異世界魔道物語 ~転生したら魔法弱者~

神崎

文字の大きさ
25 / 38

【第25話】ピンク色の悪魔

しおりを挟む
マウラの街、西側入り口。そこに、見慣れない格好をした、三人の冒険者がやってきた。

「ここが、マウラの街か」

そういうのは、大剣を背負う茶髪の優男だった。

「モンスターさえ倒せれば俺は、どこでもいい」

腰にレイピアを差した紺色の髪の男が無表情でそう答える。

「あら、いいところじゃないの、私は好きよ」

杖を持ち、紫色の髪色をした巨乳の女が2人に笑いかける。


彼らは、西国のウェートスからやってきた冒険者である。中央国ルイーダを通り、ここまで来ている。このマウラの街を東に抜けた先にある、王都ミネドラが目的地だ。ここの西側にある山脈に興味があり、この街に立ち寄ったのだった。

西国ウェートス→中央国ルイーダ→東国:西側の街マウラ→東国:王都ミネドラ


「俺は、武器屋に行く」

「この街の道場をめぐる」

「私は、街を探検するわ」

門を抜けた3人は、まず宿屋を取り、荷物を置いてから、それぞれ、自分の行きたい場所に向かった。



その頃、ヒューは気道道場で修行を行っていた。道場の窮地を救ったことで、無料で道場を使わせてもらっている。そして、道場を壊したり、傷つけなければ、基本的に何をしても良いことになっている。

気道の道場なので、魔法に詳しい人物は、滅多に来ることが無い。なので、色々な実験に使わせてもらっていた。ここに住み着いているゲビルドについては、試合でバレているので隠す必要はない。

今は、オーラガンの練習中である。練習の成果もあり、手で銃の形を造らずとも、撃てるようになった。

後はどれほど、撃つまでの時間を短縮できるかだな。

オーラボールとオーラガンを交互に撃ち、それぞれの時間を短縮していく。交互に撃つ理由は、瞬時に攻撃するためのパターンを増やすためだ。

「ほう? 変わったことをしているな」

声のする方向に顔を向けると、道場の入口に紺色の髪の男が立っていた。

「入門者か?」

「いや、道場破りと、いったところかな」

「そうなのか」

「手合わせ願おう」

「待て、俺はこの道場の責任者じゃない」

「誰だろうと構わない、参る!!」


男は低い体勢で、胸元に突っ込んできた。それに対して右手で掴みにかかる。しかし、半歩だけ外側に移動し、回避されてしまった。

そのまま、右手で手刀を作り横腹を狙ってくる男。回避は間に合わないのでオーラアーマーを使用する。

(ん? 魔法を纏ったか)

何かを纏った事に気づいた男は、直前で右手を勢いよく引っ込めて、その遠心力を使い、左足で強烈な足払いをかけてくる。

体勢を崩されたヒューだが、相手を掴んでから腕にオーラを集中して、後方に投げる。そのまま壁まで飛ばされる男だが、空中で体をひねり、壁に足から着地する。

男は、そのまま壁を蹴り、その勢いのまま、手刀を前に突き出し突っ込んでくる。ヒューはそれを手をクロスにして受け止めた。

「待てと言ってるだろ、ルールも決めずに何してるんだ」

「ルール? どちらかが倒れるまでだろう!!」

おいおい、どこの戦闘民族だよ。

内心そんなことを考えたヒューだが、考えを変えることにした。

相手さんが、そう言ってるんだ、実戦でしっかり動けるか試すか。

その瞬間、ヒューの動きが変わった。速度は2倍になり、男はそれを捌き切れなくなってきていた。

(速度が上がった? 気でこんなことまで出来るのか? これは、こちらも本気で行かなければな)

急にヒューの速度が変わったことに疑問を抱く男だが、ここから男の速度も急激に加速する。

なに? こいつ、風魔法の使い手か。

男は風魔法を自身に使用し、行動速度を上げていた。風魔法は自分に使用することで、移動速度強化、攻撃速度強化の効果がある。しかし、いくら魔法の補助があるからと言って、ここまでの速さで動ける人間はそういない。

互いに、素早い攻撃が続く。男が手刀で首を狙えば、ヒューはそれをはたき落とし。ヒューが顔を狙えば、男はそれを受け流す。しかし、ついに男の攻撃が首に直撃する。

(もらった!!)

勝利を確信した男。しかし。

「わざとだよ」

首にあらかじめ大量のオーラを集中させておき、攻撃を当てさせることで隙を作った。そのオーラを拳に纏わせて男の腹を殴る。盛大に吹っ飛ぶ男、そして壁に激突し停止した。

終わったか?

