか?

否  そんな事は絶対にあっしがさせない

ザッ   一之助は限界を超え、最後の力を振り絞り立ち上がる。

「いっ、一之助」


その頃

地面を掘り、道を抜けた大帝国精鋭部隊の5名

「間違いない、人間の通った形跡がある、しかも大勢だ」

「一応警戒して跡を消したつもりか、無理無理 俺たちを舐め過ぎだ すぐに見つかる」

「この先に大量の反逆者達が居るようだな」

「皆殺し」

ザッ

文太、寅次、六吉、良の四人は戦場に向かい全力で走っていた。
そう、このまま進むと彼らは大帝国精鋭部隊と対峙することになる。

その時彼らに待ち受けるのは確実なる死

ヒュウオオオッ  ビュオオオッーーー

この頃、雨は止んでいた。
どうしてだろう戦場に居るのにとても静寂に包まれているかの様なそんな時だった……

「まだ立ち上がるか」

「あっしは太一さんを殺させはしない」

「一之助、良いから逃げてくれ」太一が声をあげ叫ぶ

ドクンッ しんべえの鼓動が音をたてて加速する。
一之助、駄目だ  もう いいよ 戦わなくていい こんな事言ったら一生恨まれるかも知れないけど、俺、大帝国の兵になっても良い、なんでも言う事聞くから、負けでいい、降参する。 

だから みんな 生きてくれ

帰ろう 言ったよなぁ、約束したよなぁ。

またみんなで旅に行こう

そう言ったよなぁ

ザッ 
一之助が飛び出した。

「三國人、あっしが相手だ」

三國人の前に一人立った一之助を目にした時、しんべえの心臓は張り裂けるような思いがした
気が付いたら喉が張り裂ける程叫んでいた。
「一之助ーーーーっ」

「やれやれ、実力の差を」

キィンッ

「シレ」

ズバアァッ

一之助の右脚だけがグルンと宙を回転して舞う

「ゔおおおおおおおおおおおおおおおおっ」太一としんべえの力なき声が辺りに響く。

「おっと道来、君は動けないだろう」二人の三國人に押さえつけられている道来。
「グギギギギギギッ」

「まだ命はあるだろう?そこまでして守ろうとするこの太一とやらを先に殺してやるから、そこで見ていろ、クハハハハッ」

ガバッ
一之助が三國人の足を掴む。
「まだ戦えるでごんす」

「オマエラハ」

「タダ時間ヲカセグダケ」

所詮時間をかせいだところで先に待つのは絶望のみ

「ただ、貴様は少し役に立った」

「俺を怒らすのにな」
貴様らは虫けらと同じ、なんの役にも立たぬ者達

「やめろおおおおおおおおおおっ」

「サヨナラ」

ズバアァアアアアアッ

辺りに一之助の鮮血が飛び散る

ああ…

人間の血ってこんなに赤かったのか・・・・・

これは夢だろう?

「うわああああああああああ」
一之助の身体を貫通し、地面に刀が貫かれていた。

「順番が変わってしまったな」

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタッ

「嘘だよな? 嘘だよ  一之助が死んじゃったよ」
ポタッ ポタッ 
「嘘だって言ってくれよ一之助、いつものように冗談でごんすよとか言って、起き上がってくれよ、なぁ本当は死んでなんかないんだろう?」


一之助が死んだ


ウッウッヴッ ヴッウッウッ
「どうしたんだよ?真堂丸、一之助が死んじまったぞ。お前はいつだって無敵で助けてくれたじゃねえか、なんで来ないっ  真堂丸」しんべえは地面に頭を叩きつけた。

戦場の最中、実は真堂丸は気づいていた。
戦いながらも、驚異的な察知能力、観察力により、倒れ行く仲間達を何処と無く気づいていたのだ。
どれ程、助けに行きたかったか、どんな想いで助けに行けない状況が経過したか。
真堂丸の拳は仲間を助けられなかった悔しさ、悲しさ様々な想いで、拳は力強く握りしめられ骨が突き出ている程だった。

「さて、決着と行こう」

「俺は貴様らを殺し、大帝国に刃向かった者達を皆殺しにし、この国は俺が頂くとする」

我々の勝利だ。

「まずはこの余興からだな」

太一の方を振り向く三國人

ザッ
太一が刀を構える

「俺は信じる」

「は?」三國人が鋭い歯を剥き出しにした。

「真の兄貴、文太の兄貴、それに道来さん、しんべえが必ずそれを阻止してくれるって」

「太一っ」

「泣いて、あきらめる時間なんかないぜ、道来さん、しんべえ、俺たちがあきらめたら 誰がこの国と人々の未来を守るんだ」

「だから、俺の死に泣く暇があったら、しっかり立って見せてくれ」

「それが道来さんが俺に教えてくれた生きる姿勢だろ」

ああ、そうだ そうだった。
何度諦めても どんな状況でも 真っ暗闇に全てを覆われていても、必ず希望は再び顔を出す

決して消えはしない光はここに在るんだ

すまない太一

「グヌオオオオオオオオオオオオオッ」
必死に身体を動かそうとする道来

「こいつの何処にこんな力が残ってやがった」

「おいっ、さっさとそいつを始末しちまえ」

「ああ そうだな」

ザアアアアアアアアアアアアアアンッ

「太一っ」

道来、しんべえはその瞬間を迎えるしかなかった。

この戦は大帝国の勝利であろう、それはほぼ決まった事。
この時の唯一の救いは、生き残った者達が少しでも多く逃げきる事。

三國人 彼らに太刀打ち出来る者はもういないのだから勝利は無理だった。


ビュオオオオオオオオオオオオオンッ

道来さん、一之助、しんべえ 真の兄貴 文太の兄貴

こんな俺を大事にしてくれて グッ

真の兄貴 、真の兄貴ならどんな時でも何とかしてくれる そう信じてます。

文太の兄貴、もっと色々話したかった、でも何も後悔はないです この後の国を任せます。

一之助 俺の為に命を張ってくれて ありがとう

しんべえ 沢山喧嘩したなぁ、でもよ お前は大好きな親友だ

それから道来さん 

こんな俺をずっと面倒見てくれてありがとう

先に行く俺を許してください。

みんな

ずっと大好きだ

みんななら絶対に大帝国を止めてくれる

後は任せた


「シニナ」


「太一ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」



スパアアアアアアアアアアアアアアアンッ



静寂


本当に静かな瞬間だった


戦場の筈なのに


まるで


全てが止まった様に


まるで


時が止まった様に



静寂に包まれた様だった



道来は拭っても 拭っても



拭っても



拭いきれない程の涙を流す


自身の生よりも大切な太一の命



ありがとう



ありがとう




ありがとう




本当に





ありがとう





太一を救ってくれて







ありがとう






一斎






絶望に包まれていた暗闇の中、目の前には希望が立っていた


あの日


真堂丸に託された意思は


しっかりと受け継がれていたのだ。



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