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第1章 旅
冒険記録8. 宝物を漁ってはいけません
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「マンゾク、したカ?」
近くまで寄って来て、ゆるく首を縦に振った。首輪が外れたことと、名を付けられたことが相当嬉しかったのだろう。耳を横に向け、目を細めていた。
「ソレはヨカッタ」
新たな旅のお供となったアルヴァーノの行動を見て、満足そうにヨシュアも頷いている。
「これから、貴方はどうするのですか?」
アルヴァ―ノの事で忘れていたヨシュアは、思い出したように馬車に向かい出した時、ジュリーがこれからの事を問いかけた。
「まちにいく」
「どの街へ?」
説明が面倒なのか、彼女にマップを渡し、馬車の中に入っていく。
「マークがしてあるダロ。ソコにいく」
盗賊が持っていた宝物を適当に漁り、気になる物を探しだす。
「コイツはめずらしいナ」
食料や両刃剣がある中、珍しい指輪を見つけたヨシュアは隅々を見渡した。
「サファイアだな」
指輪の中央に石が付いているのはよく見かけるが、金属の部分全てがサファイアで出来ているのを初めて見たヨシュアは珍しそうに眺め、指にはめた。
「こいつはイイ」
気に入ったのか、手首を動かしながらいろんな角度で指輪を眺めている。
「コレは、レイピアか?」
指輪をつけながら他にないかと漁っていると、不思議な剣を見つけた。形はヨシュアが知る刺突剣とそっくりだ。
だが、どこかが違う。どう違うのかと問われると彼には答えられないが、感覚的に何かが違うと感じたヨシュアは、自分の手を傷つけないように剣を持ち、全体を見渡すが特に変わったところはない。
「きにいった。コレならば、アノけんのかわりになるナ」
不思議な剣ではあるが、彼のお眼鏡にはかなったようだ。 自分の右腰に目線を降ろすと、そこには剣を下げるための鞘が二つあった。一つにはカットラスを下げているが、もう一つは何も下げていない。
何故無いのか。
それはこの世界に来る前に、海上の戦いで折れてしまったからだ。 海賊として一人前になった17歳の時に恩人から貰ったレイピアだったのだ。その日から手入れを忘れず、大事に使っていたが、レイピアも道具だ。
いつかは壊れてしまう物。それが壊れた日からちょうど今日で一年経った。この不思議なレイピアは恩人から貰った物とも劣らぬ剣だ。新たな武器としてはちょうどいいだろう。
「サイズもいい」
少なからずどこか不足する部分が出るはずだが、余ることなく鞘にきっちりと収まった。これを何かの偶然。もしくは、神の巡り合わせだと考えることにするヨシュアだった。
更なるお気に入りを探すため、ヨシュアの視界の先に10個ほどある宝箱に近づき、「その中から好きな物を3つや4つ持って行っても、あの女神様は許してくれんだろ」と呟きながら、漁っていた。
「あとは、ほんだけカ。……まだ、りかいできナイもじがあって、コレはよめナイな」
少し破けている所があるが、まったく読めないわけではない本を村から出る時に、リアから貰った袋の中に入れていく。
「たからをいれるふくろも、もっておくカ」
中身が何も入っていない袋に気に入った宝を入れていく。今はまだ宝の量は少ないが、これからもっと増えていくだろう。それを満杯にするのが少し楽しみになったヨシュアだった。
「あの……左手に付けていらっしゃる指輪が赤く光っていますが、大丈夫ですか?」
「そんなワケないダロ。あかくひかるなん、て……」
ヨシュアが先程から1人で呟いているのを聞き、何をしているのかと気になったジュリー達は馬車の中を覗く。
その時にちらりと見えた彼の中指が赤く光り始める指輪から、何かを感じだのだろう。心配そうにヨシュアに問いかけた。馬鹿な事を言うなとジュリーを鼻で笑いながらヨシュアは自分の左手を確認すると、光っていた。それはもう目を瞑ってしまうほどに。
