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24話 怒り
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「なんや、腹から破り出てくる虫みたいやね」
「会話出来るからって容赦なくあれこれ言っていいわけじゃねぇぞ、てめぇ」
這い出てくる様子を冷静に見ながら思った事を口にし、その言葉と今までの行動に怒り心頭に発したしょうが、その状態のまま縛っていた縄と護符を引きちぎり、自由になった手で体についているものを次々と剥がしていく。
その姿を見た木の人形を持ってきた男達は、腰を抜かして床にへたり込んでいた。
「俺はお前の式神になる気はない」
全てを剥がし終わったしょうは、周りを見渡し、宿主である桃の居場所を気配で探った。空腹と先程まで自分についていた護符で弱まっているせいか、寺院の中で上手く探ることが出来ず、しょうの眉間に皺が寄っていく。
「そうやろうね」
「何がしたいんだ」
先程と違う事を言う聖護を訝しげに見た後、障子をすり抜けた。その時何か喋っていたが、とくに気にせず桃の場所へと向かう。
探していく中で、聖護への憎悪が少しずつ膨らんでいた。無理矢理自分を桃から外し、挙句に式神にしようとしていたこと。好き勝手言われたこと。
そして、今まで感じたことのない感情がしょうの内側で芽生えていた。
「そこでとまれ!」
「退け」
普段であれば意識しなければ動かすことが出来ない物を、しょうは今、無意識に動かしていた。彼の周りに浮かんでいるものは、障子や石だ。それらの動きは、彼の心の内側の怒りを表すかのように乱雑に動いていた。警戒していた者たちが刀を抜こうと手に掛けると、石が彼らの顔目掛けて勢いよく飛んでいく。それに驚いてた相手が腰を抜かしたり避けたりしている間に、しょうはその間をすり抜け、桃を探し続けた。
探しても探しても桃が見つからず、少しずつしょうの怒りは膨れ上がっていた。それに呼応するかのように、彼の移動した先々の物や場所には亀裂が走り、壊れかけていた。
「それ以上は止めて」
誰も止めることが出来ないと思った誰かが環を呼び、止めようとしているものの、しょうの耳には届かず、彼女の隣を通り過ぎていく。
「そのまま桃ちゃんの中に入ったら彼女が苦しむよ」
悲痛な訴えに足を止めたが、振り返らずにその場に留まった。
「何か食わせろ」
「え」
「止めてほしいんだったら何かを食わせろ」
振り返ったしょうの目を見た環は、自身の体に戦慄が走ったのを感じていた。目の前の存在が今にも自分の喉を噛みちぎり、その口周りを血で汚してしまうのではと錯覚してしまうほどにその目には狂気が含まれていた。
「こっちはずっと我慢してんだ。こんな場所でお前らに監視され続け、何も食えず、少しずつ存在が薄くなり始めているのを感じながらな」
しょうの怒りは収まるどころか、先程よりも膨れ上がっていた。これを止めることが出来るのは彼自身が落ち着くしか方法はない。それは環も理解していた。無理矢理抑え込もうとすれば、更に肥大化していく、と。
「これからは俺が許可するまで何も関わるな」
「それは……」
「いいな」
有無など言わせないと言わんばかりに睨みつけ、桃がいるであろう場所へ向かっていく。物を壊していきながら少女の元へ向かう途中、しょうの道を遮ろうと刀を抜いていた者達の小刀を抜き、その喉を掻き切ろうとしていた。
しょうを止めようにも、小刀の対処でその場から動くことが出来ず、その横を通り過ぎていく。
「やっとみつけた」
いったいどれほどの時間探していたのか。やっと安心できると障子を壊し、庭に投げ捨て、驚いている桃の元へ向かおうとした足が止まった。少女の顔に驚きと恐怖と混乱が滲み出ていたからだ。しょうの脳内にも何故という言葉で埋め尽くされている。何故怖がる? そんなの今更だろう、と。
「しょう、なの?」
「なにを当たり前なことを。中に入れてくれ」
彼が一歩近づくたびに少女は後ろに下がっていく。
「何故下がる」
「声は一緒だけど、前までしていた仮面の模様が変わってるし、髪型の色も違うし……」
そこまで言われ、桃に疑わられていたことを理解したしょうは、自分を映せる何かを探した。
周りを見渡した彼は、庭に池があるのを見つけ、そこに向かい、見ようとしたが霊体である自分の姿は写らない。そのことに落ち着き始めていた苛立ちがぶり返してくる。
桃も、ここまで苛立っているしょうを見るのは初めてなのか、何も出来ずにいた。
「出かけてくる」
ずっと桃の方を見ていたしょうが何かを見つけたかのように、いきなり外を見た。そして、桃から見えないようにほくそ笑んでいる。何やら外で騒がしくなっているようだった。それもあってか、中も慌しい雰囲気が漂い始めている。
「わ、私も行く」
「ここにいろ」
「で、でも」
不安で仕方ないのだろう。しょうに会ってから桃は一人でいることはほとんど無かった。それが、ここに来てからずっと一人なのである。霊体であるしょうに触れられないが、それでも服を掴んでこの場に留ませようとしていた。
「分かった分かった。ただし、ここにいろ」
「しょうは?」
「俺もここにいる」
そう言ってから不安そうに瞳を揺らしていた顔から安堵した顔へと変わった。一人で待つのと誰かがいる状態で待つのは安心感が違う。それは桃であろうと変わらない。
