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理の遺跡(1)
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学園というものは退屈な箱だ。
エルデ・クロエもそう思っている。目下のところ、生徒を指導するのが彼女の役目である。だから、欠伸をかいていても逃げ出すことはできなかった。今は魔術の基礎の時間である。しかも、ほぼ自習に近い。クロエ自身がそうしたのだが、だから欠伸がひっきりなしに出ていても誰も気付かないだろう。たぶん。
ここは教室の中。机が規則正しく並んで、生徒たちが席についている。机の上には複数のプリントが置かれている。午後の日差しを受けて、開け放たれた窓から薫風が吹き込んでくる。クロエの長い髪が舞っている。
クロエは、ちらと生徒の方を見遣る。自分の欠伸がばれていないかどうかのチェック……ではなく、生徒達が真面目に自習をやっているかの確認だ。これで自分も、仕事をした気持ちになる。
(外は天気がいいなぁ)
身体がうずうずして堪らないクロエ。冒険者の血が騒ぐ、というものだ。こんな良い天気の日には、遺跡探索の一つでもやってみたくなるものだ。
(そういえば、あいつ――ヴァンの奴、今何やってるかなぁ……)
同じ冒険者として二人で組んで、様々な遺跡を荒らし――もとい、研究してきたものだ。元相棒である。金色の目が糸のように細められ、快活に笑うツンツン頭が思い浮かんだ。クロエの口角が上がる。知らず知らずの内に笑みが零れるのだ。彼の、豪快でノリの良いおっさん口調を思い出すと。しかし、仕事中は至って冷静であったが。人間にしては偏見など持たない、屈託のない奴だった。
そう、精霊族であるクロエにすら懐いてくれるほどには。
クロエは土の精霊である。だからか、緑色の知的な目をしている。髪は焦げ茶のストレートを腰まで伸ばしているくらいで、ごく普通の人間のようにも見える。小柄で痩身だが、体力にはちょっとした自信があるくらいだ。昔は研究者兼治癒術師として世界各地の遺跡を巡っていた。いわゆる、冒険者、というやつだ。しかし、教師になると決意して、今日に至る。教師としての退屈な日々を送っていると、昔の血が騒ぐのだ。
――遺跡探検がしたい。
と。その想いが日々高まってきているのを感じている。胸の奥で。熱い、滾りとなって。
だから今、欠伸が出てしまう。
今のクロエを縛るものは、学園という名の退屈な箱だった。
実際のところ、クロエは自分の研究に行き詰っていた。
魔術原理の研究。
現在クロエが行っている研究は、魔術の基礎の、その前の理論だ。つまり、魔術が何故この世界に存在しているのか。その根本的な理論を研究しているのだ。研究は楽しい。没頭するほど好きだが、こうも行き詰っていると昔の血が騒ぐというものだ。
そんな折に話が舞い込んで来たのだ。
「新しい遺跡が発見された?」
クロエの働いている学園は魔術を教える学び舎である。だが、もう一つの顔があった。
遺跡の管理である。
各地に点在している遺跡を調査し、悪用されないように、荒らされないように管理している。クロエは、かつて遺跡ハンターをしていた伝手で、在職しているようなものだ。だから新しく発見された遺跡の情報も当然入ってくる。
その報せを聞いた時、胸がときめいた。また、遺跡に潜れるかもしれない、と。でも、今の自分は教師であって遺跡ハンターではない。生徒の授業の進捗もあるし、迂闊に遺跡に潜れない。一度入ったら何日も出てこれないし、下手をすれば数カ月はかかるだろう。
だから、今の自分には行けないな、とクロエは半ば諦めていた。
「やあ、クロエじゃないか」
諦めかけていたそんな折り、学園の廊下で声を掛けられた。目を送るとそこにはかつての仲間ヴァンが口角を上げ立っていた。真っ直ぐとその視線はクロエに注がれている。クロエの視線を受け取ると、一重の金目を更に細めてはにかんで笑った。薄茶のつんつん頭が午後の風を受けて揺れている。
「ヴァンじゃない。どうしたの? こんなところで――」
言いかけてクロエは、あ、と何かに思い当たった。
「もしかして、新しい遺跡のこと?」
上目遣いでカマをかけてみる。ヴァンは利き手の親指を立ててニヤリと笑った。正解だ。
ここまで阿吽の呼吸が通じるのはヴァンだけだ。
ヴァンゲルス・ロッド。体中の至る所に残っている傷跡がトレードマークのスカウトである。かつて冒険者をしていた頃のクロエの相棒であり、今でも冒険者稼業を続けている酔狂な男だ。遺跡探索は賭け事と同じ、命を賭けるのだ、そう、豪語していた。生粋のギャンブラーでもある。今でも交流がある、クロエの大切な仲間だ。
