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第一章:麻雀部への勧誘
第11話:読みの鋭さ
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「ありがとう。ちゃんと来てくれたのね」
紅帝楼の禁煙ゾーンにある12卓。白のロールネックジャケットにスカイブルーのセミフォーマルのワンピースという、如何にもな服装をした小百合は和弥を待ち構えるが如く、早くも座っていた。
「来なきゃ何言われるか、分かったもんじゃねえしな」
ジーパンに開襟のシャツというラフな服装の和弥は、小百合の対面に座る。
「すいませーん」
座った和弥はメンバーを呼んだ。どうやらカフェ・オレの注文と、フリーで打てる客を2名この卓に寄こすように、との事である。
少々時間を置いて、上家と下家には、それぞれ学生っぽい男が座った。
とは言っても紅帝楼の常連らしく、和弥を見るなり「うっす和弥クン」「久しぶりだな沢渡クンと打つの」と和弥に普通に挨拶をしてきた。
しかし間違いなく気になるのは小百合の方のようで、横眼でチラチラと小百合の顔を見ている。
大部分の雀荘がそうであるように、この紅帝楼でもフリー対戦の場合、普通なら伏せた東・南・西・北の牌を取って席決めをする。
が。もう和弥と小百合が座っているので、残りの若い男達はそれぞれ空いている席に座り、起家決めだけを行った。小百合が起家となり、いよいよ対戦である。
東1局。ドラは三萬。7巡目、小百合に早くもチャンス手が入った。
(最高の牌を引けたわ…三色確定ね。ダマでも親満だけど。リーチしてツモか裏が乗れば親っパネ。これは行くべきよ!)
点棒入れから迷わず千点棒を取り出す。
「リーチ!」
親の先制リーチ。普通なら皆降りるはず……そう思いながら小百合はリーチ棒を置いた。
「うわ、早い親リーだな」
「一発は避けとくよ」
小百合の現物を切る上家と下家。対面に座った和弥も、手の内から小百合の現物の八索を落としをしていく。
(まあ、当然よね…)
しかし、次の8巡目。小百合は目と耳を疑った。
「リーチ」
和弥は2枚目の八索を曲げて、追っかけリーチをしてきたのだ。
(追っかけリーチ………嘘でしょう?)
10巡目。
「ツモ」
和了ったのは………………和弥だった。
(えっ!?)
四・七筒を止められている。
小百合は未だに和弥の麻雀はここと部室で見たのみだ。特に部室での2回戦目の牌効率打法は感心したが、牌効率打法なら自分だって和弥に負けない自信はある。
しかし今回は、小百合のアタリ牌はしっかりと止めていた。
「メンピン・ツモ・赤1の裏は無し。1,300・2,600」
この手で対子落としということは、雀頭を落としたという事。
そう、一旦は回ったはず。
(何となくヤマカンで? それとも完全に読み切った上で止めたの?)
