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「あ…うん、そうかもしれない」
基本的には、病室とそれからこの共同スペースを往復するまでの移動が、美咲の行動範囲だった。
稀に身体の調子が良いと、屋上やテラスに足を運んだりすることもあったが、ここ最近はその回数もめっきり減っていた。
(どんな姿を見られていたんだろう…)
美咲は、同年代の異性から見られていたことに気付かず、どんな振る舞いをしていたか思い出せないことが妙に気恥ずかしかった。
何と言葉を続けたら良いか分からず、俯いて黙っていると、沈黙を破ったのは純平だった。
「綺麗な子だな、って思ってさ…」
「…え?」
しばらく彼が何と言葉を発したか上手く理解できなかった美咲は、思わず気の抜けた返事をしたが、
「ああ、いや、えっと、その」と、向こうも無意識だったのか、手を顔の前でバタバタと振り、美咲もつられて段々と顔に熱が集まるのが自分でも分かる。
幸運なことにか、それとも神様が二人には伝わらないようにか、夕暮れ時のことであったから、お互い朱に染まったかどうか、はたまた夕陽が魅せているかどうかは、定かではなかった。
「きれい、だなんて…」
「…うん」
けれど純平は、美咲の問いかけには否定できなかった。
そして、
「おかしいね」
クスリと困ったように笑う、彼女の夕焼け顔に恋をしたのだった。
基本的には、病室とそれからこの共同スペースを往復するまでの移動が、美咲の行動範囲だった。
稀に身体の調子が良いと、屋上やテラスに足を運んだりすることもあったが、ここ最近はその回数もめっきり減っていた。
(どんな姿を見られていたんだろう…)
美咲は、同年代の異性から見られていたことに気付かず、どんな振る舞いをしていたか思い出せないことが妙に気恥ずかしかった。
何と言葉を続けたら良いか分からず、俯いて黙っていると、沈黙を破ったのは純平だった。
「綺麗な子だな、って思ってさ…」
「…え?」
しばらく彼が何と言葉を発したか上手く理解できなかった美咲は、思わず気の抜けた返事をしたが、
「ああ、いや、えっと、その」と、向こうも無意識だったのか、手を顔の前でバタバタと振り、美咲もつられて段々と顔に熱が集まるのが自分でも分かる。
幸運なことにか、それとも神様が二人には伝わらないようにか、夕暮れ時のことであったから、お互い朱に染まったかどうか、はたまた夕陽が魅せているかどうかは、定かではなかった。
「きれい、だなんて…」
「…うん」
けれど純平は、美咲の問いかけには否定できなかった。
そして、
「おかしいね」
クスリと困ったように笑う、彼女の夕焼け顔に恋をしたのだった。
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