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4話
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お菓子を持って部屋に戻った私は見たーー…
ソファに座ってゲームに興じる中年男子二人。
げーむ…だ…と…
壁付けの大きなテレビに釘付け…
なんですか、この光景…
耳をつんざく電子音ーー
ヒューン、ピューン、~🎶~
て、呆気に取られてないで、
「どうぞ」
ビスケットのお皿をテーブルに置いた。前のお皿は空になってる。
「ああ、美味しかったよ、香苗ちゃん、ありがとー」緑川さんがちらとこっちを向いた。
「緑川さん、お土産ありがとうございました」
「ははっ、名古屋土産だよん。名古屋じゃ絶対買って帰るんだー。俺あんこに目がなくってね」
へえ。そうなんだ。あとで階下に持って行こうかな。
にしてもゲーム…
ここ会社ですよ。
もう商談は終わったのかな。
これが普通の家で相手が子供なら、
ーーーこらこら、いい加減にしなさーーい、先に宿題でしょ!
はいっ、退散。
となるところですが。
何してるのーー上司様!
「お前相変わらずうまいなあ~」
緑川さんボヤかれる。
見たところスコアが芳しくない。
一方会長は
桁違いの高スコア。
意外にも会長はゲーマーだったのだ…
私はつい最近そのことを知った。
すごい…
指ってこんな風に動かすんだ……。何故か髪を撫で撫でされてるとこ思い出した。なんかさわさわする。
「高広を思い出すなあ。こーゆーの十八番だったよなあ」緑川さんしみじみと語る。
「お前もか。俺もだよ」
高広くん…
ハッカー?みたいなこと言ってたな。データに侵入するのわけないって。
「こんなクッキー食いながらやってたっけ。高広、オレ◯だっけ?」
ドキ。
オレ◯。いつか高広くんからもらったっけ。
有名なアメリカのお菓子。
いつかの都庁前での高広くんの姿が重なる。
「ああ、あの黒いやつだな」
「そーそー。アレばっか食ってたよな」
「向こうの親がそればかり出してたんだよ。それでケーキ焼いたりな」
そうだったんだ!
初耳。
アメリカでは定番なのかな。
「ふうん。元気してるのかなあ」
「あ、そういえば、メールよこしてたんだった」
「えっ! 見つかったのか」
「ーー。連絡だけだが。元気そうだ。画像送ってきてね」
「えええーーー。よかったじゃん。それならそうと教えてくれよーー」
「立て込んでる最中だったからな。うっかりしてたよ。少し前、親に連絡はあったんだが」
「親父さんもホッとしただろうなあ。よかったーーー」
むーー…。
感慨深く見守る私。
ちょっと前、私は二週間の長期病欠をした。
その間も会社は色々動いていて、
この会長室にも新参者が登場した。
それがこのゲーム機だ。
なんでもゲーム会社がらみの大きな開発事業が決まったらしい。
私の犯したヘマもなんのその、相変わらず好調なこの会社。
もうずーーっと前から国内ホワイト企業トップ独走中…
社員になりたい人わんさかいるわけで、通常は厳しい試験を突破しないと入社できない。
私がここにいられるの、何かの間違いじゃない? ハハハ……
「高広のことだからバツ悪くて中々顔出せないんだろうな」
「ああ」
高広くん…
そろそろ顔出ししてくれる気になったかな。
言いたくても言えない、てか信じてもらえない。
私の携帯…。ああ、あれが残ってれば…。泣
「失礼します…」
会話を邪魔しないようそろっと空いた皿を片そうとして私は見てしまった。
会長の手がぬっと伸びてきてビスケットつまむのを。
つまんで口にパクリ。
えっ、会長、しるこ…を?
モグモグ無表情で
た、たべたっ
「ああ、ダメだ、掴めん。このゲーム、甥っ子がやってんだけどなあ」緑川さんコントローラーを置く。
「甥? 金沢のか」
「そうそう。買わされましたわ、本体ごと。お年玉もやってんのよ。ついでに帰省するたびお守りですわ。イオンで一日中ゲーム」
「はは、そうか」
「またそこでアレコレねだられるのよー。独身は辛いよ。金が出てくばっかしで」
「仕方あるまい」
あっ、また!
