42 / 58
【第二章 第一部】
第十三話 街に巣くうならず者たち
しおりを挟む
入り組んだ路地を抜け中層街の北区に出ると、刺青の男たちは薄汚れたひとつの建物に入っていった。周りには明らかに同じグループに属する奴らがたむろしている。
(ここからは見つからずに進むのは無理だな……)
そう判断した俺は仕方なく鞄の中に入れていた手拭いで口元を覆うと突っ込む。
「おまっ、なにもんだ!? 止まれ!」
「…………」
「くそっ、シメちまえ!」
無視無視……ひたすら無視。
無言で迫る俺に危険を感じたか、奴らは動揺しながらも殴りかかってくる。
「……てめぇ、この闇ギルド《暗駆飛燕》にひとりでかち込むだぁいい度胸だ!」
「死にさらせぇぇぇ!!」
しかし、あまりにもお粗末だ。
Dランク付近の前衛職にも満たない速度。これでよく人を殴ろうと思えたものだと冷めた目で見つつ、俺はすり抜けざまに拳を置いておく。
「「がはぁっ!」」
両脇にいたふたりが同時にノックアウトし、それによって男たちの緊張が高まり出した。
「オイこいつ、強えぞ!」
「関係ねえ、全員で囲んで押し潰せ!」
冗談じゃない。男たちの肉饅頭で潰されるなんざ吐き気がする。
包囲しようとした一角をぶち抜き、俺は廃墟じみた建物に向かって一目散に駆ける。
「……奥に行かせんじゃねぇ! ぶへっぐ!」
「誰か止めろぉ! がぁっ!」
凄まじい数の暴徒を後ろに背負いながら俺が建物の扉にたどり着こうとした時だった。
「待てィ!」
両手に盾を装着した馬鹿でかい体の巨漢が、その入り口を塞ぐ。
「オイゲンの兄貴!」
「へへ、派手にやってくれたな。錆野郎どもの手下って訳じゃなさそうだが……ここは通さんぞ」
「おお……兄貴が止めてくれたぞ! 皆囲んじまえ!」
「兄貴はあの有名冒険者パーティ《銀装の猪》で盾役を務めてたんだ! もう逃げられねえぞぉ……ぐへへ」
「この美しき銀の盾はいかなる魔物の攻撃も退けてきた! 己が身で試してみるがよかろう!」
(知らんがな……面倒臭い)
男が銀の盾を体に構えるのを見て、俺は霊刀クウを鞘に入れたまま体の力を緩め、腰だめに構える。あまり魔物以外を相手に使いたくないのだが……。
(まあ鞘付きだし、死なんだろ……)
「ははは、どうした! 抜いても構わんのだぞ! このオイゲン、そんなナマクラでは――」
「《偽刀術・ワカツ》」
次の瞬間、足元の地面に穴を開けるような勢いで踏み込み、横に薙ぐ。
身体全身の捻転を利用した豪快な一撃が奴を襲う。
――ビギィィィィン!
