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僕の幼馴染はちょっとお転婆がすぎる
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勢いで短編を書いてみました。
僕の書いているもう一つの作品の外伝にしてもいいかなと思ったのですが。
こんな感じで別の作品も書いてみたいな、と思って別にしてあります。
感想等もらえたら嬉しいです。
************************************
僕こと山田巧(やまだたくみ)は幼馴染の少女、日下部焔(くさかべほむら)と一緒に数週間前に異世界転移してしまった。
ちょうど二人で今話題のVRMMORPGをやっていたのだが、イベントボスを倒すと見たところもないところに移動してしまった。これがこと始まりだ。
初めはイベントの続きだと思っていたが、あまりのリアル感に僕たちはここが現実だと認識せざるを得なかった。
そして幸か不幸か僕たちのステータスはゲームの時とほぼ同じで、この世界で冒険者として暮らしていけそうだったのだ。
「ねぇ、巧? でどうするの?」
「えっ? どうするって?」
「さっきの話よ。近くの森に現れたドラゴンのことよ」
「正直いうと、今の僕たちだと厳しいかな。僕は高LVだけど支援型だし、焔はまだLV低いからね」
僕が分析した結果を伝えるも、焔はいまいち納得してない様子だ。
彼女は僕の幼馴染で、性格は実直で弱気を助け強きを挫く、を地で行くような子だ。正直隣でみているとひやひやする。
「でもぉ、ここの村の人達にはすっごいお世話になったんだよ? 助けてあげられないかな?」
転移してすぐに右も左もわからない僕たちにこの村の人達は優しくしてくれたのは確かだが相手がドラゴンとなると命がけになる。さすがにそこまではなぁ。
これがゲームなら問題なく助けに行くよ、でも現実だと確信した今、それは難しい。
「無理だよ。僕は後衛でさらに高LVだから死ぬことはよっぽどないけど、焔は違うでしょ? LVもまだ50を少し超えた程度。ドラゴンがもし高位な奴なら瞬殺もありえる。そんな危ないとこに――」
「もーいい!! 巧はどこでも好きに行っちゃいなよ! 私は1人でもやるんだから」
焔はそういうと机をドンと叩き僕の前から外へと走り出す。
まったく、いつもこうなんだから。
僕は小さいころ周りに馴染めずに苛められていた時期がある。その時僕がそのことを話すと焔は腕をまくっていじめっ子の大将に殴りこみにいったのだ。
ふいに昔を思い出してしまった。
それで、なんだかんだでいじめられなくなったのだが、なぜかそれ以降焔と一緒にいることになった。僕の件が終わっても彼女の性格は変わらず、僕は度々肝を冷やされた。
「まって、焔。一人じゃ危ないだろ」
僕は彼女を追いかけ走り出し、その腕をつかむ。
「はな、離してよ。だったら巧も手伝ってよ!!」
少しヒステリックなように彼女が叫ぶ。
「わかった、わかった。わかったから」
「えっ? ホントに!?」
キョトンとする彼女を見つめる。
「いつからの付き合いだと思ってるんだよ。なんだかんだで僕はいつも焔に巻き込まれているだろ?」
「あれ? そうだっけ?」
焔が所在なさげにその右手で頭をかく。そのわざとらしい態度、もしかして自覚してたのか?
