堕天使転生 ~Lip Magic Generations~

すふぃんくす のーば

文字の大きさ
15 / 26
第Ⅰ期 Lip Magic Generations 結成

3 寺子屋

しおりを挟む

 剣神世界にも学校はある。寺子屋だ。
 ただこちらの世界の場合、前世からの記憶があるため、それぞれ個人に合わせた学習方法となっている。
 無垢で生まれた子供は、段階的に学習していくが、それ以外の子供は、最初に記憶試験を受ける。
 5歳レベル⇒10歳レベル⇒15歳レベル⇒20歳レベルと受けていく。

 私は5歳は満点、10歳は90点。15歳レベルは70点。20歳レベルは50点という成績だった。そのため、15歳レベルから学習することとなった。
 20歳レベルは前世で言うところの大学だ。進学しなくても良い。全て5年単位で勉強する。

 次に剣術レベルの試験がある。
 これも同じように、 初級レベル⇒中級レベル⇒上級レベル⇒剣聖レベル 
 と受けていくが、こちらは知識よりは種族などの能力差が大きいようだ。
 私は剣術についてまったく実力はなかったため、初級レベルで落ちてしまった。
 剣術は、初級レベルから習うことになった。

 学習施設の寺子屋での勉強は、朝9時に始まる。
 午前中は黒板を前にして、先生から学問を教わる。
 午後は、中級の先生から、剣の指南だ。
 1年後に先生との試合があり、先生に勝つか引き分けると昇格するらしい。
 剣の先生は、中級レベルの生徒が1ヶ月ごとに交代する。つまり、中級に上がった生徒が夏休みまで交代に1ヶ月教え、中級レベルの生徒は上級レベルの指南を同じように受ける仕組みとなっている。
 上級レベルまで上がると剣聖から指導を受けることとなるが、剣聖は数が少なく、生徒の希望で首都の剣聖学院に入学する。
 大体の子供は、20歳になるまでに上級レベルに昇格するため、この日本だけかもしれないがこの世界の大人は男女問わずかなり強い。

 午後の指南は、1時から4時までだ。時間になると帰宅する。
 毎日授業があるわけでなく、月水金と週3日だけである。
 ただし、前世の記憶がない無垢の子供は火曜と木曜は終日学問を教わる。
 それ以外の子供は、火曜と木曜は遊んでいいわけでなく、家業の手伝いをさせられる。土曜と日曜は休暇だ。何をしてもいい。

――◆□◆――

 青葉が輝き太陽がまだ眩しい季節。
 9月1日に行われる入学式でクロに会った。まだ小さいがクロだとすぐに分かった。
 クロを見かけ、手を振ると猫族の脚力は高く、飛ぶように抱きついてきた。

「会いたかったニャ! ショウ」
「クロ! 今まで見かけなかったけど、どこにいたんだ?」
「うん。伊達藩に生まれたんだけど、先月江戸に引っ越してきたにゃ。」
「うちは泥棒稼業でさ。あまり目星いものがなくなったから、都会の江戸に来たにゃん」

 泥棒は、この世界では立派な家業である。戦争になると、忍者のような泥棒稼業はとても有益だからだ。
 ただ、何でもかんでも盗んで良いわけではなく、暗黙の3原則がある。

 1つに、裕福な家庭から、1年に1つだけ盗むこと。
 2つに、盗んだものは盗んで良い。
 3つに、綺麗に盗むこと。

 綺麗に盗むとは、散らかさない、汚さない、片付けるである。
 相手に戦う意志がある場合、殺傷しても良いが、血糊などはきれいに掃除しなければならない。戦う意志がないものを殺傷したり寝込みを襲うことは、この世の規則でも禁じられている。
 また戦う場合は、代表戦となり1対1で決闘を行う。
 相手が死ぬか降参の意思を示すまで行われる。いかにも剣神世界らしい。
 このようなこともあり、裕福な家庭では、玄関に盗んで良い品物を置いてあることが多い。
 なお、盗んだ際には、その証となる「■●のクロ参上」のような証文を置いていかなければいけない。

「クロはどこの組になったの?」
「あたいはねぇ、梅組だよ。ショウは?」
「ぼくも梅組だよ。やったぁ」 ――なんかうれしい。

 クロのこの世界での名前は、「服部 九鷺」である。
 まぁ私の中では、クロはクロなのでクロとする。

「そちらはお父さんとお母さん?」 クロが私の父母を見かけ、挨拶する。
「うん。父上と母上だよ。うちは鍛冶師なんだ。」
「お手柔らかにお願いするよ。盗むなら大業物以外ならかまわないよ」
 父は泥棒家業と知って苦笑いしていた。

「うちの父さんと母さんだよ。父は猫族でけっこう腕はたつんだにゃ。母はアマゾネス系の人族にゃ。だから、わてはハーフにゃ」
 クロの父が得物を取り出し、私の父に頭を下げてきた。
「九鷺 がお世話になります。私の剣は正宗さんが作った脇差の良業物と、小剣の大業物で、いつも助けられています」

