19 / 26
第Ⅰ期 Lip Magic Generations 結成
7 マーメイド
しおりを挟む
(1) 海水浴
夏だ。海だ。涙の海水浴だぁ~~
苦節耐える事6年、やっと乙女の胸が膨らみ始める頃、海水浴に来ることができたぁー!
海水浴といっても、これも修行(けっして遊びではない!)の一環である。
この海水浴場の海岸線を歩いていくと洞窟がある。そこが魔窟だ。
でも、折角だし楽しまないとね。
今回は、中級レベルの生徒(クロ、蓮月、碧衣、紅々李、日葵、瑠璃、その他男子数名)と、引率として梅村先生と美夜が来ている。夏休みになり、例のごとく合宿するのだが、今年はいつもの幽霊屋敷ではなく、海での修行である。
去年から私も中級レベルになったので、海の合宿に参加したかったのだが、幽霊屋敷の手続きを済ませるため、泣く泣く幽霊屋敷の修行に臨時講師(一応中級レベルなので、剣術では先生である)として行ってきた。
毎年、地縛霊の面接をするのは面倒なので、浄化(お祓いのできる先生)と面接は寺子屋に委託することにしたのだ。
合宿先の温泉宿までは、江戸から九十九里浜まで馬車で移動した。九十九里は、見晴らし良く日本一海岸線が長い。波に乗っているサーファーも多い。
実は海には始めて来た。当然、妹もである。
格好よく泳いでみせたかったが、泳げない……いわゆる金槌というやつか。
そういうこともあり、海に入っても腰くらいまでである。女子たちとビーチボールをしたり、砂山を作って遊んだ。女子たちとビーチボールをするとどうしても胸に目がいってしまうが、梅村先生を除き、揺れるようなものはない。
女子は梅村先生を恨めしそうに見ていたが、「そのうち私だって」……と握りこぶしを作っていた。男子たちとも、ついでに海で水を掛け合って遊ぶ。
泳ぎがうまいものがいて、海の中から足を引っ張られて、少し溺れそうになった。――ああいう危険な遊びは止めてほしいものである――頭は濡れるし、格好悪いじゃないか(泣)……ま、いいけどね。楽しいし(笑)
妹とは、両手をとって泳ぎの練習である。まずは、バタ足から……自分は泳げなくていいのか?
そんなこんなで一通り遊んだあと、さぁ修行である。
(2) 洞窟(ダンジョン)
夏休みの合宿、1日目は海水浴を楽しんだが、2日目は魔窟の探索だ。
この魔窟も中級レベルの修行を行うこともあり、そんなに攻略レベルは高くない。とはいえ、レベルの低い弱い魔物は出る。深部に行くと、少し強い魔物も出るそうだ。
今回は、5人グループで探索する。引率は美夜だ。
前衛は私とクロ、中衛は美夜、後衛は蓮月と瑠璃という構成にした。ただし、美夜は引率のため、極力手は出さず、様子を見るとのこと。
海水浴場から海岸線に沿って北上していき、岩礁を上り下りした先にその洞窟はあった。まだ昼間なのに、冷っとした感じがする。洞窟の入口から中に入る。
少し暗くなってきたところで、「バタバタバタッ」と音がする。
みんな身構え、各々真剣を持つ。寺子屋の稽古場とは違い、それぞれ親にもらった真剣を身につけている。
黒いコウモリが出てきた。――驚いたぁ
「みんな最初からそんなに緊張してると、長続きしないよ」
美夜は笑みを浮かべ余裕の表情だ。
「私は周りを注意してみるけど、前衛は前方だけ、後衛は後ろだけ注意してね」
しばらく奥に進むと、水晶が薄暗く点っている。魔窟兼訓練場だから多少明かりを入れているのだろう。
クロは生まれながら、種族の特性もあって夜目が利く。今日は黒い忍者姿をしている。
