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第二部 一章:どこにだって光はある
プロローグ Night Sky Is Bright――a
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夜天に幾万の、いや、幾星霜の星々が色鮮やかに輝き、儚く揺れている。
煌く大河は、今にも消えてしまいそうなほど精一杯の輝きを放ち、流れている。
しかし、夜を代表する月はない。今日は新月なのだ。
そんな夜の下で、星々の光しかない美しい夜の下で、レーラーとライゼは、星々が煌くようなシュターノンというケーキを食べている。
ディナーの締めである。
「美味しいね、レーラー師匠」
「うん、そうだね」
今まで黙々と噛みしめるように、抱きしめるように食べいたライゼは、そう言葉を漏らす。
レーラーはそれに嬉しそうに、少しだけ頬を緩めて頷く。
まぁ、レーラーの表情はそれでも殆ど動いていないのだが。
「ありがと、レーラー師匠」
「うん、こっちもありがと」
そしてシュターノンを食べ終わった二人はそう言葉を交わした。
また、ライゼはクリームを食べている俺に目を向ける。
『ヘルメスもありがと』
『ああ、どういたしまして』
まぁ、今回俺は何もやっていない。
けれど、うん。この言葉は喜んで受け取る。感謝は受け取り手ではなく、言い手の感情だ。受け取り手が如何こう言うのは無粋だ。
なら、存分に受け取ればいい。
そして、星が輝く夜の中、ディナーは終わり、俺達は宿屋に帰った。
ライゼの首元には蒼い蝶が描かれた蓋つきの懐中時計が星に輝いていた。
Φ
日が昇る前、ライゼはいつも通り起きる。俺は、珍しく早起きする。
そして、もっと珍しくレーラーが一人で起きていた。
「……レーラー師匠、今日は槍でも降るの? 流石に、出立の日に槍が降るのは困るんだけど」
「失敬な。私でも早起きできる日はあるよ。まぁ、数年に一度だけど」
そんな珍しい日だからこそ、ライゼは怖がっているのだが。
まぁ、けど、レーラーが早起きしたなら、今日は問題なく出立できそうだ。
「まぁ、いいか。ヘルメス、荷物が多いけど大丈夫?」
『ああ、問題ない』
それから俺らは宿屋を引き払い、城門に行く。
ライゼとレーラーは身長が低いのに、とても多くの荷物を持っている。食料やら何やらである。どうせ、二週間も立たずになくなる。
それらを引きずる様に持って城門に着いた俺たちは、手続きを済ませたあと、自由都市ウーバーを出た。ナファレン王国に足を踏み入れた。
そして、しばらく朝日に照らされる草原を歩き、城門に立っていた衛兵が豆粒ほどになった時、俺はライゼの肩から飛び降りる。
そして、地面に着くと同時に、“身大変化”で体長四メートルほどの大きさになる。ライゼとレーラーは抱えていた荷物を俺に括り付ける。
俺は馬、いや、ロバみたいなものだ。
「じゃあ、失礼するよ」
そして、レーラーは俺の背中の上に乗る。
俺は少しだけ蜥蜴色の鱗を震わし、レーラーが座りやすいようにする。
『ライゼは座らないのか?』
『僕はいいかな』
『そうか』
そして、俺達は草原の中、昇り始めた朝日の陽射しを浴びながら、北東へと伸びる土の道を進んだ。
目的地のウォーリアズ王国へ向かうために。
空は蒼かった。
煌く大河は、今にも消えてしまいそうなほど精一杯の輝きを放ち、流れている。
しかし、夜を代表する月はない。今日は新月なのだ。
そんな夜の下で、星々の光しかない美しい夜の下で、レーラーとライゼは、星々が煌くようなシュターノンというケーキを食べている。
ディナーの締めである。
「美味しいね、レーラー師匠」
「うん、そうだね」
今まで黙々と噛みしめるように、抱きしめるように食べいたライゼは、そう言葉を漏らす。
レーラーはそれに嬉しそうに、少しだけ頬を緩めて頷く。
まぁ、レーラーの表情はそれでも殆ど動いていないのだが。
「ありがと、レーラー師匠」
「うん、こっちもありがと」
そしてシュターノンを食べ終わった二人はそう言葉を交わした。
また、ライゼはクリームを食べている俺に目を向ける。
『ヘルメスもありがと』
『ああ、どういたしまして』
まぁ、今回俺は何もやっていない。
けれど、うん。この言葉は喜んで受け取る。感謝は受け取り手ではなく、言い手の感情だ。受け取り手が如何こう言うのは無粋だ。
なら、存分に受け取ればいい。
そして、星が輝く夜の中、ディナーは終わり、俺達は宿屋に帰った。
ライゼの首元には蒼い蝶が描かれた蓋つきの懐中時計が星に輝いていた。
Φ
日が昇る前、ライゼはいつも通り起きる。俺は、珍しく早起きする。
そして、もっと珍しくレーラーが一人で起きていた。
「……レーラー師匠、今日は槍でも降るの? 流石に、出立の日に槍が降るのは困るんだけど」
「失敬な。私でも早起きできる日はあるよ。まぁ、数年に一度だけど」
そんな珍しい日だからこそ、ライゼは怖がっているのだが。
まぁ、けど、レーラーが早起きしたなら、今日は問題なく出立できそうだ。
「まぁ、いいか。ヘルメス、荷物が多いけど大丈夫?」
『ああ、問題ない』
それから俺らは宿屋を引き払い、城門に行く。
ライゼとレーラーは身長が低いのに、とても多くの荷物を持っている。食料やら何やらである。どうせ、二週間も立たずになくなる。
それらを引きずる様に持って城門に着いた俺たちは、手続きを済ませたあと、自由都市ウーバーを出た。ナファレン王国に足を踏み入れた。
そして、しばらく朝日に照らされる草原を歩き、城門に立っていた衛兵が豆粒ほどになった時、俺はライゼの肩から飛び降りる。
そして、地面に着くと同時に、“身大変化”で体長四メートルほどの大きさになる。ライゼとレーラーは抱えていた荷物を俺に括り付ける。
俺は馬、いや、ロバみたいなものだ。
「じゃあ、失礼するよ」
そして、レーラーは俺の背中の上に乗る。
俺は少しだけ蜥蜴色の鱗を震わし、レーラーが座りやすいようにする。
『ライゼは座らないのか?』
『僕はいいかな』
『そうか』
そして、俺達は草原の中、昇り始めた朝日の陽射しを浴びながら、北東へと伸びる土の道を進んだ。
目的地のウォーリアズ王国へ向かうために。
空は蒼かった。
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