Liedgeschichte

雨宮律

文字の大きさ
上 下
10 / 18
ムズィーク祭1日目!

隠し事

しおりを挟む
アインスとツヴァイの騒がしいコンビと別れたシャロが歩いていると街中に小さく出来たステージの横でクレープを食べている『VOLLKOMMEN』のラオドラとヴァイスガーが居てシャロは声をかけた。
「お疲れ様ー、さっきまでステージだったんだっけ?」
「お、シャロちゃんお疲れぇー。そうそうオレとラオドラでそこのステージでバラードを1曲な」
「シャロ来てねぇのかよ」
「俺もステージあったんですぅー!」
むーっと頬を膨らませるシャロにラオドラもヴァイスガーもクスクス笑うとヴァイスガーがシャロにスっと持っていたクレープを差し出してきた。
「はい、シャロちゃんにプレゼント」
「え、いいの?」
「ちょっと食べちゃったけどラオドラから貰うから」
「おい取ろうとするなよ、ならシャロの買ってくるわ…シャロは何がいい?」
ラオドラの提案に後輩に奢ってもらうのは…と一瞬だけ考えたシャロだったが気にせずに「イチゴのクレープ!」と伝えるとラオドラは「了解」とだけ伝えてクレープ屋の方に向かってしまった。
その背中を見ているとふととある部分に目がいき、シャロはヴァイスガーに問いかけた。
「ねぇねぇ、ラオドラの左肩にあるワンポイントタトゥーっていつからあるの?」
ラオドラの左肩にはワンポイントタトゥーが入っており、いつも左肩を見せる衣装を着たりしている。
ラオドラがマギーリート学園に入ってきた時にはもうそのタトゥーは入っており、オシャレなのもあって真似するファンもいるとかいないとか…。
「ん?あれは10…11歳くらいかな?」
「へぇ…そうなんだ…」
「…待たせたな、ほらよ、シャロ」
走って戻ってきたラオドラからクレープを受け取りお礼を伝えてから1口食べると甘くて美味しいクレープに口角を上げた。
「うまーい!」
「いいな、シャロちゃん。オレにも1口ちょうだい?」
「いいよ、あ…」
ヴァイスガーが近寄ってきたその時、いつも着ているヴァイスガーの上着の右肩部分がずり落ちそうになっていた………が、すぐさまラオドラが戻してしまいシャロもヴァイスガーも驚いてしまった。
「今、何か見たか?シャロ」
そう問いかけてくるラオドラの目は笑っていなく真剣なものだった。あまりの怖さにシャロは何も言わずに首を横に振っているとヴァイスガーがラオドラの脛辺りに蹴りを入れた。
「った!!」
「ラオドラ、シャロちゃんビビらせてんじゃねぇよ…ごめんな?シャロちゃん大丈夫?」
「う、うん…てかまさかだけど…ヴァイスガーも右肩にタトゥー入ってんの?」
そう問いかけるとヴァイスガーは「んー…」と悩み出してからクスリと笑って人差し指を唇の前に持ってきてシャロだけに聞こえるくらい小さな声で…
「ヒ、ミ、ツ♡」
と言ってきた。
そんなヴァイスガーをボーッと見ていると『BeTeN』のライブのアナウンスが入り、ハッと我に返ったシャロは2人から少し離れた。
「俺、ライブ見てくるな!クレープありがとう!」
「おう、気をつけてな」
「じゃあな、シャロちゃん」

(…ヴァイスガーの右肩の隠し事には触れんようにしとこ…)
大ステージの方に向かいながらそう誓ったシャロなのであった。
しおりを挟む

処理中です...