結構お食べになるのですね…
緑川さんも。ゲームの合間に…ぽりぽり。
普通に家に遊びに来たおじさんじゃないですか。じーーっ…ーー。
「はあー、何もかも忘れてまったりしてえーー」
「今でも十分楽しそうだが?」
「俺だって現実逃避したくなる時あんのよ。ヴァーチャルでいい、嫁さんに膝枕してもらってぼーっと過ごしてみたい」
「…VR技術班紹介したほうがよさそうだな」
ーーえーっと…
しる◯サンド、
会長非常食リストに追加しとかなきゃ。
メモメモ…。
ソファに座ってゲームに興じる中年男子二人。
げーむ…だ…と…
壁付けの大きなテレビに釘付け…
なんですか、この光景…
耳をつんざく電子音ーー
ヒューン、ピューン、~🎶~
て、呆気に取られてないで、
「どうぞ」
ビスケットのお皿をテーブルに置いた。前のお皿は空になってる。
「ああ、美味しかったよ、香苗ちゃん、ありがとー」緑川さんがちらとこっちを向いた。
「緑川さん、お土産ありがとうございました」
「ははっ、名古屋土産だよん。名古屋じゃ絶対買って帰るんだー。俺あんこに目がなくってね」
へえ。そうなんだ。あとで階下に持って行こうかな。
にしてもゲーム…
ここ会社ですよ。
もう商談は終わったのかな。
これが普通の家で相手が子供なら、
ーーーこらこら、いい加減にしなさーーい、先に宿題でしょ!
はいっ、退散。
となるところですが。
何してるのーー上司様!
「お前相変わらずうまいなあ~」
緑川さんボヤかれる。
見たところスコアが芳しくない。
一方会長は
桁違いの高スコア。
意外にも会長はゲーマーだったのだ…
私はつい最近そのことを知った。
すごい…
指ってこんな風に動かすんだ……。何故か髪を撫で撫でされてるとこ思い出した。なんかさわさわする。
「高広を思い出すなあ。こーゆーの十八番だったよなあ」緑川さんしみじみと語る。
「お前もか。俺もだよ」
高広くん…
ハッカー?みたいなこと言ってたな。データに侵入するのわけないって。
「こんなクッキー食いながらやってたっけ。高広、オレ◯だっけ?」
ドキ。
オレ◯。いつか高広くんからもらったっけ。
有名なアメリカのお菓子。
いつかの都庁前での高広くんの姿が重なる。
「ああ、あの黒いやつだな」
「そーそー。アレばっか食ってたよな」
「向こうの親がそればかり出してたんだよ。それでケーキ焼いたりな」
そうだったんだ!
初耳。
アメリカでは定番なのかな。
「ふうん。元気してるのかなあ」
「あ、そういえば、メールよこしてたんだった」
「えっ! 見つかったのか」
「ーー。連絡だけだが。元気そうだ。画像送ってきてね」
「えええーーー。よかったじゃん。それならそうと教えてくれよーー」
「立て込んでる最中だったからな。うっかりしてたよ。少し前、親に連絡はあったんだが」
「親父さんもホッとしただろうなあ。よかったーーー」
むーー…。
感慨深く見守る私。
ちょっと前、私は二週間の長期病欠をした。
その間も会社は色々動いていて、
この会長室にも新参者が登場した。
それがこのゲーム機だ。
なんでもゲーム会社がらみの大きな開発事業が決まったらしい。
私の犯したヘマもなんのその、相変わらず好調なこの会社。
もうずーーっと前から国内ホワイト企業トップ独走中…
社員になりたい人わんさかいるわけで、通常は厳しい試験を突破しないと入社できない。
私がここにいられるの、何かの間違いじゃない? ハハハ……
「高広のことだからバツ悪くて中々顔出せないんだろうな」
「ああ」
高広くん…
そろそろ顔出ししてくれる気になったかな。
言いたくても言えない、てか信じてもらえない。
私の携帯…。ああ、あれが残ってれば…。泣
「失礼します…」
会話を邪魔しないようそろっと空いた皿を片そうとして私は見てしまった。
会長の手がぬっと伸びてきてビスケットつまむのを。
つまんで口にパクリ。
えっ、会長、しるこ…を?
モグモグ無表情で
た、たべたっ
「ああ、ダメだ、掴めん。このゲーム、甥っ子がやってんだけどなあ」緑川さんコントローラーを置く。
「甥? 金沢のか」
「そうそう。買わされましたわ、本体ごと。お年玉もやってんのよ。ついでに帰省するたびお守りですわ。イオンで一日中ゲーム」
「はは、そうか」
「またそこでアレコレねだられるのよー。独身は辛いよ。金が出てくばっかしで」
「仕方あるまい」
あっ、また!
結構お食べになるのですね…
緑川さんも。ゲームの合間に…ぽりぽり。
普通に家に遊びに来たおじさんじゃないですか。じーーっ…ーー。
「はあー、何もかも忘れてまったりしてえーー」
「今でも十分楽しそうだが?」
「俺だって現実逃避したくなる時あんのよ。ヴァーチャルでいい、嫁さんに膝枕してもらってぼーっと過ごしてみたい」
「…VR技術班紹介したほうがよさそうだな」
ーーえーっと…
しる◯サンド、
会長非常食リストに追加しとかなきゃ。
メモメモ…。
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