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1章
君の背中に
美術室に籠り、どれくらい時間が経っただろう。
私のスマホが鳴る。恐る恐る見ると、柚からだった。
【(柚)ねぇ由梨香いまどこ!?】
【(私)ごめん2人とも…私、美術室】
【(柚)美術室!?今から行くから待ってて】
しばらく待つと、美術室がノックされた。
「空いてるよ?」
私が答えると、返事が返ってきた。
「…由梨香?オレだけど、開けていい?」
「え、透也…?」
透也は私の返事を待たずに美術室に入ってきた。
きっと那奈か柚が気を利かせて透也に私の居場所を教えたのだろう。
気まずい空気が美術室に流れる。
「…あの、さっきはごめん!嫌いっていうのは嘘、傷つけて本当にごめんね」
沈黙に耐えきれず、私は先程の失態を謝った。
すると、どことなく気まずそうな表情の透也が私に問いかける。
「なんで、あんなに取り乱してたか聞いていい?嫌だったら言わなくていいけど…」
「っそれは…」
今、ここで全て本当のことを言ったら、私の気持ちが透也にバレてしまう。そう思い、ほんの少しだけ、嘘を混ぜた。
「それはね…空き教室で、琴葉ちゃんと透也が2人きりでいるのが見えて…うわ、透也ってタラシだったんだって思っちゃったの」
「え、あれ見られてたんだ。まじか…」
「そ、その…琴葉ちゃんとキ、キスしていたでしょう」
「はあ!!?」
透也が突然大きな声を出して言う。
私はその声にびっくりして体が竦んだ。
「してない!まじでしてない!」
「え、してたよ」
「見間違いだって!あの時はたしかに白木に告白されたけど、キスは断じてしてない!」
????
じゃあ私が見たあれはなんだったのだろう。
「じゃあ、告白の返事したの?」
「断った」
「え」
なに、じゃあ全て私の取り越し苦労だったってわけ?
あんなに大泣きまでしたのに?
「あ、そういえばあの時、白木がオレの顔についてたまつ毛を取ってくれたんだ。それが錯覚でキスしてるように見えたとか…?」
「えええ!?」
全て、私の勘違いだったようだ。
一気に恥ずかしくなる私。
「…まったく、早とちりもいい加減にしてくれ」
「…ごめんなさい」
「もう嫌いとか言わないでくれる?オレめちゃくちゃ傷ついたわ。あとタラシじゃねえ」
「うっ…そうだよね、本当に申し訳ない」
小さく謝る私を見て、透也は優しく笑って頭を撫でてくれた。
良かった…許して貰えたらしい。
私の2,3歩先を行く透也の背中を見ていると、なんだか無性に飛びつきたくなって。
私は、気づくと透也の背中に抱きついていた。
「…はっ!?由梨香なにしてるの!?」
「えええ!?ちょっと何すんの!?」
自分でもなぜ今こんなことをしたのか分からず、奇行に驚きテンパってしまった。
「何すんの、はオレのセリフな!?」
珍しく、透也の顔が赤くなっているのに気づいた。
その反応が、少しだけ可愛く感じた。
「ったく何を考えてる…」
「わかんない、なんか気づいたら飛びついてて私もびっくりしたわ」
「アホなの?オレ、男だぞ?」
「っな…!わかってるし!」
そんな会話をしていると、目先に那奈と柚の姿が見えた。
2人がこちらに気づくと、安堵したような顔をして那奈が言った。
「良かったぁ、2人仲直りできたの?」
「いやぁかくかくしかじかで…私の勘違いだったみたいで」
「え、そうなの!?」
那奈と柚もまさかの結果に驚いて、私にバカー!と言っていたが、なんともなくて良かった、と言ってくれた。
すると、透也が私たちに言った。
「そろそろバレー始まるんじゃないの?」
「嘘、やばっ!?」
時計を確認し、焦る。
あと10分で私たちの試合が始まる時間だ。
「急がなきゃ!じゃ、また後でね透也!」
透也にそう言うと、私たち3人は体育館に猛ダッシュ。
なんだか今日の私は走ってばかりだ。
なんとかコートにたどり着いたが、先生には軽く注意をされてしまった。
そして試合が始まった。
琴葉ちゃんがサーブをし、相手コートに入れる。
私のところにボールが来て、トスをする。
一瞬コート外に目をやると、透也とクラスの男子数名の姿があった。
本当に、見に来てくれたんだ…!
