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夜の国と朝の国。

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ゆっくりと空を見上げる。


朝だ、朝が来た。あの日、夜の国に起きた不思議な戦争はゆっくりと幕を下ろした。


長い夜が続く朝が来ない夜の国は、長い朝が続く夜の来ない朝の国と戦争をしていた。
理由は簡単、お互いを求めあっていたから。夜の国は朝を求め、朝の国は夜を求めていた。


けれど戦争は簡単には行かなかった。
朝の国の兵士は夜目が効かなかった。ずっと明るい朝の国の兵士は暗闇では動けない。
そして、夜の国の兵士は朝の国の眩しさに目が眩んだ。ずっと暗い夜の国の兵士は眩しい光で動けない。
互いを求めあっている中、お互い何も出来ずにいた。


そんな年に見つけた、一生晴れることの無い暗闇にいながら光、朝のような髪と目を持つ不思議な男の子。彼はとても美しかった。
彼は夜の国にいながらも、朝の国の見た目をしていた。


「僕の事見て、何も思わないの?」
彼は少し冷たく、ぶっきらぼうに言った。
「うん。」
綺麗とか好きだとか言いたかったけど、だけど今はその言葉が出てこなかった。


彼は私の隣に腰を下ろした。そして、ゆっくりとこう言った。
「僕のお父さん、朝の国の人なんだ。お母さんは夜の国だけど…」
少し懐かしむように、そして悲しげに言う彼は暗い空に差し込んだ光のようで、とても、とても美しかった。


だから私は
「綺麗だよ。その髪も、その目も。」
と言った。
「そう。」
少しだけ微笑んだ彼はゆっくりと立ち上がっていなくなった。


光の化身のような彼を、真っ暗な闇が包み込むように。
その何年後かも分からない。寝て起きた日、空が少し明るかった。その色はあの時であった彼みたいで、少しだけ目の前が霞んだ。


窓から光が射し込む。暗い夜を溶かすように。私の国に朝は来た。
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