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第一部 三章:世界はあなただけのもの
六話 染みついた習慣
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「ッ。お、美味しい」
お椀を受け取ったアウルラは躊躇いなく、杓子でスープを口に含む。
そして、思わずと言った感じに感嘆の言葉を漏らした。
まぁ、今日一日中歩きっぱなしの警戒しぱなしだったからな。人は食欲には勝てないのだ。
「それは良かったです」
ライゼはアウルラの綻んだ笑顔を見て、嬉しそうに笑った。
童顔だからこそいいな。〝視界を写す魔法〟で撮っておこう。
「ッ」
ただ、アウルラはそのライゼの一言でカァーと顔を赤くした後、キッと睨みつけた。そして恥ずかしさを紛らわす為か、いつも通りの悪態を吐く。
「だ、誰がアナタの粗末な食事などッ!」
しかし、その言葉は聞き捨てならない。食事は命なんだぞ。
『じゃあ、文句があるなら食うな。俺が頂く』
「きゃあっ!」
脅すように俺はアウルラの横からぬッと出る。美味しそうな食事によって一時的に俺の事を忘れていたらしい。
アウルラは俺を見た途端悲鳴を上げて、手に持っていたお椀を放り投げ、後に倒れそうになる。
「もう、ヘルメス。驚かしたらだめだよ」
だが、いつの間にか移動していたライゼがアウルラを支え、またお椀がひっくり返る前に右手でキャッチした。
アウルラが着ていた白のローブがはためく。
「すみません、アウルラ様。お怪我はありませんか?」
「……大丈夫よ」
俺に怯えているのか、暴言を吐くことなく、アウルラは大人しくライゼに礼を言って立ち上がった。
ついでに、ライゼが支えた部分を手で払う。それは反射的な行動だろう。
「なら良かったです。では、温かい内にいっぱい食べてください」
しかし、ライゼはそれに気づいていても気にした様子はなく、右手に持ったお椀を渡して微笑む。
ライゼは聖人ではない。ただ、興味がないというか、どうでもいいと思っているのだ。価値観が異なっていると言えばわかりやすい。
アウルラは差し出されてお椀を渋々受け取りながら、俺が用意した丸太に座り、食事を再開した。
余計な事は言わないようにしながら、しかし、一口一口を噛みしめるように食べているので、まぁ、さっき悪態は許そうかなと思った。
Φ
「……ライゼ、私たちはこれからどうすればいいのかしら? それにこのトカゲは何なのかしら?」
それから少し経った後、鍋の中身もだいぶ減り、食事をするアウルラの手もだいぶ落ち着いた後、ポツリと彼女はそう問うた。
渋々というか、嫌そうというか、そういう表情は隠そうとしないが、しかし時々舌をチロリと出している俺を警戒しているのか、大人しい。
それにしても、アウルラって他の貴族相手だと、取り繕った仮面を張り付けて対応しているのに、ライゼ相手だと違うんだよな。見下し過ぎているのか、それともライバル的な感じなのかは判断付かないが。
俺にはトカゲの人生が長すぎて、人の価値観がまぁまぁ薄れてるんだよな。
「ええっと、そうですね。まず、そこのトカゲですが、名前はヘルメス。僕の家族です」
『……よろしくな、アウルラ』
「ッ」
挨拶は大事なのでキチンとしたのだ息を飲まれた。
どうすればいいのだろうか。
「な、何故、トカゲがしゃべっているのよ!? おかしいじゃない!?」
まぁ、確かに。レーラーだって幻獣は珍しいって言ってたしな。
あの何千年生きているか分からないレーラーが珍しいと言うのだから、相当珍しいのだろう。
「落ち着いてください、アウルラ様。先程も言った通り彼はヘルメス。私の家族です。何故話すかは、幻獣だからとしか言えません」
ライゼには俺が転生者であることを話しているが、他の人がそれを信じるとは思えないし、そもそも話すのが面倒だ。
まぁ、幻獣というのも珍しく話すのは憚られるのだが、非常時の今は言葉を交わした方が色々と行動がしやすい。
「げ、幻獣って、お伽噺じゃ!?」
え、お伽噺に幻獣って出てくるのか? けれど、絵本とかそういうのには幻獣について触れられたものはなかったのだが。
つい最近、生物に関連する専門書を読んでようやく出てきたくらいだ。
ライゼも一瞬だけそれが気になり眉を動かしたが、それを追及するのは学園に戻ってからでもできる。
今は横に置いておく。
『信じられなかろうが、現に俺はお前と話してる。事実が何よりの証拠だ』
「ッ。……分かりましたわ。確かにその様ですね」
アウルラは考えることをやめたらしい。
まぁ、正確には情報量に圧倒され、また、緊急時という現実が疑問を追及することを止めたのだ。
よくある事である。
「納得していただき、ありがとうございます」
俺は頭を下げるライゼの方へ移動し、チロリと舌を出してアウルラに目配せした。
トカゲ的な礼である。
この世界の貴族や王族は思いのほか権力が強い。
学園内では多少の問題があっても学園という免罪符が動いてくれるが、今は違う。
そのため、ここでゴネられたら後が面倒なのだ。王都へ無事に戻っても平穏がなくなる可能性がある。
なので、ライゼはここを脱出するという目的とアウルラの機嫌を大きく損なわないという目的を果たさなければならないのである。
まぁ、俺が少しだけイラっと来て威圧してしまったが、何となく流された気がするので大丈夫だろう。
「……そんな事はどうでもいいですわ。それよりも今後の説明をお願いしますわ」
そしてアウルラもライゼに敵愾心を燃やしているとはいえ、王族の端くれで普段はとても合理的に考える。頭がキレる。
