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5 侑李は感じ取る
歩の天然さには舌を巻くしかない。
侑李は大部屋の窓から下の道路を歩く息子の後ろ姿を見守る。
時々振り返っては手を大きくふってくる息子の歩。侑李からは遠すぎて見えないが、その顔には大きな笑顔がのっているのは間違いない。
「毎日病院に来るなんて、本当に感心な子だね」
そっと微笑んでいると、後ろから同室男性の柔らかな声がかかり振り向く。
「ええ、朝も来なくていいし、家でゆっくりするようにって言ってるんですけど」
「うちの娘は病院に来たらこっちの具合悪くなるって、初日に来たきりですよ」
「それが普通じゃないですか。ここはバスの本数が多い訳じゃないし」
「それに歩君は愛想がいいし、かわいいよね」
相部屋になった年上のオメガ男性も出産経験があり高校生の娘を持つ親だ。
互いに共通点も多く、この入院生活でも退屈にならないのは、彼が話し相手になってくれるからだ。
彼の言う通り、歩のほくほくっとした笑顔はかなり甘めで年上のファンが多い。でもその自分の魅力に気付かない鈍感な所がある。
親友の川ちゃんから中学卒業前の一時期は熱烈にアピールを受けていたのだが、まったくそれに気付く事はなかった。
この年ごろの男の子、特に高校生なんて繊細な時期は、親と距離を取りたがるものだろう。自分の無邪気さを親に見せるのも恥ずかしがるはずだが歩に限ってはない。
これまで反抗期らしき反抗期もなく、これは正常な成長か? と疑問だったけれどそれは杞憂だった。間違いなく真っ直ぐに育っている。これからもあの子はこんな調子で素直に親に接してくれるのだろう。
自分の弁当を作り学校へ行く、掃除洗濯なんかの日々の家事。部活はないにしても、病院に通うのは大変なことだ。
それを愚痴もなく当たり前にこなせるのは、歩という子の内面をよく表していると思う。とにかくいい子なのだ。
しかも翻訳もない状態でギア・マークレーンをもてなしたらしいのだ。それを聞いて侑李は絶句してしまった。
ギア様がこちらの世界に来ていた!? と。
侑李が初めてギアに出会った場所はもちろん異世界だった。
侑李は留学先から戻ってすぐに異世界に引っ張り上げられ、戦闘中の場に出現してしまった。何が起こったのかわからず混乱している所を、後の夫となるガイアに抱えられ危険な中から逃げる事ができた。
その後はガイア一行と共に城へと戻り、事情を知った領主マークレーン家に引き取られたのだ。
正確に言えばギアの妻であるローズ・マークレーンの庇護の元で、その世界の標準より豊かな生活を送ることができた。
ローズとは同じオメガであった事もあり、母子のような関係を築いていたし、実際に母と呼ばせてもらっていた。
そして弟と呼べるような存在もできた。
マークレーン夫婦はとうの昔に子宝をあきらめ、後継ぎとして頭脳派のトナムを親戚から引き取って養育していた。年下の少年トナムは可愛く賢く素直で、悩みを相談できるほどに仲良くなれた。
異世界トリップしてしまい命も危うい場面で救われ、周囲の人にも恵まれたのは幸運だったとしか言えない。
しかもギアは異世界に介入できるほどの魔力を持っていたので、侑李を日本に戻す事が可能だったのも奇跡だ。
ただその能力を使う事で魔力を枯渇させる訳にいかない戦況にあり、その為しばらくは、一年以上はそこに留まる必要があった。
