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一章 魔法少女

十九話 その視線が気持ち悪い!

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 その日、起床時間が全く違う直樹と大輔は一緒に登校していた。日曜日の昨日、鈴木一家は佐藤一家に泊まっていたからだ。

 お互いの息子のファンタジーを経験した両家族は、数週間に一度交流会といった名目で集まったりしている。

 ただ、昨日はエヴィ編クライマックスの『僕は今日、魔女きみと出会った』を、アニメを見るためだけに買った大画面テレビで鑑賞する鑑賞会だったのだが。

 そのあと、大人四人と直樹と大輔が、ガチ泣きしながら感想を言い合っていた。直樹の義姉である澪と義妹の詩織が若干、引いていた。

 ただ、そのあとはいつも通りの飲み会となった。大人四人が己の趣味と仕事について語り、相談し合っていた。

 イラストレーター兼四コマ漫画の勝彦とラノベ作家の瞳子が意気投合するのはもちろんのこと、建物の背景などといったところで勝彦と和也が意気投合、彩音はコスプレ衣装を作る趣味があり、瞳子と息があった。

 まぁそういう理由もあってか、直樹と大輔は一緒に家を出たのだ。

 電車に乗り用事がある駅で一度降りた後、用事を済ませ、ホームで来週の土日に創ることが決まった異世界転移用の幻想具アイテム三つの相談をしていた。主に造形だ。

 大輔の“想像付与”は、大輔が自ら作り上げたものであるなら、どんな形状だろうと付与できる。

 とすると、機能面もあるが、見た目的な芸術面にもこだわりたくなる。それにオタクが凝るのは当たり前だし。

「転移は素直に鍵でいいじゃね? 転門鍵だって鍵だろ?」
「ええ~。二つ目も鍵って安直すぎるよ」
「安直ってな。……じゃあ、探知は? 一応お前の眼があるが、創るんだろ? 分かりやすく羅針盤とかジャイロスコープとか?」
「羅針盤は某海賊と重なるし、ジャイロスコープは……占いの水晶とか……羅針盤を捻ってカンテラとか?」
「……導きか」

 前に並んでいたサラリーマンがその会話を聞いてビクッと肩を揺らす。すこし後ろを振り返り直樹を見て、あ、いたんだ、という表情をする。隣に並んでいた大学生も最初は同じ行動を取ったが、直樹と大輔の会話を思い出して、可哀想な人を見る目を向ける。

 直樹は“隠密隠蔽[薄没]”を常時展開している。ただし、大輔に注意されてからは出力をある程度下げているが。

「じゃあ、それはおいて時間は砂時計でいいんじゃね?」
「う~ん。砂時計って流れるってイメージがあるからね。アレは今に固定するっていうのだし、たぶん転移に組み込む気がするんだよね。いや、探知にもかな」
「じゃあ、キーホルダーか?」
「鍵から離れようよ」

 大輔が直樹に突っ込みを入れた。

 その瞬間。

「ッ」
「え」

 二人は一瞬で混沌の異界アルヒェに飲み込まれた。

 直樹は驚愕し、大輔はちょっと呆然とする。二人とも強制送還されたとはいえ、異世界帰りのチート野郎である。初見は飲み込まれたもの、二度目はないと自負していたのだ。

 なのに飲み込まれた。空間の揺らぎすらなく、一瞬で。事前発動の兆候すら掴ませない隠蔽能力と空間操作能力。

 それを為した目の前にいるおぞましい大きな闇は相当厄介だ。

『おい、どうする!?』
『どうするって、どうしよ!? アレ、たぶん親玉だよ、親玉! 逃げようにもあそこに目撃者二人いるし。バレると面倒だよ!』
『記憶操作は?』
対混沌の妄執魔法外装ハンディアントをちょこっと解析したけど、あれ魂魄防御能力がめっちゃ高いんだよ。ほら、混沌の兵士スキャーヴォが魂魄から記憶を喰らうでしょ? 虫の魔王レベルだと思えば』 
『厄介すぎるじゃねぇか!? そんなん作ったやついたのかよ』
『まぁ僕も作れるし』
『お前は例外!』