蓮月は音に敏感だ。これも種族特性だ。スキルとは少し違う。
蓮月が奥で岩が崩れる音に気づく。皆、刀を鞘から抜き、身構えながら更に奥に進む。
魔物が現れた! スライムだ……なんか、かわいい。
スライムは、身を揺らしながら襲ってくる。こんなかわいい魔物を傷つけていいのか迷うが、余計な雑念は振り払い、戦うことにする。
剣で切りつけたが、二つに別れたあと、また一つになる。クロも短剣でみじん切りにしたが、また元に戻った。
――意外と強いぞ。
美夜は後ろで微笑んでいる。
美夜がスライムに刀を向けて教えてくれる。
「魔物にはそれぞれ急所があるの。目であったり、首筋であったり、足首だったりね。スライムは透明になってるから分かり易いけど、スライムの中にある少し濃い玉が見えるかしら。それが急所よ」
教えてもらったとおりに、急所を狙ってみた。
スライムは、蒸発して魔核を残して消えていった。その破片を回収し袋に入れておく。スライムは植物性の魔物で傷薬の材料になる。
さらに奥に行くと、大小様々なスライムが数匹出てきた。美夜を除く4人で戦う。
互いに連携をとりつつ、的確に急所を狙っていく。
急所が分かってしまえば、スライムは楽に倒せた。
――◇●◇――
洞窟に入って2時間、約30匹程のスライムを退治したところで、今日は引き上げる。帰ってくるのに2時間、途中にもスライムが出現し、出口に戻るまでに約50匹程仕留めた。――かなり薬の材料も貯まったぞ。
スライムは、粘液質で切るたびに体液が飛ぶから身体がベトベトだ。
「早く帰って、温泉に入ろう。」
潮風に吹かれながら海岸線を歩き、温泉宿に戻った。
「フー疲れた~~」蓮月、瑠璃らもくたくただ。
確かに疲れた。他の組も無事みたいだ。
洞窟は3箇所あり、それぞれ別の入口に入って探索する。奥で繋がっているところもあるが、かなり奥に入らないと合流しない。それぞれ、魔物の種類が違うそうだ。
早速、温泉の洗い場でベトベトの粘液を洗い流した。
この粘液も何かに使えそうだ。どんな成分が入っているか調べてみよう。
温泉に入り、まったりする。
「温泉って気持ちいいな……ここは海が近いから、塩泉だな。若干硫黄も入ってるな」なんて、温泉の泉質を分析しながら入っていた。
例の如く、男子が入ってきて騒がしくなる。まぁ合宿だからしょうがない。
今日の魔物について情報交換しながら、温泉に入った。明日の修行はない。
ここの修行は1日おきに行われる。明日は自由時間。また海水浴だ。
(3) マーメイド
今日は天気はいいが、海が少し荒れている。
サーフィン日和だな――できないけど。
今日も海水浴だ。
女子は、お肌が焼けないようにしっかりお手入れしているが、クロは気にせずそのままだ。今日もまた、それぞれビーチバレー、水泳、砂山遊びに興じている。
私はビーチパラソルを開き、砂の上に寝ていた。
日差しはキツイが、海の風が心地よい。しばらく寝ていたら、妹に起こされ水泳の練習に付き合わされた。
うまいものだ。もうすでにクロールができるようになっている。本当に何をやらせても上達が早いな。私は、まだ足が立つところで、不格好な平泳ぎのようなものしかできない。
――○●○――
妹が「少し泳いでくる」といって、少し沖の方に行ってしまった。
置いてけぼりだ。見てると、すごい勢いで離れていく。
……ずいぶん、上達したな……って思っていたら、少し様子が変だ。
潮に流されてるんじゃないか?
