狂劇の道化師〜絶対場違いなのに、何故か知り合いからの評価が高すぎるんですが?〜

クレアンの物書き

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光り物だらけで売れない道化師…しかし、大事にはされている

2つの結果と魔女の本質

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「ふむ…よく整備出来てるねぇ…」


ダガーを眺めながらマスターは呟いた。


「毎日磨いてますから…」


「……あたしゃ、あんたがそういった選択を取ることを尊敬するよ」


マスターが俺の隣を通り過ぎる。


「…」


まったく……情けないったらありゃしないわ…


あれだけやるぞっ!って空気出してたのに、あっさり引き渡しちゃうんだからなぁ…俺…


「…エリナ、気合い入れな。一瞬たりとも気を抜くんじゃないよ」


「…は…はいッ…!」


マスターの言葉に返事をするエリナ。


毒がある部分を無くせば生命力は増えるだろうが、やはりそれでも重傷なのは変わりないからだ。


「……」


何かを見定めるようにマスターはじーと二の腕を眺め続け…


「…ッ!!」


一気に振り下ろした。


◇◇◇◇◇◇◇


「……」


その後はとんとん拍子に事が進んでいった。


腕を切り落とした後、一気に奪われる定めにあった生命力をエリナが回収し、治療に専念。


使用した麻酔と、極度の状態だったため、女性冒険者が暴れることなく進めることができた。


…目が覚めた時の説明は、マスターからするらしい。


流石にそれは俺がすると言ったが…マスターの仕事だと言われ取り合ってもらえなかった…


その他、職員達は今回のことを踏まえ、今は忙しく情報を集めまくっている。


後は火消しか……派遣された人材がやらかしたとは言えギルドへの糾弾は免れないだろうし…


また、冒険者達もお互いにどうするか話し合ってる。


もちろん、良い意味でだ。


詳細はわからないが……グラムのパーティーを嫌う奴は多いが、実力があるのを認めていた連中は多い。


だからこそ、進化したモンスター相手でもなんとか出来る存在がいるって安心感があったんだろうな。


だが現状をみるかぎりじゃ、グラムパーティーは壊滅したに近い…死体は見つかってないが、グラムの生命も…


まぁ、言い方を変えるが、強者だったパーティーが蹂躙された。


その事実は冒険者達に重くのしかかる。


なんせ、“仕事場で仕事ができなくなるかもしれないんだから”な。


「…暇そうねぇ~」


情報交換に明け暮れ、戦略を練る冒険者達を眺めているとマリーナが近づいてきた。


「あなたも混ざったらぁ?」


「ばーか。俺みたいな道化師の意見なんざ流されて終わりだ」


「…少なくとも、あの場であなたを見ていた人間は違うと思うけれどねぇ…」


「…てか、それを言うならマリーナこそだろ?」


何しろ魔女様だ。


むしろ、積極的に参加してほしいと思ってる奴は多いはずだ。


「私は特定の人間としか関わりあいになりたくないからぁ…まぁ仕方ないわよねぇ」


いやいや、自分で言うなよ…


「何が仕方ないんだか……で、切り取った腕から何かわかったのか?」


「えぇ、もちろん」


流石魔女、即答かつ肯定かよ。


それを伝えに行けよ。


「簡潔に言うとねぇ、あの状態は一種の呪いみたいなものだったわぁ」


「…呪い?」


「えぇ。アンデット系のモンスターの攻撃でよくあるあれよ」


「…なら、あの子が戦ったのはマルチポイズンスライムじゃなくアンデット系モンスターだったと?」


そうなると話がややこしくなるが…


「さぁ?」


「…いや、さぁって……いやいや、違うか…言い方を間違えたか……というか、まず呪いについて聞かないといけなかったわ…あれってやっぱり毒?」


「えぇ、そうよ。まさに新種の毒だったわ」


毒であり呪い…


魔女であるマリーナが調べたのだから、嘘じゃないだろう。


しかし…そんなのは聞いたことがない。


「…体を蝕む毒…しかも、呪いの一種とか…いや、そもそもあれは毒なのか?」


「残念な事に毒よ。検査結果が物語ってるわ…毒であり呪いであるとね」


くるっと指で円を書くと鑑定魔法を展開した。


なるほど…その魔法の結果ってわけか。


「…分類上、状態異常の毒と呪いは別物とされていたが…覆されたな…」


「世紀の大発見よ、これはぁ…」


「…なら、呪いの解呪を行えば切らずにすんでよかったってことか?」


壊死してしまっている以上、切り落とす必要はあるんだが…やはり、1人の若者の腕を奪った事に少なからず思うところがあるのは事実だった。


「そんな簡単な話でもないのよぉ~、毒消しで呪いは消せないように、解呪じゃ毒は消せない……」


「…嘘だろ?…どちらの性質もあって、しかも互いに弱い部分を補ってるってのか?」


「そのまさかよぉ…現状、この毒であり呪いであるコレ…“呪毒”に対する治療法は、生命力がふんだんにある際に聖女クラスの回復魔法をぶつけるか、解呪と毒消しの両方を同時にやるぐらいしかないわぁ…検証結果がないから、なんともいえないけれどぉ」


