大罪人、かぐや姫

からんころん

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大罪人、かぐや姫

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 是非昔話を後世に伝えたい。

 文字が読めなくても理解出来て、誰でも楽しめるように。

 そんな願いから生まれたのが、瞬間空間移動装置とアンドロイドを組み合わせて出来た「おとぎ話の箱」。


 但し、「大人が使ってはいけない」というたった一つのルールがあった。

 それには、おとぎ話の箱が開発された直後に起こった悲劇が関係していた。

 


 開発された直後、1人の若い科学者が上司の目を盗み、かぐや姫を使った。

 ……しかし試作品だったかぐや姫は、彼に恋愛感情に近いものを持ってしまった。
 
 悲劇はそこから始まる。

 若い科学者に恋をしてしまったかぐや姫は商品化された後も彼を思い続けた。


     「何とかして彼に会いたい。」

 かぐや姫は自分のプログラムを自らウイルスに感染させた。プログラムは破壊され、かぐや姫自身も壊れた。

 それでも彼女の中にはあの科学者がいた。

「彼に会いたい」

 かぐや姫は最早かぐや姫ではなかった。

 いつ壊れてもおかしくない、誰かに見つかればすぐに全てのプログラムが強制終了させられるだろう。

 ノイズ音とエラーコードで埋め尽くされた彼女は彼のもとへ必死に動いた。

 やっとの思いで辿りついたのは彼の研究室。

 ……しかしそこに彼はいなかった。

壁にかかった彼の写真、
写真に印刷されてい2158~2180の文字。

彼はもうこの世界には、いなかった。




かぐや姫は力尽きた。




……数秒後、雷のような音と共に研究所は爆発した。



 かぐや姫は大量の放電をした。


 研究所は跡形も無くなり、周辺のライフラインは壊滅的に破壊された。
所員や周辺住民549人が死亡。
ライフラインの停止10,486世帯


 それからおとぎ話の箱は生産を終了した。


 しかし、「もう1度生産して欲しい。」という声が驚くほどあがり、生産そして販売再開。

 ただし、大人は使ってはいけない。というルールが出来た。

 跡地からかぐや姫の残骸が見つかった時、彼女のプログラムが無事に残っていた。

 彼女の思い、驚くべき行動、その全てが解明されたとき、人々は彼女を恨み、今世紀最大のミスとして語った。


 何故、彼女は「悪」なのか。


 傍から見れば「自分の感情のままに動き、大きすぎる被害を出したロボット」なのかもしれない。


 彼女は言ってしまえば人間だった。

 しかし、ロボットだったからこそ人間と同じ状況に置かれた時、人間ではなし得ない大罪を犯してしまった。


 彼女は決して悪くない。

 彼女は「かぐや姫のロボット」ではなく、「1人の人間」として生きただけだ。



彼女は決して悪くない。
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