 クロの母が微笑んで話しかけてきた。
「お宅の息子さんとは、前世からの知り合いみたいですね。これも何かの縁でしょう。どうぞよろしくお願いします」
 たぶん念波で教えたのだろう。私のことを簡単に紹介したみたいだ。
 アマゾネス系か~ミニのボディコンだし、スタイル抜群だな。クロもこんな感じになるのかな。

 末恐ろし~
 入学式で担任の先生の紹介があった。
 私の梅組の担任は、「梅村 紅玉」先生だ。紅玉と書いて、「ルビィ」と読む。
 たぶん前世は、西洋人だったんだろう。

 1時間くらいで入学式は終わり、紅玉先生が、梅組の列に来て
「それでは皆さん、一緒について来てください」
 と教室に案内された。12人の5歳の児童が先生の後を付いていく。
 木造の引き戸を開けて中に入ると、10歳と15歳の学生が椅子に座って待っていた。

 梅組は、前世でいうところの高等科だ。高校レベルの勉強をする。
 年齢は5歳から15歳くらいまでだが、分け隔てなく教える。
 ただ、身長差があるので、背が低い学生は前の方になり、私やクロも一番前の席になった。机は2人1組で、クロは私の隣の席である。

「それでは、授業を始めます。授業を始める前に、選択科目を1つ選んでください。選んだら、配った用紙に名前を書いて、選択科目に○をつけて先生まで持ってきてください」

 必須科目は、自然科学、医薬学、魔術である。
 選択科目は語学(日本語と外国語)、理数学、魔物学があった。
 選択科目には、それぞれ簡単にどのような学問か説明が書いてある。
 それを見て、私は魔物学を選択し、先生に提出した。
 剣術は実戦形式で教えるようで、流派なども実践を通して選択するようだ。

 お昼には給食が出た。カレーライスとスープをクロと一緒に食べた。
 家のカレーも美味しいが、寺子屋のみんなで食べるカレーもとても美味しい。
 クロは猫舌で、熱いものは苦手なようだが、「辛いのは別にゃ」とか言ってフーフー言いながら食べている。

 梅組には100人程の生徒がいて、クロを交えて近くの生徒と雑談をした。
 話をするのは、やはり年齢が近い生徒が多く、だいたいグループができている。
「お父さん何してるの?」とか「前世は何?」とか、たわいのない会話である。

 クロ以外の名前は、蓮月レンゲツ美夜ミヤ碧衣アオイ紅々李ククリ日葵ヒマリ、以上が女性、他男性5人だ。
 ――男性はあまり興味はない――

 各々の簡単な特徴は(男性は除く)
●蓮月:ピンクの髪で色がとても白い兎族。頭の上にある長い耳がかわいい。眼がルビー色でキラキラしている。少し天然。9月13日生 5歳

●美夜:紅色の長い髪で、白い眩い肌をし、キリっとした目で種族としてかなり珍しい龍族。常に水晶の数珠を腕にしている。1月11日生 5歳

●碧衣:碧い髪で、金色の大きな目の白い肌をした狐族。聡明で堅実。3月3日生 5歳

●紅々李:濡鴉《ぬれがらす》色の髪にサファイアブルーの目をした美形で婉然《えんぜん》な人族。10月10日生 5歳

●日葵:銀色の髪で、ブロンドの眼の快活なおしゃべりの犬族。7月7日生 5歳

●クロ(九鷺):黒のソパージュのかかった髪で、黒眼の少しおどけた感じのする猫族。6月6日生 5歳

 姿かたちは、人族と同じである。
 違いは獣耳であったり、尻尾があるくらいで、耳は髪に隠したり、尻尾も服を着れば隠せるようで、あまり人族と変わりない。
 人族との決定的な違いは、それぞれの獣になることができることと寿命だ。
 例えば、猫族はネコ科の動物になることができるようで、虎や豹にもなることができる。狐族と狸族は特殊で人間にも変化できる。
 ただし、どの種族も一定の条件を満たさないと変化できない。

 人族は変化できないが、すべての種族と子供を作ることができる。
(通常は、種族間だけ。ハーフはその種族と人間だけ)
 寿命や妊娠期間は、種族によって異なる。

 気がついただろうか? ……全て5歳である。
 試験で落第をしない限り、5歳間隔で上のレベルに上がっていく。
 普通に上がっていけば、このクラスの5歳児は、10歳で20歳レベルになり、
 20歳レベルに進学しても15歳で卒業である。

 ――◆□◆――

 火曜日と木曜日は家業のお手伝いをする。
 父は刀剣鍛冶師なので、刀剣作りをするわけだが、いきなり刀剣は作らせてはもらえない。まずは、作業場の掃除や水くみなど雑用を行う。そして作業工程などを盗み見る。

 母は、刀剣を作るでもなく、一日中家事を行うでもない。
(家事は家族全員が共同で行うことになっている)
 何をするかというと、特殊技能(教師、医師、薬師等)のある女性以外は、産前産後の5年間を除き、狩猟に出かける。
 魔物を退治することもあるが、森の中で増えすぎた動物を間引きするのが目的である。もちろん捕った獲物は、できるだけ食用に回し、皮や骨なども無駄なく使う。
 そんなこともあり、この世界の女性は男性より強かったりする。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...