「あれ、そうだっけ、じゃないでしょ。つい最近だと焔がおばあちゃんに悪さした不良にケンカ売った時も僕はついて行ったでしょ? あの時のケガ結構痛かったんだよ!」
「あはははは。そんな巧のことは私は大好きだよ」
とびきりの笑顔でそう焔が言う。
ずるいな。そんな顔されたらなんも言えないよ。
「で? 焔の作戦は!?」
「とりあえず、剣持って突っ込む?」
僕は大きくため息をつき、頭を抱える。どこの脳筋だよ。
その後僕たちは宿へと戻り食事の続きをしながら対ドラゴン戦の作戦を練った。
翌日
僕たちは森の中を奥へ奥へと進んでいく。僕はもちろん、焔もLV52とこのあたりの一般的な魔物であれば敵にもならない。
順調に森を歩くこと数時間、ついに僕たちは件のドラゴンと遭遇した。
「脆弱な人間よ、何をしに来た」
なっ。
「あなたがいると村の人が迷惑するの、どっか行ってくれないかしら」
「我が下劣な人間の言を聞くと思っているのか。矮小で哀れな人間よ」
焔があんなヤバそうな化け物相手に普通に話している。どんだけなんだ、僕の幼馴染。
って、違う。僕が驚いているのは焔が話していることではない。
ドラゴンが話していることだ。
言葉を話すドラゴンがいないことはない。がそういったドラゴンは必ずと言っていい確率で上位種なのだ。
つまり、このドラゴンは最低でもLV80のパーティーで挑むべき強敵であるということだ。
「焔、気を付けて。こいつは上位種だ」
「りょーかい」
本当にわかっているのかな?
「ふん、煩わしい。死ね」
そうドラゴンが言い放つと同時に僕は呪文を詠唱する。
『我が乞うは風の障壁 ウインド・シールド』
僕と焔の前に上昇する風の壁が現れる。そして間髪入れずに、ドラゴンの口から炎のブレスが放たれる。
放たれた炎は一直線に僕たちに向かうが壁の障壁に阻まれ上空へと逸れていく。
攻撃は回避したがその熱の余波はしっかりとこっちに伝わり、長時間のブレス攻撃が終わるころには僕も焔も少し暑さで参ってしまうほどであった。
「小癪な」
ブレスが終わると次はどうやら直接攻撃でくるようだ。距離を詰められる前に
『我が乞うは風の加護 スピード・アップ』
『我が乞うは炎の加護 パワー・アップ』
『我が乞うは土の加護 プロテクション』
焔の基礎能力を底上げしておく。
ドラゴンの爪が焔を狙うが、焔はそれを見切り大きくバックステップ踏み避ける。躱すついでに剣を振るった様子だが、効果は薄いらしい。
幾度か後退しながらドラゴンの爪による攻撃を避ける焔。襲い来る攻撃にだんだんと目が慣れてきてそのリズムも読めてきたのか、最初に比べると危なげなく避けている。
その間も焔は何度も何度も剣を振るうが、効果はなさそうだ。
「ほむらぁー、うえ!」
「えっ」
僕の上げた声に気づいた時には少し遅かった。今までずっと爪で攻撃してきたのにいきなり尻尾による攻撃が焔を襲う。
なんとか、身体を捻って倒れこむように躱すことができたが、相手は待ってくれない。
『プロテクション』
僕は詠唱省略で自身の防御を上げ、すぐに焔の元へ駆けつける。そして、今に振り下ろされそうなドラゴンの爪と焔の間に入り込む。
次の瞬間、ドラゴンの爪が僕を襲う。
ドゴォォン。そんな音が聞こえたようにも思えた。そして襲い来る衝撃。
痛い。痛い。痛いぃぃぃ。
少しの間だけあのバカでかい爪を受け止めたが、もう無理。下をちらっとみて僕はやつの爪を受け流すように降ろしその場を去る。その勢いでドラゴンはバランスを崩し転倒する。
「ありがとう、巧」