「ヒ……いあああぁぁぁっ! ぼぎゅっ!」
鼓膜を揺らす破砕音と共にふたつの銀色の盾は砕け、盾自慢野郎はその衝撃の勢いそのまま扉をぶち破ると……中で座っていた男たちの目の前のローテーブルに勢い良く頭をぶつけてそのまま昏倒した。
中にいたのは倒れているセインと少女を含め五人ほどだ。
一斉にその視線がこちらに向くが、外の奴らよりは慎重のようで、こちらに飛び掛かってはこない。
「あ、あんた……どうして」
気絶から目を覚ましたセインが驚いた声で言うが、ここでやり取りするのも面倒だ。話は帰ってから聞く。
「と、止まりやがれ! どういうつもりだ、舐めてんのかテメェ!」
「まあ待て……」
無遠慮に彼らの元へ向かう俺の進路を塞ぐように、武器を取り出す男たち。しかし、それを制したのは、一番奥でふんぞり返る、口に煙草をくわえた中年だ。奴が恐らくリーダーなのだろう。
「兄ちゃん、なにしに来た? 関係者以外に立ち入られると困るんだがね」
「ちょっとそこの馬鹿ガキどもを回収しに来ただけだ。すぐに帰る」
「ざけてんじゃねぇぞ! そんだけ喧嘩売っといて――」
「うるせぇぞ……! 今オレが話してんだろ、ったく」
いきり立つ取り巻きを黙らせたると、リーダー格の男は言葉を続けた。
「悪いがそいつは面目が立たねえってもんだ。……だが、オイゲンを軽くのしちまうほどの腕前のあんたに興味はある。どうだい、そいつを黙って返してやる代わりに、あんたオレたちの仲間になってみねえか?」
「ボス、それじゃ示しが……」
「黙ってろ! 錆野郎どもと争うのに戦力が必要なのは、テメエらにも分かってんだろ! どうだい、兄ちゃん」
恨みや憎しみなどよりも、表情から好奇心を覗かせる男。
しかし俺にはこんなならず者の仲間になって街のいざこざに加担するつもりなんてさらさらない。
「断る。んで、そいつも返してもらう」
「がははは! 聞く耳持たねえか……。ならひとつ、勝負といこうじゃねぇか」
真顔で言った俺の言葉に嬉々とした笑いで応えると、リーダー格の男は煙草を落とし上着を脱ぎ棄てた。
「オレがあんたに勝てたら、あんたは部下になって働いてもらう。もしあんたが勝ちゃあ、そいつらを好きに連れて行きな」
「……いいだろう」
おそらく条件を飲まなければ、この場で大乱闘の始まりだ。ふたりを守りながらとなると骨が折れる。信用できるかは別として、一対一の方が手っ取り早い。
「ちなみに武器は控えてくれるか。オレも素手なんでな」
「……持ってろ」
「わっ……おい、テイル、さん……ちょっと待って」
慌てるセインに刀と荷物を押し付け、俺はリーダー格の男へ向き直る。
すると奴は名乗りを上げた。
「オレぁ、先代からこの暗駆飛燕の頭領を引き継いだルーイってもんだ。あんたは?」
「名乗るつもりはない」
「ちぇっ……つれねーな。まぁいい、ブッ倒してからじっくり聞いてやるよ。じゃあ、始めようぜ……」
ルーイとやらの合図はコインを使うという古風なものだ。
ポケットから取り出したそれが親指で弾かれ、くるくると回る。
と同時に、奴は両拳を前に突き出し体から黄色い気を漂わせた。《拳術》スキル使いなのだろう。防御寄りのコンパクトな拳闘の構え……一撃で勝負を決めるつもりはないようで、その瞳に油断はない。先程のオイゲンとかいう男よりはやりそうだ。
――チンッ。
「……シッ!」
金属音が鳴ると同時に一気に間合いを詰め、小刻な拳打が繰り出される。
様々な角度から放たれる拳。