侑李から見た領主ギアはいつも顔をしかめた怖い人だった。嫌われていない事はわかったものの、長く会話を交わした事がない。
しかしこれは侑李に限った話ではなく、誰もがギアに抱く恐れだった。
ギアとの初対面の時に逃げ出さなかったのは、全身から放たれる圧の恐ろしさに体が硬直したからだった。それくらいびびっていた。
そのゴツゴツした顔面と強い魔力のせいで、女性や子供には怖がられ、これまでも犬や猫の動物にも逃げられてきたと聞く。あと一歩で手懐けられそうだったのが熊と言うのも冗談ではないだろう。
母ローズも最初は親に決められたギアとの結婚が恐ろしく、どうすれば逃れることができるのかと悩んで、床に伏せたこともあったと言う。
それでも長いこと一緒にいれば、心の内を表に出すことが下手な優しい人なのだとわかり、強い魔力にも時間をかけて体をならす事ができたと言っていた。
そんなギアだから、実の息子のように可愛がっていたガイアと、弱い異世界人である侑李との結婚も認めてくれたのだろう。
元の世界へ帰してもらうまでの待機の期間のうちに、仲を深めてしまっていたのに。
ギアからすれば、ガイアにも侑李にも言いたい事があって当然だっただろうに、一度も責められる事はなかった。
その後は結婚してすぐに妊娠した。
お腹が目立つ頃には戦火がすぐ近くまで迫ってしまい、街の人々は慌てて避難を開始していた。そんな状況だから侑李にもお腹に宿った命にも危険があった。
男性オメガの出産は命がけと言うのに、医師も薬も限りがあった。そんな時に頼りになるはずの産婆もいなかった。けれど、城を離れる気はなかった。一人で日本に戻るつもりもなかった。
それを説得したのもギアだった。命を大切にしろ、私の孫を無事に生んでくれと潤んだ瞳で訴えられ、折れてしまった。
日本に帰ってからは大変だった。その一言につきる。覚悟はしていたが頼れる人が誰一人いなかったのだ。
頑張って見栄っ張りの両親の期待に応えてきたつもりだった。
言われるままに地元を離れ関東の優秀な高校に進学、学校代表として海外の姉妹校へと短期交換留学した。自慢の息子とまではいかないが、恥ずかしくない息子であったはずだった。
しかし留学から帰ったはずの息子は数日で突然失踪。一年以上たった後に大きなお腹を抱えて戻ってきたのだから、田舎の父母の怒りはいつまでも収まらなかった。
異世界に行っていたと説明しても受け入れられる両親ではない。
失踪期間の記憶はないと言い張って口を噤んだ。出産は間近だった。両親は人の目を気にして、まとまった金とともに侑李を地方の産前産後ケアのある助産院に送り連絡を絶った。
出産は壮絶だったが、日本の医療の助けがあったから、侑李と歩は今も五体満足でいられる。
新たな命、愛しい人の血を引く歩に出会えて良かった。そして歩の母になれたのは侑李の誇りだった。
赤ん坊を抱えたまま、血の繋がりのない人の助けを受けて、何度も折れそうになりながらここまでやってきた。
辛くて悲しくて、時には自分を日本へ送ったギアを恨んだ。でも歩を抱ける幸せを思えば、すべては些細な事だと流せるようになった。
だからこそ、言葉を理解し始めた小さな歩に、あの夢のような異世界の出来事を語る事ができた。
ギア様が初めてこちらの世界にやってきた。あちらは、落ち着いたということ……?