「瑠璃!!」 念波で大きな声で叫ぶ。
瑠璃は振り返り、沖に流されたことに気がついたようだ。
慌てて、こちらに戻ろうとするが、潮の流れが強く戻ってこれないらしい。
「おにいちゃん!!」って念波で叫んでいる。
瑠璃はそのまま姿が見えなくなった。慌てて、瑠璃を追いかける。
★瑠璃視点
「瑠璃!!」 お兄ちゃんの声が頭に聞こえる。
振り返ると、お兄ちゃんが遠くに見える。――こんなに遠くまで泳いできたんだ。
『戻らないと』……えっ全然前に進まない!……足が疲れてきた。
「――アゥ――」 大きな波が来る
「おにいちゃん!」あっしまった。お兄ちゃんを呼んでしまった。
まだ、泳げないのに……「お兄ちゃん来ちゃダメ」
波間から太陽の光芒が振りそそいでいる。……このまま海に沈んじゃうのかな?
海ってきれいだな……息がもうできない。
――あっお兄ちゃんだ。『来ちゃダメ――』
……意識が遠のいていく…… …… ……
――◆□◇――
その時、瑠璃の身体が瑠璃色の光に包まれるように、輝いた。
『水の精霊』が瑠璃の周りに集まってくる。
すると人魚が近づいてきて、瑠璃とショウを掴み、海面から飛び上がった。
バッシャーン!!
海面を叩きつけるような音の後、マーメイドは砂浜まで2人を運んでいった。
2人は意識を失っていた。
真っ先に異変に気がついた、美夜とクロ、日葵が集まってきた。その後、梅村先生や紅々李、蓮月、碧衣たちも遠くから次々集まってくる。
陸に上がったマーメイドはとても息切れしている。
クロがショウに、美夜が瑠璃に人工呼吸を始めた。
心臓の位置にある胸の中央を30回押す、次に2回息を吹き込む。その繰り返しだ。5回くらい繰り返したところで、ショウは海水を吹き出した。
「……ゴホッ。ハーハーハァー ――」
むせたあと、深呼吸する。(頭の中に黒い炎が燃え上がった)
妹は! 大丈夫なのか?
隣を見ると、妹が人工呼吸されている。
「瑠璃!! まだ死んじゃダメだ!」……オレは妹に叫び、揺り動かす。
間もなく、妹も激しく咳き込んで、意識を取り戻した。
――良かったぁ――周りを見渡すと集まってきた仲間が、心配そうに青い顔をして覗き込んでいた。
「みんなごめん。というより本当にありがとう。助かった。妹も助けてもらって本当にありがとう」私は涙ぐみながらお礼を言った。
「おにいちゃん!!」
正気に戻った妹が、オレを抱きしめキスをしてきた。……ちょっとびっくりしたが、6歳だし気が動転しているんだろう。あまり気にしないことにしよう。
周りはかなり驚いていたようだが――アレッ 瑠璃色の炎が瞬いている。
妹は泣きながら、
「怖かったぁ。お兄ちゃんが助けてくれたの?」と聞いてきた。
「助けには行ったけど、オレも溺れてしまって、その後のことは覚えてないんだ」
「あのマーメイドが助けてくれたんだよ」と美夜が教えてくれる。
私はふらつきながら人魚のところに行き、
「本当にありがとうございます。助かりました。なんてお礼を言っていいか……」
「あ、はい。驚きました。海を泳いでいたら、遠くから二人を見かけたんです。そしたら、あちらの方が光って、――あれはそう、水の精霊の加護ですね。精霊が呼んでるのが聞こえて、2人を掴んで、後は無我夢中で……助かってよかったです」
マーメイドは尾ひれをパタパタさせ、安堵した表情だ。
「そうですか。助かりました。このお礼はいずれなにかの時にお返ししないと。 ――もし、困ったことがあったら、私を頼ってください。オレは「立花 翔」っていいます」
今の私に何かできるわけではないが、こう言わずにはおれなかった。
「ん? あなたも少し水の精霊の加護があるような? でも少し違うかな。いずれまた会うこともあるような気がします。…あちらの方は妹さんですか? これからもよろしくお願いしますね」
マーメイドは私にウインクしてきた。
「はい! こちらこそよろしくお願いします」
初めて見るとても美しいマーメイドにカチコチになってお礼をした。
「もしできればなんですけど……私たちあんまり洞窟には入らないんですね。洞窟の中に悪さをするタイ魔王いるんです。いつも私たちが愛し合ってると、邪魔をしにくるんです。タイ魔王を退治してくれるとうれしいかな」
「大魔王ですね。かなり強そうな魔物のようですが、皆と協力して倒してみたいと思います」
「無理しないでくださいね。いずれ皆さんが強くなってからでいいので」
大魔王だもんな。今すぐには倒せないような気がする。いずれ、きっと!