心の靄が晴れたせいなのか、私はより一層頑張れた。
そして私たちチームは、無事に勝つことができた。
チームのみんなでハイタッチを交わす。
あぁ、私たち今、青春しているなぁ。
そんなことを考えていると。
「ねえ、佐野さんちょっと今いいかな?」
突然、琴葉ちゃんに話しかけられる。
「ん?どうしたの?」
「ここじゃあなんだから、移動して話したいな。大丈夫?」
琴葉ちゃんに言われるがままに着いていくと、そこは体育倉庫だった。
私たち以外には誰もいなくて、変な静けさがあった。
「あの…琴葉ちゃん?なんでこんな静かな…」
「佐野さんって、安藤くんのこと好きでしょ」
「え!?」
「見てたらわかるよー」
クスッと笑う琴葉ちゃん。
「琴葉も実は安藤くん狙ってたんだけどね、さっき振られちゃったんだー」
ドキッとした。
私が見ちゃった時のやつだよね!?
「そ、そうなんだ…」
「そ!だからもういいかなって。琴葉可愛いし他にも気になる人がいるからー」
可愛い顔して凄いことを言っている琴葉ちゃん。
「だから…ね、佐野さん絶対に安藤くんと付き合いなよ!?琴葉が諦めてあげるんだからっ」
…あぁ、そうかわかった。
この子、強がっているけど実はとても傷ついてる。
振られて傷つかない女の子など、いるはずないのだ。
ぎゅう…っ
私は、無言で琴葉ちゃんの華奢な肩を抱きしめた。
「え、ちょっと佐野さん!?何してるの」
「よく、頑張ったね」
これはいつか安藤くんが私に言ってくれた言葉。
今ここで琴葉ちゃんに使うことになるとは思わなかったが。
「…なによ、安藤くんなんて顔が良いだけで女を見る目ないんだから」
琴葉ちゃんがズズッと鼻を啜っていたのがわかった。
私も少しだけ、つられて泣きそうになった。
男女の関係の築き方は本当に難しくて、どんな距離感でいるのが正解なのか、か弱くて可愛い女の子でいることが正解なのか、私たちはまだ全然しらない。
分からないことだらけの中、それでも試行錯誤して色々試して、彼の気持ちを引こうとそれぞれに頑張っている。
たとえ恋敵であろうと、ちょっと卑怯な手を使われようと、彼を好きになったその気持ちは紛れもなく同じだから…敬意を込めて、抱きしめた。
「琴葉ちゃんは、告白ができてすごいよ」
「…そう?それほどでもないわ」
あくまでツンとしているが、内心は照れているのか少し顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
本当はそんなに悪い子じゃないのかも。
私も、卒業までには透也に好きと伝えたい。
断られてもいい、私が透也を好きになったことを、本人に覚えていて欲しい気持ちの方が大きかった。
こうして恋のライバル、琴葉ちゃんとの戦いは、意外な形で幕を閉じた。
その日の夜、透也から連絡があった。
【(透也)今何してる?】
【(私)特に何もしてない、ゴロゴロしてる】
ブーッブーッ
突然のスマホのバイブに驚いて、顔にスマホを落とす。いったぁ、と呟き涙目になりながら見ると、透也からの電話だ。
「もしもし…?」
『あれなんかテンション低くない?』
「電話にビビって顔にスマホ落とした…」
『ははは、なんでだよ』
「なんでいきなり電話なのー」
『ん?声聞いておこうかと思ってさ』
「えっ」
ドキッとした。
それってつまり私の声が聞きたかったってこと?
相変わらずチキンの私はそんなことすら聞けず、またあやふやな感じで話が流れてしまう。
『そういや由梨香バレー上手だったじゃん』
「でしょ!?私実は出来ちゃうのさー」
『あーはいはい。すぐ調子乗る』
その後、電話は5分くらいで終わってしまったが、それでも幸せな気持ちでいっぱいだった。
私ってチョロいなぁ、とつくづく思い知らされる。
透也の声を少し聞けただけで、こんなにも満たされるなんて。
日に日に増していくこの気持ちは、どこまで膨れ上がるのだろう。
いつかふいに爆発して、今日のように透也にまた抱きついてしまったらどうしよう?