「なっ……!」
今、物を探しているだけのこの状況で光り始めたことに混乱し始め、こうなってしまった原因を探ろうと、考えを巡らしているが、思いあたる節が一つもない。
「ぐぅっ……!」
ヨシュアの行動は空しく終わり、手の甲、腕や首を覆う鎖の模様が少しずつ赤く色付き、熱を持ち始めていく。
あまりの熱さと痛みに我慢できなくなったヨシュアは、手に持っていた袋を落とし、左腕を強く握りしめながら膝をついて俯く。
「いったい、なに、が……」
こうなる前に何をしたか考えたヨシュアだが、何も思い出せなかった。
「まだ、なにも、してナイ、はずダ……。まだ、ダレも……ころして、いない、し……うばっては……」
熱に苦しみながら、こうなった原因を思い返している。思い出せないならばと、自分で言っている内に心当たりがあったのか、後悔と熱の痛みで二重に苦しむことになってしまった。
「アレ、の、こと……か……」
ジュリーの護衛が助けを求めてきた時、盗賊の一人をピストルで倒していたのだ。それが今、こんな状況になっていることに悔しそうな顔をした。この状況を今すぐ止めるには、自分が反省するしかない。
願うだけでもいいのだが、ヨシュアはその方法を知らない。だから、空に向かって言うしかなかった。
「もう、しない、と、ちかう……! だから、とめて、くれ」
苦しみながら、今この場にいない女神に誓う。その声が聞き届けられたのか、光が収まり始め、痛みと熱さが引いていくのを感じたヨシュアだった。
「ふぅ……。まったく、かみというのは、つくづく、べんりなもの、だナ」
馬車から身を乗り出し、空を見上げる。今もこの状況を女神は水晶玉で見ているのだろうか? それとも、千里眼か何かで見ているのだろうか。
どちらかでしているのだろうが、判断できるものがないこの状況では、きっとそうしているのだろうと思案するしかないヨシュアだった。
「大丈夫なのですか?」
「だいじょーぶ、だとは、いいづらい、ナ」
「そ、そうですよね」
若干まだ痛みと熱があるのか、自分の腕をさすっている。ヨシュアの苦しむ声を聞いたアルヴァ―ノが心配そうに近づいてきた。
「しんぱい、かけて、しまった、ナ」
ヨシュアの肩に顎を置き、啼いている。その様子を見ながら落ち着かせるように首を優しく撫でていた。
「あの……指輪がまだ光ってます」
「ああ。コレはコイツがげんいんだろうナ」
いまだに赤く点滅している指輪に焦るジュリーに対し、ヨシュアは冷静に腰に差してあるレイピアを見る。
「すこしおしいが、しかたナイ」
レイピアを鞘から抜き、サファイアの指輪も外して、元の位置に戻そうとして彼の動きが止まる。
「……もどさないといけナイのは、わかってイルのだが、てがうごかん」
せっかくの剣と指輪を手放したくないのか渋るヨシュア。
手を放しなさいと女神が言っているかのように、少しずつ指輪の光が強くなっていく。
「すこしダケなら……」
欲に負け、彼がまたサファイアの指輪を付けようとすると、感情などないはず指輪が本当に怒っているかのように強く光り始めた。
「“あ゛ーー! わかった、わかった!”」
これ以上持っていては自分の身が危なくなると感じた彼は、渋って手放さなかった指輪と剣を元の位置に戻した。
「“これでいいか?!”」
この場にいない女神に半ば疲れた声でヨシュアが問いかけると、納得したのか光が収まっていく。
「ふぅ……、寿命が縮みそうだ」
小さい子供の相手をした後のような疲れが出たヨシュアは、馬車の中で座り込む。
疲れと危機感を同時に味わった彼の心臓は、激しく鼓動を刻んでいた。
「いのちが、いくつあっても、たりナイぞ……」
胸を押さえ、深いため息を吐く。
呼吸を整え、持っていけるものを指輪を頼りに探していく。
いろいろと選別し、結局持っていけるのは本と何かに使う為用の新たな袋だけだった。
「……しかたナイとはいえ、コレだけじゃものたりん」
