32 / 68
『サーとスーの楽しかった旅』
しおりを挟むグウグウ、スヤスヤ。
二人はよっぽど疲れたのだろうイビキをかいて眠りこけている。
ザーッ ザーッ ザーッ
深夜二時をまわったところ、まだ彼らのネタを引っ張るのかと読者の皆様もお思いでしょう。
そう引っ張るのです
笑
「ぐがががががっ」
「ぐぎゅるるるるっ」
パチッ
多網父の腹の音のような奇っ怪なイビキの音で、とけたみは突然目を覚ましてしまう。
「あっ、まだ夜中だ」そして雨はまだ強い。
時刻は深夜2時
「えっ、ここどこ?」
とけたみさんは部屋の景色がいつもと違うから一瞬、異界に迷いこんでしまったんではないかとギョッとした。
旅行に来てるのである。
「ぐがががが」
多網父はぐうすか布団をかぶり夢の中。
降りしきる雨の音と動くクーラーの音が部屋の中に鳴り響いている。
「あーイビキのせいで目が覚めちゃったもーこんな夜中に怖いなぁ」
いい歳して夜中をこわがる、あんたが怖い。
ザーッ ザーッ
あーもう初めての部屋で一人起きてるなんて。
とけたみさんは立上がりテレビをつけようとした。
ちなみに部屋の電気は付けっぱなしで寝ていた二人。
はやく、人の声をききたい人の顔もみたい、テレビ、テレビ。
突然目を覚ます、多網父
「あれっ、とけたみさん起きてたの?」
「ぎゃあっ」突然の声に心臓がにゅるにゅるなっちゃったとけたみさん。どんな表現だ。
しかし、少しホッとした。
多網父が起きたので、テレビをつけるのをやめた。
ザーッ ザーッ ザーッ
二人は布団にくるまりながら語りはじめた。
「なんだかさぁ、旅の終わりが近づくと少ししみじみしちゃうね」
とけたみさんが言った。
「明日の朝はもう帰るんだもんなぁ」
「はやかったね」
二人は布団の中、しみじみしていた。
「知らない土地ですごすって、なんだかワクワクするし楽しいよね」と多網父
「本当に楽しい旅だった、明日からまたいつもの日常に戻るんだね」
「うん」
思ったのだが、彼らはボーリングしかしてなかったような・・・・
ザーッ ザーッ ザーッ サー
偶然発せられた二人の声はハモった。
「楽しかったなぁ」
「なんだか、眠れないね」
とけたみさんの目はパッチリと開いていた。
「うん」
「この夏は久しぶりにこんなに会えて良かった」多網父は七夕祭りを少し振り返っていた。
「これからも、ちょくちょく会いましょうね」
「そうですね」
二人は何だか感慨深い気持ちになっている。
何故なら二人で旅行に最後に来たのは学生を卒業した時以来だったからだ。
いまや、お互い大人になり、多網父に関しては二人の子供までいる。
「ここまで、過ぎてみるとあっという間だったなぁ」多網父は微笑んだ。
「沢山、辛いことも嫌な事もあったけど、今は笑って人生を振り返れるね」とけたみさんが言った。
「過ぎてみりゃ、もうなんでもいいやと思えるよ、肥やしになったんだねぇ」
「良いこというねぇ、モヤシ モヤシ」
どんなギャグだとけたみよ。
「老人になっても仲良くしましょう」
二人は熱い友情を感じあっていた。
そして、若い頃の思い出話などをして懐かしんだ。
あんなことあったなぁ、あんな恋をした。
あんなこと感じたり、あんなとこにも行った。
しみじみ生きてきたことを振り返り感じていた。
おっ、どうした?今の二人ちょっとなんか、違うぞ 笑。
「ああ、楽しいこの時間いつまでも、続いてくれぇ、なんてね」
とけたみさんは笑った。
寝ながら、しみじみと普段しないような、こんな話が出来るのも、また旅の素敵な醍醐味だった。
最初は元気よく話ていたが、徐々に多網父を眠気が誘う。
眠る直前まで人と話し、気づいたら寝ていた これは多網父の結構好きなことであった。
あっ、冬馬君と一緒だ!
半分目が閉じ始めた。
そしてこの極楽フルコースに多網父の口元はニンマリ笑った。
あっ、あっ、この瞬間たまらん。
あー眠る瞬間たまらん。
が、とけたみは見逃さなかった。
友が寝たら自分は一人
そんな時にさっきの怖い番組思い出したら大変、寝かしてたまるか。
マシンガントークが、始まった。
「ねぇ、次は旅行どこいきたい?」
「味噌汁なにが一番好き?」
「最後いつゲリした?」
「日本って世界で何番目に人口多い?」
「雪食べたことある?」
もう、はちゃめちゃである。
はっ!
