闇の獣人 女神の加護で強く生き抜きます(18禁)

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第64話 闇の獣人、女騎士の事を思い出して手を打つことにする(中編)

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 黒服の男達に集めさせてから40分ほど待っただろうか。集められてきた怪我人や病人は浮浪者と思われる者が大半だった。

 数にして500人ほどいるだろうか。こんなに多くいるとは思わなかったので、成り行き上とはいえ俺はこれで全員かと連れてきたハイエナの獣人に確認した。

 彼は畏怖を込めた目で俺をみると、何度も大きく首を縦に振っている。

 何もそんなに怖がらなくても…と、ハイエナを見ると、ひっ、と短く叫んで体をブルッと震わせて慌ててそっぽを向いてしまった。

 「それではこれから浄化をかけてお前達を清潔な状態にする。それから後、治療を開始するので深呼吸して楽な気分で受け入れるがいい」

 そう言うなり、俺は浄化魔法・ピュリファイをこの大広間だけでなく地下全体に広がるイメージで、限界まで範囲を拡大してかけていった。

 それが終わるとパーフェクトヒールを2回とも範囲を限界まで拡大してかける。

 さらにアルティメットヒールも同じように範囲をうんと拡大してかけてやった。


 光が収まると、手や足を見た人々から歓喜の声が聞こえ始めた。

 それは歓声となり、瞬く間に歓声となって俺の元へ押し寄せてきた。

 というか地下とはいえ、こんなに騒いだりしていいのだろうか。

 見ればやせこけた男の子や老婆が色つやもいい状態で立っているし、片足が欠損していた男も足が生えたことで不思議そうな顔をして、生えた足を何度もさすっている。

 耳が生えたとか、体の中に埋まっていた破片が消えたとか、骨がまっすぐになったとか、あちこちで長年、苦痛に悩まされていたであろう人々から感謝の声が聞こえてくる。

  別にお礼を言われるためにやったわけじゃないけど、これはこれでいいものだな。

 胸の病気にかかっていた思われる女もいた。しきりに胸を撫でては目をパチパチさせている。

 松葉杖を側に置いて体を撫でさすったりしている者もいた。

 もうここまで来たらやる所までやるしかない。そう思った俺は「嗜好変化」を範囲拡大して、集められた病人や怪我人だけでなく大広間全体に拡大して黒服や闇商人にもかけてやった。

 あとは「肉体変形」も集められた者達全員にかけてやる。どうも不細工な顔や生まれつきいい体型をしているとは言い難い連中が多かったからだ。だから全員まとめてかけてやった。

 俺は風魔法の拡声の魔法を使って、これは容貌や体型が普通のものになる魔法だという事を説明した。

 そういう魔法は高位の神官しか使えないので、闇商人達は驚いていた。やはり聖人様だという声があちこちから聞こえてきた。どうやら喜んでくれているようで何よりだ。地下149階層で植物軍団相手にレベル30まで上げた甲斐があったわ。

 すると病人達の中から赤子を抱いた女性がやってきた。子供からは生きているという感じがしない。最初は人形かと思ったが、違うようだった。
 
 女性は悲しみで顔を曇らせている。何があったのか聞こうとしたら向こうから教えてくれた。

 彼女曰く、子供を産んだのはいいが、十分に栄養や環境に気を付けたのに死んでしまったと言った。

 「お願いです。この子を生き返らせてください。私は…私はどうなっても構いませんから!」

 「落ち着け。この赤子が死んだのはいつだ? 死んでから時間経ち過ぎていては蘇生もできないから、いつ死んだのかを教えろ」

 何だか高圧的な態度だな、俺。でもなー。相手から舐められるなって先輩の暗殺者や教官、シャルミリア局長からも再三言われているしな。俺の優しさは治癒魔法で表現するからそれで許してくれな。

 「昨晩のことです。この子にお乳を上げようとしたら、目を閉じたまま動かなくて…。胸に耳を当てたら心臓が止まっていることに気づいて…私、この子が死んでしまったらもう、どうすればいいんでしょう…お願いします、聖人様! どうかこの子を生き返らせてください!」

 そう言って赤子の遺体を差し出す母親。涙で顔がグチャグチャになっている。俺は冥王から派遣されてきたであろう死神に「念話」のアビリティを使ってみた。

 (俺の蘇生魔法に力を貸してくれる死神よ。個人的に深い付き合いはお互いにとって良くないから、浅い付き合いにしておこう。それであんたはもう俺の悩みを知っているんだろう? この子は蘇生できるか? レベル30に上げたのはいいが、この子がもう死なないように運命を少しでも変えることは可能か?)