それぞれが急所を狙っているが、しかしそれらは目くらましで……本命はこの大振り。
「ラァ、《オーラショック》!」
「ぐっ……!!」
拳術スキル《オーラショック》――低級の打撃技とはいえ、まとったオーラを一か所に集中させ、打撃と共に放つこの技は下手な凶器よりよほど殺傷力がある。砲弾でもブチ当てたかのような衝撃が脇腹で炸裂し、俺の体は大きく吹き飛ばされた。
壁面にあった棚などを巻き込んで爆砕し、埃が辺りに舞い上がる。
「ヨッシャア!」
「よっ、さすがルーイの兄貴! 一撃必殺――」
「終わってねぇぞ! おうアンタ……手応えがねえのはわかってんだよ」
取り巻きの男たちが騒ぐのをよそに、ルーイは真剣な顔付きで構えを解かずにいる。
(油断してくれたら楽だったんだが……)
やがて、俺は何事もなかったように立ち上がった。
こちらもオーラで防御したのだ。拳術スキルを模した《偽拳術》なら俺も使える。
派手に吹き飛んで倒れたふりで、警戒を解こうという目論見は失敗したが……無傷の俺の姿は奴らに大きな動揺を与えたようだ。
「ぴ、ぴんぴんしてやがる……」
「どうなってんだ!?」
「効いてねえのか……。マジモンのバケモンかよ、あんた」
ルーイもその姿に頬を引きつらせ、さらに警戒を強める。
しかし俺はというと、そんな奴らにだんだん苛立ちを募らせてきていた。
(とっとと家に帰って、依頼を進めなきゃならねえって時に。こんな程度で驚いてるくだんねえ野郎どもに時間を奪われるとは……)
だが、俺も大人だ……ここは我慢。
穏便に済まそうと、こめかみを引きつらせながらも相手に降伏を勧告してやる。
「……なあ、この辺で手を打って、そいつらを解放してくれないか? お前の攻撃が効かないのは分かったよな? その方がお互い、スムーズにケリがつくだろ?」
「は? ふざけんな。面子があるって言ったろ……どっちかがぶっ倒れるまで――」
俺はオーラを足に集め、地面を勢い良く蹴りつける。
――ビキビキッ!
石張りの床に亀裂が走って一部がめくれ上がり……奴らは絶句する。
さらに俺は奴らを威圧するため、全力でオーラを解放した。
「手を、打たねえかって聞いてんだが……?」
「ぬう……な、なんてオーラだ」
「ボ、ボス……」
今や奴と俺との間のオーラには、数倍もの差があった。それは互いのステータスに大きな隔たりがあることを示している。拳術スキル等に代表されるオーラの量は体力値に比例して増加し、もちろんそれは俺の持つ魔銀の指輪など、装備品によって加算された数値も反映されるためこうなるのだ。
やや卑怯な感じがしなくもないが、子どもたちを力づくでやり込めようとする奴らに手加減する必要などない。そんな馬鹿どもには相応の恐怖を味わってもらおう。
それを見て取り巻きどもはイスやテーブルの陰に隠れ、ルーイも戦意を失うと踏んだのだが……部下の手前か、彼は意地でも構えを解かなかった。
「へ、へへ……わりぃが、ここで引いたらこいつらに示しがつかねえからな。ぶっ倒れるまで――」
その男らしい台詞は、俺の神経を逆撫でしただけに終わる。
「――やるかボケ!」
ついに怒りは頂点へ……。我慢の限界に達した俺が腕を振りかぶり飛び出したのと同時に……セインが叫ぶ。
「兄ちゃん、誤解なんだ! その人らは――」
「あぁ!?」
「ぐっ……ぉぁああああぁ――ッ!」
「「ア、アニキ――ッ!」」