 ここまで0.5秒程度。ステータス値と“思考”を利用して思考速度を上げ、二人の魔改造スマホに付与されている〝念話〟の魔法で会話をする。

『まぁとりあえず、気弱で何も知らない少年。わけもわからないけど、逃げなきゃヤバイと思って逃げまくる、でいいかな?』
『身体能力はあくまで一般成人男性。バレそうな魔法も幻想具アイテム能力スキルもなし』
『できるかな。……でも、頑張って演じるよ』
『ああ』

 そして混沌の異界アルヒェに召喚されてからピッタリ一秒。方針を決めた二人は、コミカルに驚く。

「んぁ!?」
「え、なにっ!?」

 驚く真似をしながら二人は間断なく周囲を観察する。

 目の前にいる闇は大輔が簡単に解析した限り親玉。混沌の妄執ロイエヘクサ。上方に埋め込まれている無数の女の顔がギョロリと顔を動かし、蠢く影の体から無数の触手を生やし、二人に伸ばす。

 チラリと横を見れば、ホワイトとプロミネンスが駆けだしているのが見える。

 しかし。

「といっ」
「せいっ」

 ホワイトとプロミネンスの速度では間に合わない。そう思った大輔と直樹は横を向いて向かい合い、押し相撲をするように互いの手を合わせて押す。

 二人はたたらを踏みながら後ろに倒れ込む。ちょうど、先ほどいた場所に闇の触手が落ちる。

「マジでどういうこと!?」
「ちょ、怖っ!?」

 ドゴンとクレーターができる。二人はそれに青ざめたて恐怖する、演技をしながら這いずりながら体を起こし、脱兎のごとく逃げようとする。反転し、ホームから飛び降りようとする。

 クレーターを作り潰れていた闇の触手が蠢き、二つに分かれる。線路に飛び降りた直樹と大輔を追随する。二人は“土下座”の技巧アーツ、[泣き真似]を使って涙目になりながら、必死の形相でダッシュする。

 ホワイトとプロミネンスはまだ間に合わない。

 だから。

「輝け黄金のスライディング!」
「ねぇ、何でこんな状況でボケる余裕あるの!?」

 やけくそだ! という表情を演技する直樹と思わず本音でツッコミを入れる大輔は、互いに向かって走り、ぶつかる寸前でしゃがむ。

 パンッと音を立てて、直樹と大輔の頭上で闇の触手がぶつかり弾ける。衝撃波が舞い、二人は同時に吹き飛ばされる。幸い無事――もちろん受け身をした――だったようで、尻もちを突きながら直樹はガッツポーズする。

「よ、よし! オタク舐めんなよ!」
「まって、それフラグ! フラグ!」

 大輔が慌てて直樹の頭を叩き、立ち上がる。直樹もやべっと言いながら、立ち上がり、線路の上を走る。

 ……演技とはいえ、このふざけた会話はどうにかならないのだろうか?

「ほ、ほら。触手がまた襲ってきた! う、怨むからね! フラグを立てた直樹を怨むからね!」
「はぁっ!? 俺を怨むよりもまず不幸を怨もうぜ! 何なんだよ、爆発巻き込まれて死にかけたと思ったら、何これ、闇の化身!? ってか、あの見た目知ってるぞ! 手下がいて性質は独善なのか!? 次話の冒頭までめった刺しにされる魔女さんなのか!? や、やだ! あれがエヴィ様と同じ名前なんていやだ!」
「だったらデイダラボッチだよ! 全身真っ黒にしたデイダラボッチだよ!」
「じゃあなにかっ、首なのか!? 首を返せってか!? 人の手で返したいって言わなきゃいけないのか!? 俺の右腕には痣なんてないぞ! 呪いなんぞを受けてないぞ!」

 どうにもならないらしい。成人男性並みの身体能力で、直樹と大輔は阿呆な事を言い合っている。演技なのか本心なのか……たぶん、本心だろう。

 だが、迫りくる無数の闇の触手は濁流となって直樹と大輔を襲い来る。二人はチラリとそれを見て、恐怖に染まり冷や汗をく演技をする。器用なことで。

「なぁ、どうする! もう、やべぇんだが」
「不幸だよ。何で朝っぱらかこんな目に巻き込まれなきゃいけないの!?」

 これは大輔の本心。ゆっくりと無難に学校生活を過ごしながら、異世界へ行くための準備をしたいだけなのだ!