 すると頭の中に愉悦を含んだ中世的な声が響いてきた。

 『お前の考えはわかっている。蘇生のアビリティを使って、果たしてその赤子が生き返るかどうか。

 また生き返ったとしても、すぐに死んだりはしないか心配なのだろう? それなら大丈夫だ。お前は植物系モンスターの軍団相手に随分と蘇生魔法の腕を磨いていたからな。まさかあんな方法でレベル30に上げるとは冥王様も予想しておられなかったので、普段は無表情なあの御方が、腹を抱えて大爆笑していたぞ?

 どうもお前はあの御方に大分、気に入られているようだから大丈夫だ。それでも心配なら母親とこの場にいる連中を全員、誓約の鎖というアビリティで子供を大切に扱い、その為に全員で協力して育てる為の努力を惜しまないと誓約させて、縛ってしまえばいいのだ。そうすればその赤子が蘇生してもそう簡単には死ぬことはなくなるだろう』

 俺はまた念話のアビリティでお礼を言ってから、赤子を見た。眠っているように見えるが人形のように見える。

 …しかし、腹を抱えて大爆笑って…冥王様ってもっと冷たい感じじゃなかったのか?

 いやいや、今はこの子を蘇生させることが先決だ。

 だが死神の言う事は最もなので、俺は誓約の鎖、のアビリティを実験するのにちょうどいいと思って、風魔法の拡声を使って、全員に呼びかけた。

 「この赤子を蘇生させることはできる。ただし、この場にいる全員がこの赤子を育てるためにありとあらゆる意味で協力すると誓約しない限りは蘇生はできん。俺は神々から借り受けたアビリティ「誓約の鎖」を使う事ができる。

 このアビリティによる鎖は誓いを破った者を縛り上げて、闇の中の空間に数万年もの間閉じ込める為のものだ。

 闇の中に封印された者は常に飢えと渇きに苦しむことになる。しかもその空間にいるのは自分だけ。広がるのは闇ばかり。どんなに泣いても、喚いても、叫んでも喉が張り裂けることもない。それなのに気が狂うことはおろか死ぬことさえ許されず、嫌でも己の犯した罪を思い出し、数万年もの間悔いることになるのだ」

 俺の「誓約の鎖」の解説に患者達と闇商人達と黒服の男達はざわざわと互いの顔を見て囁いている。

 「赤子を一人育てるのに、どれほどの労力が必要な事か。これは女一人でやるのは至難の業だ。

 だからこそ、お前達全員で力を合わせるのだ。それだけの覚悟がないと蘇生させたとしてもすぐに死ぬだけだ。何の意味もない。誓約の鎖で縛られるのが恐いのならそれでいいだろう。受けなくてもいいが、今後二度とお前達を治療することはないだろう。

 また悪魔達に襲われても俺は助けないからな。誓約の鎖で縛られて誓いを破ったら闇の中の空間で気の遠くなる時間を苦しむことになるのは事実だが、それを恐れて逃げ出す腰抜けなど助ける価値はない。他にもっとマシな者達を助けるために時間を使った方がいい」

 誓約の鎖を受けないと今後助けないからね! 治療は今日だけで後はおまえらが困っていても見て見ぬふりしちゃうからねー。…と、脅してやったら全員が誓約の鎖を受けて入れてくれました。