不満が残るヨシュアだったが、もうあの痛みを味わいたくないのか我慢するしかないと諦める彼だった。
近くまで寄って来て、ゆるく首を縦に振った。首輪が外れたことと、名を付けられたことが相当嬉しかったのだろう。耳を横に向け、目を細めていた。
「ソレはヨカッタ」
新たな旅のお供となったアルヴァーノの行動を見て、満足そうにヨシュアも頷いている。
「これから、貴方はどうするのですか?」
アルヴァ―ノの事で忘れていたヨシュアは、思い出したように馬車に向かい出した時、ジュリーがこれからの事を問いかけた。
「まちにいく」
「どの街へ?」
説明が面倒なのか、彼女にマップを渡し、馬車の中に入っていく。
「マークがしてあるダロ。ソコにいく」
盗賊が持っていた宝物を適当に漁り、気になる物を探しだす。
「コイツはめずらしいナ」
食料や両刃剣がある中、珍しい指輪を見つけたヨシュアは隅々を見渡した。
「サファイアだな」
指輪の中央に石が付いているのはよく見かけるが、金属の部分全てがサファイアで出来ているのを初めて見たヨシュアは珍しそうに眺め、指にはめた。
「こいつはイイ」
気に入ったのか、手首を動かしながらいろんな角度で指輪を眺めている。
「コレは、レイピアか?」
指輪をつけながら他にないかと漁っていると、不思議な剣を見つけた。形はヨシュアが知る刺突剣とそっくりだ。
だが、どこかが違う。どう違うのかと問われると彼には答えられないが、感覚的に何かが違うと感じたヨシュアは、自分の手を傷つけないように剣を持ち、全体を見渡すが特に変わったところはない。
「きにいった。コレならば、アノけんのかわりになるナ」
不思議な剣ではあるが、彼のお眼鏡にはかなったようだ。 自分の右腰に目線を降ろすと、そこには剣を下げるための鞘が二つあった。一つにはカットラスを下げているが、もう一つは何も下げていない。
何故無いのか。
それはこの世界に来る前に、海上の戦いで折れてしまったからだ。 海賊として一人前になった17歳の時に恩人から貰ったレイピアだったのだ。その日から手入れを忘れず、大事に使っていたが、レイピアも道具だ。
いつかは壊れてしまう物。それが壊れた日からちょうど今日で一年経った。この不思議なレイピアは恩人から貰った物とも劣らぬ剣だ。新たな武器としてはちょうどいいだろう。
「サイズもいい」
少なからずどこか不足する部分が出るはずだが、余ることなく鞘にきっちりと収まった。これを何かの偶然。もしくは、神の巡り合わせだと考えることにするヨシュアだった。
更なるお気に入りを探すため、ヨシュアの視界の先に10個ほどある宝箱に近づき、「その中から好きな物を3つや4つ持って行っても、あの女神様は許してくれんだろ」と呟きながら、漁っていた。
「あとは、ほんだけカ。……まだ、りかいできナイもじがあって、コレはよめナイな」
少し破けている所があるが、まったく読めないわけではない本を村から出る時に、リアから貰った袋の中に入れていく。
「たからをいれるふくろも、もっておくカ」
中身が何も入っていない袋に気に入った宝を入れていく。今はまだ宝の量は少ないが、これからもっと増えていくだろう。それを満杯にするのが少し楽しみになったヨシュアだった。
「あの……左手に付けていらっしゃる指輪が赤く光っていますが、大丈夫ですか?」
「そんなワケないダロ。あかくひかるなん、て……」
ヨシュアが先程から1人で呟いているのを聞き、何をしているのかと気になったジュリー達は馬車の中を覗く。
その時にちらりと見えた彼の中指が赤く光り始める指輪から、何かを感じだのだろう。心配そうにヨシュアに問いかけた。馬鹿な事を言うなとジュリーを鼻で笑いながらヨシュアは自分の左手を確認すると、光っていた。それはもう目を瞑ってしまうほどに。
「なっ……!」
今、物を探しているだけのこの状況で光り始めたことに混乱し始め、こうなってしまった原因を探ろうと、考えを巡らしているが、思いあたる節が一つもない。
