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第112話 闇の獣人、とりあえず丸薬をビーズにして無人島の連中に配る

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 あれから俺は精液ポーションを丸薬にしたもの、飴玉にしたもの、粉末にしたものを一通りアンネリーザに渡してみた。

 そしたら粉末は最高クラスの肥料になることがわかったので、無人島の連中に渡す予定だ。

 一応錠剤タイプも渡したんだが、これ一瓶で他の回復系ポーションを誰も買わなくなるとアンネリーザに断言されてしまったので、仕方ないからピンチに陥っている冒険者を見かけたら食わせることにした。

 しかし効力ありすぎるのも考え物だな。まさか他の回復系ポーションが売れなくなるほどの効力があるとは思わなかった。

 いや光っている時点で気づけよ、というツッコミが来そうだけどさ。まさかLPとMPの回復はおろか、状態異常回復の効果まであるとは思わなかったんだよ。

 それにアンネリーザにお礼として性的行為を働こうとしたら、仏頂面でアナントス様の前で性的行為に耽るほど無神経じゃないと突っぱねられた。

 仕方ないので次回にお礼として抱いてやるといったら、顔を真っ赤にして小さく頷いていた。

 ただこのままじゃ気が済まないので、植物系のモンスターを沢山倒したので、それなら薬の材料になるということなので、彼女の挙げる植物系のモンスターの遺体を出してみたら、すごく驚いて喜んでいました。

 というか俺の精液ポーションとか丸薬とかにはいい反応示さなかったのに、単なる植物系のモンスターでこんなに喜ぶってなんなんだろうな。どうも納得いかないものがある。

 アンネによると、植物系のモンスターで薬の材料にならない奴はほとんど存在しないといっても過言ではないようだった。

 腕のいい製薬業者や錬金術師だと植物系のモンスターとは薬の材料そのものである、といってもいいぐらいなのだという。

 ただし強力な植物系のモンスターになればなるほど、毒の花粉とか樹液とか、鉄よりも強度のある枝を高速で振り回してきたりと、多種多様な攻撃を仕掛けてくるので、腕のいい冒険者のAランクさえも苦戦するので、いつも在庫不足なのだという。

 確かに状態異常無効がないと辛いだろうが、俺にとっては植物系の連中なんてただの雑魚だ。オークやゴブリンとほどんど変わらないんだけどな。

 それで不可抗力であるとはいえ、アナントスに拘束させてしまったお詫びとして俺はフォレストドラゴンの遺体をプレゼントするといったら、ものすごい速さで店のドアに「本日、大量の製薬作業の為に休店します」と書かれた札をドアの装飾部分に引っかけて、俺を地下室に案内した。

 地下室はさすがに元・廃村のヴァイソン村ほどではないが、それなりの空間があった。

 そこで俺がフォレストドラゴンの遺体を出してやると、文字通り踊り出して喜んでいた。

 それから後は鑑定して、遺体を調べるからと言われて地下室を追い出された。

 手持ち無沙汰になった俺は元・廃村のヴァイソン村と無人島の街、ノランディアの街の連中に精液ポーションの丸薬を1cmにしたものを渡すべく転移した。

 ヴァイソン村も、ノランディアの街からも俺は国王が訪問したかのような大喝采と共に大歓迎された。

 そりゃこいつらの住む場所を提供したんだからな。熱烈に歓迎されて当然か。

 そこで俺はこいつらに精液を圧縮・変化させてビーズを一粒ずつヴァイソン、ノランディアの連中に渡して身に着けるように言い含めた。

 本当はネックレスにして渡したかったんだが、それだと強すぎる上に寿命も延びる。

 だから一粒で十分だとアナントスはおろか、死神からも忠告された。

 確かに元・廃村のヴァイソン村はともかく、この無人島の街ノランディアの住人が増えたらまずいことになる。

 そう考えるとこの程度のものしか渡せなかった。悪いな。人口が過剰になったら苦しむのはお前達なんだよ。

 だが闇商人のリーダーのセルロン・リーテゲルトから、リアンナとの結婚を認めてほしいと懇願された時はすごく驚いた。

 おまえらデキていたのか…。しかもシドロモドロに話すセルロンによると、リアンナとすでに何度も愛し合っており、彼女のお腹には彼の子供がいるのだという。

 これはめでたい、ということで俺はクラーケンの死骸を闇の中の空間から出して、時間停止させた後に解体して(もちろんこの解体の知識も元・アークレイスのオバチャンの知識によるものだ)、ヴァイソン村の連中も呼んで、盛大な結婚式を行うことにした。

 リアーナは俺にご執心だったようだが、セルロンが説得してからは親密な関係になったらしい。

 いやー。よかったよかった。クラーケンの肉は臭みが強くて、うまく調理しないと食べにくいんだが、大型のものになると寿命が延びるといわれるほどの高級食材だ。

 それを俺は10体ほど出した。もちろん全部最小サイズのものだが、それでもヴァイソン・ノランディアの連中からはすごく喜ばれた。

 以前は大海蛇の肉。今度はクラーケンの肉と大判振る舞いだが、以前は村と街に移転した時のお祝いだったし、今回はリアーナとセルロンの結婚式だ。神々も大目に見てくれるだろう。

 そんな訳で俺は蛇の神アナントスを本来の白く輝く多頭蛇もどき(前足と後ろ足が生えている時点で蛇じゃないといえるので)になった彼女の前でいかなる理由があっても、浮気、不倫などは両者ともに絶対にしないこと。

 また夫婦互いに助け合い、酒や麻薬などによる暴力はしないこと。夫婦共に切磋研磨し合って、努力を忘れずにいきること。

 もちろんその切磋研磨の進化はゆっくりしたもので構わない。亀並みの速度でもいいから、努力することを忘れないで生きてほしいというのが俺やアナントス、死神の望んでいたことだった。

 そしてこれらの誓約を違えたり、破ったりした時は即座に冥界落としに遭って、永遠に冥界で亡者達の苦しみを味わい続けることになる、とアナントスが告げた時は夫婦共に青ざめた顔をしていた。

 そんなわけで宴は夜遅くまで続き、俺はヴァイソン村の連中を「結界移動」で転移させて、村に帰した後で王城に戻って、レヴィンに説明してから寝ることにした。

 彼はいろいろと言いたいことがあったようだが、俺の左腕に巻き付いたアナントスを見て俺にキスをしまくることで我慢することにしたようだった。

 俺は埋め合わせは後でするから、と言うと彼は情けない顔と声で「頼んだよ」と言いながら二人で寝ることにした。

 久しぶりにいいことをしたので、俺は朝までグッスリと寝ることができたのだった。



 
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