その時は、今度こそ気持ちを伝えるべきだよね。
今のこの関係のまま終わるのは勿体ない気がする。
今日も透也のことを考えながら、そして電話越しに聞いた声を思い出しながら、眠りについた。
私のスマホが鳴る。恐る恐る見ると、柚からだった。
【(柚)ねぇ由梨香いまどこ!?】
【(私)ごめん2人とも…私、美術室】
【(柚)美術室!?今から行くから待ってて】
しばらく待つと、美術室がノックされた。
「空いてるよ?」
私が答えると、返事が返ってきた。
「…由梨香?オレだけど、開けていい?」
「え、透也…?」
透也は私の返事を待たずに美術室に入ってきた。
きっと那奈か柚が気を利かせて透也に私の居場所を教えたのだろう。
気まずい空気が美術室に流れる。
「…あの、さっきはごめん!嫌いっていうのは嘘、傷つけて本当にごめんね」
沈黙に耐えきれず、私は先程の失態を謝った。
すると、どことなく気まずそうな表情の透也が私に問いかける。
「なんで、あんなに取り乱してたか聞いていい?嫌だったら言わなくていいけど…」
「っそれは…」
今、ここで全て本当のことを言ったら、私の気持ちが透也にバレてしまう。そう思い、ほんの少しだけ、嘘を混ぜた。
「それはね…空き教室で、琴葉ちゃんと透也が2人きりでいるのが見えて…うわ、透也ってタラシだったんだって思っちゃったの」
「え、あれ見られてたんだ。まじか…」
「そ、その…琴葉ちゃんとキ、キスしていたでしょう」
「はあ!!?」
透也が突然大きな声を出して言う。
私はその声にびっくりして体が竦んだ。
「してない!まじでしてない!」
「え、してたよ」
「見間違いだって!あの時はたしかに白木に告白されたけど、キスは断じてしてない!」
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じゃあ私が見たあれはなんだったのだろう。
「じゃあ、告白の返事したの?」
「断った」
「え」
なに、じゃあ全て私の取り越し苦労だったってわけ?
あんなに大泣きまでしたのに?
「あ、そういえばあの時、白木がオレの顔についてたまつ毛を取ってくれたんだ。それが錯覚でキスしてるように見えたとか…?」
「えええ!?」
全て、私の勘違いだったようだ。
一気に恥ずかしくなる私。
「…まったく、早とちりもいい加減にしてくれ」
「…ごめんなさい」
「もう嫌いとか言わないでくれる?オレめちゃくちゃ傷ついたわ。あとタラシじゃねえ」
「うっ…そうだよね、本当に申し訳ない」
小さく謝る私を見て、透也は優しく笑って頭を撫でてくれた。
良かった…許して貰えたらしい。
私の2,3歩先を行く透也の背中を見ていると、なんだか無性に飛びつきたくなって。
私は、気づくと透也の背中に抱きついていた。
「…はっ!?由梨香なにしてるの!?」
「えええ!?ちょっと何すんの!?」
自分でもなぜ今こんなことをしたのか分からず、奇行に驚きテンパってしまった。
「何すんの、はオレのセリフな!?」
珍しく、透也の顔が赤くなっているのに気づいた。
その反応が、少しだけ可愛く感じた。
「ったく何を考えてる…」
「わかんない、なんか気づいたら飛びついてて私もびっくりしたわ」
「アホなの?オレ、男だぞ?」
「っな…!わかってるし!」
そんな会話をしていると、目先に那奈と柚の姿が見えた。
2人がこちらに気づくと、安堵したような顔をして那奈が言った。
「良かったぁ、2人仲直りできたの?」
「いやぁかくかくしかじかで…私の勘違いだったみたいで」
「え、そうなの!?」
那奈と柚もまさかの結果に驚いて、私にバカー!と言っていたが、なんともなくて良かった、と言ってくれた。
すると、透也が私たちに言った。
「そろそろバレー始まるんじゃないの?」
「嘘、やばっ!?」
時計を確認し、焦る。
あと10分で私たちの試合が始まる時間だ。
「急がなきゃ!じゃ、また後でね透也!」
透也にそう言うと、私たち3人は体育館に猛ダッシュ。
なんだか今日の私は走ってばかりだ。
なんとかコートにたどり着いたが、先生には軽く注意をされてしまった。
そして試合が始まった。
琴葉ちゃんがサーブをし、相手コートに入れる。
私のところにボールが来て、トスをする。
一瞬コート外に目をやると、透也とクラスの男子数名の姿があった。
本当に、見に来てくれたんだ…!