「不幸不幸っていうなら、不幸だー! って言って男女平等パンチでも繰り出して来いよ! 幻想を殺せるかもしれないだろ! それにさっきデイダラボッチって言ったのはお前なんだし、右手に凄い力でも宿ってるだろ!」
「やだよ! オタクだからって勘違いしすぎじゃない!? 僕たち一般人だよ。理性的で善良的な一般人だよ! そう言うなら、直樹がすればいいじゃん。その幻想をぶち殺す! って叫べばいいじゃん。本当にあれが消えるかもよ!」
「はぁっ!? お前こそアニメの見すぎだ! んなことできるわけねぇだろ!」

 無効化はできないが、消し飛ばすことはできる。衝撃波を繰り出せばいいだけだ。

「って、ヤバいヤバいヤバいヤバい! 死ぬ! もう後ろまで迫ってる!」
「よし、ここはお前に任せて俺は先に行く!」
「何でこんな時までボケるの! ってか、ボケるなら、ここは俺に任せてお前は先に行け! でしょ!? なんで直樹だけ逃げるのさ!」
「え、大輔、お前に任せていいのか?」
「いいわけないよ!」

 阿呆な事を言い合うが、二人の直ぐ後ろには無数の闇の触手が襲い掛かっていた。

 そして。

「あ、もうダメ。死ぬ」
「し、死ぬなー!」

 闇の濁流がコントをしている直樹たちを飲み込もうとした瞬間。

「燃え尽きろ!」
「あ、あちっ!」
「熱い!」

 闇の濁流が灼熱に飲み込まれ、爆発する。直樹と大輔は熱い熱いといいながら空中に吹き飛ばされる。吹き飛ばされ方がコミカルだ。ピューー、という音を幻聴しそうだ。
 
 あわや地面にぶつかるというところで。

「大丈夫ですか!」
「大丈夫か!」

 ホワイトとプロミネンスに抱きとめられた。

「へ?」
「はい?」

 直樹と大輔の目が点になる。大輔の眼鏡がずり落ちる。もちろん、演技だ。表情はとても凝っているのに、何故会話がふざけているかが気になる。

 直樹を抱えるホワイトと大輔を抱えるプロミネンスは、真剣な表情を向けながら跳ぶ。

「しっかり掴まっていてください!」
「大丈夫だ、安心しろ」

 そしてホワイトとプロミネンスは直樹たちを抱えながら、混沌の妄執ロイエヘクサから距離を取ろうとする。

 けれど、もちろんの事、混沌の妄執ロイエヘクサはそれを許さない。

「ヨコセェェェェェッ!」

 宙を浮く巨大な闇の体を持つ混沌の妄執ロイエヘクサは、ゆっくりと飛翔してホワイトたちに迫りくる。触手よりもおぞましい無数の闇の手を体の至る所から生長させ、猛烈に二人を追撃する。それどころか闇の弾丸を無数に作り出し、ホワイトたちに向かって放つ。

「爆ぜろ! 爆ぜろ!」

 大剣を背負ったプロミネンスが、≪灼熱≫で爆炎を張りながら闇の弾丸や闇の手を消滅させるが、直ぐに新たに現れる。キリがない。

 ホワイトとプロミネンスは逃げるが、混沌の妄執ロイエヘクサに追いつかれそうになる。

 と思いきや。

「〝ジュエリーガトリング〟ですわ!」
「〝レインバレット〟!」

 突如、百にものぼる宝石の弾丸がガトリング掃射の如く混沌の妄執ロイエヘクサに降り注ぎ、また水の弾丸が雨のごとく降り注いだ。

 ビルの屋上に降り立ったプロミネンスとホワイトは声がした方を見た。いたことに気が付いていたが、直樹たちは一応見ておく。

「ジュエリー! レイン!」
「グリムさんも!」

 そこにいたのは、金髪ドリルのジュエリーと猫耳のポンチョのレイン、大鎌を背負ったグリムだった。

 と、ここを好機と捉えたか、直樹が驚いた表情をしする。

「ま、魔法少女だ! 魔法少女だぞ、大輔! ってか、あれ金髪ドリル!? おい、さっきの影、やっぱり幸薄青髪少女に惨殺される魔女だったんだ、あれ! ついでにマミるんだよ!」

