異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ

文字の大きさ
83 / 342
一年

なめこが嫌いでした:this fall

しおりを挟む
 翌朝、クラリスさんも一緒にマキーナルト家全員で朝食を食べていた。

 クラリスさんは屋敷にある客人用の部屋を借りて、春前までこっちの方で暮らすらしい。そして春になったらエレガント王国の王都に移り住むそうだ。

 春から王家のところで家庭教師の仕事が入るらしい。

「クラリス、今日はどういう予定なのかしら?」
「む、今日の予定かの。セオが何やら子供たちが集まるイベントに行くようだし、儂も一緒に行こうかと思ってるの」

 今日の早朝に帰ってきて、寝る前に食事をとっているアテナ母さんがクラリスさんに訊ねる。

 クラリスさんはチラリと俺の方を見ながら答えた。

「あら、そうなの。珍しいわね」

 アテナ母さんは俺の方を見て言った。確かに珍しいだろう。俺が町の子供たちと関わろうと行動することが少ないからだ。

「そう?」

 アテナ母さんがニコニコとうれしそうに俺の方を見ているので恥ずかしくなり、惚ける。

 そうするとさらにアテナ母さんは嬉しそうに微笑んだ。アテナ母さんの隣に座っているロイス父さんも、少し疲れた顔でありながら微笑ましそうな表情をしている。

 ただ、俺は恥ずかしいのでそっぽを向きながら、アランが作ってくれた美味しい野菜スープを口に入れる。

 うん、美味しい。

「ライン」

 と、俺が美味しく野菜スープを飲んでいたら、アテナ母さんが俺の右隣に座っているライン兄さんに鋭く声をかけた。

「な、何。母さん」

 ライン兄さんは少し詰まりながらもアテナ母さんに問い返す。

「さっきからシロメジイタケを飲み込んでないようだけれども」

 シロメジイタケはマッシュルームみたいな白いキノコである。

 そう、ライン兄さんはキノコ全般が嫌いである。いや、キノコの研究は好きである。キノコの味や触感は嫌いらしい。

 まぁ、そのため、アランに言って、ライン兄さんの野菜スープに入っているキノコの量は少ないのだが、それでもライン兄さんは頑なに食べようとしないのが日常である。

 とは言っても、普通に避けたりするとアランやアテナ母さんたちにとても叱られるので、口の中に含んであとで捨てるとか、色々と姑息な手を使っている。

 こういう所は五歳児らしくて可愛いと思う。

「ほう、ライン坊はキノコが苦手なのかの」

 それのやり取りを見ていたクラリスさんは、珍しいものを見たという目をしている。まぁ、クラリスさんがライン兄さんと話をしたのは昨日が初めてだし、その昨日のライン兄さんは利発的な部分が前面に出ていたからな。

 だから、昨日のライン兄さんとに抱いた印象と違い、少し珍しかったのだろう。

 と、思ったのだが、それだけじゃないらしい。

「ロイス、親子だのう」

 クラリスさんはニヤニヤとした表情を全面に出し、ロイス父さんを揶揄うように言った。

 親子? いや、親子だけど。親子じゃなかったら怖いわ。マジで。

 そう思ってロイス父さんを見ると、ロイス父さんが少しバツが悪そうに下を向いている。視線の先には野菜スープがあった。

 あれ?

「そうなのよ、クラリス」

 アテナ母さんはクラリスさんの言葉に相槌を打つ。それは愚痴の始まりみたいだ。

「アラン、実際にどうなのかの。ロイスのキノコ嫌いは直っておらんのか」

 ああ、やっぱり。ロイス父さんの野菜スープもライン兄さんと同様、シロメジイタケの量が少ない。

 朝食を夢中で食べていたエドガー兄さんとユリシア姉さんも流石に気になったらしく、一旦手を止めて、ロイス父さんの野菜スープを覗き込んだ。

 そして驚いた。

 ライン兄さんも驚いている。

「ああ、そうだな。前よりは多少マシになったが、それでもライン坊くらいのレベルになっただけで、キノコ嫌いが直ったわけではないな」

 一緒に食事をとっていたアランが答える。前にも話したが、体裁を気にしない場合であれば、家は使用人も一緒に食事をとるようにしている。

「ほう、少しはマシになったということか」

 クラリスさんはアランの返答を聞いて、さらに悪い顔になった。

 ん? マシになってライン兄さんレベルってことは前はもっと酷かったのか。

 意外だな。

 ロイス父さんって天然だけどそれを除いたら完璧超人的な感じだと思ったけど。もちろん、完璧な人間はいないが、好き嫌いはないと思ってた。

 そんな事を思ってロイス父さんを見ると、ロイス父さんはスンっとすまし顔をして野菜スープを飲んでいた。

「皆さん、駄目ですよ。ライン様たちにかっこいいお父さんって思われるように頑張っていたのに。今だって冷静そうに見せて、耳がとっても赤くなっているんですよ。そっとしましょう。そっと」

 そして、レモンが止めを刺した。

 言葉だけ聞くとレモンの天然さが発揮されたように思われるが違う。小麦色の狐耳や狐尻尾が上機嫌に揺れている。しかも、あれは悪戯が成功した時の上機嫌の揺らし方である。

 また、一瞬だけクラリスさんと視線を交わし、その一瞬だけ二人とも、とても悪い笑みを浮かべた。

 ロイス父さんはそれを言われ、さらに耳を赤くした。が、表情は崩さず、涼し気な表情で野菜スープを飲み干し、そして残りのおかずを食べた後、席を立った。

 と、それと同時にアテナ母さんも完食したらしく、席を立つ。

 そして、二人同時に自分が食べた皿をもってキッチンの方へと消えていった。

 うん、最初からアテナ母さんの策略か。ロイス父さんと早く二人っきりになりたかったのだろう。アテナ母さんが嬉しそうにロイス父さんにすり寄りながら歩いていたし。

 クラリスさんやレモン、アランはそれに最初から気が付いていたらしい。キッチンに一緒に行った二人の後姿を微笑ましそうに見ていた。

 ここら辺は元パーティーの連携だろう。レモンはパーティー仲間ではないが、昨日、チラリと聞いた感じだと昔からの知り合いらしいし、仲もよかったんだろう。

 また、一緒に食事をとっていたバトラ爺やマリーさんはアランたちの表情を見てそれに気が付いたらしく、なんとも言えない、もにゃっとした表情をしていた。

 だが、やはりエドガー兄さんたちは分からなかったらしく、大人たちが一斉に嬉しそうな微笑ましそうな変な表情になったので、不思議そうに首を傾げていた。

 と、それも束の間。

 ライン兄さんの右隣に座っていたマリーさんがライン兄さんの方を見た。

「ラインヴァント様。ロイス様のラインヴァント様と同様にキノコが嫌いですが、食べましたよ」

 いつもより柔らかい口調でマリーさんはライン兄さんを諭す。

「……うん」

 ライン兄さんは小さく頷く。

「では、口に入っているのを飲み込みますか」
「……わかった」

 そうしてライン兄さんは意を決したように鋭い表情になって、フスンと鼻を鳴らしたやる気と共にゴクンと音を鳴らした。

 そしてライン兄さんは、左側に置いてあったレモン水が入ったガラスのコップを手に取り、飲み干した。

 うん、頑張った。

「えらいですよ、ラインヴァント様」

 マリーさんが少し誇らしそうに微笑んで言う。

「うん!」

 ライン兄さんも誇らしそうな顔をする。可愛い。

 皆の頬が緩んでいる。

 そしてマリーさんは言った。

「では、残りも頑張ってください」

 まだ、ライン兄さんの野菜スープには幾つかのシロメジイタケが入っていた。

 ライン兄さんは絶望を浮かべる。

「あと、エドガー様とユリシア様もキチンと野菜を食べてください」

 そして、飛び火したエドガー兄さんとユリシア姉さんは悔しそうに一瞬だけ唸った。

 子供は得てして、何かしらの野菜が苦手なのである。

 アランが作る野菜スープは彩り緑の野菜で埋め尽くされているのだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2025年12月に第4巻が発売されました  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞! 2024/02/21(水)1巻発売! 2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!) 2024/12/16(月)3巻発売! 2025/04/14(月)4巻発売! 応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!! 刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました! 旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』 ===== 車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。 そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。 女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。 それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。 ※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です 2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です

処理中です...