オメガの家族

宇井

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21 宗賀の凋落

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 俺が宗賀に対して心の内で吼えてから二ヵ月後、衝撃的なネットニュースを目にする事になった。
 なんと宗賀の義父が会社の経営権を失って社長の座を追われていたと言う内容だったのだ。
 まったく理解が追いつかなかったけれど、詳しい人の解説がコメント欄にあってようやく俺にも内情がつかめた。
 そして俺が初めて知る事実が続々と出てきて驚いた。
 義父が宗賀を継いで社長になったのは大学卒業の二年後。その年に義父の父親が亡くなった事による人事だった。
 社会経験さえ乏しい若造が社長になる。その事で社内は荒れたが、当時は取締役に血族が多く義父は後押しされて無事社長に就任した。
 その経験のない社長をサポートするために、新たに社外から引き抜いた実務者が投入された。宗賀は彼のアイデアと手腕で大きくなっていったのだ。
 そして最近義父は息子、つまり俺の元夫である誠を子会社から呼び寄せ重要なポストに置いた。世襲の準備である事は明らかだ。
 それが社内の反発を生んだ。業績悪化の打開策が社長交代は理由にならない。
 会社の私物化。創業家がトップを務める会社の命は長くない事を従業員はわかっている。同業他社による買収は歓迎され、宗賀の経営陣は刷新。無能者は追い出された。誠の現在の立場については何も書かれていなかった。
 これをきっかけにして、宗賀はブラック体質、Ωの雇用率が低いなど、内情を知る人からの告発が相次いでいる。
 宗賀の事なんてどうでもいい。でも読んでしまったからには、モヤモヤを抱え続けるのはしんどい。それで俺が尋ねたのは、わが家の賢人である光流の部屋だった。
 光流の解説は俺の理解と合っていた。
 まとめると、
 社長は実績ゼロのお飾り、その息子は実力があるのかさえ不明である。それが世間に暴かれてしまった。たったの一行で済んでしまう内容だった。
 とは言っても宗賀の家は個人所有、株もあるから暮らしは変わらない。義父には使い切れないほどのお金と時間があるのだから、悠々自適第二の人生を歩めばいい。けれどあの人の頭は硬いから上手く切り替えできないだろう。
 以上の事を光流は教えてくれた。
 プライドが粉々になって今頃は屋敷で火を噴くようにカッカしている事だろう、なんて余計な事も言うけど、俺もそう思う。
 そんな事があったから、お見合いとか後継ぎ関係を巡る接触がなくなっていたのだろう。
 
「継ぐべき物がない。これでこっちに構う理由なんてなくなった。宗賀食品には創業者の血なんて要らないって決まったんだ。おじい様が欲しがったαの孫なんてもう用なしだよ。僕たちにとっては朗報だね」
「なるほど、それはいいニュースだ」
「名家三代続かずって言う見本だね」

 孫奪還の計画がなくなったなら、もう余計な事はしてこないだろう。大きな荷物がなくなって、肩が軽くなった気がする。すっきりだ。

「そうそう、佐保さんから母さんに最近連絡あった?」
「いやまったく。本当に仕事が忙しいんだろうね」

 佐保さんの仕事がとても忙しく、一か月もわが家の誰とも会わないという異例が続いる最中だ。
 知り合いや友達レベルならこの位の間隔は当然だろうけど、俺達は家族ぐるみなので一週間に一度は誰かしらが佐保さんに会っていたのだ。
 いるべき人がいないとちょっと寂しい。でも仕事が忙しいのはいい事だ。
 佐保さんは自称無職なだけで、突発的に仕事が入る事があるようだ。光流が言うにはコンサルタント的仕事をしているらしい。法人相手に経営アドバイスとか俺には想像もつかない。

「でもそろそろ、連絡来る頃だと思うよ。仕事が終わったからお茶でもしましょうって」
「どうだろうなぁ。それって光流の予言か?」
「そう。俺の予言は当たる。佐保さんの大仕事は終わった。だから今日か明日、母さんのスマホに佐保さんからの連絡は来る」

 光流は自信満々。謎の余裕で断言した。
 結果連絡は来た。一週間後だったけど。
 佐保さん不足になっていた俺と郁也は、うっほうっほと興奮しながら、待ち合わせのカフェに向かった。
 最寄り駅より一つ隣の駅前は絶えず進化しているようで、店が頻繁に入れ替わっている。その情報を掴むのが上手な佐保さんは、いつも美味しい店を見つけては案内してくれる。
 郁也は抹茶パフェ、俺はパンケーキを食べる。それをニコニコ顔で見守る佐保さんはとても機嫌がいい。
 佐保さんが持つと増々小さく見えるエスプレッソカップ。そんな姿が可愛くて俺の方がにやにやしてしまう。
 