三十六歳なのにまだ現役――もう年なのによくやるわ、とクロエが突っ込んだことがあったが、俺は生涯現役よと大口を開けて笑っていた。その屈託のない笑みがとても好きだった。
そんな彼がこの学園にいる。当然用件は例の遺跡のことである。
クロエは期待に胸を膨らませてヴァンを見詰めた。
「そんなキラキラした目で見詰められても――授業はどうすんだよ」
ヴァンは呆れた。クロエの想いがはっきりと解ったからだ。
「理事長に言って、公休扱いにしてもらうわ。それが駄目なら有給取るから」
言外に良いでしょ? 連れてって、と駄々をこねる。こうなるともう、お手上げだ。クロエは意外と頑固なのだ。
「分かったよ。理事長の許可を貰えたらな」
ヴァンが言い終わるか終わらないかの間にクロエは理事長室へと走って行った。
廊下を走るなという壁紙を見て、ヴァンは小さく呟いた。
「廊下は走っちゃいけないんじゃないのか……」
理事長室の重厚な樫の扉を三回ほどノックする。程なくして、誰何の声が聞こえてきた。
「エルデ・クロエです」
「丁度良かった。入りたまえ」
クロエの澄んだ声に、室内の主が入室を促した。
クロエは一瞬首を傾げる。
(丁度良かった……?)
「失礼します」
丁寧にお辞儀して扉を開く。片開きの扉が内側に開き、中が露わになる。雲のような真っ白い髭を蓄えた老人が正面の執務机に鎮座していた。銀灰色の瞳を細めてクロエを見据えている。
「そろそろ来る頃だと思っておったよ」
意味深長に声を掛けて座るように促す。
クロエは向かいのソファに腰掛けると開口一番こう言った。
「何か、あったんですか?」
「あった。現在進行系だがな」
理事長は両手を組むと、然とクロエを見据えた。
――この学園の生徒が二名行方不明になっている。
端的に言うと、理事長の話はこうだった。
「二名とも寮生で女子生徒だ」
淡々と話す理事長に、クロエは空唾を飲み込むしかなかった。
「名前は、アリスティア=ルードとカトゥ・カリス。話には聞いたことがあるかな?」
その二人の噂は聞いたことがある。実に仲睦まじい二人で常に行動を共にしているらしい。愛し合っているのではないかと、根も葉もない噂が尾ひれに付くほどである。百合話は女子生徒達の大好物なのだ。二人とも容姿端麗とくればわからない話でもない。
理事長の言う通り、学園で知らぬものはいない。二人共に成績優秀でもあるからだ。容姿端麗、成績優秀とくれば嫌でも人の目を引く。それでなくとも、常に離れぬ二人なのだ。
その二人が、共に行方不明となっている――。
何かあると見るのが普通だ。
「事件の匂いがしますね」
クロエは鋭い目で言った。
理事長は事件という言葉に反応を示しつつも、こう締め括った。
「彼女達を捜して欲しい。報告も必ずするように。それが公休扱いにする条件だ」
「解りました」
理事長室を出ると、ヴァンが待ち構えていた。
「どうだった?」
「どうもこうも、既に全部知ってた感じ」
呆けたままでクロエが答える。
恐らく理事長は魔術を使って事の次第を知ったのだろう。彼ならば可能だが、人が悪いとも思う。覗き見された気分なのだ。
それでも、ともかく許可は下りた。これで心置きなく遺跡探索に行けるというものだ。厄介な仕事は押し付けられたが……。
◆◇◆
遺跡は学院から然程離れていなかった。山の中腹にあるとはいえ、隣町よりは近い。これならば生徒の足でも辿り着けてしまうだろう。理事長の見立ては正しいと言えた。
昼に出て、夕方には着ける近さだ。
夕日の橙の光を背に受け、遺跡の入り口を注視している。足跡は辛うじて見分けられた。ほとんど土埃に埋もれかけてはいるが、確かに少女のものと思しき足跡が二つある。
ここに、捜している生徒がいるのは確実だ。
「ここが、例の新たに発見された遺跡だ」
地図を見ながらヴァンが説明する。今更必要ないが、確認のためだ。
クロエは静かに頷いた。そして、視線で足跡を示す。ヴァンも静かに頷き返す。
二人が遺跡の内部に入って行ったということは、既に人跡未踏では無くなったということだ。それは明らかな事実として、二人の胸中にしこりを生む。
人跡未踏の遺跡を探索する――。それは二人にとってステイタスだった。だから今のこの遺跡は、彼等にとってはあまり魅力的ではない物件となっていた。
「なんだ、ガッカリ――」
「だが、調査はしないとな」
そう言うとヴァンは、入口付近の地面と天井、アーチ状の門柱をじっくりと観察しだした。スカウトの技術で罠感知をやっているのだ。
「よし、罠は無いようだぜ。さあ、行こうか」
ヴァンが自信有り気に先を促すと、申し訳無さそうにクロエが指摘する。
