辺境で待っていたのはふわふわの愛でした

宇井

文字の大きさ
5 / 7

5 不測の事態

しおりを挟む
 婚姻してから一週間、ステファンは仕事を入れずアリーに寄り添っていた。
 町に降りて領民の生活を見て、商店で買い物をした。岬まで登り朝日を見て、夕方の浜辺を散歩して大きな貝殻を拾った。
 アリーがしたい事を見つけたらすればいい、ないならないでいい、そんなスタンスで見守ると言われ嬉しかった。

 ここへ来て一番変わったのはアリーの食生活だ。
 朝はしっかり食べる習慣がついた。食事の後はボル婦人の後を付いて歩いて食料を買い出しに行く。
 昨日は庭の果実を収穫してジャムを煮た。
 砂糖は予想の倍以上を入れて、コトコト火にかける。
 ジャム用の瓶詰を専用の鍋で蒸して詰める。これまで完成品しか見た事がなかったアリーは感動した。
 あまった果実もスライスして干せば保存食ができる。果実なのにお菓子だけじゃなく、料理の材料にもなると知った。
 自分の体を作る食の元を目にして、料理にも興味がわき、食べる事が楽しくなった。ステファンと囲む食卓も楽しくなった。
 そんな気の抜けた感じで、三週間がたっていた。


 ステファンの寝室はアリーの隣。なのに彼が夜にアリーの部屋を訪問してくる事はなかった。
 スキンシップは多いほどにある。家で顔を合わせれば抱擁に頬へのキス、額ヘのキス。一緒にいる時は常に隣にいて体のどこかが触れ合っている。そうしているだけで自然と微笑んでいた。
 二人は結婚して夫婦になったが、ステファンとしては新たな家族を迎え入れた感覚なのだろう。
 ボル夫婦を父と母に例えると、ステファンは長男、アリーは年の離れた弟。もしかすると自分の子供、くらいに思っているかもしれない。
 だから今後も一線を越る事はないのだとアリーは思った。


 でもそれはアリーの勘違いだった。
 アリーの中には大きく育ったステファンがいる。

「えっ、アリーも初めてなの? でも、ごめん……腰が、とまらない……!」
「あん……旦那様っ……気持ちいいっ……」

 ステファンは初めての体験に飲まれながら、それでもアリーが傷つかないように腰を動かしていた。
 前後の動きで奥に負担をかけるのはダメだと、動きを遅めたり、途中の感じる部分を攻めているのが余計にアリーの性感を高めている事に気付かない。
 胸の飾りも舐められすぎでぷっくり立っている。
 ステファン様は本当に病弱なのだろうか、広い肩に強い腰。予想外の動きをする巧みな技にアリーは困惑する。
 年に一度来るか来ないかの発情期ではないため濡れは悪い。
 それでもステファンが何度も香油を塗りこめるから負担もなく、ズズッと入り込む杭はアリーの奥の奥に到達してゴリゴリ刺激してくる。
 痛いようでいて気持ちよくて、もう一度突いてほしくて、気持ちがバラバラになる。
 
「……入り口だけじゃなくて、奥の方も絞めてくるよ……アリーアリー……」

 体を折ってキスをしてくる。
 唇へのキスはベッドでが始めてだった。
 頬から少し横にずれただけなのに、どうしてこれほど気持ちがいいのか、アリーは夢中でそれを重ねた。
 器用なステファンはキスと同時に突いてくる。どうしても声が漏れてしまうのに、ステファンは遠慮してくれない。
 自分の体の事はわからない。でもステファンが気持ちよくなって、自分の名前を呼んでくれるのが嬉しい。

「そうだ……確かこっちも可愛がってあげるものだと……」

 ステファンの手がアリーの慎ましい竿を握り、ぐっと圧を掛けたところで白濁が散る。
 それと同時に中でも達してしまうけれど、ステファンは虚脱したアリーから抜かないまま体位を変え枕を抱えさせる。
 後ろから出入りされると違ったさっきまでと刺激が走る。
 動きはゆっくりで労わるような愛を感じる。細い息を吐いて感じていると勝手に涙が出てきた。
 
「あっあっあっ……んっ……すごい……」

 さっきまでの昇りつめるような快感とは違い、深くてジンジンとした感覚がある。
 その感覚にステファンが好きだと自覚する。

「……好き、すきです……旦那様、ステファン様……」
「アリー、僕も好きだ……これはいけない。死ねない……僕は絶対に死なないっ!」
「……だめっ……そこっ。あっあっあっ……」
 
 パンパンと肌がぶつかり、未知の感覚に頭が真っ白になる。
 ぐぐっと腰が押し付けられ、熱い飛沫が注がれた。
 その後、二人は目が合うたびにキスをして、肌を寄せては何度も交わった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったらしい

325号室の住人
BL
父親代わりの叔父に、緊急事態だと呼び出された俺。 そこで、幼馴染の王子に前世の記憶が戻ったと知って… ☆全4話 完結しました R18つけてますが、表現は軽いものとなります。

兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語

サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。 ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。 兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。 受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。 攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。 ※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜

鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。 そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。 あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。 そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。 「お前がずっと、好きだ」 甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。 ※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています

強面龍人おじさんのツガイになりました。

いんげん
BL
ひょんな感じで、異世界の番の元にやってきた主人公。 番は、やくざの組長みたいな着物の男だった。 勘違いが爆誕しながら、まったり過ごしていたが、何やら妖しい展開に。 強面攻めが、受けに授乳します。

【完】姉の仇討ちのハズだったのに(改)全7話

325号室の住人
BL
姉が婚約破棄された。 僕は、姉の仇討ちのつもりで姉の元婚約者に会いに行ったのに…… 初出 2021/10/27 2023/12/31 お直し投稿 以前投稿したことのあるBLのお話です。 完結→非公開→公開 のため、以前お気に入り登録していただいた方々がそのままお気に入り登録状態になってしまっております。 紛らわしく、申し訳ありません。 2025/04/22追記↓ ☆本文に記載ありませんが、主人公の姉は婚約破棄された時、主人公の学園卒業時に実家の爵位が国に返上されるよう、手続きをしていた…という設定アリ。

記憶喪失になったら弟の恋人になった

天霧 ロウ
BL
ギウリは種違いの弟であるトラドのことが性的に好きだ。そして酔ったフリの勢いでトラドにキスをしてしまった。とっさにごまかしたものの気まずい雰囲気になり、それ以来、ギウリはトラドを避けるような生活をしていた。 そんなある日、酒を飲んだ帰りに路地裏で老婆から「忘れたい記憶を消せる薬を売るよ」と言われる。半信半疑で買ったギウリは家に帰るとその薬を飲み干し意識を失った。 そして目覚めたときには自分の名前以外なにも覚えていなかった。 見覚えのない場所に戸惑っていれば、トラドが訪れた末に「俺たちは兄弟だけど、恋人なの忘れたのか?」と寂しそうに告げてきたのだった。 ※ムーンライトノベルズにも掲載しております。 トラド×ギウリ (ファンタジー/弟×兄/魔物×半魔/ブラコン×鈍感/両片思い/溺愛/人外/記憶喪失/カントボーイ/ハッピーエンド/お人好し受/甘々/腹黒攻/美形×地味)

つまりは相思相愛

nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。 限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。 とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。 最初からR表現です、ご注意ください。

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

処理中です...