宇宙-sora-のミミィ

真観屋桃生

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【空の異変】

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 可見山城跡の崩れかけた石垣の上に寝転がり、瀬川涼真はぼんやり夜空を眺めていた。
 
(どうでもいいや・・・・)

 深夜22時。
 連なる里山の上空を彩る星々。
 夜の地上に都会のようなきらびやかな光はなく、黒く暗い夜空に好き放題に輝く多数のそれらも今の涼真の心には何ももたらさない。

 10月終わりの晩秋。
 冷えた空気と誰もいない静寂が妙に心地よい。
 観光名所でもなく寂れた雰囲気が漂うこの城跡は子供の頃から涼真にとって不思議と気持ちが落ち着く場所だった。
 特に今夜のように虚無感が胸ににじむ時はひとりでいたい──それには最適な環境だった。
  
(母さん、思いっきり過ぎるだろ・・・・)

 今朝、目が覚めたら母親が消えていた。
 早朝パートに出掛けたわけではないことはすぐにわかった。
 前夜の夜更かしの弊害で完全に遅刻コースの寝坊に慌てて制服を着た時、胸ポケットに感じた違和感。

(?)

 何だ? と探ると出てきた無地のポチ袋。
 自分で入れた記憶のないそれを首をかしげながら涼真は開けてみた。

 中にはメモと一万円札が数枚。
 
『お父さんのことよろしくね!』

「はあ?」

 あっさりとしたその一文に呆気に取られた涼真の口から気の抜けたような声が漏れた。
 と同時に紛れもない事実を悟る。

 母親はもう帰って来ない──最後のビックリマークがそれを物語っていた。

(いくらなんでも簡単すぎる・・・・)

 ひとりごちる言葉が脳裏をよぎる。

 母親の恋愛などは正直どうでも良かったけれど、まさか家族をバッサリ捨ててまで突っ走るとは涼真は思っていなかった。
 二十歳で親になったせいなのかどうか、もともと子煩悩なタイプの母親ではなく、育児放棄とまではいかないが幼少期からスキンシップも少なくベタベタに可愛がられた記憶はなかったものの、一貫してそういう距離感だったために一人息子の涼真的には"母親とはそんなもの"と、どこか達観していた。

 満天の星空に目をやりながら、18歳にしては妙に感情の起伏がないなあ、と、自分について客観的にそんな風に思ったりしていた。
 その時──

(ん?)

 視線がふと、空のある一点に留まる。
 寝転がり見上げている星々、その視界の端にスーッと一筋の光が走るのが見えた。

「流れ星か・・・・って、え!?」

 それの異様さを感じた涼真は身を起こし、じっと凝視をした。

 違う、流れ星じゃない。
 何故なら光の線が動いていない。
 流れて消えるはずのものが消えていない。
 だったらあの線は──何だ?
 まさかUFO!?

「んなわけ・・・・」

 そっち系に興味のない涼真は疑問と不気味さを感じながらもそれから目を逸らせずにいた。
 夜空に唐突に現れたその光の線は周囲の星々とのは全く異なる明るさを放ち、明らかに不自然で意味不明だ。
 
「は?」

 すると突然、光の線の幅が広がったように見え、涼真は身を固くした。
 いや、そう見えたのではなく実際に広がってきている。
 両目ともに視力は1.5近くはある。
 目の錯覚や見間違いということは絶対にない。
 痛い例えだがカッターで切った傷口が徐々に開いてくるような感じだ。
 しかも発光が強くなってきている。
 理解不能。

 やばい ──不意に涼真の脳裏で危険信号が点滅した。
 理屈を超えた危機感。
 即座に逃走体勢に入る・・・・はずだった。
 が──

(なっ、えっ)

 動けない。
 立ったままの硬直。金縛り。
 訳のわからない状況に焦る涼真。
 空を見上げたままの姿勢のその目に映る光の亀裂。
 経験したことも見たこともない得体の知れなさに次第に動悸が高まってゆく。 

 すると、さらに驚くべき変化が生じた。

 一瞬、亀裂の"向こう側"が──見えた。

 漏れるような光の中、何かが動いた。

(えっ、目!?)

 驚愕の極み。
 瞬時、息が止まる。
 すると次の瞬間──

「うわあっ!」

 何かに弾かれ、叫んだ涼真の身体が後方に飛んだ。
 どうっ、と倒れ込み衝撃に呻く。

「う、うう・・・・」

 歪む表情。
 そして意識が遠のいた。


***


『△◎○□●▽??』

(・・・・)

『▼○◼️・・・・◎□??』

(・・・・・・・・ん・・・・)

『●△▲□◎──」

「んがっ、はっ、はっ・・・・ひあっ!???」

 無呼吸症候群の苦しさからいきなり目覚めたような苦痛さで荒い呼吸の涼真が頭をもたげた瞬間、上から顔を覗き込む目と視線が合い驚きで思わず妙な声が出た。

「なっ・・・・えっ!?」

 闇を淡く照らすような光をまとった超絶美女がそこにいた。



 
 
 



 
 
    
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