「会話出来るからって容赦なくあれこれ言っていいわけじゃねぇぞ、てめぇ」
這い出てくる様子を冷静に見ながら思った事を口にし、その言葉と今までの行動に怒り心頭に発したしょうが、その状態のまま縛っていた縄と護符を引きちぎり、自由になった手で体についているものを次々と剥がしていく。
その姿を見た木の人形を持ってきた男達は、腰を抜かして床にへたり込んでいた。
「俺はお前の式神になる気はない」
全てを剥がし終わったしょうは、周りを見渡し、宿主である桃の居場所を気配で探った。空腹と先程まで自分についていた護符で弱まっているせいか、寺院の中で上手く探ることが出来ず、しょうの眉間に皺が寄っていく。
「そうやろうね」
「何がしたいんだ」
先程と違う事を言う聖護を訝しげに見た後、障子をすり抜けた。その時何か喋っていたが、とくに気にせず桃の場所へと向かう。
探していく中で、聖護への憎悪が少しずつ膨らんでいた。無理矢理自分を桃から外し、挙句に式神にしようとしていたこと。好き勝手言われたこと。
そして、今まで感じたことのない感情がしょうの内側で芽生えていた。
「そこでとまれ!」
「退け」
普段であれば意識しなければ動かすことが出来ない物を、しょうは今、無意識に動かしていた。彼の周りに浮かんでいるものは、障子や石だ。それらの動きは、彼の心の内側の怒りを表すかのように乱雑に動いていた。警戒していた者たちが刀を抜こうと手に掛けると、石が彼らの顔目掛けて勢いよく飛んでいく。それに驚いてた相手が腰を抜かしたり避けたりしている間に、しょうはその間をすり抜け、桃を探し続けた。
探しても探しても桃が見つからず、少しずつしょうの怒りは膨れ上がっていた。それに呼応するかのように、彼の移動した先々の物や場所には亀裂が走り、壊れかけていた。
「それ以上は止めて」
誰も止めることが出来ないと思った誰かが環を呼び、止めようとしているものの、しょうの耳には届かず、彼女の隣を通り過ぎていく。
「そのまま桃ちゃんの中に入ったら彼女が苦しむよ」
悲痛な訴えに足を止めたが、振り返らずにその場に留まった。
「何か食わせろ」
「え」
「止めてほしいんだったら何かを食わせろ」
振り返ったしょうの目を見た環は、自身の体に戦慄が走ったのを感じていた。目の前の存在が今にも自分の喉を噛みちぎり、その口周りを血で汚してしまうのではと錯覚してしまうほどにその目には狂気が含まれていた。
「こっちはずっと我慢してんだ。こんな場所でお前らに監視され続け、何も食えず、少しずつ存在が薄くなり始めているのを感じながらな」
しょうの怒りは収まるどころか、先程よりも膨れ上がっていた。これを止めることが出来るのは彼自身が落ち着くしか方法はない。それは環も理解していた。無理矢理抑え込もうとすれば、更に肥大化していく、と。
「これからは俺が許可するまで何も関わるな」
「それは……」
「いいな」
有無など言わせないと言わんばかりに睨みつけ、桃がいるであろう場所へ向かっていく。物を壊していきながら少女の元へ向かう途中、しょうの道を遮ろうと刀を抜いていた者達の小刀を抜き、その喉を掻き切ろうとしていた。
しょうを止めようにも、小刀の対処でその場から動くことが出来ず、その横を通り過ぎていく。
「やっとみつけた」
いったいどれほどの時間探していたのか。やっと安心できると障子を壊し、庭に投げ捨て、驚いている桃の元へ向かおうとした足が止まった。少女の顔に驚きと恐怖と混乱が滲み出ていたからだ。しょうの脳内にも何故という言葉で埋め尽くされている。何故怖がる? そんなの今更だろう、と。
「しょう、なの?」
「なにを当たり前なことを。中に入れてくれ」
彼が一歩近づくたびに少女は後ろに下がっていく。
「何故下がる」
「声は一緒だけど、前までしていた仮面の模様が変わってるし、髪型の色も違うし……」
そこまで言われ、桃に疑わられていたことを理解したしょうは、自分を映せる何かを探した。
周りを見渡した彼は、庭に池があるのを見つけ、そこに向かい、見ようとしたが霊体である自分の姿は写らない。そのことに落ち着き始めていた苛立ちがぶり返してくる。
桃も、ここまで苛立っているしょうを見るのは初めてなのか、何も出来ずにいた。
「出かけてくる」
ずっと桃の方を見ていたしょうが何かを見つけたかのように、いきなり外を見た。そして、桃から見えないようにほくそ笑んでいる。何やら外で騒がしくなっているようだった。それもあってか、中も慌しい雰囲気が漂い始めている。
「わ、私も行く」
「ここにいろ」
「で、でも」
不安で仕方ないのだろう。しょうに会ってから桃は一人でいることはほとんど無かった。それが、ここに来てからずっと一人なのである。霊体であるしょうに触れられないが、それでも服を掴んでこの場に留ませようとしていた。
「分かった分かった。ただし、ここにいろ」
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そう言ってから不安そうに瞳を揺らしていた顔から安堵した顔へと変わった。一人で待つのと誰かがいる状態で待つのは安心感が違う。それは桃であろうと変わらない。
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