 「「「「「我々は、ありとあらゆる意味でこの赤子を育てる為に協力することを誓います」」」」

 俺は「誓約の鎖」を発動した。すると半透明の鎖が赤子の母親、500人ほどの患者達と20人以上いる闇商人達と40名ほどの黒服の男達に巻き付いていくのが見えた。

 鎖に巻き付けられていくのは、彼等も感じているのだろう。すぐに見えなくなったが、これでこいつらは誓いを破ったら闇の中の空間で数万年もの間苦しむことになる。

 そうなった時の事を想像しているのだろう。患者達はそれほどでもないが、闇商人達や黒服達の顔色が悪い。

 俺は今度は「蘇生」のアビリティを使って赤子を生き返らせてやった。

 赤子を抱いた俺の全身から光が溢れて、抱かれた赤子へと収束していく。

 次の瞬間、赤子が大きな声で泣きはじめた。ホギャア、ホギャアと元気良く泣いている赤子に母親は感涙に咽びながらもしっかりと赤子を受け取った。

 地下の広間は「本当に生き返った…」「奇跡だ」「死人も生き返らせるなんて…まさに聖人様だ!」

 といった声で溢れかえり、女性の患者達に囲まれた母親は笑顔で子供をあやしている。

 だけどなー。お前らその目で見るのは止めろ。ここは赤子が生き返って喜ぶシーンだろうが。

 なのに何でそんなウルウルした目で俺を見ているんだよ? やっぱりアレか? お前らも信仰に目覚めたのか?

 こりゃ先手を打たないとダメだ。俺は黒服達に視線を向けると、全員が深々と頭を下げて恭順の意を示した。

 「お前達。今から心を病んだ者達。自閉症やうつ病、精神が崩壊した者達を連れてくるのだ。全員をここに集めたら、俺が治療する。神の力というものをお前達に見せてやろう。わかったら、行け! 手の空いている者や知り合いで精神を病んでいる者がいればすぐに連れてこい! 一人残らず治療するからな!」

 偉そうに両腕を組んで仁王立ちしている俺。うん、これ治療していなかったらただの暴君だよな。

 そして待つこと30分。黒服の男だけじゃなくて患者の内、200人ほどが動いてくれたおかげで一時間以内に集めることができた。意外にも老人や老婆が元気よく動いて孫や孫娘と思われる若者達を引っ張ってくれるのは、すごく印象的だった。集められた精神的疾患を患っているのは120人ほどだった。
 
 「全裸の獣聖人さま。これで心を病んでいる者や精神的疾患に苦しむ者達は全員揃いました。さすがに王都は広いので全ての心の病にかかっている者達を集められたわけではありませんが、それでも8割は集めることができましたので、治療をお願いします」

 俺は頷くと代表した黒服の男の前に雷魔法で小さな雷を落としてやる。

 ビシャーン! とでかい音を立てて落雷したので、男は腰を抜かして座り込んでいる。

 「患者を集めたその手腕は見事なものだが、俺をその称号で呼ぶな。今後俺の事を呼ぶときは「漆黒の獣聖人」と呼ぶがいい。わかったら返事をしろ」

 「は、はい! 漆黒の獣聖人(じゅうせいじん)様のご機嫌を損なわせてすみませんでした!」

 と、言うなり男はひれ伏している。…それはいいんだが、何で他の黒服達もひれ伏しているわけ?

 よく見たら精神病の患者以外は全員、ひれ伏しているじゃないか。たかが雷一発を近くに落としただけなんだけどな。そんなに怖かったんだろうか。別に直撃させたわけじゃないんだけど…。

 「どうやらこれで心を患っている者、精神的障害を患っている者が揃ったようだな。さすがに心の病はすぐには治りにくいので、今から神から授かったアビリティ「超・修復」を連続使用する。これは精神崩壊した者を癒すアビリティだ。では早速連続起動するので、俺がいいというまで動かないように」

 まあいいか。俺は「超・修復」の範囲を拡大していく。もちろんこの地下の大広場全体に決まっていますとも。レベル30になったら、精神的に強くなるなんて効果があるんなら、全員にかけるに決まっているだろう?