「ねぇ、罠感知してもらって悪いんだけどさ、人が通った形跡があるなら罠は無いんじゃない?」
一瞬ヴァンが固まった。そして、岩のような笑みを浮かべる。冷汗がひと滴。
「それを早く言えよ……」
脱力した身体を引き摺りながら、ヴァンは遺跡へと入って行った。クロエも慌ててその後ろ姿を追い掛けて行く。
遺跡の内部はやや湿り気を帯びた空気で満ちていた。石積みの壁や床には苔が薄っすらと茂っている。滑らないように注意しながら、慎重に歩を進める二人。ところどころ石畳が濡れていて入り口で見付けた足跡が一見して判別しにくくなっている。
「昨日、雨でも降ったか? それとも夜露かな?」
ヴァンが罠を調べるついでに足跡も観察する。観察眼はクロエも鋭いが、斥候の右に出るものはいない。
「ともかく先へ進みましょう。道は一本道かもしれないし、先へ進んでみないことには解らないし」
「だな」
通路に罠は無い、と見て取るとヴァンは素早く立ち上がって先頭を歩いていく。二人の時は自然と隊列がそうなっているのだ。なにしろクロエは近接戦闘が苦手なのだから。
遺跡の内部には魔物が棲んでいることがある。話し合いなど不可能なので、当然戦闘になる。魔術師系は後方支援が基本なので、前衛に立つことは避けるのが最良なのだ。
若干苔が生えていて滑りやすい入り口から三メートル奥に進むと、濡れていた床が乾いてくる。クロエの読み通り、薄っすらと水で濡れた足跡が二人分奥へと続いていた。
ヴァンは仕事道具の中から、十フィート棒を取り出した。約三メートルの長さのただの木の棒である。普段は小さく折り畳んでいるそれで自分のやや前方の地面を叩きながら移動する。床面の罠はこれである程度は回避できる。次に、壁面に視線を這わせる。壁の窪みや微妙な差異を観察する。壁に開いた穴は致命的な罠の可能性を示唆する。そういった罠がないか細かく確認していく。安全であることを確認してから通路を通過していく。
ヴァンは腕の良い斥候なのだ。
クロエはただ黙ってついていくだけでよい。
通路は直進して五メートルほど続いていた。目の前には階段がある。慎重に罠を調べて松明を灯し、降りていく。暗闇が行く手を塞いでいるからだ。
「ここから先は、魔物の巣窟かもしれないぞ」
脅しではなく、警告としてヴァンが呟いた。クロエはヴァンの頬を伝う冷や汗を見詰めながら軽く頷く。ここから先は、慎重にならざるを得ない。
十数歩進むと、十字路に差し掛かった。どちらに行くかを判断するため、罠の有無、空気の流れを調べた後、足跡が右に曲がっていることに気付いた。微妙に見え難くなってきたので、うっかり見過ごすところだった。「あぶねぇ」と呟きながらヴァンはクロエと視線を交した。
即決だった。
右に曲がって直ぐの所に木製の扉があった。片開きの簡素な扉だ。例の如く罠を一通り調べた後に、ヴァンは扉を慎重に開いた。
扉を開けると、そこには死体が転がっていた。少女のそれに見える。が、室内には腐臭は立ち込めていなかった。無臭とまではいかないが、土埃のような妙な臭いが鼻を付いた。
「ひぃ! 死んでいる!」
「…………一度やってみたかっただけでしょ」
ヴァンのふざけた言動に、クロエが突っ込みを入れる。二人はあくまで冷静なのだ。
クロエが死体の傍らに跪く。屍全体を舐め回すように見詰め、顔や細部を注意深く観察する。手首に触れ脈を診て、傷の有無を確認する。一通り観察し終わった所で、目を細める。沈考する時の癖だ。
「死霊術の類いは掛かっていないわ。でも……おかしな点が、」
言葉を切って熟考する。脳をフル回転させて推理しているのだ。
「死霊術は掛かっていないってことは、突然起き上がって襲ってくることは無いってことか」
ヴァンが質問ではなく、確認のために呟いた。首肯で答えるクロエ。
顔を確認するために、俯せの屍体をひっくり返す。腐敗も何も起こっていない、新鮮なはずの屍体の顔はひび割れていた。土気色のそれは肖像画で見たものと一致した。間違いなく学園の生徒、それも――、
「この子、カトゥ・カリスで間違いないわね。肖像画と酷似している……。でも、元から生体反応は無かった。つまり、擬態よ」
一般的にゴーレムとは扱い難いものである。精製するのに高い技術を要し、一度刻み込んだ命令は刻印を消さない限り変更することも打ち消すことも叶わない。魔力が尽きぬ限り、半永久的に動き続ける理想の傀儡だ。素材が土だろうと、木や金属だろうと、それは同じだ。下せる命令は一つだけなのだ。精製するのに通常の魔術よりも倍の時間がかかるのも倦厭される所以だ。道具も揃えなくてはならない。
だが、この屍体は違った。
