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光り物だらけで売れない道化師…しかし、大事にはされている
重傷者の正体
しおりを挟む「エリナ、どうだ?」
「…正直に言って危篤状態です。回復魔法を使おうにも、生命力が少なすぎて…」
悔しそうに、出力を弱めた回復魔法をかけ続けるエリナ。
…俺が見た限りでもかなりひどい…
よくここまで帰って来れたと褒めてやりたいくらいだ。
「今すぐに薬師どもに薬の用意を。後治療士達も呼んできな」
的確に職員達に指示を出すマスター。
ただの酔いどれマスターじゃないだけはある。
「…エリナ、正直に答えな。あんたの回復魔法で後どれくらい持つ?」
「…危険な状態まで考慮して良いなら…あと3時間ほど…」
「ちッ…時間がなさすぎるね…ほらあんた達!急ぎな!!!」
その言葉を聞いたマスターは、職員たちにはっぱをかける。
回復魔法は誤解されがちだが、傷を癒すのであって無かったことにはできない。
癒すために対象の生命力を用いて活性化させる…それが回復魔法だ。
もちろん生命力を使ったからといって寿命が縮んだりとかはない…普通ならな。
大抵の場合、生物は生命力に溢れていて、時間経過で回復する。
だからこそ、回復魔法は癒しの技で通っているわけだが…
もし、相手の生命力が少ない場合…回復魔法を使うべきではない。
生命力とは文字通り、命を生きさせるための力だ。
そんな力を限界を超えて消費なんてさせて仕舞えば命はない。
いくらエリナが聖女で、高位の回復魔法を行使できると言っても、対象者が弱りきってきたら使いたくても使えないのだ。
…今エリナがしているのは、生命力の消費を極端に抑え、何とか命の灯火を消さないようにしている延命措置…
聖女だからこそできる神がかった治療をしているのだ。
だが、それでも…もはや聖女が投げ出してしまうくらい危険な状態まで後3時間ときた。
マスターは生命力を高めようと薬師や治療士を集めているが…正直に言って助かる見込みは0に等しい。
「……ッ…」
とんでもない集中力を発揮して、回復魔法を発動し続けるエリナを前に、俺達は何も手が出せなかった。
そんな中…
「……あの娘って確かグラムんとこのメンバーじゃなかったか?」
ふとそんな声が聞こえてきた。
確かに、血まみれの怪我まみれでよくわからなかったが、よくよく見てみればグラムのパーティーにいた子だった。
グラムが良い槍使いの新人が入ったぜ!と喧嘩を売りにきたからよく覚えている。
……つまり…
…つまりだ…
…グラムのパーティーに何かあった?
…あいつらと最後に会ったのは…まさか…
「……」
「あっ、シャールっ。なにをっ…!?」
俺がいきなり女性冒険者の腕の服をめくりあげたりしたため、慌ててリメルダが止めようとするが、逆にリメルダが止まった。
「……しゃ…シャール…これは…」
「……」
リメルダが動きを止めたのも無理はない。
他の見えた面々も息を呑むのがつたわってきた。
「…極端に生命力を無くしてたのはこれのせいか…」
俺たちが見たのは、右腕の二の腕辺りの“壊死”。
しかも、さらに驚かされる。
生きているかのように禍々しく、ゆっくりとゆっくりと広がっていたからだ。
「…なんだい…こりゃぁ…」
ギルドマスターからの驚嘆の声。
「…マスターも見たことありませんか?」
「ないね。私が冒険者時代の時も見たことがない症状だよ」
…元Sランクパーティーで活躍していたギルドマスターが見たことないということは、新発見に等しい事象だ。
…おそらく原因は…
「おいッ!グラムの奴らは今どこにいるッ!?」
ギルドマスターが職員達に怒鳴りつけるように問いかけた。
「…わ…わかりません」
「俺も…」
職員達もお互いを見ながら、誰も知らないと言った。
「…グラムなら合いましたよ」
「何?」
「俺たちが、マルチポイズンスライムの調査に出かけた先の町の中で……」
「…どういう事だ…?。何故あいつらはあの町に…?」
「え…?」
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