混乱している小百合に、和弥が追い打ちをかけてきた。
「委員長。2,600だ。早く払えよ」
「あ、ご、ごめんなさい」
小百合は動揺しながら2,600点を和弥に支払う。リーチ棒の1,000点も当然和弥が回収し、これで和弥とは早くも9,800点差がついてしまった。
「え? 和弥クンの知り合いなん?」
どうやら下家の男性も和弥を知っているらしい。
「………紹介する。俺のクラスの委員長。去年の高校選手権のU-16の総合チャンピオンだ」
「は、初めまして。西浦小百合です」
小百合はハッとする。賭け麻雀である以上、負けたら彼らにも金を払わなければいけないのだ。
「マジかよ。和弥クンにこんな可愛いクラスメートいたんか」
「ねぇねぇ。小百合ちゃんって彼氏いるん?」
1,300点を払いながら、慣れ馴れしく小百合の名前を呼ぶ下家の男性。
「はい。いますよ」
「マジかー。残念!」
本当はいないが、ナンパ男を追い払うにはこれが一番だ。北家になった小百合は4個づつ牌を取り始めた。
紅帝楼の禁煙ゾーンにある12卓。白のロールネックジャケットにスカイブルーのセミフォーマルのワンピースという、如何にもな服装をした小百合は和弥を待ち構えるが如く、早くも座っていた。
「来なきゃ何言われるか、分かったもんじゃねえしな」
ジーパンに開襟のシャツというラフな服装の和弥は、小百合の対面に座る。
「すいませーん」
座った和弥はメンバーを呼んだ。どうやらカフェ・オレの注文と、フリーで打てる客を2名この卓に寄こすように、との事である。
少々時間を置いて、上家と下家には、それぞれ学生っぽい男が座った。
とは言っても紅帝楼の常連らしく、和弥を見るなり「うっす和弥クン」「久しぶりだな沢渡クンと打つの」と和弥に普通に挨拶をしてきた。
しかし間違いなく気になるのは小百合の方のようで、横眼でチラチラと小百合の顔を見ている。
大部分の雀荘がそうであるように、この紅帝楼でもフリー対戦の場合、普通なら伏せた東・南・西・北の牌を取って席決めをする。
が。もう和弥と小百合が座っているので、残りの若い男達はそれぞれ空いている席に座り、起家決めだけを行った。小百合が起家となり、いよいよ対戦である。
東1局。ドラは三萬。7巡目、小百合に早くもチャンス手が入った。
(最高の牌を引けたわ…三色確定ね。ダマでも親満だけど。リーチしてツモか裏が乗れば親っパネ。これは行くべきよ!)
点棒入れから迷わず千点棒を取り出す。
「リーチ!」
親の先制リーチ。普通なら皆降りるはず……そう思いながら小百合はリーチ棒を置いた。
「うわ、早い親リーだな」
「一発は避けとくよ」
小百合の現物を切る上家と下家。対面に座った和弥も、手の内から小百合の現物の八索を落としをしていく。
(まあ、当然よね…)
しかし、次の8巡目。小百合は目と耳を疑った。
「リーチ」
和弥は2枚目の八索を曲げて、追っかけリーチをしてきたのだ。
(追っかけリーチ………嘘でしょう?)
10巡目。
「ツモ」
和了ったのは………………和弥だった。
(えっ!?)
四・七筒を止められている。
小百合は未だに和弥の麻雀はここと部室で見たのみだ。特に部室での2回戦目の牌効率打法は感心したが、牌効率打法なら自分だって和弥に負けない自信はある。
しかし今回は、小百合のアタリ牌はしっかりと止めていた。
「メンピン・ツモ・赤1の裏は無し。1,300・2,600」
この手で対子落としということは、雀頭を落としたという事。
そう、一旦は回ったはず。
(何となくヤマカンで? それとも完全に読み切った上で止めたの?)
混乱している小百合に、和弥が追い打ちをかけてきた。
「委員長。2,600だ。早く払えよ」
「あ、ご、ごめんなさい」
小百合は動揺しながら2,600点を和弥に支払う。リーチ棒の1,000点も当然和弥が回収し、これで和弥とは早くも9,800点差がついてしまった。
「え? 和弥クンの知り合いなん?」
どうやら下家の男性も和弥を知っているらしい。
「………紹介する。俺のクラスの委員長。去年の高校選手権のU-16の総合チャンピオンだ」
「は、初めまして。西浦小百合です」
小百合はハッとする。賭け麻雀である以上、負けたら彼らにも金を払わなければいけないのだ。
「マジかよ。和弥クンにこんな可愛いクラスメートいたんか」
「ねぇねぇ。小百合ちゃんって彼氏いるん?」
1,300点を払いながら、慣れ馴れしく小百合の名前を呼ぶ下家の男性。
「はい。いますよ」
「マジかー。残念!」
本当はいないが、ナンパ男を追い払うにはこれが一番だ。北家になった小百合は4個づつ牌を取り始めた。
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