侑李の眉根には皺がよる。しかし安易に自分の望む方へと考えを寄せるのは危険だ。期待を掛ければそれが叶わなかった時の反動が大きくなる。
ギアがしてきたのは、自分ではなく他人を異世界に送るだけの事に限っていた。それがどうして。
侑李は頭をふって、今はまだ必要のない考えを追い払った。
それにしても、歩の語った事実。息子が語った一部始終が侑李にとっては疑問だらけだ。
ギアが何か忘れ物をしたようで探していたらしい。その忘れ物というのはきっと魔力のこもった翻訳石のことだろう。あれが無ければ言葉が通じない。
しかもコントのように慌てていたと言うし、歩の頭や手を優しく何度も撫でたという。
しかも甘い物が苦手なはずのギアが、歩と一緒にクッキーを食べたというのだ。
しかも笑った……ギア様が笑ったって……レアどころの騒ぎじゃない。
明るいおっさんだったって……その表現もあり得ない。
あの子は童顔だから、ギア様からすれば小さな子供、庇護対象である。何より顔を見ても恐れず逃げなかった。
ギア様からしたら好きに触れても腰が引かない子の相手をするのは初めてだっただろう。となると、孫同然の歩は増々愛おしい存在だと感じたはずだ。
だとしたら、これほど嬉しい事はない。
父も祖父母も親戚もいない、それは歩には申し訳ないことだと思っている。
小学生の時に短期間だが、からかいの対象になったことも知っている。
本来なら沢山受けるはずの愛情を、歩は侑李一人からしかもらえてこなかった。でも一度も曲がる事無く素直で真っ直ぐな心根を持っている。
異世界の話には当然疑問を持っているだろう。だけど歩は一度もそこに水を差すような発言をしたことがない。
優しい息子。大好きな人との子供。中学生になっても高校生になっても、可愛い子供でい続けてくれる。
ずっと寂しい思いをさせてきた。でも、もうすぐ連れて行ってあげられるかもしれない。
期待はするなと言い聞かせても、気持ちは傾く。
侑李は病室の天井をじっと見上げる。今は視界はぶれない。
目まいが酷くなったのはこの二週間の事だった。
高校生の頃にもこんな体調の変化があり、目まいに酔っている間にあの世界に飛んでいた。異世界への道が構築されている途中なのかもしれない。
侑李は界を渡った後遺症で右の耳が聞こえにくくなってしまったが、周りのフォローもあり生活できている。
歩はあちら世界とのハーフ。侑李ほど体に害は出ないだろう。
もうすぐ、家族が揃うかもしれない。ねえ、そう思っていいの? ガイ。僕だってもう待ちくたびれたよ。強いふりをするのも、限界がある。
侑李は魅力的なオメガだ。これまでに子供がいる事を承知で結婚前提の付き合いを申し込んでくる人もいた。
貧しさから抜け出すチャンスでもあったし、寂しい気持ちを埋めてほしい衝動もあった。でも結局踏み出す事はできなかった。
会いたい……
侑李は窓辺に視線を移し、夏の分厚い雲を眺め、堅物で愛しくも憎い人の顔を思い浮かべた。
侑李は大部屋の窓から下の道路を歩く息子の後ろ姿を見守る。
時々振り返っては手を大きくふってくる息子の歩。侑李からは遠すぎて見えないが、その顔には大きな笑顔がのっているのは間違いない。
「毎日病院に来るなんて、本当に感心な子だね」
そっと微笑んでいると、後ろから同室男性の柔らかな声がかかり振り向く。
「ええ、朝も来なくていいし、家でゆっくりするようにって言ってるんですけど」
「うちの娘は病院に来たらこっちの具合悪くなるって、初日に来たきりですよ」
「それが普通じゃないですか。ここはバスの本数が多い訳じゃないし」
「それに歩君は愛想がいいし、かわいいよね」
相部屋になった年上のオメガ男性も出産経験があり高校生の娘を持つ親だ。
互いに共通点も多く、この入院生活でも退屈にならないのは、彼が話し相手になってくれるからだ。
彼の言う通り、歩のほくほくっとした笑顔はかなり甘めで年上のファンが多い。でもその自分の魅力に気付かない鈍感な所がある。
親友の川ちゃんから中学卒業前の一時期は熱烈にアピールを受けていたのだが、まったくそれに気付く事はなかった。
この年ごろの男の子、特に高校生なんて繊細な時期は、親と距離を取りたがるものだろう。自分の無邪気さを親に見せるのも恥ずかしがるはずだが歩に限ってはない。
これまで反抗期らしき反抗期もなく、これは正常な成長か? と疑問だったけれどそれは杞憂だった。間違いなく真っ直ぐに育っている。これからもあの子はこんな調子で素直に親に接してくれるのだろう。
自分の弁当を作り学校へ行く、掃除洗濯なんかの日々の家事。部活はないにしても、病院に通うのは大変なことだ。
それを愚痴もなく当たり前にこなせるのは、歩という子の内面をよく表していると思う。とにかくいい子なのだ。
