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後編
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「火山が爆発したぞー!」村は大騒ぎになりました。
火山のてっぺんが吹き飛び、岩や土がすごい勢いで飛んできます。赤々とした溶岩もあちこちから流れ出ています。地面が割れるようなごう音が鳴りやみません。
「村人を助けるのじゃ!」
さすがの4人です。飛んでくる岩や流れてくる溶岩を防ぎながら、村人を安全な雲の上に避難させていきます。なんとういう手際のよさでしょう。これも厳しい修行のたまものです。
村の人たちは、ひとまず無事に雲の上に避難することができました。
ほっとしたのもつかの間、雲の上では村人たちが心配そうに話しています。
「このままだと、ルーシー様が、、、」
「ルーシー様とは何のことじゃな。」ニンじいが村人にたずねます。
「ルーシー様は村の宝物です。昔からの村の守り神です。火山のてっぺんのほこらにまつってあるのですが、火山の噴火でいったいどうなってしまったのか。ルーシー様がいなくなってしまったら村は終わりです。」
村人たちの中には泣き出すものもいました。よほど大事なものなのでしょう。
「ふむふむ。では、わしらが探してきてやろう。そのルーシー様とはどんなものなのじゃ?」
「サルの形をした石像です。首には宝石がついています。」
「サルじゃと?ジャガイモさん太郎の夢にも出てきたのう。ガゼン面白くなってきたわい。」
不思議なこともあるものです。ジャガイモさん太郎たちはびっくりしてお互い目を見合わせました。
「雲は人でいっぱいじゃ。歩いていくぞ。これも修行じゃ。」
ニンじいのかけ声で、4人は火山のてっぺんのほこらにあるという、サルの石像、ルーシー様を探しに出かけました。
普段から修行をしているので、このくらいの山登りはへっちゃらです。数時間ほど歩き、ついに、てっぺんの火口につきました。
火口では赤々とした熱い溶岩が、ぼこぼこと吹き出ています。激しい噴火で、ほこらはあとかたもなく壊れていました。
「熱いよう。まるで溶岩の温泉だ。」汗をダラダラたらしながらタマネギ野郎が言います。
「ダイエットにちょうどいいわ。」すこし余裕のブタコさん。
「いったいどこにルーシー様がいるのやら。」ジャガイモさんは太郎はあたりを見回します。
「さあ行くぞい。いつものあれをやるんじゃ。」
「もしかして、ここでやるんですかあ?」
「そうじゃ。」
「勘弁してくださーい!」
「勘弁するか!バカモン!行くぞ。奥義、溶岩鍋。ニン!」
ニンじいは背中の刀を抜くと、扇風機のように振り回しはじめました。
スパパパーン!
ジャガイモさん太郎、タマネギ野郎、ブタコさんの体は目にも止まらぬ速さで切られていきます。
さすがニンじい。仕事が早いです。あっという間に食べやすい大きさになりました。その後、ニンじいの体も刻んでいきます。
「今日は特別じゃ。溶岩風呂に突っ込むぞ。」
「ひえーっ!勘弁!勘弁!」
ニンじいは嫌がる弟子たちを、むりやり溶岩風呂のなかへ投げ込みます。
「熱い。熱い。」「勘弁。勘弁。」「私もうダメ。熱くて死にそう。」
「心頭滅却すれば火もまた涼しじゃ。」
「溶岩って、火よりも熱いんですけど。」
弟子たちがぼやいているうちに、野菜と肉の煮えるいい匂いがしてきました。溶岩での調理は火の通りが早いのです。
「仕上げじゃ。みそのコウジ!」
返事がありません。
「おい、どこじゃ?みそのコウジ!」
何度呼んでも返事がありません。
「しまったあ。みそのコウジを家に忘れてきてしもうた。何たる不覚。うまうまの溶岩トン汁が完成しないではないか。」
「ええー??」みんなあきれ顔です。
その時です。
溶岩風呂の中から金色に輝く何かが勢いよく飛び出しました。
サルのようでもあり人間のようでもあります。きれいなダイヤモンドのペンダントがきらめきます。
「もしかして、あなたは?」
「私はルーシー。」ルーシーは空の中を泳ぐように浮かんでいます。
「夢で見たのとおんなじだ!」ジャガイモさん太郎は思わず叫びました。
「村の人の話によるとルーシー様は石像じゃなかったっけ?」ブタコさんが尋ねます。
「確かについさっきまで、私は石でした。石といっても化石です。たった今、溶岩風呂の中で永い眠りから覚めたのです。」
「もしかして恐竜時代の化石ですか?」タマネギ野郎がうれしそうに質問しました。
「残念。もう少し後なの。」
「そういえば、さっきから辛いような、香ばしいような、いい匂いがするけれど。」ブタコさんの鼻は敏感なのです。
「それはわたしのカレールーの匂いです。私はカレーのルーシー。ぐつぐつ煮えたジャガイモ、タマネギ、豚肉が目の前にあるんですもの。ついついカレールウで味付けてしまったの。さあ!いただきましょう!」
火山も顔負けの山盛りアツアツ溶岩カレーの完成です。絶妙なカレースパイスの香りに食欲は爆発寸前。やけどしないように召し上がれ。
「いただきまーす!」
「を!を!を!んまーい!」
村人たちも、夢中になって食べました。食べると元気が湧いてきます。
火山の噴火で村はこわれてしまったけれど、村の守り神、ルーシー様が目覚めたのです。こんなにめでたいことはありません。また一からやり直そうと言い合う村人の声が聞こえてきます。
「ありがとう。皆さんのおかげで村人も元気になりました。」
カレーのルーシーは心からお礼を言いました。
「いやいや、そなたのおかげじゃ。わしは初めてカレーというものを食ったが、こりゃ絶品じゃな。また食いたいわい。」
「お安い御用です。呼んでくれればいつでも飛んできますよ。」
「同じ釜のメシになった仲じゃ。達者でな。友よ。」
そう言い残すと、4人は雲に乗ってあっという間に消えてゆきました。
火山のてっぺんが吹き飛び、岩や土がすごい勢いで飛んできます。赤々とした溶岩もあちこちから流れ出ています。地面が割れるようなごう音が鳴りやみません。
「村人を助けるのじゃ!」
さすがの4人です。飛んでくる岩や流れてくる溶岩を防ぎながら、村人を安全な雲の上に避難させていきます。なんとういう手際のよさでしょう。これも厳しい修行のたまものです。
村の人たちは、ひとまず無事に雲の上に避難することができました。
ほっとしたのもつかの間、雲の上では村人たちが心配そうに話しています。
「このままだと、ルーシー様が、、、」
「ルーシー様とは何のことじゃな。」ニンじいが村人にたずねます。
「ルーシー様は村の宝物です。昔からの村の守り神です。火山のてっぺんのほこらにまつってあるのですが、火山の噴火でいったいどうなってしまったのか。ルーシー様がいなくなってしまったら村は終わりです。」
村人たちの中には泣き出すものもいました。よほど大事なものなのでしょう。
「ふむふむ。では、わしらが探してきてやろう。そのルーシー様とはどんなものなのじゃ?」
「サルの形をした石像です。首には宝石がついています。」
「サルじゃと?ジャガイモさん太郎の夢にも出てきたのう。ガゼン面白くなってきたわい。」
不思議なこともあるものです。ジャガイモさん太郎たちはびっくりしてお互い目を見合わせました。
「雲は人でいっぱいじゃ。歩いていくぞ。これも修行じゃ。」
ニンじいのかけ声で、4人は火山のてっぺんのほこらにあるという、サルの石像、ルーシー様を探しに出かけました。
普段から修行をしているので、このくらいの山登りはへっちゃらです。数時間ほど歩き、ついに、てっぺんの火口につきました。
火口では赤々とした熱い溶岩が、ぼこぼこと吹き出ています。激しい噴火で、ほこらはあとかたもなく壊れていました。
「熱いよう。まるで溶岩の温泉だ。」汗をダラダラたらしながらタマネギ野郎が言います。
「ダイエットにちょうどいいわ。」すこし余裕のブタコさん。
「いったいどこにルーシー様がいるのやら。」ジャガイモさんは太郎はあたりを見回します。
「さあ行くぞい。いつものあれをやるんじゃ。」
「もしかして、ここでやるんですかあ?」
「そうじゃ。」
「勘弁してくださーい!」
「勘弁するか!バカモン!行くぞ。奥義、溶岩鍋。ニン!」
ニンじいは背中の刀を抜くと、扇風機のように振り回しはじめました。
スパパパーン!