さらりと恐ろしい事実を告げるマリーナ。


…まぁこんな彼女はいつものことだが…


話していた内容は決して無視できない。


なぜならば、実質治療は特定条件下でなければ不可であるという事を意味するのだから…


「…可能性としては、今までにない毒?…呪い…?…とりあえず、そんなのが発生した原因としては、未発見のモンスターや植物などによる影響か、マルチポイズンスライムによる攻撃か、生まれつきそういった体質なのか…だな」


「まぁ大きく分けてそうでしょうねぇ~。ふふ…やっぱり目の付け所がいいわねぇ~」


「魔女様にお褒めいただき光栄です」


「あらあらぁ。どうせなら学者にでも転職して、私に弟子入りしたらぁ?。別にクラスで学者なんてものが存在するわけではないんだしぃ」


…ふむ…確かにありっちゃありかもな…


クラスが適正でない…まぁいわゆる使いこなせないタイプは、冒険者とかクラスによって大きく左右されるような専門職につかずに別の仕事をしたりする。


学者もそのひとつだ。


「何だかんだ冒険者として、サポーターとしても優秀、さらに加えて博学…結構適してるとは思うのだけれどぉ?」


「…確かに悪くはないかもな…有名な魔女マリーナの下で働くとか安泰だろうし」


「あらっ、意外と乗り気じゃないっ?」


嬉しそうに笑みを浮かべるマリーナ。


「俺だって、まじめに余生とか考えてますから……でも、少なくとも今は辞めないかなぁ…冒険者…何だかんだ楽しいし」


「…ふふ…そう。それなら構いはしないのだけれどぉ」


何やら意味ありげに微笑むマリーナ。


「てか、お前ら過保護すぎだろまじで…さっきのバカな職員の事なんざほっときゃよかったのに…」


「…こっちも譲れないものがあるのよぉ…」


「…そのせいで居づらかったりするの…マリーナは気が付いてるだろ?」


意地悪げに俺は言うが、澄ました顔で返事をするマリーナ。


「…まぁ…それはね……だからこうして別の道への招待を提案しているわけじゃないのぉ」


「…そう言われるとなぁ…」


ある意味、1番俺の今後について考えてくれてるのはマリーナだ。


あのパーティー内ではってことだぞ?


マリーナは当初、俺みたいなのが入るのはどうなのかと疑ってた側だ。


確かに間違いじゃない。


俺が入る前のパーティー内の様子は知らないが、勇者に聖女、魔女に加えて守り手だ。


どう考えたって前中後衛のそろったパーティーに、道化師なんていう半端すぎる存在は必要ないと思う。


俺だってそう思う。


クラスだけで見るなら、道化師よりいいクラスはたくさんあるからな。


だから、マリーナの指摘は的確とも言える。


が、エバンスが猛烈に俺を推薦したらしく、結果折れたとのこと…マジであいつは俺に何を期待しているのか…


だが、俺も期待されるならと頑張って認められよう努力した。


その結果、マリーナにも必要な人材と認められるようになったわけだ。


…大変だったなぁ…あの頃は…そりゃ、あんだけやればそれなりに力はつくもんだよなぁ…


だが、いくら力をつけても、上位クラスの壁は高い。


だから俺が抜けた方が、パーティーが次の段階に進むためにもいいんじゃないかと相談した事があった。


何だかんだ世話になってるし、高みを目指してほしいって気持ちが高まったのもある。


だが、実際厄介なことになった。


なんせ、“パーティー皆がいる時”に言ったからだ。


いや、まぁ…普通は皆に対して言うもんなんだが…


全員が反対した上、過保護化しちまってなぁ…


まぁ、マリーナはこんな感じなんだが…


「…なぁ、マリーナ。何でエバンスはあんな俺に過保護なんだ?」


「…さぁ?」


「…まぁわからんのが普通だよな…」


人を疑い、見定めるマリーナですらわからないのだから、エバンスの考えなど想定できない。


てか、あいつが1番俺に過保護すぎる…謎なことに…


パーティーとしと、長い期間慣れ親しみ、なおかつそれなりに役に立ってる俺を必要というのは理解できなくもない。


だが、異様に…いよぉぉぉにしつこいんだよなぁ…エバンスは。


「…まぁ…またゆっくり考えて答えを見つけるさ。もし離れる場合は、フォロー頼むぜ?」


「あまり期待はしないでほしいけれどねぇ……エバンスがその気になればぁ逃げられないのだしぃ……」


「…いたいとこをつくな…」


確かに王になるであろうエバンスが、全力を使えば逃げられないな…


「…こうなりゃ、身を隠すかねぇ」


「あらぁ?。私の元で働く以外認めないわよぉ?」


「…お前ならより優秀な人材なんざいくらでも手に入るだろうに……俺としちゃ、もう少し低ランク帯なパーティーで空きがあったら良いかなぐらい」


「そうなった場合、全身凍らせて逃げられないようにするわ」


真顔で、凍るような声でささやいたマリーナ。


「そっ…そんなつもり全くないに決まってるだろ~?。マリーナは冗談通じないんだからぁ~」


「あっ…それもそうねぇ、ごめんなさいねぇ」


ふふふと、妖艶な笑みを浮かべるマリーナ。


だが見逃さなかった。


いや、隣にいるかつ俺に向けられた感情だから見逃さなかった。


…マリーナのマジでやばい魔女らしい部分全開だった事を…
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