診断メーカー単発小説

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愛 i 哀

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「“アイ”と言えば、なぁーんだ!」


要らないくらいにデカい声で話す此奴は、先日私がフった奴だ。フったのにも関わらず、めげないで付き纏ってくる辺り、ウザイながらも何て強い精神力だろう


「何?突然」

「連れない態度!だがそこが好き!」

「はいはいどうでも良いから」


素なのか道化を演じやっているのかイマイチ分からない。素だったとしたらMなのだろうか。どちらにしても希望にお応えする事は出来ないしない。だからって無視する程忙しい訳でも無いので言葉は返して置く


「“私”」

「せいかぁーーい!!流石!!」


正解を出してしまった。
いつも愛だの何だの語って来るから、そういうのを求められているのかと思っていた。ナゾナゾのつもりだったのだろうか。何にせよ、サラっと終わってくれて非常に嬉しい


「で、後は?」


どうやらいつもの面倒臭いやつだったようだ。一体私に何を求めているのか、何を答えて欲しいのか、此奴はアプローチと同時に、何か質問を投げて来る。面倒だけど放って置くと執拗いので、仕方無く答える


「アナタがいつも語ってくるやつ」

「真心を君に......」


うん無視だ、無視


「あぁっ!本に視線を戻さないで!こっち見て!!
あぁそんな鋭い目線で見詰めないでっ!恥ずかしい...!」


否、これは睨んでいるのである。


「...それで、後は?」


どうやらまだ納得がいかないらしい。
放り投げて縄で縛り上げる事も出来るけれど、同じ質問を日を跨いでもされるのは流石に御免こうむりたい


「...かなしいとかの“哀”」

「それは先刻言ったでしょ?」


...は?
記憶まで何かに侵食されてるの?何かと言われれば、言葉にもしたくないようなおぞましい...そう、何かだ。


「今すっごく失礼なことを考えてなぁい?」

「失礼な事は...考えて無い。当然の事は考えてたけど」

「うぅ~ん、やっぱり考えていたように思うー...」

「そんな事は良いから、何なの?漢字で書いて説明して上げようか?」

「視線のプロだぁ...蔑みながらも生暖かい目...目は口ほどに物を言うとはこのこと...」

「良いから、はい、意見」

「だってぇ...“愛”は何よりもかなしいものじゃない」

「...そう?面倒はあるけれど、何よりも...と言うには少し頷きがたいと思う」

「“I”は何よりも汚くて、“愛”は何よりも悲しくて、“哀”はどこまでも優しいものでしょ?」

「どれがどれだか分からないわよ」

「「書いて説明して上げようか?」」

「真似しないで」


本当は分かっていた。ちゃんと判別ついていた。
でも、理解し難い内容故に、私は知らない振りをした。それにもし理解してしまったら、私が帰って来ないような気がしたから

“愛”と“哀”は、“I”が成り立ってこそ存在するものだったとして、それは『I=愛+哀』?それとも『I=哀-愛』?どれも違う。きっと違う。
もし、この三つの“アイ”が、全て同じだったとしたら『I=愛=哀』...?違う。そうじゃない。そもそも全ての人間がそうである筈が無い、でも或いはどうだろう。同じだったとして、並び方はどうだろう。縦?横?斜め?もしくはもっとメタクタ?違う、だったら同じじゃない。なら並び順は、、、いやそんな事はどうでも良い。

不意に思考に入ってしまった事を思い出し、首を掛け時計に傾けると、思い出した目の前の存在はこちらをジッッ...っと見詰めていた


「......何?」

「思いふける表情も素敵だと思って」


真顔で何て事言うんだ此奴は。
全く...私の何をそんなに見込んでいるのか知らないけれど、そろそろ現実を見て飽きて欲しい
現実...、未だ真顔で阿呆な事を言っているこの存在にとって、どんな事が現実なんだろう


「...その三つを順番に並べるとしたら?」


あぁ、此奴の事を何も言えない。寧ろそれよりもずっと唐突過ぎる。私から質問をするなんて、何か興味を抱いているみたいじゃないか。
ほら、分かり易く目を輝かせて。こっちを見るな


「『愛 i 哀』かな!」


態々書かなくても良いのに、声に負けないくらいデカい字で紙に表した


「...何で“I”が小文字なの?」

「え?先頭じゃないからだけど?」

「あっそう。後...」

「もーっ!今日は質問day!?嬉しいなぁ!」


素っ気無くしてもワクワクウキウキ子供のように振る舞う。矢張り性格は素なのか?


「それで、どうしてこの順番?」

「“I”が挟まれてるから!」

「...挟む事に何の意味が?」

「淋しくないでしょ?」

「そんな理由でかなしさの挟み撃ち?」

「「かなしさの」...?よく分からない。両方が均等にある状態が、一番心地好いんじゃないかと思って。」


...矢張りただの考え過ぎだったのかも知れない。多分少し感覚がズれてただけだ、きっと


「君が“アイ”の狭間で揺れる姿も、きっと素敵なんだろうなぁ」

「ゾッとする話ね」

「え?怖い話?」

「そうね、アナタが」


分かる事は、分かり切っていたけれど、“此奴”には捕まっちゃいけない。“      ”に囚われてはいけない。

それこそ挟み撃ちだ。“私”は。
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