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林間学校

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     林間学校は意外と、忙しいスケジュールだった。僕と満川の班はキャンプファイヤー係だったが、たきぎの場所が突然変更になり、てんやわんやだった。キャンプファイヤーの直前に予期せぬ雷雨に見舞われたからだ。先生も総出で、たきぎの移動にあけくれた。屋根付きの広場に移動させ終わるまでは全く息がつけなかった。満川や石坂さんと話をする暇はなかった。それでも、キャンプファイヤーを終えた後、宿泊場所のお寺の縁側で、満川と2人、話をする機会が持てた。

「あれ、カシオペア座」

満川が夜空を指差した。「え、どこどこ?」僕は彼女の指差す夜空を眺めた。「ほら。」僕たちの頭の後ろから一本の腕がにゅっと伸びてきた。「?」「びっくりしたな、もー。」後ろを振り返ると石坂だった。石坂の指先はローマ字のWを描いている。石坂ますみ、というきれいな名前の少女は満川といつも一緒だった。満川と性格は非常によく似ていて、落ち着いた知的な女の子だった。もう1人の女子、田中は僕の班の他の男子たちと一緒だった。ファミコンが好きな彼女は、男子達の輪の中にも違和感なく溶け込んでいた。

   風呂の時間となり、男女別々の、そして、風呂を出てからは消灯時刻になった。満川とは、カシオペア座を一緒に見ただけの林間学校だった。消灯時刻は、9時だったが、周りは興奮覚めやらぬ男子達がいつまでもしゃべっていた。でも僕は新聞配達の癖が抜けず、さっさと寝てしまった。
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