そして人魚は海に戻っていった。――マーメイドって本当に綺麗だな。
私は、思いがけず2つのスキルを取得してしまったようだ。
――★☪★――
夕日が落ち、クロに誘われて、天の川が見える夜の浜辺を歩いている。
クロは浴衣姿だ。
昼間に人工呼吸とはいえ、口づけをした仲だし、ちょっと気不味い。
「クロ、ほんとにありがとう」
「ほんとだにゃん。すごいびっくりしたんだから……また死んじゃうんじゃないかって思って」
――え? また?
「あたしね、変身できるようになったんだにゃん。ほら」と言って猫に変身した。
猫の姿のままで
「好きな人とキスすると変身できるんだにゃん」
――って、それってある意味告白だよね。
クロはまた元の姿に戻った。
人以外の種族は、変身ができる。
ただそれには条件があり、好きな相手に対して口づけをすることであった。
「オレもクロのことは好きだよ。でももっと前から好きだったような気がする。 また死んだって、前世からオレのこと知ってるってこと?」
「ふふ~ ないしょ。 もっともっと前かな~ もっと親密な関係になったら、教えてあげるにゃ」
クロは謎めいているよなぁと思いつつ、夜の浜辺ということもあり、人工呼吸ではなく、
――本当の『キス』をした――
夏だ。海だ。涙の海水浴だぁ~~
苦節耐える事6年、やっと乙女の胸が膨らみ始める頃、海水浴に来ることができたぁー!
海水浴といっても、これも修行(けっして遊びではない!)の一環である。
この海水浴場の海岸線を歩いていくと洞窟がある。そこが魔窟だ。
でも、折角だし楽しまないとね。
今回は、中級レベルの生徒(クロ、蓮月、碧衣、紅々李、日葵、瑠璃、その他男子数名)と、引率として梅村先生と美夜が来ている。夏休みになり、例のごとく合宿するのだが、今年はいつもの幽霊屋敷ではなく、海での修行である。
去年から私も中級レベルになったので、海の合宿に参加したかったのだが、幽霊屋敷の手続きを済ませるため、泣く泣く幽霊屋敷の修行に臨時講師(一応中級レベルなので、剣術では先生である)として行ってきた。
毎年、地縛霊の面接をするのは面倒なので、浄化(お祓いのできる先生)と面接は寺子屋に委託することにしたのだ。
合宿先の温泉宿までは、江戸から九十九里浜まで馬車で移動した。九十九里は、見晴らし良く日本一海岸線が長い。波に乗っているサーファーも多い。
実は海には始めて来た。当然、妹もである。
格好よく泳いでみせたかったが、泳げない……いわゆる金槌というやつか。
そういうこともあり、海に入っても腰くらいまでである。女子たちとビーチボールをしたり、砂山を作って遊んだ。女子たちとビーチボールをするとどうしても胸に目がいってしまうが、梅村先生を除き、揺れるようなものはない。
女子は梅村先生を恨めしそうに見ていたが、「そのうち私だって」……と握りこぶしを作っていた。男子たちとも、ついでに海で水を掛け合って遊ぶ。
泳ぎがうまいものがいて、海の中から足を引っ張られて、少し溺れそうになった。――ああいう危険な遊びは止めてほしいものである――頭は濡れるし、格好悪いじゃないか(泣)……ま、いいけどね。楽しいし(笑)
妹とは、両手をとって泳ぎの練習である。まずは、バタ足から……自分は泳げなくていいのか?