ゴーレムの筈だが、通常のそれではない。特別製なのだ。何よりもたった今殺されるまで人として生きていたのだ。それが、何を意味するか。命令を自分で創って自分で処理できる――この世に類を見ないゴーレム。それを作ったのだ。一人の女生徒が。
とんでもない才能である。
「これ、土の精霊術で作ったのね」
精霊術に特化した魔術師――精霊術師ならば簡単にゴーレムが作れるだろう。
「でも、どうして死んだんだ?」
最大の疑問をヴァンが独りごちる。
「解らない。けど、第三者が関与してることだけは確かね。カトゥにはいつも一緒にいる友達――親友ね――その友達もここに来てるはず……」
「そいつがやったってのか!?」
「まだ、推測の域を出ないけれど……。それとも、魔物にやられた可能性も……無くはない」
仲間割れか、それとも第三者が絡んでいるのか、あるいは魔物に襲われたか。クロエは苦々しく唇を噛んだ。
手遅れにならなきゃいいけど。
ふと、嫌な予感に襲われる。
「急いだ方が良いわね」
飛び退がるように立ち上がると、クロエは踵を返して部屋を出る。ヴァンもそれに続いた。
灯りが引き、部屋は闇に沈んだ。隅の方で闇が蠢いた。
◆◇◆
クロエ達が静かに通路を進んでいると、後方から地鳴りのようなものが響いてきた。微かなそれは、クロエの長耳が捉えるだけに留まった。
「何かが鳴動している……?」
眉をしかめ、独りごちる。
ヴァンの表情で自分にしか聞こえていない微かな響きであることを、クロエは悟った。
罠の類いでは無いが、精霊の類いか魔物の類いである可能性は高い。距離はかなり離れているが、油断はできない。その事をヴァンに伝えると、顔を顰めて呻いた。
数分待って、何も来ないことを確認してから歩を進める。
数メートル真っ直ぐ進むと、正面に木製の扉が行く手を塞いだ。中央にプレートが掲げられていて、控え室と書かれていた。当然古代語である。
罠の類いは一切無いので、扉をそっと押し開ける。
真四角の部屋の中央に四角いテーブルと椅子が四対置いてあった。その上にはティーポットとティーカップがセットされている。熱々の紅茶が二つ入れられていた。部屋の三方には扉があり、閉じられている。どの扉からも物音はしない。取っ手は付いているが、押しても引いても開く様子はない。
「さてと。出番だぜ。クロエさんよ」
部屋の中に何者かが居た形跡は無いにも関わらず、紅茶が二つ。そして天井に詩のようなものが刻まれていた。
時間がない 時間がない
早くしないと遅れてしまう
パーティーの時間に
控えの間には熱い紅茶
ここで一服 次の間へ
ゆっくりもできないけど
早くもできない
すべてカップの言う通り
「魔法的な装置の一種ね。全て飲めば何かが起こる?」
「おいおい、罠が作動したりはごめんだぜ」
カップの受け皿に時計の文字盤のようなものが刻まれている。短針はなく、長針のみだが赤い線と青い線が引かれている。
それを眺めながら、クロエは独りごちる。
「ゆっくりもできないけど、早くもできない、ね」
クロエはやおらカップを手に取ると、紅茶を一口啜った。
「おいおい、罠かもしれないんだぞ」
ヴァンはクロエを止めようと諫めたが、彼女の手は止まらない。悪戯っぽく笑いながら、リドルを解く鍵なのよと軽口を叩く。
一口ずつ飲んでは皿に乗せるのを繰り返し、ついには赤と青の線の間に長針が入った。カチリとどこかで音がして、正面の扉が開いた。
「おおっ」
感嘆の声を漏らすヴァン。あんたがいて助かったぜと、クロエに感謝する。
「この部屋はね、お茶会の部屋なのよ。だから紅茶を飲まないと先に進めない」
独説しながら、扉を潜るクロエ。急ぎ足でヴァンが後をついていく。彼等が出ていくと、扉は音もなく閉じた。
エルデ・クロエもそう思っている。目下のところ、生徒を指導するのが彼女の役目である。だから、欠伸をかいていても逃げ出すことはできなかった。今は魔術の基礎の時間である。しかも、ほぼ自習に近い。クロエ自身がそうしたのだが、だから欠伸がひっきりなしに出ていても誰も気付かないだろう。たぶん。
ここは教室の中。机が規則正しく並んで、生徒たちが席についている。机の上には複数のプリントが置かれている。午後の日差しを受けて、開け放たれた窓から薫風が吹き込んでくる。クロエの長い髪が舞っている。
クロエは、ちらと生徒の方を見遣る。自分の欠伸がばれていないかどうかのチェック……ではなく、生徒達が真面目に自習をやっているかの確認だ。これで自分も、仕事をした気持ちになる。
(外は天気がいいなぁ)
身体がうずうずして堪らないクロエ。冒険者の血が騒ぐ、というものだ。こんな良い天気の日には、遺跡探索の一つでもやってみたくなるものだ。