 何というか、このアビリティって使うと地面から光輝くもやのようなものが立ち上がるんだな。

 それも20回ほどかけたら、アビリティがレベル10になった感覚があった。

 面倒になってきたので、倍速のアビリティを5倍にセットして「超・修復」を連続でかけてみる。

 そしたら早いのなんの。光のもやに包まれた精神的疾患をもった連中は何か叫び出したし、黒服や患者達500人と闇商人達も何か言っているが、無視無視。

 こちとらレベル30まで上げてないんだよ。いいからお前らはそこで俺がレベル30まで上げるまでじっとしていればいいの。

 それでも50回ほどかけるとレベル20に。さらに100回ほどかけるとレベル30に。覇王竜の装備シリーズさん、ありがとう。まあ病気の元・患者達で500人。精神的疾患の患者120人。闇商人が20人以上。黒服の男達で40人ほど。

 合計して660人ほどまとめて治療したことになる。

 意外だったのは5倍速で思いっきり範囲拡大して「超・修復」を連続でかけたとしてもほとんど疲れなかったことだ。

 まさかと思ってステータス・ボードを開いてみたらLPが345000。MPが385400と出ました。

 どうやら精液ポーションを大量に作った時に射精しまくったのと、その精液を時空魔法で瓶に転移しまくったためにLPとMPが大幅に増えたらしい。そりゃ精液ポーション10万本も作ればこれだけ上がるか。

 予想よりも大幅に増えたLPとMPに呆然としている俺。そんな時に大量の視線を感じて顔を上げてみる。

 もう狂気や絶望に支配されていない。全員の目に理性の輝きがある。そして強い敬意の輝きも。

 「「「「「「「ありがとうございます! 漆黒の獣聖人さま!!!」」」」」」


 何故か危機感を感じた俺は咄嗟に空を飛んで、群がってきた群衆から避難することができた。

 ローブを着ているけど、実は覇王竜のマントも装備しているんだよ。もっとも空を飛ぶことに関しては、念動や時空魔法のアビリティがあるから、必ずしも装備している必要はないんだけどな。

 空を飛んでいる俺の下で、肉体的な病にかかった患者達と精神的疾患に苦しんでいた患者達はわかるが、闇商人達や黒服達もひれ伏している。

 「さすがは漆黒の獣聖人さま! 治癒魔法だけでなく空も飛べるとは! もはや我々はあなたさまの下僕でございます! 我々にできることであれば、何なりと命じてくださいませ!」

 闇商人のリーダーらしい山羊のような黒いあご髭を生やした中年の男が両手を組んで俺をウルウルした目で見ている。

 あ、あかんわ。これ完全に狂信者の目だわ。

 周囲を見回すと全員同じ目をして俺を拝んでいるし…。

 はてさて、こいつらをどう扱ったらいいものか。そもそも俺、換金に来ただけなんだけどな。

 そういえば…その金だってそもそもリアーナに渡す為のものだったんだし。

 待てよ? こいつらに頼めばリアーナの事は解決するんじゃないだろうか。

 俺は腕を組んで眼下にひれ伏す一同を見て、リアーナに関する問題をどうやってこいつらに結び付ければ解決するかを考えてみることにした。
 
 やはり奇跡を見せておけばこいつらは俺に従いやすくなるだろう。

 俺はこいつらに改めてパーフェクト・ヒールとアルティメット・ヒールをかけてやった。

 もちろん範囲はこの地下の大広場を中心とした全体だ。

 どうやら精神的疾患に悩んでいた連中も全員が完治しているようで、支えたり、暴れたりしないように押さえていた家族や知人・友人も全員、感涙にむせびながら俺を崇めている。

 いやそんなことされても嬉しくないから。所詮これらのアビリティは一見するともらったように見えるけど、実際は神様から借りたものでしかないと俺は思っている。

 だから崇めるのなら俺じゃなくて神様達ですよ、と言いたいんだけど証明する方法がないからな。魔法でいくらでも誤魔化せるし。だからこそ俺が選ばれて、アビリティを沢山もらったんだろうし。

 俺は浄化魔法・ピュリファイで綺麗になった大広間の地面の上に座り込んで、俺を崇めている連中に風魔法の拡声をかけ直してから、連中に俺の頼みを話してみることにした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 というわけで後書きです。三部作の中編です。結構長くなりますが、次回はさらに長いです。

 しかし、前編、中編、後編と入れると確実に2万文字超えますね。

 もっとうまくまとめられなかったのかと、ちょっと苦しんでいたり。

 最近は急に気温が上がったので寝苦しくなっていますので、皆さんも暑さ対策はしっかりしておきましょう。

 それでは読んでくださり、ありがとうございました。

 
 
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