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第2章 夢

冒険記録30. 暗闇の中の希望

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 穴が開いて本来なら動かないはずの無人船が動き、ヨシュア達の舟に近づいてくる。その甲板には、先程までいなかったぼろぼろの服を来た骸骨が、所狭ところせましに乗っていた。その光景に息を吞む漁師たち。それとは反対にヨシュアは豪快に笑っていた。

「ただの無人船でうすうす怪しいとは思っていたが、まさか幽霊船だとはな。しかも乗っているのが骸骨。ここでお目にかかれるとは思わなかったぞ」
「お、俺たちはどうしたら……」
「そいつと漕いでいる奴らを守れ。風読みはこの状況だと一番大事だからな」

 必死に望遠鏡で周りを確認している漁師を指差し、今まさに乗り込んできそうな骸骨たちに目を向けた。

「骸骨と戦うなんざ初めてだが、自慢が出来そうだな」

 深呼吸をし、目の前の敵をヨシュアは見据える。彼の体は歓喜と少しの恐怖で震えていた。だが、顔はとても楽しそうに笑っている。無人船が隣に並べられた瞬間、まるでスイッチでも入ったかのように一斉にガシャリと音を鳴らし、骸骨たちがヨシュアがいる舟に飛び込んでくる。それをヨシュアは船の側面で防ぎつつ、骸骨たちの体にカットラスを叩きつけて破壊したり、首を斬ったりした。

「ハッハハハ!」

 最初は骸骨達の剣をいなし、いつ指輪が光るかわからない状態で怯えながら倒していたが、殺しても女神から罰を受ける心配もない状況に、ヨシュアの口から笑い声が飛び出す。

「久しぶりで体が踊るなァ」

 我慢をする必要がない戦いに彼は興奮している。たった数日禁止されていただけでこのありさまだ。もし、これが何か月も禁止されていたら見境もなく剣を取り、戦い始めていだろう。それを女神アテリアは見越して、指輪を付けたのだ。
 骸骨たちの中には剣だけでなく、槍や弓を持って構えている。その中で異彩を放つのは鞭を持っている骸骨。何のために持っているかは不明だが、戦闘用のモノではないことは確かだろう。
 
 敵はヨシュアの出方を待つことはしない。目の前にいるヨシュアを仲間にしようと一斉に襲い掛かる。

 1体が横に剣を振るう。
 続けて2体目が十字架を作るように1体目と連携して剣を縦に振り下ろす。
 別々に捌くことが出来ないほどの連携技。
 2体の攻撃を一旦受け止めたヨシュアが、弾き飛ばすと同時に2体の首を飛ばす。
 左右別々の方向に飛んでいき、一つは海の中に落ちた。
 首を無くしてもまだ動く2体の骸骨たち。意思があるかのようにヨシュアに向けて同時に剣を突いている。

「なんなんだこいつら」

 壊しても壊しても攻撃してくる敵に、ヨシュアの息が乱れる。
 首を切り落としただけじゃ止まらない。その様子に楽しむ余裕すらが無くなってくるヨシュア。
 少しずつ骸骨たちの勢いが増し、自分たちが乗っている舟に乗られてしまう。それでも、まだ怪我人は出ていない。

「骸骨に効果ある戦い方なんざ知るかってんだ」

「大砲がありゃこんなことにならずに済んだ」と愚痴るヨシュア。今無い物に苛立ってもこの状況は変わらない。
 ヨシュアが何回も骸骨たちを破壊している時、漁師の一人が血しぶきを上げながら悲鳴を上げ、倒れた。
 それがトリガーとなり、階段から転がり落ちるかのように、総崩れを起き始める。
 1人、また1人と甲板に倒れていく。

くそっDamn it!」

 血を流し、倒れている者には興味がないのか、先程まで分散していた骸骨たちがヨシュアに向かってくる。
 この舟の中で誰が生き残っているかなど確認する暇は、今の彼にはない。
 自分が生き残ることで精いっぱいだ。

 彼の顔に疲労が出始め、すべてをさばくことが出来なくなってくる。
 ヨシュアの体に傷を出来始め、命を取ろうと走って近づいてくる骸骨が、アルヴァーノの後ろ蹴りで体が崩しながら海へ吹き飛ばされた。
 骨を蹴ったとは思えない音に一瞬ヨシュアは驚くも、敵は待ってはくれない。
 その方向に顔を向けられなかったが、その背に向けてヘルニーが声をかけた。

「僕と君とアルヴァーノ以外、邪魔にならない所に移動させたよ!」

 今まで声もしていなかったが、ヨシュア達が戦っている間、漁師たちを避難させていたのだ。
 その言葉で肩に乗っていた重荷が取れたのか、ヨシュアが深く細い息を吐く。
 今まさに彼に向かって振り下ろそうとしていた剣を転がりながら避け、甲板に落ちている剣とも呼べないものを手に取ると、敵を見据みすえた。

来い骸骨ども come on both skeletons俺がお前らを破壊尽くしてやるI'll destroy you all
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