そんなこんなで一通り遊んだあと、さぁ修行である。
(2) 洞窟(ダンジョン)
夏休みの合宿、1日目は海水浴を楽しんだが、2日目は魔窟の探索だ。
この魔窟も中級レベルの修行を行うこともあり、そんなに攻略レベルは高くない。とはいえ、レベルの低い弱い魔物は出る。深部に行くと、少し強い魔物も出るそうだ。
今回は、5人グループで探索する。引率は美夜だ。
前衛は私とクロ、中衛は美夜、後衛は蓮月と瑠璃という構成にした。ただし、美夜は引率のため、極力手は出さず、様子を見るとのこと。
海水浴場から海岸線に沿って北上していき、岩礁を上り下りした先にその洞窟はあった。まだ昼間なのに、冷っとした感じがする。洞窟の入口から中に入る。
少し暗くなってきたところで、「バタバタバタッ」と音がする。
みんな身構え、各々真剣を持つ。寺子屋の稽古場とは違い、それぞれ親にもらった真剣を身につけている。
黒いコウモリが出てきた。――驚いたぁ
「みんな最初からそんなに緊張してると、長続きしないよ」
美夜は笑みを浮かべ余裕の表情だ。
「私は周りを注意してみるけど、前衛は前方だけ、後衛は後ろだけ注意してね」
しばらく奥に進むと、水晶が薄暗く点っている。魔窟兼訓練場だから多少明かりを入れているのだろう。
クロは生まれながら、種族の特性もあって夜目が利く。今日は黒い忍者姿をしている。
蓮月は音に敏感だ。これも種族特性だ。スキルとは少し違う。
蓮月が奥で岩が崩れる音に気づく。皆、刀を鞘から抜き、身構えながら更に奥に進む。
魔物が現れた! スライムだ……なんか、かわいい。
スライムは、身を揺らしながら襲ってくる。こんなかわいい魔物を傷つけていいのか迷うが、余計な雑念は振り払い、戦うことにする。
剣で切りつけたが、二つに別れたあと、また一つになる。クロも短剣でみじん切りにしたが、また元に戻った。
――意外と強いぞ。
美夜は後ろで微笑んでいる。
美夜がスライムに刀を向けて教えてくれる。
「魔物にはそれぞれ急所があるの。目であったり、首筋であったり、足首だったりね。スライムは透明になってるから分かり易いけど、スライムの中にある少し濃い玉が見えるかしら。それが急所よ」
教えてもらったとおりに、急所を狙ってみた。
スライムは、蒸発して魔核を残して消えていった。その破片を回収し袋に入れておく。スライムは植物性の魔物で傷薬の材料になる。
さらに奥に行くと、大小様々なスライムが数匹出てきた。美夜を除く4人で戦う。
互いに連携をとりつつ、的確に急所を狙っていく。
急所が分かってしまえば、スライムは楽に倒せた。
――◇●◇――
洞窟に入って2時間、約30匹程のスライムを退治したところで、今日は引き上げる。帰ってくるのに2時間、途中にもスライムが出現し、出口に戻るまでに約50匹程仕留めた。――かなり薬の材料も貯まったぞ。
スライムは、粘液質で切るたびに体液が飛ぶから身体がベトベトだ。
「早く帰って、温泉に入ろう。」
潮風に吹かれながら海岸線を歩き、温泉宿に戻った。
「フー疲れた~~」蓮月、瑠璃らもくたくただ。
確かに疲れた。他の組も無事みたいだ。
洞窟は3箇所あり、それぞれ別の入口に入って探索する。奥で繋がっているところもあるが、かなり奥に入らないと合流しない。それぞれ、魔物の種類が違うそうだ。
早速、温泉の洗い場でベトベトの粘液を洗い流した。