「ありがとう、じゃないだろ? 僕は後衛だぞ?」
「うーん、それでもありがとう」
僕が作った少しの時間であの場から退避できた焔が礼を言う。悪いと思うならもう少し慎重に行動してくれ。
「あと、ふと思ったんだ。僕たちのPT構成だとあいつが空へ逃げたら終わりだぞ?」
「あぁ、そっか。そうなる前にやっちゃわないといけないわけだね、ワトソン君?」
「誰がワトソンだ、誰が。でも、そういうこと。ちなみに、僕たちの残された選択肢は2つ」
僕は手を焔の前に出し指を1本立てる。
「一つは、やっぱり諦めて逃げ帰る」
「却下」
ですよね、わかってましたよ。焔がそう言うのはさ。でも提案ぐらいしてもいいでしょ。僕は2本目の指を立てる
「二つ目は先までと同様に、僕の支援魔法と焔の攻撃で倒すように頑張る」
「倒せると思う?」
「無理だろうね。簡単に負けるとは思えないけど、ダメージソースがない。そのうちあいつが飽きて空でもとんだらそれで終わりだ」
「それならそれも却下ね。全然だめじゃない巧。って、巧のことだからどうせなにか案があるんでしょ、他にもさ。黙ってないで教えなさいよ」
焔が僕の服をつかみ揺すってくる。
「あぁ、あるけどこれはあまりお勧めしないぞ。たぶんあいつに勝てるとは思うけど、お前後で絶対後悔するから」
「もう、なんでもいいわ。あいつを倒せるなら。じゃ、その案採用よ。で、どうすればいいの」
「焔はさっきまでと同じでいいよ。でも絶対後で僕に文句言わないでよね」
何度も念を押すが効果はないだろうなぁ。
「わかったから、わかったから。さっさとやりましょう。なぜかドラゴンもこっちを見て待ってくれてるみたいだし」
いや、あれは警戒してるんだと思うよ? ってことはそろそろ決着をつけるタイミングか。空に逃げられるとどうにもならないからね。
僕はとっておきの魔法を使うことに。正直これ大変なんだよね、僕も。
『炎を司る大精霊サラマンダーよ 我が乞うはその御力の一欠片 矮小なる人の身で 我が前に立ちし強大な者を討たん ディレイマジック』
僕の周りが赤く染まり、輝きを増す。詠唱が終わるとその赤い輝きは僕の手に集う。
『炎を司る大精霊イフリートよ 我が敵を討つため その力の一片を矮小なる我が身に与えたまへ ディレイマジック』
二個目の詠唱をすると先と同じ光景が繰り返される。
が違うところがある。それは、僕の手に集った光だ。光はなおその輝きを増す。
「いけぇ、焔。僕を信じて全力で剣をあいつに突き刺してやれ」
「オーケイ、ボス。任せておきなさい」
ボスはどちらかというとお前だろ?
焔が地面を蹴り、スピードをグングンとあげる。ドラゴンは先ほどと違い攻撃をしてこない。
いや、その眼はしっかりと僕を捉えている。どうやら先のやりとりで焔は敵足りえない、警戒すべきは僕と判断したのだろう。
加えて先の大魔術の魔力を感知して僕をビンビンに警戒している。
だが、それは最高の悪手だ。
焔がもう数歩でドラゴンの間合いに入る。
『リリースマジック』
その瞬間ドラゴンが僕のほうをしっかりとその眼を見開き、そして驚愕する。
僕からは何も起きない。もちろん失敗でもない。魔法はちゃんと発動している。
焔がドラゴンの間合いに入る。すぐに尻尾による攻撃が襲い掛かってきたが、それはすでに見ている。焔は軽く横に飛び躱す。
そして焔が地面を大きく地面を蹴り、ドラゴンの頭程まで飛ぶ。剣を大きく振りかぶり、そのまま振り下ろす。
先までであれば、剣は容易く弾かれて焔はそのままドラゴンの爪の餌食になってしまうだろう。
