非戦闘系ギフト・箱庭で世界を救え?!そんな無茶な! でもいつの間にか救っちゃっていたようです

AnJ

文字の大きさ
26 / 31
芽吹の箱庭

風籠亭(ふうろうてい)

しおりを挟む
 あれから二人にはこってり絞られた。
 特にミナに。そしてリオとバルグロスさんは、僕1人でどうやって群れと対峙したのかが気になったようで、ものすごく詳しく説明させられた。
 そこにしれっとリゼさんが混じっていたのには驚いたが。戦闘系の話は大丈夫なのだろうか?

「あぁ、リゼ嬢は元々冒険者だ。しかもかなり高位のな。」

 リオがバルグロスさんの後に続く。

「ロウさんと同じAランクパーティーだったんだ。二つ名が薔薇の刃・・・」

「コホン。リオさん?今から討伐依頼を受けていただきましょうか?」

「いやっ!明日朝が早いから遠慮させてもらおう! 宿に戻る前に買い出しも行かないとな。忙しい忙しい!タクミ!旅にいるものを揃えにいくぞ!」

「え? あ、ああ、そうだな。ではリゼさん、バルグロスさん、色々ありがとうございました!」

 慌てて解体場から出て行くリオの後を、苦笑いしているミナと追って行きながら、二人に軽く頭を下げた。

「おぅ! また何でも解体してやるから持ってこい!」

「くれぐれも・・ですよ? お気をつけて。」

「は、は~い。」


 ぐぬぬ、信用されていないな。何事も起こさず戻って来てやる。


 慌ただしくギルドの扉を開けると、外の空気は昼の喧騒を忘れたように静かだった。
 空はまるで絵筆でなぞったように、橙から紅、そして淡い紫へとグラデーションを描いている。
 石畳の道も、木造の家々も、軒先に吊るされたランタンも、すべてが夕焼け色に染まり、まるで町全体が一枚の絵画になったようだった。
 遠くの鐘楼が、時を告げるように低く鳴る。
 その音に誘われるように、子どもたちが遊びを終えて家路につき、露店の店主がそっと布をかけて品物をしまい始める。
 路面に面している酒場や料理屋からは、肉が焼けるような香ばしい匂いが漂い、客達の笑い声が風に乗って流れてくる。
 
「お腹が空いた。」

 何だか朝から怒涛の一日だったので、こののどかな風景を見て肩の力が抜けたのか急にお腹が空いてきた。

「私も! 明日からまた携帯食だから、今日はしっかり食べておきたいわ!」

「そうだな、タクミの装備はグレン爺さんの所である程度揃えたし、買い出しを済ませたら宿で飯にしよう。俺たちの拠点にしている風籠亭って宿は飯がうまいんだ!」

「私は風籠亭自慢の蒸し御膳が好きなの。ヘルシーなんだけどタレが濃厚でいくらでも食べれちゃう。」

「へぇ、それは楽しみだな。あ、僕が荷物持ちをするから新鮮な果物や野菜も買って行こう!」

「いいのか? 俺たちは助かるが、負担にはならないのか?」

「あぁ、魔力の消費はないんだ。いくらでもいれられるぞ。」

「あなたには最初から助けてもらってばかりだわ。何もしてあげることができない・・・」

 ミナはかなり気にしているようだが、僕は本当に何の負担にもならないからな。

「二人とも今は村のことを優先に考えればいいさ。問題が解決したら村を案内してくれ。それに道中は快適な方がいい。」

「ありがとう、タクミ。ミナ、今はタクミに甘えさせてもらおう。俺たちがいくら気にしても今すぐ村は変わらない。それならタクミに体力を温存しておいてもらって、村で使ってもらえるように俺たちで守ろう。」

「そうね。私たちが落ち込んでいると、皆に心配かけちゃうしね。道中は私たちが守るから任せて!」

 守るって面と向かって言われると恥ずかしいな。
 そう話しているうちに市場に着いたので、目につく野菜や果物、肉を買い込んでいった。調理済みの総菜のような物や具沢山のスープも鍋ごと持って行っていいって言ってくれたのでありがたく買いだ。
 前世ではできなかった憧れの爆買いをした。一応必要経費だ。
 リオたちが、保存食のような物を買ってカバンに入れていたので、預かろうとしたら

「万が一はぐれてしまった時に何か持っておいた方がいいからな。」

 成程。僕こそはぐれないようにしなければ。箱庭が使えなくなるようなことはあるのだろうか?そうなると詰むな。僕も何か携帯食は用意しておいた方がいいだろうか。そう思案していたのが分かったのか、ミナが

「タクミは大丈夫だと思うわ。スキルは使えなくなる場合もあるけれど、ギフトは魔力封じをかけられたとしても使えるわ。特にあなたの場合は箱庭内の方がレベルが高いから、死なない限りは使えるはずよ。」

 ほう、いいことを聞いた。それなら安心だな。

「よし! じゃあもっと買い込むぞー!」

「もういいだろう!」「もういいでしょう!」

 よくハモる二人だ。
 まだ買いたいーと叫ぶ僕を半ば引きずりながら今夜の宿、風籠亭へと向かう二人だった。



 風籠亭は木造の建物で街の外れにひっそりと佇んでいた。しかし寂れているわけではなくどこか落ち着く雰囲気の、ぬくもりを感じる佇まいだ。
 外壁には風に揺れる蔦が絡まり、軒先には風鈴が並んでいる。冒険者たちの間では「静かに休める隠れ家」として密かに評判で、絶えず賑わっているようだ。
 中に入ると、木の香りとほんのり甘いハーブの香りが漂い、足音さえ吸い込むような柔らかな床材が敷かれている。壁には各地の地図や旅人の寄せ書きが飾られ、暖炉の火が静かに揺れている。宿は中肉中背の背が高い威勢のいい主人と、言葉少なながらも温かい眼差しで客を迎えるこの建物のような穏やかな雰囲気の女将さんが二人で切り盛りしていた。


「お帰り、リオ、ミナ。よく帰ってきたね。お疲れさん。」
「二人とも無事か! 疲れてるだろう。 今日はリオの好きなアースホーンの煮込みがあるぞ!」

 門番のガルドに始まり、ギルドにいた他の冒険者やリゼさん達、風籠亭の夫婦揃って二人を心配している様子から、普段から二人が皆に愛されていることがよく分かる。僕もすでにその皆のうちの一人だ。
 そしてアースホーンって何か知らないけど美味しそうだな。めちゃくちゃいい匂いが外まで漂っていたんだよ。


「ただいま。無事に帰ってこれたのは、このタクミのおかげだ。一部屋あるか?なければ俺の部屋でもいいか?」

 と最後は僕の方を振り返って聞いてくれた。僕は箱庭内にも入れるので、どこでも大丈夫です。

「おや、初めて見る顔だね。お前さんたちが助けられたっていうことは、強いのかい?」

 分かります。見た目こんなので説得力ないですよね。そしてまだまだ弱いです、特に外では。

「初めまして、タクミです。今日冒険者登録したての新人です。なので2人に比べたらまだまだです。助けたっていうのもたまたまです。」

「いいえ、私たちの恩人よ。私の部屋でもいいわよ?」

 っ!! そっちでよろしくお願いいたします!

「はっはっ、大人気だね。安心しな、一部屋だけあるにはあるさ。ただねぇ・・・。」

「ん?どうしたんだ?まだ片付いていないなら俺たちで片づけるぞ。」

「いや、滅多に客は入れないから綺麗なんだけどね・・・。タクミだったかい? あんた、、みえるかい?」



 ん?







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

yukataka
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

処理中です...