しかし、経験上ここで油断するとろくなことがないので、しっかりと身構える。

「ふぅ、痛いな」

男がゆっくりと起き上がる。その振動で壁が崩壊した。

((こいつ、おもしろい))

互いにそう思って、顔がほころぶ。そして、戦闘を再開しようとした2人だが。

「こら!! 貴様ら!! 道場を滅茶苦茶にしやがって」

怒りながら現れたのは、気道道場の師範、ゼブラである。

「何だ? この髭だるまは」

「誰が髭だるまだ!! 礼儀がなってない!!」

そう言って、男に一瞬で近づき正拳突きを放った。

「うぐぅ」

そのまま、腹を押さえ崩れ去る男。

「さすがだな、髭だるま」

「お前もだ、道場を滅茶苦茶にしやがって!! あと、マチはやらん!!」

ヒューにも一瞬で近づき、正拳突きを放った。

「うぐぅ」

男と同じように崩れ去るヒュー。

すると、ゼブラが何かの気配に気づき、道場の入口に目を向ける。
そこには、中の様子を確認するガノンが居た。そして、苦しむヒューの姿を見て訝しげな顔をする。

「どうしたヒュー、この髭だるまにやられたのか?」

そう言ってゼブラを睨みつける。頻繁に道場に来ているガノンだが、奇跡的にタイミングが合わず、今までゼブラとは会ったことが無かった。

「何だこの、化け物みたいな男は」

ゼブラもガノンを睨みつけるが、ここで何かに思い当たる。

「はっ! 貴様!! さてはマチを狙う悪党だな」

親馬鹿ここに極まれりだ。だが、ガノンの見た目は普通に怖い。ゼブラも同類だが。無言で睨み合う2人、そして同時に動き出す。

お互いに右手を突き出し、相手を殴る。その右手と右手がぶつかり合って、衝撃波が起こった。次に、左手も同様にぶつけ合う。

何回か拳をぶつけ合った後、ガノンがタックルをかました。それをモロに喰らうゼブラ。吹っ飛んだゼブラが壁に激突し、2メートル四方の壁が粉々に吹き飛ぶ。しかし、直ぐに起き上がり体勢を立て直して、同様にタックルをやり返す。ガノンも吹っ飛んで壁に激突し、壁が崩れ落ちる。その後も、殴っては吹っ飛び。蹴っては飛びを繰り返し、道場内は滅茶苦茶になった。いや、もはや外と変わらない。

ヒューと男の2人は、その戦いを固唾を飲んで見守っていた。

((こいつら、本当に人間か?))

考えがシンクロする2人。互いに目を見合わせて、握手を交わす。ここに友情が生まれた。

「こらあああ!! 何してるんだ!!」

そこに、買い物から帰ったマチがやって来た。その姿を見た瞬間、ゼブラが冷や汗を流し始め、戦闘が中断される。

「マチを狙う悪党をだな、その、あれだ」

マチの顔をチラチラ見ながら、ゼブラが言い訳をする。そんな言い訳は、意に介さず、周囲を確認するマチ、道場の破壊具合に青筋を立てる。そして体勢を低くし。

「いい年して、何やってるんだあああ!! このクソオヤジ!! お金もないんだぞ!!」

そう言って、父親にアッパーを喰らわすマチ。綺麗に決まった。美しい放物線を描いて吹っ飛んでいった。

「……小さい悪魔」

それを見ていたガノンが、小さな声で呟いた。

「誰が小さいロリっ子だああ!!」
こちらにも、綺麗にアッパーを決める。

「技のキレが良いな」

マチの技の切れを見て男が素直に称賛する。

「馬鹿野郎!! 今話したら、化け物がこっちに来るだろうが!!」

ヒューが焦りながら男の口をふさぐ。しかし、時すでに遅し。こちらに狙いを定めた小さき悪魔は、一瞬で2人に近づく。そして、自分の寿命を悟ってしまった男は、ヒューの顔を、寂しげに見た後、呟いた。

「先に逝って待ってる」

「お前は誰だああああ!!」
安らかな顔で散っていく男。

「名前は知らないけど、紺色の髪の男ぉぉぉぉ!!」

「そんで、誰が化け物じゃあああああ!!」

道場の中は先ほどの喧騒が嘘かのように静まり返る。荒廃した道場には、2人の男と、2体の化け物が静かに横たわり。その傍らには、桃色の小さな悪魔が佇んでいた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

処理中です...