 驚きながら直樹は懐からスマホを取り出し、カシャリと写真を撮る。その慣れた手つきを大輔が非難する。

「何で撮ってるの、失礼でしょ!? ってか、マミるとか不謹慎な事言わないでよ。卒業できない留年生が!」
「魔法少女は卒業するもんじゃねぇ! 人生の一生をかけて履修するものだ! それに本物の魔法少女を撮って何が悪い!」
「マナーがなってないところが悪い。レイヤーを勝手に撮っちゃでめでしょ」

 突然言い合いをし始めた直樹と大輔に、レイヤーではなく本物の魔法少女のホワイトとプロミネンスが顔を顰める。そしてここで暴れられても困るため、ホワイトは大きく息を吸う。

「落ち着いてください!」
「……へい」
「……はい」

 直樹と大輔はしゅんと頷いた、演技をする。何度も言うが、掛け合いはともかく表情は全て演技だ。ついでに直樹はスルリと懐にスマホを仕舞った。

 と、≪影踏み≫で空を駆けるグリムの大鎌や手を足場にしながら、器用に空中で攻撃を繰り返していたジュエリーたちが、近くに着地する。

 そのままジュエリーとレインは攻撃を続行する。

 レインは水玉模様の傘を開いて雨の弾丸をさらに追加する。≪鬼雨≫だ。ジュエリーもトパーズの指輪を輝かせて宝石の弾丸を射出しながら、後ろを振り返る。

「プロミネンス、ホワイト! 早く帰還をしてくださいまし!」
「ジュエリー先輩、無理です! 行き来ができません! 私たちがここにいるのは飲み込まれたからです!」
「ッ。やっぱりそうですのね。ではグリム。プロミネンスから眼鏡の方を受け取り、遠くへ行きな――」

 ≪宝弾≫で宝石の弾丸を作り出しては混沌の妄執ロイエヘクサに攻撃しているジュエリーは、グリムに命令しようとして。

「待て」

 プロミネンスに止められた。

「プロミネンス先輩、どうかしたのですか?」
「……ホワイト、彼をおろせ」
「プロミネンス、そんな事を――」
「いいから」

 プロミネンスは険しい表情をしながら、大輔をおろして立たせる。ホワイトは仕方なく直樹をおろした。

「え、に、逃げるんじゃ……」
「あの、もうそこに……」

 直樹と大輔がすっとぼけた表情でプロミネンスを見た。怯えを宿しながら、ガクガクと震える。もちろん、演技だ。

 だが、プロミネンスはジッと直樹と大輔を見た。

 そしてポツリという。

「ここに引きずり込まれるのは、魔力を持った存在だけらしい」

 それは昨日恵美たちから聞かされた内容だ。

「……え、何それ。魔力ってあの魔力かっ? ってことは本当に俺の右手にマジな力が!」
「……何言ってんの、直樹。それは僕の右手でしょ!」

 一瞬不審な表情を浮かべた後、二人は驚き右手がと叫ぶ。その二人の様子に、この人たち意外に余裕があるのでは? とホワイトは思うが、プロミネンスの言葉を聞いて、弱いながらもある予感が浮かぶ。

 直樹と大輔の内心は結構やばい。

『そういえば、百目鬼って勘で全てを解決する奴だった! 勘だけで俺の隠形見破ったんだった!』
『何それ。先に言ってよ!? 大事な事でしょ! え、何? 直樹の隠形を見破ったの!? っというか、誤魔化せそうにないんだけど! 普通に百目鬼さんの目がガン決まっているですけど! 殺気が向けられてるんですけど!』

 そんな内心を知ってか知らずか、プロミネンスは背中に背負っていた大剣を掴んだ。≪直観≫の魔法を使うための媒体だ。大剣は折れてもないし、欠片でもないため、最大の≪直観≫を使える。

