誤算だらけのスイートトラップ~地味な僕を落とすはずが自分が罠に落ちてどうするんですか~

ヒオ

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番外編

可愛い声で鳴いてみて ※R18表現あり

1 
 2月22日。世間は猫の日で盛り上がっていた。 もちろん、この男がその波に乗らないはずがなかった。
 帰宅するなり、玲央は紙袋から何かを取り出した。
「じゃーん! 樹、今日は何の日か知ってる?」
 「……猫の日、でしょ?」 「正解! というわけで、はいこれ」
 手渡されたのは、フワフワの黒猫耳カチューシャだった。
「……これ、どうするの?」
「着けて? 絶対似合うから!」
 玲央は目をキラキラさせて懇願してくる。 会社では完璧なトップ営業マンの顔をしているくせに、家ではこの甘えん坊ぶりだ。
「嫌だよ。恥ずかしい」
「えー、いいじゃん。今日だけ! ね? 一回だけ! 俺のために!」
 大型犬が尻尾をブンブン振って「お手」をしているような幻覚が見える。 断固拒否しようとしたが、その必死な様子に、僕は小さくため息をついた。
「……家の中だけだからね」
「うん!」
 僕が観念してカチューシャを着けると、玲央は「かっ……わいい!!」と叫んで、ソファへ僕を押し倒した。
「やばい、想像の百倍可愛い。黒猫似合いすぎ。ねえ、何か言って? 『にゃん』って言って?」
「……絶対に嫌だ」
「ケチ!」
 プイっと横を向くと玲央は僕の首筋に顔を埋め、すりすりと頬を擦り付けた。
「樹、大好きにゃん。ごろごろ……」
「……玲央、それ猫っていうか、大型犬が猫の真似してるだけじゃ……」
「うるさいにゃ。樹が甘えてくれないから俺が甘える日なの」
 玲央は僕の匂いを深く吸い込み(いわゆる猫吸いだ)、満足げに喉を鳴らした。その髪はフワフワしていて、体温は高くて、抱き心地は最高にいい。
「……樹も俺にすりすりしてよ」
「えぇ……」
「してくれないと、俺が樹のこと食べちゃうよ?」
 玲央が顔を上げ、捕食者の目で僕を見つめた。その瞳は、猫というよりは、完全に狙いを定めた黒豹のそれだった。
「……わかったよ」
 僕は諦めて、玲央の胸板に頭を預け、少しだけ頬を擦り付けた。心の中で(今日だけ、今日だけだから……)と言い訳をしながら。
「……ん、よしよし。いい子だね、うちの猫ちゃんは」
 玲央は満足げに僕の頭を撫で回し、そのまま深いキスを落としてきた。猫の日のはずが、結局は大型肉食獣に美味しくいただかれる夜になりそうだった。





 2
「ちょっと! 玲央、何す……っ!」
 ソファに押し倒されたまま、あっという間にスラックスのベルトを外され、布地が足首へと滑り落ちた。ジタバタと抵抗しようとする僕を尻目に、玲央はさっきの紙袋の中をガサゴソと漁り始めた。……なんだろう、すごく嫌な予感がする。
「ジャーン!」
 効果音と共に玲央が嬉々として取り出したのは、黒くて長い、フワフワの物体。 ……いや、待って。ただの『しっぽ』じゃない。 その根元には、明らかに不穏な形状をしたプラグが付いていた。
「……っ、やだ!」
「えー、絶対可愛いよ♡」
「だってそれ、そういうやつでしょ!」
「まあまあ。猫の日は徹底的にやらないと」
 有無を言わせぬ笑顔。 玲央は僕の肩を掴むと、ひょいっと強引に体を反転させた。 そのまま下着も引き下げられ、ヒンヤリとしたローションの感触が、無防備になった入り口を滑る。
「やだよ、やめてよ……!」
「って言う割に、前はすごいことになってるんだけどなあ? 笑」
 耳元でクスクスと笑う声。 指摘されてハッと気づく。 嫌がっているはずなのに、体は玲央の手付きとこの異様な状況に興奮し、痛いほど立ち上がってしまっていた。
 僕は顔から火が出そうなほど羞恥心に襲われ、膝立ちになり必死にシャツの裾を引っぱって隠そうとした。
「……っ、見ないで!」
「ふふ、準備万端だね」
「待っ……」
 僕の制止の言葉も待たず、玲央は狙いを定め、一気にその固いプラグを押し込んできた。
「ヒッ……!!」
 突然の異物感と広がる感触に、僕は甲高い悲鳴を上げ、ビクンと背中を大きく仰け反らせた。 フワリと、お尻の先で黒いしっぽが揺れる。
「あ、ごめーん。ちょっと勢い余っちゃった」
 全然悪びれていない、わざとらしい声が降ってきた。 息を整える間もなく、カシャッという無情なシャッター音がリビングに響き渡る。
「……っ!?」
 振り返ると、玲央がスマホを構えて満面の笑みを浮かべていた。
「でも、すっごく可愛いよ? 俺の猫ちゃん♡」
「ちょっと! 消して、それ絶対消して……!」
 涙目で抗議するものの、しっぽの違和感のせいで上手く動けない。 玲央はスマホを高く掲げ、カシャカシャと何度もシャッターを切った後、「壁紙にしよっかなー」と極悪非道なことを口走っていた。

 猫の日。それは、飼い主(玲央)の欲望が完全に解き放たれる、恐ろしい日だった。



※続きはpixivまたはムーンライトノベルズに掲載
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