「今回はとてもいい仕事でした」
「よかったですね。お疲れ様でした」

 佐保さんはご機嫌で、もう同じセリフを五回は言っている。

「いつになく充実して、睡眠時間を削ってしまうくらいでした」
「お仕事がお好きなら、続ければいいんじゃないですか?」
「いや、一か月以上も史君や郁也君、曽山家の皆さんと会えないのは寂しかったですよ。時間が自由にならないなんてもう御免です。もうこれまでに一生分の労働をしているのに動いたのは……大切なものを守るためでしたからね。それでなければ老害どもの相手はしていられません」

 きりっと断言する佐保さんは漢だった。
 睡眠を削ったと佐保さんは言ったけれど、彼の顔はいつになく艶々している。やっぱり出来る男は仕事があってこそ輝くのかもしれない。そしてビジネス用のスーツがとてもお似合いすぎて、大人の色気にあてられそうだ。

「時間ができたのならまた、これまで通り俺達の相手して下さると嬉しいです」
「もちろんです。今日も事後処理がありましたが、お二人に会いたくてお誘いしてしまいました。それほどこの時間は私にとっても貴重。唯一の癒しです」

 もぐもぐ食べながらもしっかり俺達の会話を聞いている郁也が口を挟んでくる。

「佐保さん、睡眠は大切です。健康一番です」
「はいはい。わかりましたよ、郁也君」
「ご飯をたくさん食べて、しっかり寝てください」
「そうですね。今夜は早めに布団に入る事にします」
「母さまも、眠れない時がありました。僕は気付かなかったけれど。だから睡眠は大事なのです」

 おやっと言う風に佐保さんが顔を向ける。こうなるとこの人に隠し事はできないようになってしまっている。郁也が何でも無邪気にばらしてしまうのは困りものだ。

「宗賀の代理人から電話が何度かあって。もちろん佐保さんが手配してくれた弁護士さんを通すように言ったのに聞かなくて」
「強引で困るとは伺っていましたが、そこまで非常識とは」
「とにかく苦手で。俺に対して、Ωとして優秀だとか、四人も生んで素晴らしいとか。気にしすぎなのかもしれないけど、性的というか、拒否反応がでて」
「そんな事が。代理人は男性でしたね?」
「老年の男性かと。宗賀のドタバタのせいか今は連絡は来なくはなっています」
「その代理人に煩わされる事は今後もないでしょうが、念の為に私から確かめておきましょうね」
「はい。ありがとうございます」

 佐保さんが言ったらもうそれは決定事項だ。俺の遠慮が佐保さんに届かない事は経験からわかっている。

「郁也君も、もう何も心配はないのでお母さんと一緒にぐっすり眠ってくださいね」
「わかりました。ねえ佐保さん、今日はお家に遊びに来てお泊りしませんか? お客さま用のお布団買ってあるのです。僕の隣に敷きますよ」
「そうですね……何もなければそうしたい所でしたが、終わったはずの仕事に不始末があったようなので、一度戻る事にします」
「またお仕事なのですか?」
「はい。大仕事を終えた気持ちになってしまいましたが、大変な見逃しをしてしまいました。私は不器用なので成功も失敗も同じ数だけしてしまいます。情けない話です」

 見る間に落ち込んでしまう。

「佐保さん元気をだしてください」
「そうですね。人任せにせず自分で動いてけりを付けましょう。そうしたら元気が出るかもしれません」

 ふふっと佐保さんが上品に笑う。
 パフェに乗ったぷるんとした白玉をじっくり味わった後に郁也が佐保さんを見つめる。
 
「佐保さんに会えなくて、僕さみしかったのですよ。でも一番心配していたのは母さまでした」
「それは、すまなかったね、郁也君も史君も」
「いや……郁也ってば、またまた何を言い出すんだよ」

 子供の口に戸は立てられない。本日二度目で焦る。
 でも郁也の言う事は本当だ。佐保さんとの出会いが衝撃だっただけに、彼の健康状態がとても気になって仕方がない。持病はないし健康診断はまめに受けていると言われても、心配なものは心配なのだ。理屈じゃない。

「メッセージでいいので、母さまの相手をしてあげて下さい。僕はこれから忙しい身になります。母さまが元気になる相手は佐保さんしかいなのです」
「ほう、忙しい身ですか?」
「はい。僕は幼稚園が終わったら多美さん教室に通う事になったのです。花壇に咲いているお花を綺麗に飾りたいって言ったら、多美さんが稽古つけてくれる事になりました。お花のお稽古です」
「ほほう。それは素晴らしい」
「慣れたら着物を着て稽古します。この前浴衣を母さまに着せてもらいました。母さま、写真を佐保さんに見せてください」