(そういえば、あいつ――ヴァンの奴、今何やってるかなぁ……)
同じ冒険者として二人で組んで、様々な遺跡を荒らし――もとい、研究してきたものだ。元相棒である。金色の目が糸のように細められ、快活に笑うツンツン頭が思い浮かんだ。クロエの口角が上がる。知らず知らずの内に笑みが零れるのだ。彼の、豪快でノリの良いおっさん口調を思い出すと。しかし、仕事中は至って冷静であったが。人間にしては偏見など持たない、屈託のない奴だった。
そう、精霊族であるクロエにすら懐いてくれるほどには。
クロエは土の精霊である。だからか、緑色の知的な目をしている。髪は焦げ茶のストレートを腰まで伸ばしているくらいで、ごく普通の人間のようにも見える。小柄で痩身だが、体力にはちょっとした自信があるくらいだ。昔は研究者兼治癒術師として世界各地の遺跡を巡っていた。いわゆる、冒険者、というやつだ。しかし、教師になると決意して、今日に至る。教師としての退屈な日々を送っていると、昔の血が騒ぐのだ。
――遺跡探検がしたい。
と。その想いが日々高まってきているのを感じている。胸の奥で。熱い、滾りとなって。
だから今、欠伸が出てしまう。
今のクロエを縛るものは、学園という名の退屈な箱だった。
実際のところ、クロエは自分の研究に行き詰っていた。
魔術原理の研究。
現在クロエが行っている研究は、魔術の基礎の、その前の理論だ。つまり、魔術が何故この世界に存在しているのか。その根本的な理論を研究しているのだ。研究は楽しい。没頭するほど好きだが、こうも行き詰っていると昔の血が騒ぐというものだ。
そんな折に話が舞い込んで来たのだ。
「新しい遺跡が発見された?」
クロエの働いている学園は魔術を教える学び舎である。だが、もう一つの顔があった。
遺跡の管理である。
各地に点在している遺跡を調査し、悪用されないように、荒らされないように管理している。クロエは、かつて遺跡ハンターをしていた伝手で、在職しているようなものだ。だから新しく発見された遺跡の情報も当然入ってくる。
その報せを聞いた時、胸がときめいた。また、遺跡に潜れるかもしれない、と。でも、今の自分は教師であって遺跡ハンターではない。生徒の授業の進捗もあるし、迂闊に遺跡に潜れない。一度入ったら何日も出てこれないし、下手をすれば数カ月はかかるだろう。
だから、今の自分には行けないな、とクロエは半ば諦めていた。
「やあ、クロエじゃないか」
諦めかけていたそんな折り、学園の廊下で声を掛けられた。目を送るとそこにはかつての仲間ヴァンが口角を上げ立っていた。真っ直ぐとその視線はクロエに注がれている。クロエの視線を受け取ると、一重の金目を更に細めてはにかんで笑った。薄茶のつんつん頭が午後の風を受けて揺れている。
「ヴァンじゃない。どうしたの? こんなところで――」
言いかけてクロエは、あ、と何かに思い当たった。
「もしかして、新しい遺跡のこと?」
上目遣いでカマをかけてみる。ヴァンは利き手の親指を立ててニヤリと笑った。正解だ。
ここまで阿吽の呼吸が通じるのはヴァンだけだ。
ヴァンゲルス・ロッド。体中の至る所に残っている傷跡がトレードマークのスカウトである。かつて冒険者をしていた頃のクロエの相棒であり、今でも冒険者稼業を続けている酔狂な男だ。遺跡探索は賭け事と同じ、命を賭けるのだ、そう、豪語していた。生粋のギャンブラーでもある。今でも交流がある、クロエの大切な仲間だ。
三十六歳なのにまだ現役――もう年なのによくやるわ、とクロエが突っ込んだことがあったが、俺は生涯現役よと大口を開けて笑っていた。その屈託のない笑みがとても好きだった。
そんな彼がこの学園にいる。当然用件は例の遺跡のことである。
クロエは期待に胸を膨らませてヴァンを見詰めた。
「そんなキラキラした目で見詰められても――授業はどうすんだよ」
ヴァンは呆れた。クロエの想いがはっきりと解ったからだ。
「理事長に言って、公休扱いにしてもらうわ。それが駄目なら有給取るから」
言外に良いでしょ? 連れてって、と駄々をこねる。こうなるともう、お手上げだ。クロエは意外と頑固なのだ。
「分かったよ。理事長の許可を貰えたらな」
ヴァンが言い終わるか終わらないかの間にクロエは理事長室へと走って行った。
廊下を走るなという壁紙を見て、ヴァンは小さく呟いた。
「廊下は走っちゃいけないんじゃないのか……」
理事長室の重厚な樫の扉を三回ほどノックする。程なくして、誰何の声が聞こえてきた。
「エルデ・クロエです」
「丁度良かった。入りたまえ」
クロエの澄んだ声に、室内の主が入室を促した。
クロエは一瞬首を傾げる。
(丁度良かった……?)
