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9話 残り香
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「へーー、東京に戻ってたのか」
高広はキッチンのスツールに座り、警察からの報告をまとめたプリントを見ながら呟いた。
「そして神戸…」 これは旅行か? 主要駅のカメラを分析した結果らしい。
「新幹線の移動はおそらく単独。てことは、事件に巻き込まれたわけじゃないのかな」
「でも、東京に戻ったあとが不明ってのがな…」
映っていたのは、新神戸、新大阪、そして品川。移動の軌跡は明確だが、目的は不明。 香苗は何をしに神戸へ行き、なぜ東京に戻ったのか。 そして、なぜ会社にも家族にも連絡を絶ったのか。
「連絡しないのではなく、出来ないんじゃ…もしかして誘拐?」呟いてぞっとした。
あの山陰旅行からは想像できないが、何が起こるかわからないのが今の日本だ。
さらわれたとか?東京で?
何だかありそうな気がしてきた。
高広は報告書を閉じ、深く息を吐いた。 香苗が自分の意思で姿を消したのか、それとも何かに巻き込まれたのか。 その境界が、曖昧になってきた。
のんきに誰かとさすらっている…そんな状況じゃない。
いつもと変わらない窓の外の景色。この東京で香苗は行方が分からなくなったのだろうか…警察は街中の監視カメラの映像も探っているのだろうか?
マヤは、自室の窓からハイアットの灯りを見ていた。 彼が泊まっている部屋の階は、もう把握している。
「焦ってはダメよ、もう少し…もう少しであの人と…」
自分に言い聞かせるように、深く息を吐いた。 気分を落ち着かせようと、アロマを焚く。
指輪なんて、早すぎた。でも、あんなに拒否されるなんて。
指輪は恋人の象徴のようなもので、前はそれを買う寸前で破談になった。
どうしてもその気持ちが前に出てしまう。
「相変わらず素敵だけど、少し変わったかな。でも心の中にはあの頃の成明がまだ……」
忘れるなんてできない。何もかも幸せの絶頂にいた。転がり落ちるなんて認めたくない。
指輪はやめた方がよさそうだ。
もので気持ちを表すなんてそもそもあの人の嫌いそうなこと。
結婚式もそうだった…私の好きにさせてくれた。
それは、興味がなかったから?
その言葉にたどり着いて、急に不安になった。
『好きなようにしていいよ』と言った彼の言葉。 優しさだと思っていた。でも、あれは――興味がなかったから? 選ばせてくれるのではなく、手放していただけなのかもしれない。
成明はいつも穏やかだった。何かを強く否定することはなかった。 でも、あの日を境に豹変した。そんな男はやめておけ。養父にも言われた。
あの指輪を見たとき、彼の目が明らかに曇った。 無表情はいつものことだけど、何かを避けるような…あのときの表情が、気になる。
アロマが香らなくなった。前は、部屋に馴染んでいた。 今はただ、空気に浮いているだけ。どこかに引っかかることもなく、流れていってしまう。
いつもはこんなことはないのに…この香りの中で眠りにつくのに…。何かが動こうとしている、それに気づくか気づかないかお構いなしに。マヤは一人シャワーに向かった。眺望は確かに素晴らしい部屋だ。
高広はキッチンのスツールに座り、警察からの報告をまとめたプリントを見ながら呟いた。
「そして神戸…」 これは旅行か? 主要駅のカメラを分析した結果らしい。
「新幹線の移動はおそらく単独。てことは、事件に巻き込まれたわけじゃないのかな」
「でも、東京に戻ったあとが不明ってのがな…」
映っていたのは、新神戸、新大阪、そして品川。移動の軌跡は明確だが、目的は不明。 香苗は何をしに神戸へ行き、なぜ東京に戻ったのか。 そして、なぜ会社にも家族にも連絡を絶ったのか。
「連絡しないのではなく、出来ないんじゃ…もしかして誘拐?」呟いてぞっとした。
あの山陰旅行からは想像できないが、何が起こるかわからないのが今の日本だ。
さらわれたとか?東京で?
何だかありそうな気がしてきた。
高広は報告書を閉じ、深く息を吐いた。 香苗が自分の意思で姿を消したのか、それとも何かに巻き込まれたのか。 その境界が、曖昧になってきた。
のんきに誰かとさすらっている…そんな状況じゃない。
いつもと変わらない窓の外の景色。この東京で香苗は行方が分からなくなったのだろうか…警察は街中の監視カメラの映像も探っているのだろうか?
マヤは、自室の窓からハイアットの灯りを見ていた。 彼が泊まっている部屋の階は、もう把握している。
「焦ってはダメよ、もう少し…もう少しであの人と…」
自分に言い聞かせるように、深く息を吐いた。 気分を落ち着かせようと、アロマを焚く。
指輪なんて、早すぎた。でも、あんなに拒否されるなんて。
指輪は恋人の象徴のようなもので、前はそれを買う寸前で破談になった。
どうしてもその気持ちが前に出てしまう。
「相変わらず素敵だけど、少し変わったかな。でも心の中にはあの頃の成明がまだ……」
忘れるなんてできない。何もかも幸せの絶頂にいた。転がり落ちるなんて認めたくない。
指輪はやめた方がよさそうだ。
もので気持ちを表すなんてそもそもあの人の嫌いそうなこと。
結婚式もそうだった…私の好きにさせてくれた。
それは、興味がなかったから?
その言葉にたどり着いて、急に不安になった。
『好きなようにしていいよ』と言った彼の言葉。 優しさだと思っていた。でも、あれは――興味がなかったから? 選ばせてくれるのではなく、手放していただけなのかもしれない。
成明はいつも穏やかだった。何かを強く否定することはなかった。 でも、あの日を境に豹変した。そんな男はやめておけ。養父にも言われた。
あの指輪を見たとき、彼の目が明らかに曇った。 無表情はいつものことだけど、何かを避けるような…あのときの表情が、気になる。
アロマが香らなくなった。前は、部屋に馴染んでいた。 今はただ、空気に浮いているだけ。どこかに引っかかることもなく、流れていってしまう。
いつもはこんなことはないのに…この香りの中で眠りにつくのに…。何かが動こうとしている、それに気づくか気づかないかお構いなしに。マヤは一人シャワーに向かった。眺望は確かに素晴らしい部屋だ。
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