スキルマスター

とわ

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第一章 ムーン・ブル編

第11話 道

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(なんだ? 何かを唱えてる?)

 混乱な俺は、思わず女神を不思議に見つめて疑問に思考していた。詠唱する様子の女神は、全身が神々しく輝き始める。輝きは、右手へと集中する。顔を上げる女神は、俺の胸元を見つめて歩み寄る。右腕を伸ばし、輝く右手を俺の胸元にかざす。輝きは、空中を渡るようにして俺の全身を覆い始める。

「んん? おい、なんか…、体中が…、もぞもぞして………、くすぐった痒いぞ。ははっ」

 不思議な俺は、思わず頬を緩めて全身をくねらせながら掻きつつ話していた。くすぐりと痒みは徐々に収まる。

「ふう~。なんだったんだ…って、んん? 今度は…、体が軽くなっていく?」

 安堵な俺は、思わず一息ついたあとに全身の薄れていく輝きを見つめながら浮遊感を覚えて疑問に呟いていた。輝きは、体内へ徐々に吸収されるかのようにして消滅する。

「こっ、これで若返えったのか?」

 困惑な俺は、視線を女神に移して疑問に尋ねた。両手を背後に回している女神は、非常に楽し気な表情で俺を見つめている。

「あれ? 女神、背が伸びたか?」

 不思議な俺は、首を傾けて疑問に尋ねた。非常に楽し気な様子の女神は、体を前後に揺らし始めて俺のスーツを何やら気にするように見つめる。困惑な俺は、視線をスーツに移す。スーツは手足の裾がやや長く、全体的に少しダボついて見える。そして、

「あっ、そうか! 俺の背が縮んだのか!」

 うっかりした。

「そうかそうか、15の時の身長に戻ったのか…」

 再び不思議な俺は、思わず両腕を左右に伸ばしてジャケットを確認しながら呟いていた。視線を足元に移す。革靴がパンツに隠れている。

「はは…、これは…、慣れるのに時間が掛かりそうだな…」

 漠然な俺は、思わず苦笑しながらパンツの裾を両手で上げて両足を確認しつつ理解したと呟いていた。手足の裾を折り曲げて調節する。

「一番困ってたのは、ヘルニアだが…」

 興奮な俺は、思わず右の腰を見つめて呟いていた。女神から距離を取り、リラックスしてヘルニアだからと言って体を動かさないともっと酷い状態になると続けているラジオ体操のような動きを開始する。

「どう? 気に入ってもらえたかしら?」

「ああ。これはいいな。力強い。老化は、関節周りの筋肉の衰えが大きいと思うからな」

「ぷっ。おかしな人ね」

「そうか?」

 笑顔を見せる女神は、首を右側に傾けて疑問に尋ねた。隆盛な俺は、肩をゆっくり回しながら肩甲骨を大きく動かしつつ話した。噴き出すと同時に顔を逸らす女神は口元を両手で隠して話し、高揚な俺は引き続き肩甲骨を大きく動かしながら疑問に返事を戻した。顔を戻す女神は、笑顔を見せる。

(ああ~、気持ちいいな~。あとは、成るように成るだな~。知らない土地での冒険か~。なんか、ワクワクしてきたな~)

「ちょっと~。異変を調べることが大事なんだから~」

(おっと、心を読まれたか。釘を刺されたな…)

 柔軟な俺は、病み付きに肩甲骨を回す中で快感を覚えながら自然と胸を高鳴らせつつ転勤で見知らぬ土地に軽薄に向かうかのように思考していた。糸目を見せる女神は、口煩い親戚のおばちゃんのように話した。軽薄な俺は、瞬間にドキッとして肩甲骨の動きを中止するが反射的に顔を左側に背けて素知らぬ振りで幼少期から慣れていると思考した。

「こっちが落ち着いたら一度連絡するから、それまで、あんまり無茶はしないでよね!」

「大丈夫だ、安心しろ。無茶はしないよ」

 不機嫌な様子の女神は、前のめりで苦言を呈すように強く話した。余裕な俺は、顔を戻して体調がすこぶる良いために屈託のない笑顔を見せて返事を戻すことができた。

「そっ、そう。ふん! それなら、いいけど…」

 言葉を詰まらせる女神は、頬を赤く染めながらゆっくり体を戻し、顔を右側に俺の態度が不服かのようにぷいっと背けて弱々しく返事を戻した。顔の向きを固定し、何かを見つめて表情を素に戻す。

「どうかしたのか?」

「あとは…、あれを抜ければ、私の世界に行けるわ」

 不可解な俺は、疑問に尋ねた。冷静な様子の女神は、左腕を伸ばして人差で道を示すようにして話した。不意な俺は、顔を道に向ける。道は、狭間の世界に辿り着く切っ掛けとなった若干の装飾が施されている白色の扉がポツリと存在していた。


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