なので、自分の命を守るためにも感情は一旦置いたようだ。
お椀を受け取ったアウルラは躊躇いなく、杓子でスープを口に含む。
そして、思わずと言った感じに感嘆の言葉を漏らした。
まぁ、今日一日中歩きっぱなしの警戒しぱなしだったからな。人は食欲には勝てないのだ。
「それは良かったです」
ライゼはアウルラの綻んだ笑顔を見て、嬉しそうに笑った。
童顔だからこそいいな。〝視界を写す魔法〟で撮っておこう。
「ッ」
ただ、アウルラはそのライゼの一言でカァーと顔を赤くした後、キッと睨みつけた。そして恥ずかしさを紛らわす為か、いつも通りの悪態を吐く。
「だ、誰がアナタの粗末な食事などッ!」
しかし、その言葉は聞き捨てならない。食事は命なんだぞ。
『じゃあ、文句があるなら食うな。俺が頂く』
「きゃあっ!」
脅すように俺はアウルラの横からぬッと出る。美味しそうな食事によって一時的に俺の事を忘れていたらしい。
アウルラは俺を見た途端悲鳴を上げて、手に持っていたお椀を放り投げ、後に倒れそうになる。
「もう、ヘルメス。驚かしたらだめだよ」
だが、いつの間にか移動していたライゼがアウルラを支え、またお椀がひっくり返る前に右手でキャッチした。
アウルラが着ていた白のローブがはためく。
「すみません、アウルラ様。お怪我はありませんか?」
「……大丈夫よ」
俺に怯えているのか、暴言を吐くことなく、アウルラは大人しくライゼに礼を言って立ち上がった。
ついでに、ライゼが支えた部分を手で払う。それは反射的な行動だろう。
「なら良かったです。では、温かい内にいっぱい食べてください」
しかし、ライゼはそれに気づいていても気にした様子はなく、右手に持ったお椀を渡して微笑む。
ライゼは聖人ではない。ただ、興味がないというか、どうでもいいと思っているのだ。価値観が異なっていると言えばわかりやすい。
アウルラは差し出されてお椀を渋々受け取りながら、俺が用意した丸太に座り、食事を再開した。
余計な事は言わないようにしながら、しかし、一口一口を噛みしめるように食べているので、まぁ、さっき悪態は許そうかなと思った。
Φ
「……ライゼ、私たちはこれからどうすればいいのかしら? それにこのトカゲは何なのかしら?」
それから少し経った後、鍋の中身もだいぶ減り、食事をするアウルラの手もだいぶ落ち着いた後、ポツリと彼女はそう問うた。
渋々というか、嫌そうというか、そういう表情は隠そうとしないが、しかし時々舌をチロリと出している俺を警戒しているのか、大人しい。
それにしても、アウルラって他の貴族相手だと、取り繕った仮面を張り付けて対応しているのに、ライゼ相手だと違うんだよな。見下し過ぎているのか、それともライバル的な感じなのかは判断付かないが。
俺にはトカゲの人生が長すぎて、人の価値観がまぁまぁ薄れてるんだよな。
「ええっと、そうですね。まず、そこのトカゲですが、名前はヘルメス。僕の家族です」
『……よろしくな、アウルラ』
「ッ」
挨拶は大事なのでキチンとしたのだ息を飲まれた。
どうすればいいのだろうか。
「な、何故、トカゲがしゃべっているのよ!? おかしいじゃない!?」
まぁ、確かに。レーラーだって幻獣は珍しいって言ってたしな。
あの何千年生きているか分からないレーラーが珍しいと言うのだから、相当珍しいのだろう。
「落ち着いてください、アウルラ様。先程も言った通り彼はヘルメス。私の家族です。何故話すかは、幻獣だからとしか言えません」
ライゼには俺が転生者であることを話しているが、他の人がそれを信じるとは思えないし、そもそも話すのが面倒だ。
まぁ、幻獣というのも珍しく話すのは憚られるのだが、非常時の今は言葉を交わした方が色々と行動がしやすい。
「げ、幻獣って、お伽噺じゃ!?」
え、お伽噺に幻獣って出てくるのか? けれど、絵本とかそういうのには幻獣について触れられたものはなかったのだが。
つい最近、生物に関連する専門書を読んでようやく出てきたくらいだ。
ライゼも一瞬だけそれが気になり眉を動かしたが、それを追及するのは学園に戻ってからでもできる。
今は横に置いておく。
『信じられなかろうが、現に俺はお前と話してる。事実が何よりの証拠だ』
「ッ。……分かりましたわ。確かにその様ですね」
アウルラは考えることをやめたらしい。
まぁ、正確には情報量に圧倒され、また、緊急時という現実が疑問を追及することを止めたのだ。
よくある事である。
「納得していただき、ありがとうございます」
俺は頭を下げるライゼの方へ移動し、チロリと舌を出してアウルラに目配せした。
トカゲ的な礼である。
この世界の貴族や王族は思いのほか権力が強い。
学園内では多少の問題があっても学園という免罪符が動いてくれるが、今は違う。
そのため、ここでゴネられたら後が面倒なのだ。王都へ無事に戻っても平穏がなくなる可能性がある。
なので、ライゼはここを脱出するという目的とアウルラの機嫌を大きく損なわないという目的を果たさなければならないのである。
まぁ、俺が少しだけイラっと来て威圧してしまったが、何となく流された気がするので大丈夫だろう。
「……そんな事はどうでもいいですわ。それよりも今後の説明をお願いしますわ」
そしてアウルラもライゼに敵愾心を燃やしているとはいえ、王族の端くれで普段はとても合理的に考える。頭がキレる。
なので、自分の命を守るためにも感情は一旦置いたようだ。
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