この粘液も何かに使えそうだ。どんな成分が入っているか調べてみよう。
温泉に入り、まったりする。
「温泉って気持ちいいな……ここは海が近いから、塩泉だな。若干硫黄も入ってるな」なんて、温泉の泉質を分析しながら入っていた。
例の如く、男子が入ってきて騒がしくなる。まぁ合宿だからしょうがない。
今日の魔物について情報交換しながら、温泉に入った。明日の修行はない。
ここの修行は1日おきに行われる。明日は自由時間。また海水浴だ。
(3) マーメイド
今日は天気はいいが、海が少し荒れている。
サーフィン日和だな――できないけど。
今日も海水浴だ。
女子は、お肌が焼けないようにしっかりお手入れしているが、クロは気にせずそのままだ。今日もまた、それぞれビーチバレー、水泳、砂山遊びに興じている。
私はビーチパラソルを開き、砂の上に寝ていた。
日差しはキツイが、海の風が心地よい。しばらく寝ていたら、妹に起こされ水泳の練習に付き合わされた。
うまいものだ。もうすでにクロールができるようになっている。本当に何をやらせても上達が早いな。私は、まだ足が立つところで、不格好な平泳ぎのようなものしかできない。
――○●○――
妹が「少し泳いでくる」といって、少し沖の方に行ってしまった。
置いてけぼりだ。見てると、すごい勢いで離れていく。
……ずいぶん、上達したな……って思っていたら、少し様子が変だ。
潮に流されてるんじゃないか?
「瑠璃!!」 念波で大きな声で叫ぶ。
瑠璃は振り返り、沖に流されたことに気がついたようだ。
慌てて、こちらに戻ろうとするが、潮の流れが強く戻ってこれないらしい。
「おにいちゃん!!」って念波で叫んでいる。
瑠璃はそのまま姿が見えなくなった。慌てて、瑠璃を追いかける。
★瑠璃視点
「瑠璃!!」 お兄ちゃんの声が頭に聞こえる。
振り返ると、お兄ちゃんが遠くに見える。――こんなに遠くまで泳いできたんだ。
『戻らないと』……えっ全然前に進まない!……足が疲れてきた。
「――アゥ――」 大きな波が来る
「おにいちゃん!」あっしまった。お兄ちゃんを呼んでしまった。
まだ、泳げないのに……「お兄ちゃん来ちゃダメ」
波間から太陽の光芒が振りそそいでいる。……このまま海に沈んじゃうのかな?
海ってきれいだな……息がもうできない。
――あっお兄ちゃんだ。『来ちゃダメ――』
……意識が遠のいていく…… …… ……
――◆□◇――
その時、瑠璃の身体が瑠璃色の光に包まれるように、輝いた。
『水の精霊』が瑠璃の周りに集まってくる。
すると人魚が近づいてきて、瑠璃とショウを掴み、海面から飛び上がった。
バッシャーン!!
海面を叩きつけるような音の後、マーメイドは砂浜まで2人を運んでいった。
2人は意識を失っていた。
真っ先に異変に気がついた、美夜とクロ、日葵が集まってきた。その後、梅村先生や紅々李、蓮月、碧衣たちも遠くから次々集まってくる。
陸に上がったマーメイドはとても息切れしている。
クロがショウに、美夜が瑠璃に人工呼吸を始めた。
心臓の位置にある胸の中央を30回押す、次に2回息を吹き込む。その繰り返しだ。5回くらい繰り返したところで、ショウは海水を吹き出した。
「……ゴホッ。ハーハーハァー ――」
むせたあと、深呼吸する。(頭の中に黒い炎が燃え上がった)
妹は! 大丈夫なのか?