「失礼します」
丁寧にお辞儀して扉を開く。片開きの扉が内側に開き、中が露わになる。雲のような真っ白い髭を蓄えた老人が正面の執務机に鎮座していた。銀灰色の瞳を細めてクロエを見据えている。
「そろそろ来る頃だと思っておったよ」
意味深長に声を掛けて座るように促す。
クロエは向かいのソファに腰掛けると開口一番こう言った。
「何か、あったんですか?」
「あった。現在進行系だがな」
理事長は両手を組むと、然とクロエを見据えた。
――この学園の生徒が二名行方不明になっている。
端的に言うと、理事長の話はこうだった。
「二名とも寮生で女子生徒だ」
淡々と話す理事長に、クロエは空唾を飲み込むしかなかった。
「名前は、アリスティア=ルードとカトゥ・カリス。話には聞いたことがあるかな?」
その二人の噂は聞いたことがある。実に仲睦まじい二人で常に行動を共にしているらしい。愛し合っているのではないかと、根も葉もない噂が尾ひれに付くほどである。百合話は女子生徒達の大好物なのだ。二人とも容姿端麗とくればわからない話でもない。
理事長の言う通り、学園で知らぬものはいない。二人共に成績優秀でもあるからだ。容姿端麗、成績優秀とくれば嫌でも人の目を引く。それでなくとも、常に離れぬ二人なのだ。
その二人が、共に行方不明となっている――。
何かあると見るのが普通だ。
「事件の匂いがしますね」
クロエは鋭い目で言った。
理事長は事件という言葉に反応を示しつつも、こう締め括った。
「彼女達を捜して欲しい。報告も必ずするように。それが公休扱いにする条件だ」
「解りました」
理事長室を出ると、ヴァンが待ち構えていた。
「どうだった?」
「どうもこうも、既に全部知ってた感じ」
呆けたままでクロエが答える。
恐らく理事長は魔術を使って事の次第を知ったのだろう。彼ならば可能だが、人が悪いとも思う。覗き見された気分なのだ。
それでも、ともかく許可は下りた。これで心置きなく遺跡探索に行けるというものだ。厄介な仕事は押し付けられたが……。
◆◇◆
遺跡は学院から然程離れていなかった。山の中腹にあるとはいえ、隣町よりは近い。これならば生徒の足でも辿り着けてしまうだろう。理事長の見立ては正しいと言えた。
昼に出て、夕方には着ける近さだ。
夕日の橙の光を背に受け、遺跡の入り口を注視している。足跡は辛うじて見分けられた。ほとんど土埃に埋もれかけてはいるが、確かに少女のものと思しき足跡が二つある。
ここに、捜している生徒がいるのは確実だ。
「ここが、例の新たに発見された遺跡だ」
地図を見ながらヴァンが説明する。今更必要ないが、確認のためだ。
クロエは静かに頷いた。そして、視線で足跡を示す。ヴァンも静かに頷き返す。
二人が遺跡の内部に入って行ったということは、既に人跡未踏では無くなったということだ。それは明らかな事実として、二人の胸中にしこりを生む。
人跡未踏の遺跡を探索する――。それは二人にとってステイタスだった。だから今のこの遺跡は、彼等にとってはあまり魅力的ではない物件となっていた。
「なんだ、ガッカリ――」
「だが、調査はしないとな」
そう言うとヴァンは、入口付近の地面と天井、アーチ状の門柱をじっくりと観察しだした。スカウトの技術で罠感知をやっているのだ。
「よし、罠は無いようだぜ。さあ、行こうか」
ヴァンが自信有り気に先を促すと、申し訳無さそうにクロエが指摘する。
「ねぇ、罠感知してもらって悪いんだけどさ、人が通った形跡があるなら罠は無いんじゃない?」
一瞬ヴァンが固まった。そして、岩のような笑みを浮かべる。冷汗がひと滴。
「それを早く言えよ……」
脱力した身体を引き摺りながら、ヴァンは遺跡へと入って行った。クロエも慌ててその後ろ姿を追い掛けて行く。
遺跡の内部はやや湿り気を帯びた空気で満ちていた。石積みの壁や床には苔が薄っすらと茂っている。滑らないように注意しながら、慎重に歩を進める二人。ところどころ石畳が濡れていて入り口で見付けた足跡が一見して判別しにくくなっている。
