エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。

ミツユビナマケモノ

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エンゲージゲーム 事故物件王子の新しい婚約者は、魔王のようです。

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 目にもとまらぬ速さでくり出されるコレットの短剣を、ケイツビーのテーブルナイフが弾き返す。必殺の斬撃をことごとく防がれ、後方に跳んで距離をとったコレットの額には汗が流れ、息も上がっている。対するケイツビーは髪筋ひとつ乱していない。
「化物どもめ……ッ」
 純情な娘の仮面をかなぐり捨てて毒づいたコレットが、ドレスの裾に手をすべらせた。隠しからつかみだした銀色の光を、投げつけた先は、
「危な……っ」
 レティウスは瞬きすらしなかった。
 十を超える薄刃が、空中で透明な壁にあたったように停止し、へし折れる。
 コレットが胸元のロケットを引きちぎり、床にたたきつけた。
 閃光が破裂した。暴力的な光の爆発に焼き尽くされる視界の中、コレットが身をひるがえし、霊廟の外へ続く通路へ走り去るのが、切れ切れに見えた。光はすぐに消え、刺激臭のある煙が立ち込める。
「うええ、目と鼻がくしゅくしゅする。閃光弾か煙玉か、どっちかにしてよ……」
「まともに喰らったな」
「ふへ?」
 目と鼻をこすって泣き言を漏らすケイツビーの額に、レティウスが手をかざす。指先から淡い光が慈雨のように注がれた。
「お? 楽になった」
「追え」
「了解――」
 ケイツビーが走り去る。
「アルファレド――」
 と、レティウスが呼び、指をちょいちょいと動かした。
「目と、あと額――」
 そちらへ頭を傾けると、レティウスは犬の爪で裂かれた額の具合を見てくれた。
「薄皮一枚、かすっただけだな」
 羽毛のような軽い感触が額をかすめ、ついで温もりを感じた。陽だまりのような温かさが染み通るとともに、じくじくとした痛みが薄れ、消えていく。レティウスの指がはなれた。
「なんなんだ……」
 アルファレドは呆然と呟いた。
 つまり、命を狙われた、ということだが。
「私は、それほど嫌われていたのか……?」
「好きか嫌いかという二択で問えば、好きではないのだろうが」
 あたりを歩きまわって床の魔法陣を調べながら、レティウスが応じた。
「しかし、好悪は関係なく、単に邪魔というのが正直なところだろう」
「……邪魔?」
「まだ自分の立場がわかっていないのか、第一王子。いや――」
 点検を止め、レティウスがこちらを見た。
「エインスワート、唯一の王子」
 近づいてくる魔王の圧に思わず後ずさると、背が壁に当たり、その冷たさが沁みた。
「現国王アレクタリスは、歴代の王の中でも優等な部類だ。失政も少なく、賢王の評判もダテではない。唯一の難点は、後継問題――」
 エインスワートの血縁は少ない。現国王の縁者は、一人息子の他には他国に嫁いだ妹と、その子、先々代のころに王室外の者と結婚した王族の子孫くらいだ。アルファレドの他に目ぼしい王位継承者はいない。
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