「鈴木君、さっきおかしなことを言ったな?」
「な、何で苗字を知ってるんですか!?」

 大輔はあくまで演技を続ける。もしかして、僕の知り合いですか!? と問い詰める。

 プロミネンスは対応しない。

「理性的で善良的な一般人。白仮面男、Nが二度もそれを言った。私はサブカルに詳しくはないが、それでもよく使われる言葉ではないだろう?」

 プロミネンスが大剣を抜き去った。

『お、お前。何言ってくれてんだ!』
『こっちのセリフだよ! ってか二度も言ったの!? 教えてよ!』
『ここ数か月でできた口癖だし、言ったことを忘れてたんだ! 今言われて思い出したんだぞ!』
『だったら、僕だって口癖だよ! 意識してなかったよ!』

 直樹と大輔が〝念話〟で罵りあう。

「DやNは頭文字と言っていたな。丁度お前たちの頭文字になるな? しかも鈴木君は丸眼鏡をかけているな?」
「あ、あの。何で大剣を僕たちに向けるんですか!?」
「ちょ、あの、マジで何を言ってるんですか!? 確かに俺の頭文字はNで大輔はDだけどさ!」

 直樹と大輔は必死になって演技する。ただ、内心もう無理だとも思っている。

 プロミネンスがギヌロと直樹を見た。

「ところで、佐藤君。私は君を認識しづらいのだが」

 ホワイトがハッと直樹を見た。確かに今も認識しづらい。顔の輪郭がハッキリとしない。まるで何か不可思議な力を使っているかのように。そしてプロミネンスがそれを口にするまで、その不自然さに気が付かなかった!

 襲い掛かってくる混沌の妄執ロイエヘクサの無数の手や闇の弾丸を相殺していたジュエリーたちも目を見開いた。そういえば、Nと名乗る白仮面男は印象が薄かった!

 そして。

「何より、佐藤! 貴様のスマホの取り出し方と、その視線が気持ち悪い!」
「気持ち悪いっ!?」
「確かに卒業してないからね! 大きなお友達だもんね!」
「俺は紳士だから、ブルーレイがでるまで待つ忍耐力があるぞ! ショーはいつもこっそり後ろで見ているぞ!」

 ガビンと驚愕する直樹を睨みつけたプロミネンスは、手に持っていた大剣を直樹たちの足元に投げつける。大剣が地面に刺さり、二人はが飛び上がる。

 その一瞬の隙にプロミネンスは直樹たちの制服の首元をそれぞれ両手で掴む。地面に突き刺した大剣を足場にそのまま跳び上がる。

「ジュエリー、レイン。攻撃を停止しろ!」
「はいですわ!」
「はひぃ!」

 そして、混沌の妄執ロイエヘクサの攻撃を相殺していた宝石の弾丸と雨の弾丸がなくなり、宙へ跳び上がったプロミネンスたちへ槍衾やりぶすまの如く、殺意の嵐が襲い来る。

「セイッ!」

 しかし、プロミネンスは慌てることなく空中で両手を振りかぶり、直樹と大輔を前方へ投げた。

 殺戮が直樹たちを襲う。プロミネンスの肉壁となる。

「ま、マジで!?」
「え、これが魔法少女のすることなの!?」

 ここまでするとは思わなかった。そう思っていた二人はまさかの所業に驚愕をあらわにする。が、それも一瞬。直ぐに鋭い視線を躱す。

 そして溜息一つ。

「直樹のせいだからね。僕、[薄没]はやめた方がいいよって言ったよ」
「……お前が口走ったのが悪い。ってか頭文字にすんなよ」
「だって、冥土ギズィアがいたんだもん。ってか、ぶっちゃけバレたのって直樹の気持ち悪い視線でしょ」
「……オタクの性だ」

 直樹と大輔は諦めた。





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公開可能情報

“土下座”:土下座をすることを補助する。土下座した相手が許そうかな、という思う感情を抱かせる。

“土下座[泣き真似]”:泣き真似が得意になる。魔力をちょっと使うと、土下座しなくともマジで泣ける。涙の量は自由自在。

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