 郁也に促されてスマホで撮った写真を呼び出す。そこには浴衣を着た郁也が色んなポーズを披露している。

「可愛らしいですね。史君、全て私に送ってください」
「えへへ」

 褒められる事に慣れている郁也が照れている。佐保さんからの賛辞は別物であるらしい。
 浴衣はネットで三千円。安いのに帯までついて翌日配送。藍色のしじら織りは渋すぎかと思ったけれど、地味顔の郁也が着ればきりりと賢そうに見える。
 
「そうそう、私、子供の頃に日本舞踊を習っていた事がありまして。当時の着物は今も捨てずに保管してあるんです。よければ郁也君の練習用の衣装として譲り受けてはいただけませんか?」
「日本舞踊、佐保さんは踊りまでできてしまうんですか」
「いいえ、半年もせず辞めてしまいました。それもさぼりにさぼった上なので、挨拶の仕方を習った記憶しか残っていません。史君? 私は君が思うほどスーパーマンではありませんよ?」
「いやいやご謙遜を」

 佐保さんの所作の美しさを見れば、舞踊がルーツかと思ってしまうのは仕方ない事だ。舞踊を子供の習い事にしてしまうのだから、そもそも家柄もよく上品なのだ。

「着物は五十年も前の代物です。何しろ古いのですが、お稽古用ですからちょうどいいでしょう。着物は門外漢ですが何代にも渡って受け継ぐ事ができるのはいいですね」
 
 クリーニングに出して、郁也が着られるようにお直ししてくれると言う。遠慮しなきゃいけないとわかっているのだが、その着物を郁也が着る姿も見てみたいと思ってしまう。
 佐保さんが思いっきり年上な分、つい甘えてしまう。佐保さんがすごく嬉しそうにするのも、俺をつけあがらせる要因だ。

「史君? 古い着物数枚の事で遠慮する事はありません。年上の友人の顔を立てると思ってもらってやってください」
「ありがとうございます。ではいつも通り、遠慮なく頂きます」

 佐保さん、優しすぎる。
 
「佐保さん、母さまが寂しくないように、忘れないでくださいね。朝起きたらおはようって、元気なしるしのメッセージを下さい」
「わかりました。では、目が覚めたらすぐに送るようにしましょう。よろしくお願いしますね史君」
「はい。ほんとうに、我がまま言ってすいません」
 
 軽く頭を下げた時、郁也がとんでもない爆弾を投げてくれた。

「佐保さんと、母さまは、いつ結婚するのですか?」
「は!?」
 
 俺は大きな声ではっきりと、佐保さんは驚きの顔のまま固まる。

「二人はとてもお似合いなので、結婚してくれると嬉しいのです。そうしたら佐保さんと毎日一緒で、僕も嬉しいのです」
「史君の事は私も大好きです。でもね、郁也君、私はもう今後誰かと結婚する事はありません」
「それは決まりなのですか? 絶対ですか?」
「はい。絶対です」
「郁也は、まさかだけど、お父さんが欲しいのか?」

 今までそんな素振りはなかったのに。

「お父さんはいりません。ただ佐保さんとさよならするのが寂しいのです。それは母さまも同じでしょ?」
 
 ね? と無垢な顔を向けられ言葉に詰まる。確かに佐保さんと別れた後は寂しい。

「じゃあ結婚はいいです。だったら一緒に住むのがいいかなって思います。あ、多美さんと佐保さんが結婚してもいいとひらめきました」
「多美さんとも誰とも結婚はしません。しかし多美さんを相手に出すとは、郁也君は恐ろしい事を言いますね。毎日多美さんが隣にいて小言を言われる生活なんて、ぶるぶる」

 佐保さんは大げさに震えて、郁也を笑わせた。
 でも佐保さんと多美さんの組み合わせは俺も考えた事がある。こちらも少し年齢差があるけれど。だけど二人のやり取りって、無理に当てはめるなら姉と弟って関係に近い気がする。
 仲は良好なんだけど、越えられない線があって、ゆるい上下関係があるみたいな。
 とにかく、大人を惑わせる幼稚園児はまじで怖いって事がよおくわかった。
 ちなみに郁也が唐突に結婚なんて言いだした理由は、その後帰宅してからわかった。どうやら、えいき君からプロポーズを受けたらしい。返事は考え中らしいけれど、あと二晩くらい眠ったら完璧に忘れてしまうのだろう。

 こうして佐保さんとは朝にメッセージのやりとりをするようになった。
 こんなちょっとした事だけど楽しくて、俺は初めてスタンプなるものを購入したのだった。

 その後、郁也はアパートで行われる多美さん華道教室にしっかり通い、今はステップアップして二人で手を繋ぎ、華道と書道の本物のお教室に通うようになってしまった。
 佐保さんが自ら運んでくれた着物は立派な桐箱に入っていて、俺と郁也の部屋がちょっとだけ狭くなった。古いとはいえ虫食いもカビもなくぴかぴかの状態。新しい足袋や帯まで買ってもらって、郁也は衣装持ちになってしまった。
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