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ささやかな

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 鷹のビザの関係で日本に帰国した。旅行でもしてイチャイチャするかと2人とも思っていたはずが、仕事が溜まり過ぎて夜は疲れて寝るだけの日々が続いていた。
 そうは言っても男だ、溜まるものは溜まる。特にカーターは腕の中で眠る鷹の匂いにいつも発情するように興奮していたが、鷹の寝顔を見ると起こしたら可哀想かと手は出さないでいた。
 そんなある夜、いつのもの様に寝ていたが突然鷹が起き上がった。一旦寝たら朝まで起きないタイプだから珍しいなっと見ていると、カーターの腕の位置を動かした。なんだ?と好きにさせるカーター。鷹は何事も発する事なくまた眠りについた。起きてたのかと右腕で頭を撫でようとすると手首を掴まれて元の位置に戻された。「?」寝てるのか起きてるのか。
 起こさないように気をつけていても動くと腕の位置を元の様に戻されるカーター。
 「俺は枕か」と笑いが込み上げてきた。実際にはカーターの腕は太過ぎて枕にすると段差が大きいために鷹の下にはクッションなどが沢山敷かれている。どうやらクッションとカーターの腕の位置がズレると寝ずらいらしい。
 だからって戻さなくてもいいだろ、とここの中で笑いながらも逆らわない。力の差を考えれば鷹がどんなに強く掴んだところでカーターは事もなく振り払えるし逆に抑え込めるがそんな事はする筈もない。
 少し動くと戻す。繰り返される動きに目が冴えて眠れてなくなったカーターは忘れていた、いや、忘れようとしていた性欲を思い出していた。「このまま押し倒してやろうか。」、「素股なら怒んないか。」などと考えたのが失敗だった。数日抜いてないせいでカーターは完全に勃起してしまった。しかし自分で処理しようにも腕の中の鷹は体勢を変える事も許してはくれなかった。

 「この野郎!わざとだな!」

 それに気がついた時、腕の中から小さな寝息が聞こえてきた。まったくイビキをかかない鷹は顔をカーターの方に向けて寝息を立てるその顔を見るとダメだった。可愛い寝顔とギンギンの性欲。天秤にかけ、勝ったのは寝顔だった。だがまだ深夜2時。朝までどうすりゃいんだ、と絶望にも似た気持ちでいると時間が過ぎるのは時が止まった様に遅く感じた。

 多分、オリガの家で寝てる時にやったのに対する仕返しだな。実は喜んでたはずなのになぁ。まぁ仕方がないかと諦めながらも息子は諦めがつかないのか激しく上を向くのだった。
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