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7 どうにか到着した俺
本当に、異世界に来た……
明らかに日本のどこかの景色じゃない。
冷や汗をかきながらも、肩にかかる重みから逃れたくて、重力に任せてズルリと滑るリュックを地面に降ろし、他の荷物も半ば投げ出す。見たところ全部無事。
つ、疲れた……
長距離を何時間もかけて移動した時みたいな疲労感。実際に長距離を移動したんだから当たり前か。
異世界って気候がいいんだな、緑がいきいきしてる。病後の父さんにはちょうどいい感じ、暑からず寒からずで、光熱費も抑えられそう。主婦かよ……
俺の頭は少し混乱してるらしい。どうでもいい単語がやたら出てくる。
「……ユーリ! ユーリ!!」
父さんを呼ぶ野太い声に顔を上げると、濃い顔イケメンで胸板厚すぎのおっさんが、屋敷の木の扉を壊す勢いで開けてこちらにやってくる姿が見えた。張りのないクタクタのシャツに、ゆるめのズボンは茶色。
今はそのおっさんはどうでもいい。
自分の事ばっかりだったけど、父さんは? ちゃんと一緒にこっちに来てる? 気持ち悪いって言ってたけど大丈夫なのか?
そう思って横を見ると、涙をダラダラ流した父さんが感激に口を押さえながら、よろよろと地面から立ち上がっていた。
ああ、この疾走してくる胸厚の野獣っぽい人が父さんの夫で、俺の父親なんだって、その様子を見てようやく思い当たった。
名前、なんだっけ……ずっと覚えたはずだったのに今は頭文字さえ出て来ない。そうだ、俺バカだったわ。
血が繋がっているから顔見れば直感でわかるといか、そんな感動的のは一切ないな。言われなきゃわからん。
野獣男が父さんの名を呼んでいる。父さんが感激している。その様子から予想しただけの実に現実的な事実。
似てないわ、これ。父親と俺、一ミリも似てない。
それほど野獣さんと俺との間に似た部分がまったくない。
だけど野獣さんいい顔してるわ。鼻は眉間の所からしっかり高くて、目、鼻、口ってパーツ全部がしっかり主張してる。ハリウッド俳優にいそう。
父さんってイケメン好きだったんだな。そうやってからかってやろうと思ったけど、ダメージ受けた体が辛そうで、それどころじゃなかった。
十代の俺でさえ崩れ落ちたんだ。しかもまだ骨がまだギシギシ言っている。病後の父さんにはもっと堪えただろう。
父さんを支える為に立ち上がって、その細い二の腕を支えたその時、こっちに向かってきていた野獣さんの巨体に、上から丸ごとぎゅっと抱きしめられるのがわかった。しかも力強い。
大人の男の人って、こんななんだ……
レイヤーさんが来た時も思ったけど、雄くさい男に縁のない俺はまずそんな事を思った。
筋肉の量が多いから熱いのか、本当にふれている部分がぽかぽかする。筋肉野獣のくせに、緑っぽい爽やかないい匂いがしてくる。
「ユーリ! ニール!」
俺の父親らしき野獣さんが、ニールニール言いながら俺の頭をぽかぽかと叩き、髪をぐちゃぐちゃ掻き回す。
叩くのはいいけど何か説明してくれと父さんを見る。けれど、父さんの意識は全部野獣父に持っていかれているみたいだ。一緒に時を超えた息子を忘れたみたいに、俺を一切見ていない。
「ユーリッ、※※※! ※※※※! ニールッ、ファウッ!」
「ガイ! 会いたかったよぉぉ!」
二人が名前を呼び合い再会に涙しているのに、無粋な事を言いだせなかった。
おい、名前間違ってるぞ。ニールニール言うけど違うから。俺、アユムだから……え、待て、俺アユムだよな。ってか、俺ってニールなの? 超日本人顔だけど実はニールなの!?
「※△※※、ユーリ、ニール※※△!」
「もう、何言ってるか半分もわからないよ。喋る前に翻訳石ちょうだい。ガイは相変わらずなんだから」
なんか色々と頭の中が混乱する。それに加えて体が浮き上がった。
最初は大きな野獣さんに父さんごと抱きしめられていたのに、三人で歓喜のおしくらまんじゅうしてるうちに、俺だけ上へと持ち上がり、その後きれいに弾きとばされたのだ。
ぽーんって。
そして踏ん張りがきかずにヨタヨタっと後ろにもつれ尻餅をつく。
俺が輪から抜けた事にも気付かないで、いや、むしろ余計なもんがなくなって密着度を増す二人に、俺はその場で膝を抱えて体育座りをして見上げる。
あー、この座り方するの久しぶりだわ。しかし孤独感増すな。
両親の仲がいい、これは素晴らしいことだ。俺はアルファの父親とはこれが初対面だけどな……そのはずなんだけどな……
そんな現実逃避ともいえるひとり言を身の内に落としていると、開け放たれていた扉から、俺の知る顔が、すごい、鬼のような形相で出てきた。その顔面一つあれば武器はいらない感じ。
「ん……レイヤーさん……?」
やっぱそうだ。コスプレイヤーさんだ!
かなり混乱中の俺だけど、お久しぶりのレイヤーさんの姿にちょっとテンションが上がる。
本当はギア様って言ってここでは一番偉い人らしいけど、今はそんなの横へ置いておこう。
おーいこっちだよー! 俺だよー! と思わず手をふってしまう。
俺達のドリームハウスにやってきて、親切にも果物とクッキーをくれたレイヤーさん。格好もあの時に近くて、それでいて少しだけラフな感じ。マントしてない。
今なら完璧わかる。レイヤーさんて地球の外国人じゃなくて、こっちの世界の人だったんだね。
抱き合い熱いちゅーをかます二人に怒りが削がれたのか、溜息をついてレイヤーさんは俺のそばにやってきた。
「※※……※※……△、ハァ」
相変わらず何を言っているのかわからないけど、両手を上げてやれやれって溜息をついている。オーバーアクションもあって言葉が通じなくてもわかりやすいよ。レイヤーさんはわかりやすい。
『こいつら、息子をほったらかして何やってんだ。まったく』
だったら同意。
だよね、溜息でるよねって笑い掛けたら、一瞬前まで呆れた顔していたはずのレイヤーさんが、急に無言でボロ泣きしていた。何がおこったの。
「オウッ、※※※、※、※……ニール、◇◇ニール」
とつとつと喋り最後にやっぱりニールって言って、それから俺を抱きしめ、背中をぽむぽむした。
野獣父さんの頭ポカポカより優しくて、何だかこっちまで涙が出て来ちゃったよ。
レイヤーさん、俺って本当に異世界に来たんだね。父さんの言ってたことに嘘はなくて、俺って本当に異世界人とのハーフだったんだね……
しばらく俺とレイヤーさんはがっちり抱きしめ合った。
こいつら二人は放っておこう的な事をレイヤーさんと言葉もなく通じ合わせて、俺は父さんたちを置いてドキドキしながら屋敷に向かう。
荷物の半分はレイヤーさんが持ってくれて、入り口の脇に置いてジェスチャーしたから、俺もそれにならっておいた。重い荷物はひとまずここに放置で貴重品だけしっかり身に着ける。冷静になった野獣父が運んでくれることを期待しとく。
明らかに日本のどこかの景色じゃない。
冷や汗をかきながらも、肩にかかる重みから逃れたくて、重力に任せてズルリと滑るリュックを地面に降ろし、他の荷物も半ば投げ出す。見たところ全部無事。
つ、疲れた……
長距離を何時間もかけて移動した時みたいな疲労感。実際に長距離を移動したんだから当たり前か。
異世界って気候がいいんだな、緑がいきいきしてる。病後の父さんにはちょうどいい感じ、暑からず寒からずで、光熱費も抑えられそう。主婦かよ……
俺の頭は少し混乱してるらしい。どうでもいい単語がやたら出てくる。
「……ユーリ! ユーリ!!」
父さんを呼ぶ野太い声に顔を上げると、濃い顔イケメンで胸板厚すぎのおっさんが、屋敷の木の扉を壊す勢いで開けてこちらにやってくる姿が見えた。張りのないクタクタのシャツに、ゆるめのズボンは茶色。
今はそのおっさんはどうでもいい。
自分の事ばっかりだったけど、父さんは? ちゃんと一緒にこっちに来てる? 気持ち悪いって言ってたけど大丈夫なのか?
そう思って横を見ると、涙をダラダラ流した父さんが感激に口を押さえながら、よろよろと地面から立ち上がっていた。
ああ、この疾走してくる胸厚の野獣っぽい人が父さんの夫で、俺の父親なんだって、その様子を見てようやく思い当たった。
名前、なんだっけ……ずっと覚えたはずだったのに今は頭文字さえ出て来ない。そうだ、俺バカだったわ。
血が繋がっているから顔見れば直感でわかるといか、そんな感動的のは一切ないな。言われなきゃわからん。
野獣男が父さんの名を呼んでいる。父さんが感激している。その様子から予想しただけの実に現実的な事実。
似てないわ、これ。父親と俺、一ミリも似てない。
それほど野獣さんと俺との間に似た部分がまったくない。
だけど野獣さんいい顔してるわ。鼻は眉間の所からしっかり高くて、目、鼻、口ってパーツ全部がしっかり主張してる。ハリウッド俳優にいそう。
父さんってイケメン好きだったんだな。そうやってからかってやろうと思ったけど、ダメージ受けた体が辛そうで、それどころじゃなかった。
十代の俺でさえ崩れ落ちたんだ。しかもまだ骨がまだギシギシ言っている。病後の父さんにはもっと堪えただろう。
父さんを支える為に立ち上がって、その細い二の腕を支えたその時、こっちに向かってきていた野獣さんの巨体に、上から丸ごとぎゅっと抱きしめられるのがわかった。しかも力強い。
大人の男の人って、こんななんだ……
レイヤーさんが来た時も思ったけど、雄くさい男に縁のない俺はまずそんな事を思った。
筋肉の量が多いから熱いのか、本当にふれている部分がぽかぽかする。筋肉野獣のくせに、緑っぽい爽やかないい匂いがしてくる。
「ユーリ! ニール!」
俺の父親らしき野獣さんが、ニールニール言いながら俺の頭をぽかぽかと叩き、髪をぐちゃぐちゃ掻き回す。
叩くのはいいけど何か説明してくれと父さんを見る。けれど、父さんの意識は全部野獣父に持っていかれているみたいだ。一緒に時を超えた息子を忘れたみたいに、俺を一切見ていない。
「ユーリッ、※※※! ※※※※! ニールッ、ファウッ!」
「ガイ! 会いたかったよぉぉ!」
二人が名前を呼び合い再会に涙しているのに、無粋な事を言いだせなかった。
おい、名前間違ってるぞ。ニールニール言うけど違うから。俺、アユムだから……え、待て、俺アユムだよな。ってか、俺ってニールなの? 超日本人顔だけど実はニールなの!?
「※△※※、ユーリ、ニール※※△!」
「もう、何言ってるか半分もわからないよ。喋る前に翻訳石ちょうだい。ガイは相変わらずなんだから」
なんか色々と頭の中が混乱する。それに加えて体が浮き上がった。
最初は大きな野獣さんに父さんごと抱きしめられていたのに、三人で歓喜のおしくらまんじゅうしてるうちに、俺だけ上へと持ち上がり、その後きれいに弾きとばされたのだ。
ぽーんって。
そして踏ん張りがきかずにヨタヨタっと後ろにもつれ尻餅をつく。
俺が輪から抜けた事にも気付かないで、いや、むしろ余計なもんがなくなって密着度を増す二人に、俺はその場で膝を抱えて体育座りをして見上げる。
あー、この座り方するの久しぶりだわ。しかし孤独感増すな。
両親の仲がいい、これは素晴らしいことだ。俺はアルファの父親とはこれが初対面だけどな……そのはずなんだけどな……
そんな現実逃避ともいえるひとり言を身の内に落としていると、開け放たれていた扉から、俺の知る顔が、すごい、鬼のような形相で出てきた。その顔面一つあれば武器はいらない感じ。
「ん……レイヤーさん……?」
やっぱそうだ。コスプレイヤーさんだ!
かなり混乱中の俺だけど、お久しぶりのレイヤーさんの姿にちょっとテンションが上がる。
本当はギア様って言ってここでは一番偉い人らしいけど、今はそんなの横へ置いておこう。
おーいこっちだよー! 俺だよー! と思わず手をふってしまう。
俺達のドリームハウスにやってきて、親切にも果物とクッキーをくれたレイヤーさん。格好もあの時に近くて、それでいて少しだけラフな感じ。マントしてない。
今なら完璧わかる。レイヤーさんて地球の外国人じゃなくて、こっちの世界の人だったんだね。
抱き合い熱いちゅーをかます二人に怒りが削がれたのか、溜息をついてレイヤーさんは俺のそばにやってきた。
「※※……※※……△、ハァ」
相変わらず何を言っているのかわからないけど、両手を上げてやれやれって溜息をついている。オーバーアクションもあって言葉が通じなくてもわかりやすいよ。レイヤーさんはわかりやすい。
『こいつら、息子をほったらかして何やってんだ。まったく』
だったら同意。
だよね、溜息でるよねって笑い掛けたら、一瞬前まで呆れた顔していたはずのレイヤーさんが、急に無言でボロ泣きしていた。何がおこったの。
「オウッ、※※※、※、※……ニール、◇◇ニール」
とつとつと喋り最後にやっぱりニールって言って、それから俺を抱きしめ、背中をぽむぽむした。
野獣父さんの頭ポカポカより優しくて、何だかこっちまで涙が出て来ちゃったよ。
レイヤーさん、俺って本当に異世界に来たんだね。父さんの言ってたことに嘘はなくて、俺って本当に異世界人とのハーフだったんだね……
しばらく俺とレイヤーさんはがっちり抱きしめ合った。
こいつら二人は放っておこう的な事をレイヤーさんと言葉もなく通じ合わせて、俺は父さんたちを置いてドキドキしながら屋敷に向かう。
荷物の半分はレイヤーさんが持ってくれて、入り口の脇に置いてジェスチャーしたから、俺もそれにならっておいた。重い荷物はひとまずここに放置で貴重品だけしっかり身に着ける。冷静になった野獣父が運んでくれることを期待しとく。
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