時すでに遅し。ギリギリで寸止めした拳の甲斐もなく……纏ったオーラの衝撃でルーイはその体ごと建物の壁を貫いて吹っ飛んでいき。取り巻きどもが慌てて追っていく。防御姿勢はとっていたのでそこまでの怪我にはならないだろうが……。
それよりも今はセインの言葉だ。ちょっとすっきりした俺は、あらためて彼の方を向いた。
「ふう……んで、誤解ってどういうことだよ」
「そ、その人らは俺が知ってる悪い奴らじゃなかったんだ……実は――」
◆
その後セインの説明により、刺青の男たちがふたりを連れ出したのはその身を案じてのことだったと判明した。目の前に正座し、傷だらけでしおらしくなったルーイと取り巻きどもが頭を下げる。
「痛つつ……さーせんした。か、下層街の奴があそこで商売すると、色々悶着があるんでさ。とくにガキは……《錆鎖》の奴らとかに目を付けられて攫われちまっても、誰も助けに行く奴はいねぇし……」
「《錆鎖》はヤベェんすよ……平気で非合法の薬とか、奴隷売買とかに手を染めてやがる。王国兵も当てにはできねえし、俺らでも根城が掴めずにいて、警戒しとくしかできねぇんでさ。分かったろ、ガキども……これに懲りてこっちにゃもう来るんじゃねえ」
彼らは、セインと少女がそれを理解できればちゃんと返してやるつもりだったようだが……露店にいた少女は、悲しそうに俯いたまま声を絞り出す。
「だって……下だと皆あんまりお金持ってないから、買ってくれないんだもん。わたしたち、ご飯が食べられないと、死んじゃう」
少女は涙ぐんだ。おそらく彼女らは孤児なのだろう……最低限の栄養しか取れていないのかかなり痩せ、服も汚れている。そんな彼女の背中をセインはさすってやり、悔しそうに言う。
「下層街はこんな奴らがいっぱいなんだ……だからほっとけなくてさ。なんか俺も、フツーに暮らしてていいのかなって……」
こいつはこいつなりに思うところがあって行動を起こしたらしいが、でも軽率だ。こんなのはセインや俺のような一般市民には手に余る問題なのだから。
彼女ひとりの世話をしたところで、その後ろにはたくさんの同じ境遇の人間がいて、その場しのぎにしかならない。無駄ではないが、それをしても大きくなにかを変えることはできない……。
俺はセインを前に、強い口調で告げた。
「気持ちはわからんでもないが、デュゴルさんに心配かけんな。もしそのラスティなんちゃらだったお前、どうなってたかわかんないだろうが……。自分に力もないくせに、ヤバそうな奴に近寄るんじゃない。二度とするな」
「……わかったよ」
知り合いでしかない俺の役割としては、こうして叱ってやるくらいが精々だ。
セインはまだなにか言いたそうだったが、少女と共に「ごめん」と頭を下げて出ていく。下層街まで送ってやるのだろう。
ルーイが「オイ」と指図して、数人の男に後を付けさせた。護衛のつもりか、面倒見のいいことだ。
さて……結果だけ見ると、俺が構成員を多数治療院送りにして建物を損壊しただけに終わったわけだが、意外にもルーイは殊勝に頭を下げ、謝罪した。
「紛らわしい真似をしちまって、すんません。だが、オレたちにも見過ごせねえことがある。多少のアコギはやっても、ガキどもを食い物にしたり、薬で弱い奴らをむりやり従わせたりってえのは胸糞悪いもんで……オレたちはオレたちのやり方で街を守ってるつもりなんだ。だからテイルさんよ、もしあんたさえよかったら力を借りることはできねえか? なんならオレと代わってこのギルドの頭領に」