しかも翻訳もない状態でギア・マークレーンをもてなしたらしいのだ。それを聞いて侑李は絶句してしまった。
ギア様がこちらの世界に来ていた!? と。
侑李が初めてギアに出会った場所はもちろん異世界だった。
侑李は留学先から戻ってすぐに異世界に引っ張り上げられ、戦闘中の場に出現してしまった。何が起こったのかわからず混乱している所を、後の夫となるガイアに抱えられ危険な中から逃げる事ができた。
その後はガイア一行と共に城へと戻り、事情を知った領主マークレーン家に引き取られたのだ。
正確に言えばギアの妻であるローズ・マークレーンの庇護の元で、その世界の標準より豊かな生活を送ることができた。
ローズとは同じオメガであった事もあり、母子のような関係を築いていたし、実際に母と呼ばせてもらっていた。
そして弟と呼べるような存在もできた。
マークレーン夫婦はとうの昔に子宝をあきらめ、後継ぎとして頭脳派のトナムを親戚から引き取って養育していた。年下の少年トナムは可愛く賢く素直で、悩みを相談できるほどに仲良くなれた。
異世界トリップしてしまい命も危うい場面で救われ、周囲の人にも恵まれたのは幸運だったとしか言えない。
しかもギアは異世界に介入できるほどの魔力を持っていたので、侑李を日本に戻す事が可能だったのも奇跡だ。
ただその能力を使う事で魔力を枯渇させる訳にいかない戦況にあり、その為しばらくは、一年以上はそこに留まる必要があった。
侑李から見た領主ギアはいつも顔をしかめた怖い人だった。嫌われていない事はわかったものの、長く会話を交わした事がない。
しかしこれは侑李に限った話ではなく、誰もがギアに抱く恐れだった。
ギアとの初対面の時に逃げ出さなかったのは、全身から放たれる圧の恐ろしさに体が硬直したからだった。それくらいびびっていた。
そのゴツゴツした顔面と強い魔力のせいで、女性や子供には怖がられ、これまでも犬や猫の動物にも逃げられてきたと聞く。あと一歩で手懐けられそうだったのが熊と言うのも冗談ではないだろう。
母ローズも最初は親に決められたギアとの結婚が恐ろしく、どうすれば逃れることができるのかと悩んで、床に伏せたこともあったと言う。
それでも長いこと一緒にいれば、心の内を表に出すことが下手な優しい人なのだとわかり、強い魔力にも時間をかけて体をならす事ができたと言っていた。
そんなギアだから、実の息子のように可愛がっていたガイアと、弱い異世界人である侑李との結婚も認めてくれたのだろう。
元の世界へ帰してもらうまでの待機の期間のうちに、仲を深めてしまっていたのに。
ギアからすれば、ガイアにも侑李にも言いたい事があって当然だっただろうに、一度も責められる事はなかった。
その後は結婚してすぐに妊娠した。
お腹が目立つ頃には戦火がすぐ近くまで迫ってしまい、街の人々は慌てて避難を開始していた。そんな状況だから侑李にもお腹に宿った命にも危険があった。
男性オメガの出産は命がけと言うのに、医師も薬も限りがあった。そんな時に頼りになるはずの産婆もいなかった。けれど、城を離れる気はなかった。一人で日本に戻るつもりもなかった。
それを説得したのもギアだった。命を大切にしろ、私の孫を無事に生んでくれと潤んだ瞳で訴えられ、折れてしまった。
日本に帰ってからは大変だった。その一言につきる。覚悟はしていたが頼れる人が誰一人いなかったのだ。
頑張って見栄っ張りの両親の期待に応えてきたつもりだった。
言われるままに地元を離れ関東の優秀な高校に進学、学校代表として海外の姉妹校へと短期交換留学した。自慢の息子とまではいかないが、恥ずかしくない息子であったはずだった。
しかし留学から帰ったはずの息子は数日で突然失踪。一年以上たった後に大きなお腹を抱えて戻ってきたのだから、田舎の父母の怒りはいつまでも収まらなかった。
異世界に行っていたと説明しても受け入れられる両親ではない。
失踪期間の記憶はないと言い張って口を噤んだ。出産は間近だった。両親は人の目を気にして、まとまった金とともに侑李を地方の産前産後ケアのある助産院に送り連絡を絶った。
出産は壮絶だったが、日本の医療の助けがあったから、侑李と歩は今も五体満足でいられる。
新たな命、愛しい人の血を引く歩に出会えて良かった。そして歩の母になれたのは侑李の誇りだった。
赤ん坊を抱えたまま、血の繋がりのない人の助けを受けて、何度も折れそうになりながらここまでやってきた。
辛くて悲しくて、時には自分を日本へ送ったギアを恨んだ。でも歩を抱ける幸せを思えば、すべては些細な事だと流せるようになった。
だからこそ、言葉を理解し始めた小さな歩に、あの夢のような異世界の出来事を語る事ができた。
ギア様が初めてこちらの世界にやってきた。あちらは、落ち着いたということ……?
侑李の眉根には皺がよる。しかし安易に自分の望む方へと考えを寄せるのは危険だ。期待を掛ければそれが叶わなかった時の反動が大きくなる。
ギアがしてきたのは、自分ではなく他人を異世界に送るだけの事に限っていた。それがどうして。
侑李は頭をふって、今はまだ必要のない考えを追い払った。
それにしても、歩の語った事実。息子が語った一部始終が侑李にとっては疑問だらけだ。
ギアが何か忘れ物をしたようで探していたらしい。その忘れ物というのはきっと魔力のこもった翻訳石のことだろう。あれが無ければ言葉が通じない。
しかもコントのように慌てていたと言うし、歩の頭や手を優しく何度も撫でたという。
しかも甘い物が苦手なはずのギアが、歩と一緒にクッキーを食べたというのだ。
しかも笑った……ギア様が笑ったって……レアどころの騒ぎじゃない。
明るいおっさんだったって……その表現もあり得ない。
あの子は童顔だから、ギア様からすれば小さな子供、庇護対象である。何より顔を見ても恐れず逃げなかった。
ギア様からしたら好きに触れても腰が引かない子の相手をするのは初めてだっただろう。となると、孫同然の歩は増々愛おしい存在だと感じたはずだ。
だとしたら、これほど嬉しい事はない。
父も祖父母も親戚もいない、それは歩には申し訳ないことだと思っている。
小学生の時に短期間だが、からかいの対象になったことも知っている。
本来なら沢山受けるはずの愛情を、歩は侑李一人からしかもらえてこなかった。でも一度も曲がる事無く素直で真っ直ぐな心根を持っている。
異世界の話には当然疑問を持っているだろう。だけど歩は一度もそこに水を差すような発言をしたことがない。
優しい息子。大好きな人との子供。中学生になっても高校生になっても、可愛い子供でい続けてくれる。
ずっと寂しい思いをさせてきた。でも、もうすぐ連れて行ってあげられるかもしれない。
期待はするなと言い聞かせても、気持ちは傾く。
侑李は病室の天井をじっと見上げる。今は視界はぶれない。
目まいが酷くなったのはこの二週間の事だった。
高校生の頃にもこんな体調の変化があり、目まいに酔っている間にあの世界に飛んでいた。異世界への道が構築されている途中なのかもしれない。
侑李は界を渡った後遺症で右の耳が聞こえにくくなってしまったが、周りのフォローもあり生活できている。
歩はあちら世界とのハーフ。侑李ほど体に害は出ないだろう。
もうすぐ、家族が揃うかもしれない。ねえ、そう思っていいの? ガイ。僕だってもう待ちくたびれたよ。強いふりをするのも、限界がある。
侑李は魅力的なオメガだ。これまでに子供がいる事を承知で結婚前提の付き合いを申し込んでくる人もいた。
貧しさから抜け出すチャンスでもあったし、寂しい気持ちを埋めてほしい衝動もあった。でも結局踏み出す事はできなかった。
会いたい……
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