「ぐぅっ……!」
ヨシュアの行動は空しく終わり、手の甲、腕や首を覆う鎖の模様が少しずつ赤く色付き、熱を持ち始めていく。
あまりの熱さと痛みに我慢できなくなったヨシュアは、手に持っていた袋を落とし、左腕を強く握りしめながら膝をついて俯く。
「いったい、なに、が……」
こうなる前に何をしたか考えたヨシュアだが、何も思い出せなかった。
「まだ、なにも、してナイ、はずダ……。まだ、ダレも……ころして、いない、し……うばっては……」
熱に苦しみながら、こうなった原因を思い返している。思い出せないならばと、自分で言っている内に心当たりがあったのか、後悔と熱の痛みで二重に苦しむことになってしまった。
「アレ、の、こと……か……」
ジュリーの護衛が助けを求めてきた時、盗賊の一人をピストルで倒していたのだ。それが今、こんな状況になっていることに悔しそうな顔をした。この状況を今すぐ止めるには、自分が反省するしかない。
願うだけでもいいのだが、ヨシュアはその方法を知らない。だから、空に向かって言うしかなかった。
「もう、しない、と、ちかう……! だから、とめて、くれ」
苦しみながら、今この場にいない女神に誓う。その声が聞き届けられたのか、光が収まり始め、痛みと熱さが引いていくのを感じたヨシュアだった。
「ふぅ……。まったく、かみというのは、つくづく、べんりなもの、だナ」
馬車から身を乗り出し、空を見上げる。今もこの状況を女神は水晶玉で見ているのだろうか? それとも、千里眼か何かで見ているのだろうか。
どちらかでしているのだろうが、判断できるものがないこの状況では、きっとそうしているのだろうと思案するしかないヨシュアだった。
「大丈夫なのですか?」
「だいじょーぶ、だとは、いいづらい、ナ」
「そ、そうですよね」
若干まだ痛みと熱があるのか、自分の腕をさすっている。ヨシュアの苦しむ声を聞いたアルヴァ―ノが心配そうに近づいてきた。
「しんぱい、かけて、しまった、ナ」
ヨシュアの肩に顎を置き、啼いている。その様子を見ながら落ち着かせるように首を優しく撫でていた。
「あの……指輪がまだ光ってます」
「ああ。コレはコイツがげんいんだろうナ」
いまだに赤く点滅している指輪に焦るジュリーに対し、ヨシュアは冷静に腰に差してあるレイピアを見る。
「すこしおしいが、しかたナイ」
レイピアを鞘から抜き、サファイアの指輪も外して、元の位置に戻そうとして彼の動きが止まる。
「……もどさないといけナイのは、わかってイルのだが、てがうごかん」
せっかくの剣と指輪を手放したくないのか渋るヨシュア。
手を放しなさいと女神が言っているかのように、少しずつ指輪の光が強くなっていく。
「すこしダケなら……」
欲に負け、彼がまたサファイアの指輪を付けようとすると、感情などないはず指輪が本当に怒っているかのように強く光り始めた。
「“あ゛ーー! わかった、わかった!”」
これ以上持っていては自分の身が危なくなると感じた彼は、渋って手放さなかった指輪と剣を元の位置に戻した。
「“これでいいか?!”」
この場にいない女神に半ば疲れた声でヨシュアが問いかけると、納得したのか光が収まっていく。
「ふぅ……、寿命が縮みそうだ」
小さい子供の相手をした後のような疲れが出たヨシュアは、馬車の中で座り込む。
疲れと危機感を同時に味わった彼の心臓は、激しく鼓動を刻んでいた。
「いのちが、いくつあっても、たりナイぞ……」
胸を押さえ、深いため息を吐く。
呼吸を整え、持っていけるものを指輪を頼りに探していく。
いろいろと選別し、結局持っていけるのは本と何かに使う為用の新たな袋だけだった。
「……しかたナイとはいえ、コレだけじゃものたりん」
不満が残るヨシュアだったが、もうあの痛みを味わいたくないのか我慢するしかないと諦める彼だった。
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