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白昼夢
しおりを挟むジャー。
頭に暖かいお湯がかかる。
ーーお湯加減いかがですか?
優しい女性の声が聞こえる。
ーー大丈夫です。
そう伝えると、女性は私の髪の毛を丁寧に洗い始めた。
わしゃわしゃ。わしゃわしゃ。わしゃわしゃ。
小気味好い音が頭に響く。ちょうどいい力加減だ。あっという間に眠ってしまいそうだ。
私は美容院で頭を洗う瞬間が好きだ。
暖かいお湯で髪の毛や頭皮をマッサージしながらサッパリしてもらう。切った髪の毛が洗い流せるのも嬉しい。顔にかぶせてもらった薄いタオルのおかげで、自然と目を閉じ、気持ちよくなってウトウトしてしまう瞬間が好きなのだ。
その瞬間はまるで春の日差しを浴びながら縁側で昼寝をするときのような心地よさなのだった。
この瞬間が永遠に続けばいいのにと感じてしまう。
ざざーっ。ざざーっ。
目を覚ますとそこは白い砂浜だった。
辺りにはヤシの木のような南国の植物が生えていた。
しばらく水を飲んでいなかった時の頭痛を感じる。日差しにも少しクラっとした。
ーーあぁ。そうか。夢か。
あまりに気持ちが良すぎて、完全に眠ってしまったようだ。そして南国の夢を見てしまったのか。
こんなリアルな南国の島の夢を見せてくれるとは美容師の洗髪の腕は確かなのだろう。
せっかくの夢なのだからと、この地上の楽園を楽しむことにする。
目の前に広がる青い海には見る限り、何一つ浮かんでいなかった。
空には雲ひとつ浮かんでなく、カモメのような鳥が飛んでいた。
砂浜には色とりどりの貝殻が落ちていた。その他には何処からか流れた木片や、瓶が落ちていた。
私の南国の想像力もなかなかのようだ。
自身の想像力に感心していると、急に髪の毛を引っ張られる。
美容師が起こそうとしたのか、髪の毛にひっかかったのか。そう思ったが引っ張られる痛みは続いていた。
痛みを感じたところに手をやると、ヤドカリのような生き物が手に納まっていた。逃げ出そうとして手の中をうごめくのだった。
それを見て、私は全てを思い出した。
ーーあぁ、そうか、あの美容院は夢だった。私は遭難していたんだった。
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