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序章

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ーーー ー ー


目を開けたら
目の前に広がるのは惨劇だった。
どんなものだって?
血溜まり、串刺し、そこにいる人間だったものたち。
『地獄』という言葉が似合う惨状。
慌てて自分の手を見てしまう。
両手は無事だが汚れていた。
あぁ、よかったまだいける。
まだ動ける。
いける?なんでそう思ったのかわからない。
満身創痍だった体に鞭を打ち立ち上がろうと地面に手をつけようとした時だった。
『こんぐらっちゅれーしょーん!生きてる人たちおめでとうございま~す!』
知らない女性の声が聞こえる。
頭に響く声、まるで耳にではなく直接脳に音が流れている。
『おやぁ~5体満足の人もいる~運がいいですね~よかったですねぇ…今回の……は』
声を出したいけど出ない、なんだこいつ…吠えるように声を出そうと必死なのに音が出ない
『まぁもう皆様の願い事は聞いちゃってますからポイント高い順にかなえますけどねぇ…まずは…』
なんだ、こっちにくる?
まずいくっくるなまだ装備も何も……。


ー ー ーーーー


「…きろ!…おい巣都里!」
「へぁ!!」
第三者の声にびっくりしガタンと大きな音を立て立ち上がる。
目の前に広がる景色は学校の一室。
そして目線は全部俺に向けられていた。
「はぁ…入学日早々寝るやつなんて初めてだぞ」
「…ぇ…ごっごめんなさい」
呆れた顔をしている、30代前半黒縁眼鏡をかけた男が今どんな状況かを説明してくれた。
教壇にいるということは、担任の先生ということである。
「はぁ、今な入学式終わってとりあえず自己紹介しようって話になってたんだ。
 名前とどこ中かあと何か一言得意なとことか趣味とかなんでも良いから言っとけ誕生日でも良いぞー」
やれやれと言わんばかりにほら早く詰まってるぞーと言われて俺は慌てて自己紹介を始めた。
「巣都里 京介、7月生まれ萬代4中です。
 …えーと特技…はないな…えーと部活は陸上部でした。よろしくお願いします!」
「…」
「…わぁ」
「巣都里が終わったから…よーしつぎー瀬尾ー」
パチパチと拍手されつつ席に着く。
とりあえず一つだけいえることがある。
入学早々悪い意味で目立ってしまった。
はたして俺の高校生活は無事に始められるのだろうか。
不安と期待が渦巻く青春が始まった。
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