「――なるわけねえだろ。俺も自分の生活で手一杯だからな」
馬鹿げた提案をしてきたルーイを俺が半眼で睨みつけると、彼はびくついて口元をひきつらせる。
「そ、そうか……それが賢明かもな。……まあ、もし人手が欲しかったらオレんとこか、下層の《灰被り鼠》って奴らに相談するといいですぜ。あいつらは信用できる」
「……ふん、じゃぁな」
ここでの用は終わった。
会話を打ち切った俺が穴の開いた建物を出る。すると……。
「「お疲れしゃーす!!」」
なぜか《暗駆飛燕》の構成員たちが左右に別れて列を作り、頭を下げている。そしてさっきぶっ倒れたオイゲンとかいう巨漢が手を揉みながらこちらにやって来る。
「ア、アニキ……ど、どちらへ行かれます? 街を案内いたしましょうか? いい女の子のいるお店もありやすんで……」
「いらん! 散れ!」
「ヒッ、わかりやした! 皆、どけ……テイルのアニキの道行きを妨げるんじゃねえ!」
奴らの中では強さが権力のものさしなのか、ルーイを打倒したことで手のひら返して敬われることになってしまった。しかし俺はもう金輪際こいつらに関わらないと胸に誓い、付いてこないようきつく念押ししてその場を後にするのだった。
(ここからは見つからずに進むのは無理だな……)
そう判断した俺は仕方なく鞄の中に入れていた手拭いで口元を覆うと突っ込む。
「おまっ、なにもんだ!? 止まれ!」
「…………」
「くそっ、シメちまえ!」
無視無視……ひたすら無視。
無言で迫る俺に危険を感じたか、奴らは動揺しながらも殴りかかってくる。
「……てめぇ、この闇ギルド《暗駆飛燕》にひとりでかち込むだぁいい度胸だ!」
「死にさらせぇぇぇ!!」
しかし、あまりにもお粗末だ。
Dランク付近の前衛職にも満たない速度。これでよく人を殴ろうと思えたものだと冷めた目で見つつ、俺はすり抜けざまに拳を置いておく。
「「がはぁっ!」」
両脇にいたふたりが同時にノックアウトし、それによって男たちの緊張が高まり出した。
「オイこいつ、強えぞ!」
「関係ねえ、全員で囲んで押し潰せ!」
冗談じゃない。男たちの肉饅頭で潰されるなんざ吐き気がする。
包囲しようとした一角をぶち抜き、俺は廃墟じみた建物に向かって一目散に駆ける。
「……奥に行かせんじゃねぇ! ぶへっぐ!」
「誰か止めろぉ! がぁっ!」
凄まじい数の暴徒を後ろに背負いながら俺が建物の扉にたどり着こうとした時だった。
「待てィ!」
両手に盾を装着した馬鹿でかい体の巨漢が、その入り口を塞ぐ。
「オイゲンの兄貴!」
「へへ、派手にやってくれたな。錆野郎どもの手下って訳じゃなさそうだが……ここは通さんぞ」
「おお……兄貴が止めてくれたぞ! 皆囲んじまえ!」
「兄貴はあの有名冒険者パーティ《銀装の猪》で盾役を務めてたんだ! もう逃げられねえぞぉ……ぐへへ」
「この美しき銀の盾はいかなる魔物の攻撃も退けてきた! 己が身で試してみるがよかろう!」
(知らんがな……面倒臭い)
男が銀の盾を体に構えるのを見て、俺は霊刀クウを鞘に入れたまま体の力を緩め、腰だめに構える。あまり魔物以外を相手に使いたくないのだが……。
(まあ鞘付きだし、死なんだろ……)
「ははは、どうした! 抜いても構わんのだぞ! このオイゲン、そんなナマクラでは――」
「《偽刀術・ワカツ》」
次の瞬間、足元の地面に穴を開けるような勢いで踏み込み、横に薙ぐ。
身体全身の捻転を利用した豪快な一撃が奴を襲う。
――ビギィィィィン!