返事がない
やばい
これしかない
「大変、大変 さっきのテレビのお化けがでたよー」
ガキか。
起きない
そんなこと言って自分が怖くなってしまった。
ザーッ ザーッ ザーッ
多網父はイビキをかいて眠っている。
まじかぁ。
最後の手段、足の裏くすぐりをやったが起きなかった。
あーもう寝るしかない
目はがん開きだった。
パッチリ
その時
ガタガタ 窓の揺れる音
「えっ、なに、嘘 怪物?」
風である。
「えっ、ちょっとヤバイんじゃない」
そりゃ、あんたである。
ザーッ ザーッ ザーッ
「この音、本当に雨? 本当は雨なんか降ってないんじゃないの?」
すごい発想である
とけたみは窓の外を見て言った。
「あっ、雨だ」
ザーッ ザーッ スー
「ちょっとこれヤバイなぁ」
グガー
「ひゃあっ」
多網父のイビキにすらビックリしているとけたみさんこと通称スー。
「あーもう、おどかさないでよ」
誰もおどかしちゃいない。
「あーこういう時って時間たつのが遅いんだよ、お天道さんはやく起きてよ、寝過ぎだよ、遅刻だよ、これじゃあ卒業出来ないよ」
とけたみさんは余程こわかったのかブツブツ喋りはじめた。
だが、言わせてもらえば、もはやあんたが一番こわい。
幽霊すら近寄らないだろう。
「あーどうして背中の真ん中がかゆいんだよぉ」と言い放ち、 とけたみさんは目をつむった。
「そうだ、こんな時は楽しい事を考えよう、えっと最近見たテレビで一番笑ったのは?」
「ひゃあっ」
テレビを連想して、さっきの番組のいっとう怖いお化けちゃまの顔がどあっぷで出てきた。
「ぎゃあああっ」
ちっちがポコちんから一滴飛び出してしまう。
「はひゅ、はひゅ」
いかんこの歳でもらすのはまずい。
今漏らしたら今年になって随分漏らしてることになるじゃないか。
月三ペースはやだよ。
そんな漏らしていたのか、とけたみさんよ。
「羊を数えると眠くなるらしいから数えよう」
とけたみさんは羊を数えはじめた。
「羊が一匹、羊が二匹」
四百五十程かぞえた時、ある疑問が頭に浮かんだ。
あれっ、そう言えば羊ってどんな顔だったっけ?
今まで背中だけを見せていた、羊達、四百五十匹が一斉にとけたみさんに振り向いた。
なんと、その顔はサーこと、多網父の顔だった。
その名もサー羊は一斉に声をあげた。
「サーサーサーサーサーサーサーサーサー」
メェーならぬサーであった。
「んぎゃああっ」
ちっち、二滴放出。
しかも、サー羊は妙にイラつかせた。
「サーサーサーサーサーサーサーサーサー」
こんなの寝れるかぁ!!
その時だった、窓ガラスに顔が。
「ぎゃああっ、なんて気の抜けたお化け~ついに出たー」
だから、ガラスに写るあんたの顔である。
そんな時、見かねた奴はかえってきた。
そう、雷野郎である。
「アイルびーばっく」
奴はちょっと、ターミネーターにはまってこの言葉をつかってみたかった。
やったあ。
ピカッ 光った。
「ほぎょーーーっ」
とけたみは心臓が飛び出しそうになるのをこらえ、とっさに金玉を手でガードした。
だから、ガードするとこおかしいだろう。
「しめた、今は一人だな」
もう一度いうが、いったいどんだけどエスな雷さんだ。
ピカッ
「くらえゃー」
とけたみは光った時にまた窓にうつる顔を見た。
光ったおかげで気の抜けた顔に生気が戻り力強くみえた。
「ぎゃーたくましい 幽霊になったあ」
そして、すかさず
ゴロン
「きよらなゆにゆなりやなはやわにらまなゆひりやなやに」
雷はとけたみさんの金玉に直撃した。
ビリビリ ビリビリ
「まっまー」
薄れゆく意識の中、とけたみさんは
こんな事を一瞬思ったと言う。
あっ、ちょっと気持ちいいかも。
だが、そのまま電流は全身に。
ビリビリ ビリビリ
ボカ~ン
ちゅん、ちゅん
朝だった。
「あれっ?」
あっ昨日、金玉に雷当たって死んだんじゃなかったか?
サラッとすごいこと言うな、とけたみよ。
あっ、当たってなかったのか、きっと、音にビックリして気絶しちゃったんだ。
あっ!!!!!!!!
布団は濡れていた。
めでたし
めでたし
朝食を済まし。
二人は今、帰りの電車に乗っている。
そして、いよいよお別れの時。
降りるのはとけたみさんだった。
「いよいよ、次の駅で、さよならだね 次、僕 乗り換えなくっちゃ」
「なんだか、寂しいね」と多網父
「うん。本当にありがとう、最高に楽しかったよ」とけたみさんが頭を軽く下げ会釈した。
「こちらこそ、ありがとう」多網父も軽く頭を下げ会釈した。
電車はついに二人が別れる駅についた。
「また、夏中に会えたら会おう、子供達や奥さんによろしくね、来年もまた祭りにみんなでおいでね」
「うん、そっちも体に気をつけて、また会おう」
「じゃあ」
「じゃあ」
とけたみさんは電車を降り、手を降り歩きだした。
多網父はとけたみさんの階段を降りる背中をいつまでも見ていた。
「ああ、いっちゃった」
さっきまで隣に居た、とけたみさんは降りてしまい、少し寂しい車内の中。
「ありがとう、とけたみさん、また旅行行こうね」
二人にとって素敵な夏の思い出になった旅だった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる