異世界人αと日本人Ωの間に生まれたハーフな俺

宇井

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13 ユーリとガイアの恋(番外編)

 ここは石の国だった。
 火を起こすのも光を灯すのも敵に投げる爆弾も、すべてが採掘した石が原料になっている。その元となる原石では力が弱く、魔力を流し加工する事で精度を各段に上げて利用している。
 そう、この国には魔術がある。魔力があれば魔術が使え、それが強ければ尊敬の対象になる。実際国を動かす機関には魔力持ちが多い。
 バース性に魔力のありなしがプラスされる事で人の分類は多様化。特別な特徴があってもなくても個性として認められているのは驚きだった。
 魔力持ちでもなく男のオメガである侑李だけど、ここは案外と息苦しさのない場所だった。

 侑李の耳に光るピアスも魔力が入っている。丸く磨かれ一見装飾品にしか見えないのだが、どんな言語も翻訳してしまう優秀な機能がついている。
 ガイアと恋人となりこの国で生きていく覚悟を持った侑李は、たまにこのピアスを外しては独特な音に耳を慣らしている。
 それに最初に気付いたのは賢いトナムで、言葉を覚えたいなら教えてあげますと勉強に誘われ一緒にいる時間が長くなった。
 トナムは侑李より四つも年下でまだ声変わりの兆しもない男の子だ。
 日本に当てはめるなら中学1年くらいになるだろうか。何だか弟のようでかわいいし、むさい男ばかりが集うこの城では一番話しやすい相手だった。
 兄役であるガイアから余計な教育を受けてしまったらしく、スラングも使えるし、閨事にも詳しい。
 侑李が赤面してしまう言葉もさらっと出てくるし、オメガに必要な薬の情報はローズママより知っていた。
 だからガイアから告白された時も、夜這いをかけられた事も、すべてにおいて相談に乗ってもらっていた。トナムがこの年齢にして将来この国を背負っていと決まっているのも納得の落ち着きがあって、冷静な意見をくれる。

 そんな将来が期待されるトナムが侑李とガイアの姿を見つけて、遠くから手をふってくる。そんな時は子供らしくて可愛らしい。

「二人で砦跡の方へ行くんですかー?」
「うん。美味しいリンゴがあったら持って帰るから」
「はーい。いってらっしゃい。まだ寒いですからね、外での遊びは、ほどほどにして下さいね」

 侑李も笑顔で手を振り返し、ガイアに腰を抱かれ並んで歩き出した。
 これから二人でピクニックランチできる場所を探しつつ、リンゴやベリーを収穫するつもりだ。

 この石の国では一日二食の習慣があり、朝夕は自宅で食べるのが普通だ。昼休みは食堂や屋台で調達する者もいれば、食事を取らない者もいる。
 お昼として食べなくても、お腹が空けばその辺の木からもいだ果実をかじって空腹を満たせばいいし、どうも食事に重きを置いていない印象がある。
 同じ領主館に住みながら、ガイアと侑李二人の生活はすれ違いが多い。だから朝夕を一緒に取る機会は少ない。だからガイアは昼になると侑李を探し出し昼食へ誘ってくる。
 ガイアの場合は軍人な事もあって三食しっかりとるタイプだ。今日は城下で肉の串焼きを調達したらしく、手にした包みからは甘じょっぱい香がほわっと立っている。
 
 城の周辺にはむかし広大な果樹園が広がっていた。今では放棄されたそこには野生化した果樹があるのだが、人の手がなくとも逞しく育ち立派な実りを提供してくれている。
 原っぱのあちこちには胸の高さまである木々が茂っていて、そこにはベリー類が色づく。水も豊富で季節の実りを存分に受けられる豊かな土地なのだ。
 侑李はたまに立ち止まっては指先ほどの小さな粒をもいで味見をする。美味しければガイアの口にも放り込む。

「美味しいよね」
「こっちも美味しいぞ、ほら」

 別の木の実を今度は侑李が口を開けて受ける。

「うん、ほんとう」

 指先も口の中もベリーの赤に染まっている。

「染まっちゃったね」
「赤いな」

 そう言っては微笑み唇を合わせる。何とも甘酸っぱいデートだ。
 周囲には同じように寄り添い手を繋ぎ、昼デートを楽しんでいるカップルが二組いた。
 どちらも人目も気にせず密着していちゃついている。これがこの国の国民性のようで、大好きな人を自慢したいし、みんなに仲の良い姿を見てもらいたいらしい。
 そういえばローズママは冬でも胸を半分以上出していたなあ、と侑李は母と慕う人を思い出す。
 筋肉自慢の人は裸になりたがるし、男性であっても髪が自慢な人は長髪だったりする。
 ガイアはどうかと言うと隣を見れば、ベストの下のシャツのボタンを三つ開けて肌をチラ見せしてきているのだから、やはり胸肉がポイントなのだろう。
 ちなみに侑李はまだ肌寒い気がして長袖を着込んでいる。季節の変わり目で風邪をひくのは嫌だ。
 侑李はと言えば特に自慢できる事はないけれど、異世界人であり少し顔立ちが違う事がポイントとなるのかもしれない。これまで自分の顔を自慢に思った事はないけれど、ここの人々を見習ってみるのもいいのかもしれない。
 
 歩いては立ち止まりリンゴをもぎ、持って来た小さな籠の中を一杯にした。欲張ってしまったせいかなかなか重い。
 日本の品種とは違うようで、どれもミカンのような大きさだ。味も木によって甘味や酸味の違いが出ているのが面白い。
 少し疲れた所で木陰になる場所に敷布を広げて両足を投げ出して座る。
 今日は日差しも穏やかで空気も気持ちが良い。こうしてピクニックをしていると、ここが戦争をしている最中の国である事なんて忘れてしまいそうになる。
 長い冬が終わり撤退していた敵が再び進軍を始めたと聞いている。応戦の準備も整い後は具体的な日程や戦力、兵糧等の戦略を詰めている所だ。
 束の間の平和のうちに相手を決め結婚する者も多かったし、ガイアもそれが頭にあったから侑李との仲を一気に進めたのだろう。

 異世界の、それも戦の中に放り出されパニックを起こしている侑李を救い、城に引き返す行軍の中でも常に隣にいて面倒を見てくれたガイア。
 強い雄であるアルファに魅かれたと言うより、その優しさの方が侑李には響いていた。告白された時も驚きの次には嬉しさで一杯になった。
 その後のガイアの夜這いは本気でびびったし怖かったから、それは今でも許せない。だけど今では二日に一度はしているし、もうガイアと離れるなんて考えられない。
 ただ真面目に勉強してきただけの高校生の自分が、こんな恋をしてしまうなんて信じられない。
 自分が特定の人を想い頬を赤らめたり、言葉一つにドキドキしたり、今後また戦に出る事を思って涙が出たり、とにかく生まれて初めての感情の揺れに処理が追いつかなかった。
 今では良い事も悪い事も全部をひっくるめて前向きになってはいるが。
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