隣を見ると、妹が人工呼吸されている。
「瑠璃!! まだ死んじゃダメだ!」……オレは妹に叫び、揺り動かす。
間もなく、妹も激しく咳き込んで、意識を取り戻した。
――良かったぁ――周りを見渡すと集まってきた仲間が、心配そうに青い顔をして覗き込んでいた。
「みんなごめん。というより本当にありがとう。助かった。妹も助けてもらって本当にありがとう」私は涙ぐみながらお礼を言った。
「おにいちゃん!!」
正気に戻った妹が、オレを抱きしめキスをしてきた。……ちょっとびっくりしたが、6歳だし気が動転しているんだろう。あまり気にしないことにしよう。
周りはかなり驚いていたようだが――アレッ 瑠璃色の炎が瞬いている。
妹は泣きながら、
「怖かったぁ。お兄ちゃんが助けてくれたの?」と聞いてきた。
「助けには行ったけど、オレも溺れてしまって、その後のことは覚えてないんだ」
「あのマーメイドが助けてくれたんだよ」と美夜が教えてくれる。
私はふらつきながら人魚のところに行き、
「本当にありがとうございます。助かりました。なんてお礼を言っていいか……」
「あ、はい。驚きました。海を泳いでいたら、遠くから二人を見かけたんです。そしたら、あちらの方が光って、――あれはそう、水の精霊の加護ですね。精霊が呼んでるのが聞こえて、2人を掴んで、後は無我夢中で……助かってよかったです」
マーメイドは尾ひれをパタパタさせ、安堵した表情だ。
「そうですか。助かりました。このお礼はいずれなにかの時にお返ししないと。 ――もし、困ったことがあったら、私を頼ってください。オレは「立花 翔」っていいます」
今の私に何かできるわけではないが、こう言わずにはおれなかった。
「ん? あなたも少し水の精霊の加護があるような? でも少し違うかな。いずれまた会うこともあるような気がします。…あちらの方は妹さんですか? これからもよろしくお願いしますね」
マーメイドは私にウインクしてきた。
「はい! こちらこそよろしくお願いします」
初めて見るとても美しいマーメイドにカチコチになってお礼をした。
「もしできればなんですけど……私たちあんまり洞窟には入らないんですね。洞窟の中に悪さをするタイ魔王いるんです。いつも私たちが愛し合ってると、邪魔をしにくるんです。タイ魔王を退治してくれるとうれしいかな」
「大魔王ですね。かなり強そうな魔物のようですが、皆と協力して倒してみたいと思います」
「無理しないでくださいね。いずれ皆さんが強くなってからでいいので」
大魔王だもんな。今すぐには倒せないような気がする。いずれ、きっと!
そして人魚は海に戻っていった。――マーメイドって本当に綺麗だな。
私は、思いがけず2つのスキルを取得してしまったようだ。
――★☪★――
夕日が落ち、クロに誘われて、天の川が見える夜の浜辺を歩いている。
クロは浴衣姿だ。
昼間に人工呼吸とはいえ、口づけをした仲だし、ちょっと気不味い。
「クロ、ほんとにありがとう」
「ほんとだにゃん。すごいびっくりしたんだから……また死んじゃうんじゃないかって思って」
――え? また?
「あたしね、変身できるようになったんだにゃん。ほら」と言って猫に変身した。
猫の姿のままで
「好きな人とキスすると変身できるんだにゃん」
――って、それってある意味告白だよね。
クロはまた元の姿に戻った。
人以外の種族は、変身ができる。
ただそれには条件があり、好きな相手に対して口づけをすることであった。
「オレもクロのことは好きだよ。でももっと前から好きだったような気がする。 また死んだって、前世からオレのこと知ってるってこと?」
「ふふ~ ないしょ。 もっともっと前かな~ もっと親密な関係になったら、教えてあげるにゃ」
クロは謎めいているよなぁと思いつつ、夜の浜辺ということもあり、人工呼吸ではなく、
――本当の『キス』をした――
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる