異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ

文字の大きさ
257 / 342
収穫祭と訪問客

才は才でも小才という場合もあるし、頭の良さも一言で区切られない:Harvest festival

しおりを挟む
「それで、セオ。何か言うことは?」
「……う」

 クソ。これも全部、あいつらのせいなのに。

 ロイス父さんの執務室で、正座させられている俺は、悔しそうに顔を歪めた。

 将棋の勝負に勝った俺はおっさんたちを逆立ちで街一周させた。

 のだが、逆立ちで一周している最中に、ルーシー様たちと彼女たちを案内していたロイス父さんたちに会ってしまったらしい。

 んで、合流したレモンやオルドナンツたちと一緒に屋敷に帰れば、ロイス父さんに説教されていたのだった。

「セオ?」
「お、俺は悪くないと思います!」

 ビキリ。ロイス父さんがこめかみに青筋を浮かべる。

 ひぃっ! と声を上げそうになるが、俺は勇気を振り絞る。俺には一切非がない事を述べる。

「お、俺はガッグたちに勝負を申し込まれただけだし、罰ゲームだってあいつらが提案したんです! 俺は悪くありません! 悪いのは俺に負けて逆立ちで街一周したガッグ達だと思います!」

 嘘偽りはない。本当にな――

「罰ゲームはセオが提案したって聞いたんだけど?」

 プイッ。俺は慌ててロイス父さんから顔を背ける。

「お、俺じゃないよ。ガッグ達だよ」
「セオ。僕の顔を見て、言ってよ」
「…………」

 怖い。

「セオ。僕が怒っているのはさ、罰ゲームでガッグ達を街一周させた事ではないんだよ?」
「じゃあ、俺が怒られる理由はないね。オルドナンツの所に行――」
「逃がさないよ、セオ」
「ひぃっ!」

 ピョイッと正座を解除して、逃げようとしたが、逃げられず。ロイス父さんにがっしりと頭を掴まれる。

 そして両手でこめかみ部分を抑えられる。

「セオ。僕、事前に予定を知らせていたよね」
「な、何のっ?」
「僕たちの予定を」
「わ、忘れてたよ!」
「嘘だね」
「ぎゃっ!! 痛い、痛い!! 暴力反対ッッ!!!!」

 こめかみをぐりぐりとさせられる。

 マジで痛い!! 俺は魔力を吹き上げて暴れるが、ロイス父さんはびくともせず。

 死ぬ! 死んでしまう!!

「分かったから! 知ってました! 知ってましたよ!」
「だよね。それでワザと、僕たちに出会うようにあの時間帯にガッグ達を街一周させたよね?」
「はい、しました!! どうせゴリラ並みの身体能力を持つガッグ達なんて、逆立ちで街一周余裕だから、ロイス父さんの怒られるっていう本当の罰ゲームをさせようと!! 言った! ほら、言ったから! お願いだからそれ、やめて!! マジで痛いから!! 死ぬから!」
「こんなんで死なないよ」
「うぎゃっっっ!!??」

 涙が溢れる。

 クソッ! やっぱり、これも全部ガッグ達のせいだ! あいつらのアホな雰囲気のせいで、俺までアホな事をしてしまった!! 

 普段の俺なら、こんな分かりやすい失敗なんかしないのに!!

 明日の将棋大会で、報復しなければ!!

「全く反省していないようだね」
「してる! してるってばっ!! ほら、俺の顔! 俺の顔、見てよ! 反省している顔じゃん!!」
「……はぁ」
「た、助かった」

 ロイス父さんが深いため息を吐いた。それと同時にこめかみぐりぐりが解除された。

 俺は涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、這いずってロイス父さんから離れる。またこめかみぐりぐりさせられたらたまったものではない。

 無属性魔法の〝無障〟で結界も張って、ロイス父さんからの攻撃を警戒する。

「……はぁ」

 すると、ロイス父さんはもう一度深いため息を吐いた。

「セオ。今日はこれくらいにするけど、次やったら地下工房没収だからね」
「わ、分かったよ」

 流石に工房没収は困る。色々と困る。

「それと、明日の将棋大会の出場は禁止ね」
「えっ!?」
「何か問題でもあるのかな?」
「い、いえ……」

 クソ。ガッグ達に報復できないじゃないか。どうすれば……

「はぁ。こういうところは、誰に似たんだか」
「あら、私じゃないわよ」
「アテナ」
「あ、アテナ母さん」

 アテナ母さんが呆れた表情で俺を見やる。

「セオ。アナタの声、屋敷中に響いていたわよ」
「え」
「ああ、それと、もうすぐ晩御飯だから、着替えてきなさい。今の恰好で出るのは駄目よ」

 そういったアテナ母さんは俺を執務室から追い出した。どうやら、アテナ母さんはロイス父さんに用があったらしい。

 何の用か少し気になりはするが、まぁいいや。俺は廊下をトボトボと歩く。ついでに、“宝物袋”から取り出したタオルで涙とかで汚れた顔をふき取る。

「ああ、痛かった」

 ロイス父さんにされたこめかみぐりぐりんのせいで、まだ頭がズキズキする。痛い頭を抑えながら、階段を登っていたら、

「アンタ、アホじゃないの?」
「あ、ユリシア姉さん。それにルーシー様も」

 二階から呆れた表情をしたユリシア姉さんと少し苦笑いをしているルーシー様が降りてきた。

 二人で、二階で何をしていたのだろう?

「ルーシーを部屋に招いただけよ」
「ナチュラルに心を読まないでよ」
「アンタは顔に出やすいだけよ」
「そうかな?」
「そうよ。アンタ、間抜けなんだから」
「はぁっ!?」

 イラッとする。流石に俺は間抜けではない。

 と、思ったのだが、

「父さんにあんだけ怒られて、まだ自分は間抜けじゃないとでも思ってるの?」
「うぐっ」
「ルーシー。さっきも言ったけど、セオはアホなのよ」
「そ、そうでしょうか? 話を聞けば将棋で大人に勝ったらしいですし、その、アホというわけではないのでは……」

 ルーシー様が必死にフォローしてくれる。

 ……前は出会い方が悪かっただけで、ルーシー様っていい人なのでは?

 そう思ったらユリシア姉さんが鼻で笑った。

「ルーシー。ガッグたちに様は要らないわよ。それと、セオは確実にアホよ。まぁ、確かに、頭はいいのよ」
「そりゃあ、ユリシア姉さんよりもいいと思うよ。昨日だって、マリーさんの課題終わらなくて俺に泣きつい――」
「ふんっ!」
「痛っ!」

 ユリシア姉さんに間髪入れずに頭を叩かれた。ロイス父さんのこめかみぐりぐりの痛みが引いていないのもあって、それなりに痛い。

 俺が頭を抑えていると、ユリシア姉さんはそんな俺を鼻で笑った。

「ほら、こういうところよ。セオはアホなのよ」
「……なるほど」
 
 ルーシー様が納得いったように頷いた。

 う、頷かないで欲しかったんだけど……

「それにセオって、常識がないのよ」
「少なくともユリシア姉さんよりは常識――」
「また、叩かれたいの?」
「いえ、滅相も」

 俺はブンブンと顔を横に振る。

「フフ」

 すると、ルーシー様が僅かに頬をほころばせた。

「ルーシー、そんなにセオが可笑しかったの?」
「なんで、俺が可笑しい前提なのっ?」
「っるっさい!!」
「二度目は喰らわないよ!」
「ッ!」

 俺は〝無障〟を発動して、ユリシア姉さんのはたきをガードした。

 すると、頬をほころばせていたルーシー様が息を飲む。

「どうかしたの? ルーシー?」
「い、いえ。セオドラー様が無詠唱で魔法を行使していましたので、ちょっとびっくりしただけです」

 あ、そういえば、普通、無詠唱で魔法を行使するのって難しいだったけ? 

 アテナ母さんとか、街の半数以上が無詠唱で魔法を行使しているから忘れてたんだけど。

「生誕祭の時も思いましたが、セオドラー様は魔法の才能に溢れているのですね」
「まぁ、確かにセオって魔力も多いし、父さんたちも褒めるくらい魔力の扱いが上手いらしいけど、魔法の才能はあんまりないわよ?」
「どういうことですか、ユリシア様?」

 ルーシー様がキョトンと首を傾げる。

「だって、セオ。無属性以外の適性がほぼ皆無なのよ。ね、セオ」
「まぁ、そうだね。生活魔法程度でもかなり苦労するし。とはいえ、無属性魔法だけでも十分な気もするけど」

 ぶっちゃけ、普段は魔術を使ってるからあんまり気にしないけど、あれも人前じゃあんまり使えないしな。

 そう思ったとき、

「そう、なのですか……」
 
 ルーシー様が怪訝な表情で俺を見ながら、頷いた。

 うん? そんな表情をされることが今の会話であったか?

 今度は俺の表情が怪訝となるが、

「セオ! もう着替えたのかしらっ?」
「あ、やべ。ルーシー様。失礼します」

 アテナ母さんの声が響き、俺はルーシー様に軽く頭を下げて自室へと急いで戻った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※2025年2月中旬にアルファポリス様より第四巻が刊行予定です  2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です 2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2025年12月に第4巻が発売されました  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦    6巻発売です! 告知遅れてすみません……。  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~6巻が発売中!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍1~9巻発売中。  1~8巻は万冬しま先生が、9巻以降は木々ゆうき先生がイラストを担当してくださっております。    現在別原稿を作業中のため、更新が停止しております。  しばらくしたらまた再開しますので、少々お待ちを……  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

処理中です...