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乙女ゲーム以前

プロローグ

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「エレナ、何だそのドレスは」
私の婚約者、宰相を務めるモンタネール公爵の長男、皆が美男子だと褒めそやすクラウディオは、私のとっておきのドレスを見て苦々しい顔をした。額にかかるやや癖のある黒髪を気怠そうに掻き上げ、少し首を傾げて私を見下ろす。つり目気味の青い瞳が細められる。
「今日のために仕立てたんです」
「フン。子供のくせに着飾って」
「に、似合っていると……思います」
侍女の皆もお母様も、私を絶賛してくれた。大好きな黄色のドレスなのに。
「ハア?お前の部屋の鏡は曇っているんじゃないか?侍女に磨いておくよう言っておけ」
顎を軽く上げて、三歳年上の彼は私に命令した。

くっ……。
屈辱的すぎる!
じと目で見ると、クラウディオの癇に障ったらしい。
「何だ、その目は」
「……いいえ。何でもありません」
「言いたいことがあるなら言え」
「言いません。言いたいことなんてありません」

あーーーーーー!
ムカつく、ムカつく、ムカつく!
ハイヒールじゃなかったら、床をガンガン蹴っているところよ。
なんでこんな毒舌野郎が私の婚約者なの?
ツンデレ?そんなのいらないっての!
私は甘やかしてくれる優しい恋人が欲しいの。こいつは返品するわ。
お父様、どうか今すぐに婚約解消お願いします!
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