だが、そうはならない。
なぜなら、僕のとっておきの支援魔法がかかっている 今の焔の攻撃力は、LV100の戦士職相当になっているから。
焔の振りかぶった剣はまるでバターを切るかのように容易くドラゴンの体を真っ二つにしていく。
ズドォン。ズドォン。と大きなものが二つ地面に追突する音が続けて聞こえた。
「やったぁ、やったよ、巧。大勝利だね、私たち。これで村の人もよろこんでくれるかな?」
「もちろんだろ、それにしても疲れたね。僕は早く宿に帰りたいよ」
「ふふふ。ボスの言う通りにしましょうか」
にやにやしながら焔はそんなことを言う。こいつからかってやがるな。
「そんなこと言って僕をからかうと後で後悔するぞ」
「ふふ~ん、楽しみにしてるわ」
僕たちはドラゴンの素材をもって村へと戻った。すぐに報告しようと思ったが、あまりに疲れていたので明日報告することにして今日はすぐに休むことにした。
宿で寝転んでいるとほぼ空になっていた僕の魔力は完全に回復し、疲れもほとんど抜けてきた。自分でも驚くほどの回復量だ。LV100にしてもちょっと異常な気がする。まぁ、多くて困るものでないのでいいのだが。
なんて、1人考え事をしていると何やら扉を叩くような音がする。
あ、もうそんなタイミングか。
「た~く~みぃ~、助けて。体中が痛いの。病気かな、ケガかな」
そこには床を這いつくばっている焔がいた。あまりに痛くて立って歩くこともできなかったらしい。まぁ、予想通りだけど。
「そんなに心配しないでも大丈夫だから」
「え、治せるの!?」
先までの絶望色に染まった顔が一瞬で明るくなる。が、僕の答えは
「無理に決まってるじゃん。それは高威力の補助魔法の重ね掛けの反動だよ、たぶん明日の昼ぐらいまではそのままじゃない?」
「な、なにそれ! 聞いてないわよ!!」
「いや、僕は説明しようとしたよね?」
「聞いてないなら一緒よ、まったく。バツとして巧は私のお世話を明日の昼まですること。さっそくだけど喉が渇いたわ」
「はいはい、わかりました。ボス」
「わかればよろしい」
ほら、やっぱり君がボスだろ(笑)
僕は焔を抱きかかえ彼女の部屋のベッドに運び、宿の下の階へと水を求め歩いていく。
なんとかなったけど、これからもうまくいく確証はない。でも僕が焔を守っていかないといけないなよね。
もう少ししたらいろいろな国を渡り情報を集めよう。もしかしたら別の日本人にも会えるかもしれないし。
僕の書いているもう一つの作品の外伝にしてもいいかなと思ったのですが。
こんな感じで別の作品も書いてみたいな、と思って別にしてあります。
感想等もらえたら嬉しいです。
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僕こと山田巧(やまだたくみ)は幼馴染の少女、日下部焔(くさかべほむら)と一緒に数週間前に異世界転移してしまった。
ちょうど二人で今話題のVRMMORPGをやっていたのだが、イベントボスを倒すと見たところもないところに移動してしまった。これがこと始まりだ。
初めはイベントの続きだと思っていたが、あまりのリアル感に僕たちはここが現実だと認識せざるを得なかった。
そして幸か不幸か僕たちのステータスはゲームの時とほぼ同じで、この世界で冒険者として暮らしていけそうだったのだ。
「ねぇ、巧? でどうするの?」
「えっ? どうするって?」
「さっきの話よ。近くの森に現れたドラゴンのことよ」
「正直いうと、今の僕たちだと厳しいかな。僕は高LVだけど支援型だし、焔はまだLV低いからね」
僕が分析した結果を伝えるも、焔はいまいち納得してない様子だ。
彼女は僕の幼馴染で、性格は実直で弱気を助け強きを挫く、を地で行くような子だ。正直隣でみているとひやひやする。
「でもぉ、ここの村の人達にはすっごいお世話になったんだよ? 助けてあげられないかな?」
転移してすぐに右も左もわからない僕たちにこの村の人達は優しくしてくれたのは確かだが相手がドラゴンとなると命がけになる。さすがにそこまではなぁ。
これがゲームなら問題なく助けに行くよ、でも現実だと確信した今、それは難しい。
「無理だよ。僕は後衛でさらに高LVだから死ぬことはよっぽどないけど、焔は違うでしょ? LVもまだ50を少し超えた程度。ドラゴンがもし高位な奴なら瞬殺もありえる。そんな危ないとこに――」
「もーいい!! 巧はどこでも好きに行っちゃいなよ! 私は1人でもやるんだから」
焔はそういうと机をドンと叩き僕の前から外へと走り出す。
まったく、いつもこうなんだから。
僕は小さいころ周りに馴染めずに苛められていた時期がある。その時僕がそのことを話すと焔は腕をまくっていじめっ子の大将に殴りこみにいったのだ。
ふいに昔を思い出してしまった。
それで、なんだかんだでいじめられなくなったのだが、なぜかそれ以降焔と一緒にいることになった。僕の件が終わっても彼女の性格は変わらず、僕は度々肝を冷やされた。
「まって、焔。一人じゃ危ないだろ」
僕は彼女を追いかけ走り出し、その腕をつかむ。
「はな、離してよ。だったら巧も手伝ってよ!!」
少しヒステリックなように彼女が叫ぶ。
「わかった、わかった。わかったから」
「えっ? ホントに!?」
キョトンとする彼女を見つめる。
「いつからの付き合いだと思ってるんだよ。なんだかんだで僕はいつも焔に巻き込まれているだろ?」
「あれ? そうだっけ?」
焔が所在なさげにその右手で頭をかく。そのわざとらしい態度、もしかして自覚してたのか?
「あれ、そうだっけ、じゃないでしょ。つい最近だと焔がおばあちゃんに悪さした不良にケンカ売った時も僕はついて行ったでしょ? あの時のケガ結構痛かったんだよ!」
「あはははは。そんな巧のことは私は大好きだよ」
とびきりの笑顔でそう焔が言う。
ずるいな。そんな顔されたらなんも言えないよ。
「で? 焔の作戦は!?」
「とりあえず、剣持って突っ込む?」
僕は大きくため息をつき、頭を抱える。どこの脳筋だよ。
その後僕たちは宿へと戻り食事の続きをしながら対ドラゴン戦の作戦を練った。
翌日
僕たちは森の中を奥へ奥へと進んでいく。僕はもちろん、焔もLV52とこのあたりの一般的な魔物であれば敵にもならない。
順調に森を歩くこと数時間、ついに僕たちは件のドラゴンと遭遇した。
「脆弱な人間よ、何をしに来た」
なっ。
「あなたがいると村の人が迷惑するの、どっか行ってくれないかしら」
「我が下劣な人間の言を聞くと思っているのか。矮小で哀れな人間よ」
焔があんなヤバそうな化け物相手に普通に話している。どんだけなんだ、僕の幼馴染。
って、違う。僕が驚いているのは焔が話していることではない。
ドラゴンが話していることだ。
言葉を話すドラゴンがいないことはない。がそういったドラゴンは必ずと言っていい確率で上位種なのだ。
つまり、このドラゴンは最低でもLV80のパーティーで挑むべき強敵であるということだ。
「焔、気を付けて。こいつは上位種だ」
「りょーかい」
本当にわかっているのかな?
「ふん、煩わしい。死ね」
そうドラゴンが言い放つと同時に僕は呪文を詠唱する。
『我が乞うは風の障壁 ウインド・シールド』
僕と焔の前に上昇する風の壁が現れる。そして間髪入れずに、ドラゴンの口から炎のブレスが放たれる。
放たれた炎は一直線に僕たちに向かうが壁の障壁に阻まれ上空へと逸れていく。
攻撃は回避したがその熱の余波はしっかりとこっちに伝わり、長時間のブレス攻撃が終わるころには僕も焔も少し暑さで参ってしまうほどであった。
「小癪な」
ブレスが終わると次はどうやら直接攻撃でくるようだ。距離を詰められる前に
『我が乞うは風の加護 スピード・アップ』
『我が乞うは炎の加護 パワー・アップ』
『我が乞うは土の加護 プロテクション』
焔の基礎能力を底上げしておく。
ドラゴンの爪が焔を狙うが、焔はそれを見切り大きくバックステップ踏み避ける。躱すついでに剣を振るった様子だが、効果は薄いらしい。
幾度か後退しながらドラゴンの爪による攻撃を避ける焔。襲い来る攻撃にだんだんと目が慣れてきてそのリズムも読めてきたのか、最初に比べると危なげなく避けている。
その間も焔は何度も何度も剣を振るうが、効果はなさそうだ。
「ほむらぁー、うえ!」
「えっ」
僕の上げた声に気づいた時には少し遅かった。今までずっと爪で攻撃してきたのにいきなり尻尾による攻撃が焔を襲う。
なんとか、身体を捻って倒れこむように躱すことができたが、相手は待ってくれない。
『プロテクション』
僕は詠唱省略で自身の防御を上げ、すぐに焔の元へ駆けつける。そして、今に振り下ろされそうなドラゴンの爪と焔の間に入り込む。
次の瞬間、ドラゴンの爪が僕を襲う。
ドゴォォン。そんな音が聞こえたようにも思えた。そして襲い来る衝撃。
痛い。痛い。痛いぃぃぃ。
少しの間だけあのバカでかい爪を受け止めたが、もう無理。下をちらっとみて僕はやつの爪を受け流すように降ろしその場を去る。その勢いでドラゴンはバランスを崩し転倒する。
「ありがとう、巧」
「ありがとう、じゃないだろ? 僕は後衛だぞ?」
「うーん、それでもありがとう」
僕が作った少しの時間であの場から退避できた焔が礼を言う。悪いと思うならもう少し慎重に行動してくれ。
「あと、ふと思ったんだ。僕たちのPT構成だとあいつが空へ逃げたら終わりだぞ?」
「あぁ、そっか。そうなる前にやっちゃわないといけないわけだね、ワトソン君?」
「誰がワトソンだ、誰が。でも、そういうこと。ちなみに、僕たちの残された選択肢は2つ」
僕は手を焔の前に出し指を1本立てる。
「一つは、やっぱり諦めて逃げ帰る」
「却下」
ですよね、わかってましたよ。焔がそう言うのはさ。でも提案ぐらいしてもいいでしょ。僕は2本目の指を立てる
「二つ目は先までと同様に、僕の支援魔法と焔の攻撃で倒すように頑張る」
「倒せると思う?」
「無理だろうね。簡単に負けるとは思えないけど、ダメージソースがない。そのうちあいつが飽きて空でもとんだらそれで終わりだ」
「それならそれも却下ね。全然だめじゃない巧。って、巧のことだからどうせなにか案があるんでしょ、他にもさ。黙ってないで教えなさいよ」
焔が僕の服をつかみ揺すってくる。
「あぁ、あるけどこれはあまりお勧めしないぞ。たぶんあいつに勝てるとは思うけど、お前後で絶対後悔するから」
「もう、なんでもいいわ。あいつを倒せるなら。じゃ、その案採用よ。で、どうすればいいの」
「焔はさっきまでと同じでいいよ。でも絶対後で僕に文句言わないでよね」
何度も念を押すが効果はないだろうなぁ。
「わかったから、わかったから。さっさとやりましょう。なぜかドラゴンもこっちを見て待ってくれてるみたいだし」
いや、あれは警戒してるんだと思うよ? ってことはそろそろ決着をつけるタイミングか。空に逃げられるとどうにもならないからね。
僕はとっておきの魔法を使うことに。正直これ大変なんだよね、僕も。
『炎を司る大精霊サラマンダーよ 我が乞うはその御力の一欠片 矮小なる人の身で 我が前に立ちし強大な者を討たん ディレイマジック』
僕の周りが赤く染まり、輝きを増す。詠唱が終わるとその赤い輝きは僕の手に集う。
『炎を司る大精霊イフリートよ 我が敵を討つため その力の一片を矮小なる我が身に与えたまへ ディレイマジック』
二個目の詠唱をすると先と同じ光景が繰り返される。
が違うところがある。それは、僕の手に集った光だ。光はなおその輝きを増す。
「いけぇ、焔。僕を信じて全力で剣をあいつに突き刺してやれ」
「オーケイ、ボス。任せておきなさい」
ボスはどちらかというとお前だろ?
焔が地面を蹴り、スピードをグングンとあげる。ドラゴンは先ほどと違い攻撃をしてこない。
いや、その眼はしっかりと僕を捉えている。どうやら先のやりとりで焔は敵足りえない、警戒すべきは僕と判断したのだろう。
加えて先の大魔術の魔力を感知して僕をビンビンに警戒している。
だが、それは最高の悪手だ。
焔がもう数歩でドラゴンの間合いに入る。
『リリースマジック』
その瞬間ドラゴンが僕のほうをしっかりとその眼を見開き、そして驚愕する。
僕からは何も起きない。もちろん失敗でもない。魔法はちゃんと発動している。
焔がドラゴンの間合いに入る。すぐに尻尾による攻撃が襲い掛かってきたが、それはすでに見ている。焔は軽く横に飛び躱す。
そして焔が地面を大きく地面を蹴り、ドラゴンの頭程まで飛ぶ。剣を大きく振りかぶり、そのまま振り下ろす。
先までであれば、剣は容易く弾かれて焔はそのままドラゴンの爪の餌食になってしまうだろう。
だが、そうはならない。
なぜなら、僕のとっておきの支援魔法がかかっている 今の焔の攻撃力は、LV100の戦士職相当になっているから。
焔の振りかぶった剣はまるでバターを切るかのように容易くドラゴンの体を真っ二つにしていく。
ズドォン。ズドォン。と大きなものが二つ地面に追突する音が続けて聞こえた。
「やったぁ、やったよ、巧。大勝利だね、私たち。これで村の人もよろこんでくれるかな?」
「もちろんだろ、それにしても疲れたね。僕は早く宿に帰りたいよ」
「ふふふ。ボスの言う通りにしましょうか」
にやにやしながら焔はそんなことを言う。こいつからかってやがるな。
「そんなこと言って僕をからかうと後で後悔するぞ」
「ふふ~ん、楽しみにしてるわ」
僕たちはドラゴンの素材をもって村へと戻った。すぐに報告しようと思ったが、あまりに疲れていたので明日報告することにして今日はすぐに休むことにした。
宿で寝転んでいるとほぼ空になっていた僕の魔力は完全に回復し、疲れもほとんど抜けてきた。自分でも驚くほどの回復量だ。LV100にしてもちょっと異常な気がする。まぁ、多くて困るものでないのでいいのだが。
なんて、1人考え事をしていると何やら扉を叩くような音がする。
あ、もうそんなタイミングか。
「た~く~みぃ~、助けて。体中が痛いの。病気かな、ケガかな」
そこには床を這いつくばっている焔がいた。あまりに痛くて立って歩くこともできなかったらしい。まぁ、予想通りだけど。
「そんなに心配しないでも大丈夫だから」
「え、治せるの!?」
先までの絶望色に染まった顔が一瞬で明るくなる。が、僕の答えは
「無理に決まってるじゃん。それは高威力の補助魔法の重ね掛けの反動だよ、たぶん明日の昼ぐらいまではそのままじゃない?」
「な、なにそれ! 聞いてないわよ!!」
「いや、僕は説明しようとしたよね?」
「聞いてないなら一緒よ、まったく。バツとして巧は私のお世話を明日の昼まですること。さっそくだけど喉が渇いたわ」
「はいはい、わかりました。ボス」
「わかればよろしい」
ほら、やっぱり君がボスだろ(笑)
僕は焔を抱きかかえ彼女の部屋のベッドに運び、宿の下の階へと水を求め歩いていく。
なんとかなったけど、これからもうまくいく確証はない。でも僕が焔を守っていかないといけないなよね。
もう少ししたらいろいろな国を渡り情報を集めよう。もしかしたら別の日本人にも会えるかもしれないし。
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