「ヒ……いあああぁぁぁっ! ぼぎゅっ!」
鼓膜を揺らす破砕音と共にふたつの銀色の盾は砕け、盾自慢野郎はその衝撃の勢いそのまま扉をぶち破ると……中で座っていた男たちの目の前のローテーブルに勢い良く頭をぶつけてそのまま昏倒した。
中にいたのは倒れているセインと少女を含め五人ほどだ。
一斉にその視線がこちらに向くが、外の奴らよりは慎重のようで、こちらに飛び掛かってはこない。
「あ、あんた……どうして」
気絶から目を覚ましたセインが驚いた声で言うが、ここでやり取りするのも面倒だ。話は帰ってから聞く。
「と、止まりやがれ! どういうつもりだ、舐めてんのかテメェ!」
「まあ待て……」
無遠慮に彼らの元へ向かう俺の進路を塞ぐように、武器を取り出す男たち。しかし、それを制したのは、一番奥でふんぞり返る、口に煙草をくわえた中年だ。奴が恐らくリーダーなのだろう。
「兄ちゃん、なにしに来た? 関係者以外に立ち入られると困るんだがね」
「ちょっとそこの馬鹿ガキどもを回収しに来ただけだ。すぐに帰る」
「ざけてんじゃねぇぞ! そんだけ喧嘩売っといて――」
「うるせぇぞ……! 今オレが話してんだろ、ったく」
いきり立つ取り巻きを黙らせたると、リーダー格の男は言葉を続けた。
「悪いがそいつは面目が立たねえってもんだ。……だが、オイゲンを軽くのしちまうほどの腕前のあんたに興味はある。どうだい、そいつを黙って返してやる代わりに、あんたオレたちの仲間になってみねえか?」
「ボス、それじゃ示しが……」
「黙ってろ! 錆野郎どもと争うのに戦力が必要なのは、テメエらにも分かってんだろ! どうだい、兄ちゃん」
恨みや憎しみなどよりも、表情から好奇心を覗かせる男。
しかし俺にはこんなならず者の仲間になって街のいざこざに加担するつもりなんてさらさらない。
「断る。んで、そいつも返してもらう」
「がははは! 聞く耳持たねえか……。ならひとつ、勝負といこうじゃねぇか」
真顔で言った俺の言葉に嬉々とした笑いで応えると、リーダー格の男は煙草を落とし上着を脱ぎ棄てた。
「オレがあんたに勝てたら、あんたは部下になって働いてもらう。もしあんたが勝ちゃあ、そいつらを好きに連れて行きな」
「……いいだろう」
おそらく条件を飲まなければ、この場で大乱闘の始まりだ。ふたりを守りながらとなると骨が折れる。信用できるかは別として、一対一の方が手っ取り早い。
「ちなみに武器は控えてくれるか。オレも素手なんでな」
「……持ってろ」
「わっ……おい、テイル、さん……ちょっと待って」
慌てるセインに刀と荷物を押し付け、俺はリーダー格の男へ向き直る。
すると奴は名乗りを上げた。
「オレぁ、先代からこの暗駆飛燕の頭領を引き継いだルーイってもんだ。あんたは?」
「名乗るつもりはない」
「ちぇっ……つれねーな。まぁいい、ブッ倒してからじっくり聞いてやるよ。じゃあ、始めようぜ……」
ルーイとやらの合図はコインを使うという古風なものだ。
ポケットから取り出したそれが親指で弾かれ、くるくると回る。
と同時に、奴は両拳を前に突き出し体から黄色い気を漂わせた。《拳術》スキル使いなのだろう。防御寄りのコンパクトな拳闘の構え……一撃で勝負を決めるつもりはないようで、その瞳に油断はない。先程のオイゲンとかいう男よりはやりそうだ。
――チンッ。
「……シッ!」
金属音が鳴ると同時に一気に間合いを詰め、小刻な拳打が繰り出される。
様々な角度から放たれる拳。
それぞれが急所を狙っているが、しかしそれらは目くらましで……本命はこの大振り。
「ラァ、《オーラショック》!」
「ぐっ……!!」
拳術スキル《オーラショック》――低級の打撃技とはいえ、まとったオーラを一か所に集中させ、打撃と共に放つこの技は下手な凶器よりよほど殺傷力がある。砲弾でもブチ当てたかのような衝撃が脇腹で炸裂し、俺の体は大きく吹き飛ばされた。