「昨日、雨でも降ったか? それとも夜露かな?」
ヴァンが罠を調べるついでに足跡も観察する。観察眼はクロエも鋭いが、斥候の右に出るものはいない。
「ともかく先へ進みましょう。道は一本道かもしれないし、先へ進んでみないことには解らないし」
「だな」
通路に罠は無い、と見て取るとヴァンは素早く立ち上がって先頭を歩いていく。二人の時は自然と隊列がそうなっているのだ。なにしろクロエは近接戦闘が苦手なのだから。
遺跡の内部には魔物が棲んでいることがある。話し合いなど不可能なので、当然戦闘になる。魔術師系は後方支援が基本なので、前衛に立つことは避けるのが最良なのだ。
若干苔が生えていて滑りやすい入り口から三メートル奥に進むと、濡れていた床が乾いてくる。クロエの読み通り、薄っすらと水で濡れた足跡が二人分奥へと続いていた。
ヴァンは仕事道具の中から、十フィート棒を取り出した。約三メートルの長さのただの木の棒である。普段は小さく折り畳んでいるそれで自分のやや前方の地面を叩きながら移動する。床面の罠はこれである程度は回避できる。次に、壁面に視線を這わせる。壁の窪みや微妙な差異を観察する。壁に開いた穴は致命的な罠の可能性を示唆する。そういった罠がないか細かく確認していく。安全であることを確認してから通路を通過していく。
ヴァンは腕の良い斥候なのだ。
クロエはただ黙ってついていくだけでよい。
通路は直進して五メートルほど続いていた。目の前には階段がある。慎重に罠を調べて松明を灯し、降りていく。暗闇が行く手を塞いでいるからだ。
「ここから先は、魔物の巣窟かもしれないぞ」
脅しではなく、警告としてヴァンが呟いた。クロエはヴァンの頬を伝う冷や汗を見詰めながら軽く頷く。ここから先は、慎重にならざるを得ない。
十数歩進むと、十字路に差し掛かった。どちらに行くかを判断するため、罠の有無、空気の流れを調べた後、足跡が右に曲がっていることに気付いた。微妙に見え難くなってきたので、うっかり見過ごすところだった。「あぶねぇ」と呟きながらヴァンはクロエと視線を交した。
即決だった。
右に曲がって直ぐの所に木製の扉があった。片開きの簡素な扉だ。例の如く罠を一通り調べた後に、ヴァンは扉を慎重に開いた。
扉を開けると、そこには死体が転がっていた。少女のそれに見える。が、室内には腐臭は立ち込めていなかった。無臭とまではいかないが、土埃のような妙な臭いが鼻を付いた。
「ひぃ! 死んでいる!」
「…………一度やってみたかっただけでしょ」
ヴァンのふざけた言動に、クロエが突っ込みを入れる。二人はあくまで冷静なのだ。
クロエが死体の傍らに跪く。屍全体を舐め回すように見詰め、顔や細部を注意深く観察する。手首に触れ脈を診て、傷の有無を確認する。一通り観察し終わった所で、目を細める。沈考する時の癖だ。
「死霊術の類いは掛かっていないわ。でも……おかしな点が、」
言葉を切って熟考する。脳をフル回転させて推理しているのだ。
「死霊術は掛かっていないってことは、突然起き上がって襲ってくることは無いってことか」
ヴァンが質問ではなく、確認のために呟いた。首肯で答えるクロエ。
顔を確認するために、俯せの屍体をひっくり返す。腐敗も何も起こっていない、新鮮なはずの屍体の顔はひび割れていた。土気色のそれは肖像画で見たものと一致した。間違いなく学園の生徒、それも――、
「この子、カトゥ・カリスで間違いないわね。肖像画と酷似している……。でも、元から生体反応は無かった。つまり、擬態よ」
一般的にゴーレムとは扱い難いものである。精製するのに高い技術を要し、一度刻み込んだ命令は刻印を消さない限り変更することも打ち消すことも叶わない。魔力が尽きぬ限り、半永久的に動き続ける理想の傀儡だ。素材が土だろうと、木や金属だろうと、それは同じだ。下せる命令は一つだけなのだ。精製するのに通常の魔術よりも倍の時間がかかるのも倦厭される所以だ。道具も揃えなくてはならない。
だが、この屍体は違った。
ゴーレムの筈だが、通常のそれではない。特別製なのだ。何よりもたった今殺されるまで人として生きていたのだ。それが、何を意味するか。命令を自分で創って自分で処理できる――この世に類を見ないゴーレム。それを作ったのだ。一人の女生徒が。
とんでもない才能である。
「これ、土の精霊術で作ったのね」
精霊術に特化した魔術師――精霊術師ならば簡単にゴーレムが作れるだろう。
「でも、どうして死んだんだ?」
最大の疑問をヴァンが独りごちる。
「解らない。けど、第三者が関与してることだけは確かね。カトゥにはいつも一緒にいる友達――親友ね――その友達もここに来てるはず……」
「そいつがやったってのか!?」
「まだ、推測の域を出ないけれど……。それとも、魔物にやられた可能性も……無くはない」
仲間割れか、それとも第三者が絡んでいるのか、あるいは魔物に襲われたか。クロエは苦々しく唇を噛んだ。
手遅れにならなきゃいいけど。
ふと、嫌な予感に襲われる。
「急いだ方が良いわね」
飛び退がるように立ち上がると、クロエは踵を返して部屋を出る。ヴァンもそれに続いた。
灯りが引き、部屋は闇に沈んだ。隅の方で闇が蠢いた。
◆◇◆
クロエ達が静かに通路を進んでいると、後方から地鳴りのようなものが響いてきた。微かなそれは、クロエの長耳が捉えるだけに留まった。
「何かが鳴動している……?」
眉をしかめ、独りごちる。
ヴァンの表情で自分にしか聞こえていない微かな響きであることを、クロエは悟った。
罠の類いでは無いが、精霊の類いか魔物の類いである可能性は高い。距離はかなり離れているが、油断はできない。その事をヴァンに伝えると、顔を顰めて呻いた。
数分待って、何も来ないことを確認してから歩を進める。
数メートル真っ直ぐ進むと、正面に木製の扉が行く手を塞いだ。中央にプレートが掲げられていて、控え室と書かれていた。当然古代語である。
罠の類いは一切無いので、扉をそっと押し開ける。
真四角の部屋の中央に四角いテーブルと椅子が四対置いてあった。その上にはティーポットとティーカップがセットされている。熱々の紅茶が二つ入れられていた。部屋の三方には扉があり、閉じられている。どの扉からも物音はしない。取っ手は付いているが、押しても引いても開く様子はない。
「さてと。出番だぜ。クロエさんよ」
部屋の中に何者かが居た形跡は無いにも関わらず、紅茶が二つ。そして天井に詩のようなものが刻まれていた。
時間がない 時間がない
早くしないと遅れてしまう
パーティーの時間に
控えの間には熱い紅茶
ここで一服 次の間へ
ゆっくりもできないけど
早くもできない
すべてカップの言う通り
「魔法的な装置の一種ね。全て飲めば何かが起こる?」
「おいおい、罠が作動したりはごめんだぜ」
カップの受け皿に時計の文字盤のようなものが刻まれている。短針はなく、長針のみだが赤い線と青い線が引かれている。
それを眺めながら、クロエは独りごちる。
「ゆっくりもできないけど、早くもできない、ね」
クロエはやおらカップを手に取ると、紅茶を一口啜った。
「おいおい、罠かもしれないんだぞ」
ヴァンはクロエを止めようと諫めたが、彼女の手は止まらない。悪戯っぽく笑いながら、リドルを解く鍵なのよと軽口を叩く。
一口ずつ飲んでは皿に乗せるのを繰り返し、ついには赤と青の線の間に長針が入った。カチリとどこかで音がして、正面の扉が開いた。
「おおっ」
感嘆の声を漏らすヴァン。あんたがいて助かったぜと、クロエに感謝する。
「この部屋はね、お茶会の部屋なのよ。だから紅茶を飲まないと先に進めない」
独説しながら、扉を潜るクロエ。急ぎ足でヴァンが後をついていく。彼等が出ていくと、扉は音もなく閉じた。
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