心の靄が晴れたせいなのか、私はより一層頑張れた。
そして私たちチームは、無事に勝つことができた。
チームのみんなでハイタッチを交わす。
あぁ、私たち今、青春しているなぁ。
そんなことを考えていると。
「ねえ、佐野さんちょっと今いいかな?」
突然、琴葉ちゃんに話しかけられる。
「ん?どうしたの?」
「ここじゃあなんだから、移動して話したいな。大丈夫?」
琴葉ちゃんに言われるがままに着いていくと、そこは体育倉庫だった。
私たち以外には誰もいなくて、変な静けさがあった。
「あの…琴葉ちゃん?なんでこんな静かな…」
「佐野さんって、安藤くんのこと好きでしょ」
「え!?」
「見てたらわかるよー」
クスッと笑う琴葉ちゃん。
「琴葉も実は安藤くん狙ってたんだけどね、さっき振られちゃったんだー」
ドキッとした。
私が見ちゃった時のやつだよね!?
「そ、そうなんだ…」
「そ!だからもういいかなって。琴葉可愛いし他にも気になる人がいるからー」
可愛い顔して凄いことを言っている琴葉ちゃん。
「だから…ね、佐野さん絶対に安藤くんと付き合いなよ!?琴葉が諦めてあげるんだからっ」
…あぁ、そうかわかった。
この子、強がっているけど実はとても傷ついてる。
振られて傷つかない女の子など、いるはずないのだ。
ぎゅう…っ
私は、無言で琴葉ちゃんの華奢な肩を抱きしめた。
「え、ちょっと佐野さん!?何してるの」
「よく、頑張ったね」
これはいつか安藤くんが私に言ってくれた言葉。
今ここで琴葉ちゃんに使うことになるとは思わなかったが。
「…なによ、安藤くんなんて顔が良いだけで女を見る目ないんだから」
琴葉ちゃんがズズッと鼻を啜っていたのがわかった。
私も少しだけ、つられて泣きそうになった。
男女の関係の築き方は本当に難しくて、どんな距離感でいるのが正解なのか、か弱くて可愛い女の子でいることが正解なのか、私たちはまだ全然しらない。
分からないことだらけの中、それでも試行錯誤して色々試して、彼の気持ちを引こうとそれぞれに頑張っている。
たとえ恋敵であろうと、ちょっと卑怯な手を使われようと、彼を好きになったその気持ちは紛れもなく同じだから…敬意を込めて、抱きしめた。
「琴葉ちゃんは、告白ができてすごいよ」
「…そう?それほどでもないわ」
あくまでツンとしているが、内心は照れているのか少し顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
本当はそんなに悪い子じゃないのかも。
私も、卒業までには透也に好きと伝えたい。
断られてもいい、私が透也を好きになったことを、本人に覚えていて欲しい気持ちの方が大きかった。
こうして恋のライバル、琴葉ちゃんとの戦いは、意外な形で幕を閉じた。
その日の夜、透也から連絡があった。
【(透也)今何してる?】
【(私)特に何もしてない、ゴロゴロしてる】
ブーッブーッ
突然のスマホのバイブに驚いて、顔にスマホを落とす。いったぁ、と呟き涙目になりながら見ると、透也からの電話だ。
「もしもし…?」
『あれなんかテンション低くない?』
「電話にビビって顔にスマホ落とした…」
『ははは、なんでだよ』
「なんでいきなり電話なのー」
『ん?声聞いておこうかと思ってさ』
「えっ」
ドキッとした。
それってつまり私の声が聞きたかったってこと?
相変わらずチキンの私はそんなことすら聞けず、またあやふやな感じで話が流れてしまう。
『そういや由梨香バレー上手だったじゃん』
「でしょ!?私実は出来ちゃうのさー」
『あーはいはい。すぐ調子乗る』
その後、電話は5分くらいで終わってしまったが、それでも幸せな気持ちでいっぱいだった。
私ってチョロいなぁ、とつくづく思い知らされる。
透也の声を少し聞けただけで、こんなにも満たされるなんて。
日に日に増していくこの気持ちは、どこまで膨れ上がるのだろう。
いつかふいに爆発して、今日のように透也にまた抱きついてしまったらどうしよう?
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