壁面にあった棚などを巻き込んで爆砕し、埃が辺りに舞い上がる。
「ヨッシャア!」
「よっ、さすがルーイの兄貴! 一撃必殺――」
「終わってねぇぞ! おうアンタ……手応えがねえのはわかってんだよ」
取り巻きの男たちが騒ぐのをよそに、ルーイは真剣な顔付きで構えを解かずにいる。
(油断してくれたら楽だったんだが……)
やがて、俺は何事もなかったように立ち上がった。
こちらもオーラで防御したのだ。拳術スキルを模した《偽拳術》なら俺も使える。
派手に吹き飛んで倒れたふりで、警戒を解こうという目論見は失敗したが……無傷の俺の姿は奴らに大きな動揺を与えたようだ。
「ぴ、ぴんぴんしてやがる……」
「どうなってんだ!?」
「効いてねえのか……。マジモンのバケモンかよ、あんた」
ルーイもその姿に頬を引きつらせ、さらに警戒を強める。
しかし俺はというと、そんな奴らにだんだん苛立ちを募らせてきていた。
(とっとと家に帰って、依頼を進めなきゃならねえって時に。こんな程度で驚いてるくだんねえ野郎どもに時間を奪われるとは……)
だが、俺も大人だ……ここは我慢。
穏便に済まそうと、こめかみを引きつらせながらも相手に降伏を勧告してやる。
「……なあ、この辺で手を打って、そいつらを解放してくれないか? お前の攻撃が効かないのは分かったよな? その方がお互い、スムーズにケリがつくだろ?」
「は? ふざけんな。面子があるって言ったろ……どっちかがぶっ倒れるまで――」
俺はオーラを足に集め、地面を勢い良く蹴りつける。
――ビキビキッ!
石張りの床に亀裂が走って一部がめくれ上がり……奴らは絶句する。
さらに俺は奴らを威圧するため、全力でオーラを解放した。
「手を、打たねえかって聞いてんだが……?」
「ぬう……な、なんてオーラだ」
「ボ、ボス……」
今や奴と俺との間のオーラには、数倍もの差があった。それは互いのステータスに大きな隔たりがあることを示している。拳術スキル等に代表されるオーラの量は体力値に比例して増加し、もちろんそれは俺の持つ魔銀の指輪など、装備品によって加算された数値も反映されるためこうなるのだ。
やや卑怯な感じがしなくもないが、子どもたちを力づくでやり込めようとする奴らに手加減する必要などない。そんな馬鹿どもには相応の恐怖を味わってもらおう。
それを見て取り巻きどもはイスやテーブルの陰に隠れ、ルーイも戦意を失うと踏んだのだが……部下の手前か、彼は意地でも構えを解かなかった。
「へ、へへ……わりぃが、ここで引いたらこいつらに示しがつかねえからな。ぶっ倒れるまで――」
その男らしい台詞は、俺の神経を逆撫でしただけに終わる。
「――やるかボケ!」
ついに怒りは頂点へ……。我慢の限界に達した俺が腕を振りかぶり飛び出したのと同時に……セインが叫ぶ。
「兄ちゃん、誤解なんだ! その人らは――」
「あぁ!?」
「ぐっ……ぉぁああああぁ――ッ!」
「「ア、アニキ――ッ!」」
時すでに遅し。ギリギリで寸止めした拳の甲斐もなく……纏ったオーラの衝撃でルーイはその体ごと建物の壁を貫いて吹っ飛んでいき。取り巻きどもが慌てて追っていく。防御姿勢はとっていたのでそこまでの怪我にはならないだろうが……。
それよりも今はセインの言葉だ。ちょっとすっきりした俺は、あらためて彼の方を向いた。
「ふう……んで、誤解ってどういうことだよ」
「そ、その人らは俺が知ってる悪い奴らじゃなかったんだ……実は――」
◆
その後セインの説明により、刺青の男たちがふたりを連れ出したのはその身を案じてのことだったと判明した。目の前に正座し、傷だらけでしおらしくなったルーイと取り巻きどもが頭を下げる。
「痛つつ……さーせんした。か、下層街の奴があそこで商売すると、色々悶着があるんでさ。とくにガキは……《錆鎖》の奴らとかに目を付けられて攫われちまっても、誰も助けに行く奴はいねぇし……」