ジャガイモさん太郎、タマネギ野郎、ブタコさんの体は目にも止まらぬ速さで切られていきます。
さすがニンじい。仕事が早いです。あっという間に食べやすい大きさになりました。その後、ニンじいの体も刻んでいきます。
「今日は特別じゃ。溶岩風呂に突っ込むぞ。」
「ひえーっ!勘弁!勘弁!」
ニンじいは嫌がる弟子たちを、むりやり溶岩風呂のなかへ投げ込みます。
「熱い。熱い。」「勘弁。勘弁。」「私もうダメ。熱くて死にそう。」
「心頭滅却すれば火もまた涼しじゃ。」
「溶岩って、火よりも熱いんですけど。」
弟子たちがぼやいているうちに、野菜と肉の煮えるいい匂いがしてきました。溶岩での調理は火の通りが早いのです。
「仕上げじゃ。みそのコウジ!」
返事がありません。
「おい、どこじゃ?みそのコウジ!」
何度呼んでも返事がありません。
「しまったあ。みそのコウジを家に忘れてきてしもうた。何たる不覚。うまうまの溶岩トン汁が完成しないではないか。」
「ええー??」みんなあきれ顔です。
その時です。
溶岩風呂の中から金色に輝く何かが勢いよく飛び出しました。
サルのようでもあり人間のようでもあります。きれいなダイヤモンドのペンダントがきらめきます。
「もしかして、あなたは?」
「私はルーシー。」ルーシーは空の中を泳ぐように浮かんでいます。
「夢で見たのとおんなじだ!」ジャガイモさん太郎は思わず叫びました。
「村の人の話によるとルーシー様は石像じゃなかったっけ?」ブタコさんが尋ねます。
「確かについさっきまで、私は石でした。石といっても化石です。たった今、溶岩風呂の中で永い眠りから覚めたのです。」
「もしかして恐竜時代の化石ですか?」タマネギ野郎がうれしそうに質問しました。
「残念。もう少し後なの。」
「そういえば、さっきから辛いような、香ばしいような、いい匂いがするけれど。」ブタコさんの鼻は敏感なのです。
「それはわたしのカレールーの匂いです。私はカレーのルーシー。ぐつぐつ煮えたジャガイモ、タマネギ、豚肉が目の前にあるんですもの。ついついカレールウで味付けてしまったの。さあ!いただきましょう!」
火山も顔負けの山盛りアツアツ溶岩カレーの完成です。絶妙なカレースパイスの香りに食欲は爆発寸前。やけどしないように召し上がれ。
「いただきまーす!」
「を!を!を!んまーい!」
村人たちも、夢中になって食べました。食べると元気が湧いてきます。
火山の噴火で村はこわれてしまったけれど、村の守り神、ルーシー様が目覚めたのです。こんなにめでたいことはありません。また一からやり直そうと言い合う村人の声が聞こえてきます。
「ありがとう。皆さんのおかげで村人も元気になりました。」
カレーのルーシーは心からお礼を言いました。
「いやいや、そなたのおかげじゃ。わしは初めてカレーというものを食ったが、こりゃ絶品じゃな。また食いたいわい。」
「お安い御用です。呼んでくれればいつでも飛んできますよ。」
「同じ釜のメシになった仲じゃ。達者でな。友よ。」
そう言い残すと、4人は雲に乗ってあっという間に消えてゆきました。
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