狂劇の道化師〜絶対場違いなのに、何故か知り合いからの評価が高すぎるんですが?〜

クレアンの物書き

文字の大きさ
32 / 33
感情薄めな剣聖と狂宴の道化師

帰りの馬車にて

しおりを挟む


大林山を下山し、近くの村に立ち寄った俺たち。


ここから、本拠点のギルドに帰るための馬車を待つためだ。


「ふぅ…」


「…大丈夫?」


「ん…あぁ、えぇ。なんとか…」


流石バジリスクと言うべきかな…


遠くから見てただけだってのに、あの圧…


ここにきてようやく、緊張から固まった筋肉が落ち着いてきたな。


「…流石主…と言うべきですかね。体が怖がってたようで」


「…怖がらない方がおかしい」


「…スゥナレアさんも怖かった感じですか?」


「…体に出るくらいじゃないけど…あの巨体…流石に驚いた」


「あー…驚いただけなんですね…」


流石と言うべきか…


やっぱりレベルが違うなぁ。


「…」


「…」


「…」


「…あのぉ…どうしました?」


「…ん…口調がかたい」


「かたい…ですか?」


「…もっとふつうに話してもらって構わない」


「普通にと言われましても…」


「…普通」


「…」


「…」


「…はぁ…はいはい、これでいいか?」


「…うん」


…まぁこっちも変に気を回さなくて済むから助かるが…


「…そういや、当初の目的は達成出来たのか?」


と、ふと疑問に思った事を聞いてみた。


スゥナレアさんに関しては、大林山での探索が当初の目的だったはず。


注意しておいた方がいい事を3つに絞って説明はしたが…はたしてそれで彼女の目的は達成されたのだろうか?


「…うん。たぶん、私が1人で来た以上の収穫はあった」


「それならいいけど」


「…それより、シャールの方は大丈夫?。依頼は達成?」


「ん…あぁ、問題無しだよ。スゥナレアさんの」


「…スゥ」


「あんな……へ?」


「…名前、スゥでいい」


いや、いいと言われても…


「…あー…いきなり名前を呼び捨てとか…」


「…スゥ」


「いや、だからっ」


「…スゥ」


「…」


「…スゥ」


あっ、ダメだこりゃ。


絶対に譲らないって表情してるわ。





…はぁ…


「…はいはい、降参降参。スゥ…これでいいだろ?」


「…うんっ」


と、小さく微笑むスゥナレアさん事スゥ。


…無表情が多かったからか、どこか眩く見える。


「…んんっ…まぁ、話を戻すが…スゥの案内をしながらも集めるもんは集めたよ」


「…流石」


「別にそこまでじゃないさ。それに大林山は人が来にくいからな…意外と手付かずで残ってるのが多かったし。運が良かったよ」


有名所だと、逆に他のパーティに取られていた…なんて普通にあるくらいだからな。


今回は遠出になったが、ある意味正解だったと言えるだろう。


「…運も実力のうち」


「ははっ。いやいや、運は運。実力とは別次元にあるものだろ」


運で実力が変わるなら是非ともカンストさせたいところだがな。


「…シャールは過小評価し過ぎ」


「実力を理解出来てると言って欲しいところだが」


「…ならもっと誇るべき」


「んー…まぁ、うちのパーティからも言われてるが…実際にそう簡単に割り切れないと言うかね」


「…シャール、パーティ組んでるの?」


今度は小さく驚いた表情を浮かべながら問いかけてきた。


そりゃ、道化師がパーティにいるとは思わねぇよなぁ。


「まぁ…こんなんだが、入ってはいるよ。常々パーティを抜けたいとは思ったりしてるけど」


「…何で?」


「んー……卑屈とか、また過小評価とか言われそうだけど…やっぱりクラスの価値は大きいと言うかな…」


道化師ってだけで馬鹿にしてくるやつは少なくは無いからな。


「…」


「結果どれだけ技術や知恵を磨いても、周りとの差は大きいとか感じるし…パーティ自体が成長するには俺は邪魔なんじゃとか…まぁ、そこら辺だ」


「…言わせておけば良くない?」


「あははっ、みんなからもそう言われたよ。だが、気になっちまうと言うかなんと言うか…現実は現実だからな」


「…シャール」


「ん?」


「…よければ私の」


“チリンチリンっ”


おっと、送迎馬車の鐘だ。


「ようやく来たみたいだな」


「…うん」


「そういや、さっき何か言ったか?」


「…えっと…なんでもない」


「…?」


あれ?


少し恥ずかしそうにしてる?


…んー…なんか申し訳ない事…したかね?


…気を使わせたかな?


「…あー…と…まぁあれだよ。評価が悪いのは仕方ないとは言ってるが、それなりにまだ頑張るつもりだしっ」


「…そうなんだ」


「あぁ…」


「…」


「…」


…やっべぇっ…会話続かねぇっ…


「…と…とにかく戻るかっ」


「…うん」


と、俺たちは目の前に泊まった馬車に乗り込んで…あっそうだ。


「スゥ」


「…ん?」


「もっと感情を出した方がいいぞ。せっかく似合ってるのにもったいない」


「…え?」


「あれ、隠してたりとかした?」


「…そうじゃないけど」


「あー良かった。これで地雷踏んでたら目も当てられないやつじゃん…」


危ない危ないっ。


「…ねぇ」


「ん?」


「…わかるの?」


「あー…道化師だからかな。ちょっとした変化にも敏感なんだよ」


「…そう」


「おぅ」


「…そうなんだ…」


…ん?


なんとなく嬉しそうな…


「冒険者さんっ、出発しますから入ってくださいよっ」


と、入り口付近で止まっていると騎手の人から注意された。


「あっ、すみませーんっ」


「…ごめんなさい」


「とにかく乗るか…いきなり変なこと言ってごめん」


「…うぅん…でも何で?」


ん?


「そりゃ、道化師として勿体無いと感じたからよ。わざわざ相手を選ばないが、道化師として高嶺の花より道端で元気に咲く花の方が魅せたくなる性分だからさ」


「…」


「…」







…やべっ…ぜっ…絶対にすべったぁぁ…


「……は…早く乗ろうぜっ」


「…ふふっ、うん」


と、小さく笑われながらも俺たちは馬車に乗り込んだ。


…こういう笑いは求めてないんだけどなぁ…///






「……パーティにいて欲しいかも…」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...