「《錆鎖》はヤベェんすよ……平気で非合法の薬とか、奴隷売買とかに手を染めてやがる。王国兵も当てにはできねえし、俺らでも根城が掴めずにいて、警戒しとくしかできねぇんでさ。分かったろ、ガキども……これに懲りてこっちにゃもう来るんじゃねえ」
彼らは、セインと少女がそれを理解できればちゃんと返してやるつもりだったようだが……露店にいた少女は、悲しそうに俯いたまま声を絞り出す。
「だって……下だと皆あんまりお金持ってないから、買ってくれないんだもん。わたしたち、ご飯が食べられないと、死んじゃう」
少女は涙ぐんだ。おそらく彼女らは孤児なのだろう……最低限の栄養しか取れていないのかかなり痩せ、服も汚れている。そんな彼女の背中をセインはさすってやり、悔しそうに言う。
「下層街はこんな奴らがいっぱいなんだ……だからほっとけなくてさ。なんか俺も、フツーに暮らしてていいのかなって……」
こいつはこいつなりに思うところがあって行動を起こしたらしいが、でも軽率だ。こんなのはセインや俺のような一般市民には手に余る問題なのだから。
彼女ひとりの世話をしたところで、その後ろにはたくさんの同じ境遇の人間がいて、その場しのぎにしかならない。無駄ではないが、それをしても大きくなにかを変えることはできない……。
俺はセインを前に、強い口調で告げた。
「気持ちはわからんでもないが、デュゴルさんに心配かけんな。もしそのラスティなんちゃらだったお前、どうなってたかわかんないだろうが……。自分に力もないくせに、ヤバそうな奴に近寄るんじゃない。二度とするな」
「……わかったよ」
知り合いでしかない俺の役割としては、こうして叱ってやるくらいが精々だ。
セインはまだなにか言いたそうだったが、少女と共に「ごめん」と頭を下げて出ていく。下層街まで送ってやるのだろう。
ルーイが「オイ」と指図して、数人の男に後を付けさせた。護衛のつもりか、面倒見のいいことだ。
さて……結果だけ見ると、俺が構成員を多数治療院送りにして建物を損壊しただけに終わったわけだが、意外にもルーイは殊勝に頭を下げ、謝罪した。
「紛らわしい真似をしちまって、すんません。だが、オレたちにも見過ごせねえことがある。多少のアコギはやっても、ガキどもを食い物にしたり、薬で弱い奴らをむりやり従わせたりってえのは胸糞悪いもんで……オレたちはオレたちのやり方で街を守ってるつもりなんだ。だからテイルさんよ、もしあんたさえよかったら力を借りることはできねえか? なんならオレと代わってこのギルドの頭領に」
「――なるわけねえだろ。俺も自分の生活で手一杯だからな」
馬鹿げた提案をしてきたルーイを俺が半眼で睨みつけると、彼はびくついて口元をひきつらせる。
「そ、そうか……それが賢明かもな。……まあ、もし人手が欲しかったらオレんとこか、下層の《灰被り鼠》って奴らに相談するといいですぜ。あいつらは信用できる」
「……ふん、じゃぁな」
ここでの用は終わった。
会話を打ち切った俺が穴の開いた建物を出る。すると……。
「「お疲れしゃーす!!」」
なぜか《暗駆飛燕》の構成員たちが左右に別れて列を作り、頭を下げている。そしてさっきぶっ倒れたオイゲンとかいう巨漢が手を揉みながらこちらにやって来る。
「ア、アニキ……ど、どちらへ行かれます? 街を案内いたしましょうか? いい女の子のいるお店もありやすんで……」
「いらん! 散れ!」
「ヒッ、わかりやした! 皆、どけ……テイルのアニキの道行きを妨げるんじゃねえ!」
奴らの中では強さが権力のものさしなのか、ルーイを打倒したことで手のひら返して敬われることになってしまった。しかし俺はもう金輪際こいつらに関わらないと胸に誓い、付いてこないようきつく念押ししてその場を後にするのだった。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる