3 / 4
第一章 サンティナリ
3.ルーナの秘密
しおりを挟む
「――ルーナ?」
先程から胸の内に違和感があった。キキたちと会話中、ルーナからの声がなかった。どんなに肝が据わっている人間も目の前で異変が起きたらさすがに何か反応するはずだが――。
――私は岩陰を覗き込んだ。
「――!?」
目の前に広がる光景にまるで耳のそばで鉄砲を撃たれたかのように驚愕した。彼女は発作が起きたように息を荒げ、痙攣し、そこに横たわっていたのだ。
「おい!大丈夫か!」
私は咄嗟にルーナの元へ駆け寄り、彼女の後頭部を持ち上げ、自分の膝元へと乗せる。彼女の頬は湯に浸かった後のように朱に染まっており、発熱しているのは一目瞭然だった。私は彼女の額に手を当て、具合を確かめる。
「ど、どうしたんだサブロー!?」
後ろを振り向くと、ちょうどキキたちがこちらに到着したところだった。彼らならルーナの状態についてなんか知っているだろうか…。
「この子に何があったんだ?」
「見て分かると思うが、ルーナは熱がある。おまけに呼吸がおかしい」
ココからの質問に答える。先ほどまでの彼女を思い返してみると、どこもおかしな様子はなかった…と思う。
「俺たちはクロムだから人間の病についてはよく分かんねぇけどよ、この前戦った人間が変な色した飲み物飲んでけがを治そうとしてたのを見たことあるぞ」
「あ~、あの葉っぱみたいな色してたやつだよね~」
後ろでキキとポポが話をしている。
――葉っぱ色の飲み物?
私にはそれに見覚えがあった。ルーナが私のことを助けてくれた時、渡された緑色の飲み物。
そう、コマリだ――。
確かルーナから受け取った後、右のポケットに仕舞ったはずだが…。
「あ、あったぞ!」
私はコマリを取り出し、それをキキたちに見せる。
「なぁ、その人間が飲んでたのはこれか?」
「お!それだよそれ」
――さて、どうしたものか。コマリを飲ませて完治するとは思えないが、せめて会話できるようになればカシムにあるルーナの家まで連れていくことができる。
私は可能性に賭けて飲ませてみることにした。
「ルーナ、コマリを飲ませるから口を開けてくれないか?」
するとルーナはゆっくりだが小さく口を開けてくれた。どうやら意識はあるらしい。
容器の栓を開け、少しずつルーナの口に流し込んでいく。
「ハァ…。」
コマリを飲み終え、彼女の顔は落ち着いた表情へと変わっていった。
「――あり――が――とう。サブロー…」
「ルーナ!目が覚めたのか?」
コマリを飲ませてからしばらく経った後、彼女はゆっくりと目を覚ました。
「えぇ…なんとか…ね。あなたが助けてくれたことは覚えてるわ」
やはり意識はあったのか。とにかく無事だったことにまずは一安心だ。
「あなたがクロムと会話していたのは夢ではなかったようね」
遠くの木の下で果実を採取しているキキたちを見ながら彼女は言った。
「正直未だに信じられないけど、そもそも会話できていなかったら今頃私たち死んでたわよ」
「そう…だな」
「只者ではないとは思っていたけれど、まさかここまでとは恐れ入ったわ」
ルーナは笑っていた。彼女の満面の笑みを見たのは初めてだ。
「お、驚かないのか?」
「えぇ、驚いてるわ。でもね、私はこういう刺激を求めてたのよ」
「刺激?」
「私ね、生まれつき病弱で今でも持病があるのよ。さっきみたいに発作が起きたり、熱出たりしちゃってさ。だからいつも家の中で一人でいるのが嫌でたまに刺激を求めて外に出て遊んでるの」
「ご両親は何も言わないのか?」
「お母さんは一年ぐらい前から行方不明になったわ。どこで何をしているか分からないけど、たぶん元気なんじゃないかしら。」
「――そうなのか」
「お父さんはカシムで鍛冶職人をしているわ。昔は有名な職人だったみたいだけど今はただのクソ親父よ」
彼女はそう言うと、深呼吸をして立ち上がった。
「ねぇ、あのクロムたちのこと紹介してよ!」
「え…あぁ、いいぞ」
私はキキたちを呼び、ルーナにの前に一列で並ばせた。
「まず、このでっかいのがポポだ」
「よろしくぅ~」
「ねぇ、この子なんて言ってるの?」
あぁ、そういえばルーナには聞こえないのか。
「よろしくって言ってるよ」
「そうなのね!よろしくポポ!」
ポポはルーナと握手を交わす。
キキたちの紹介を終え、私たちはカシムへと向かう準備を始める。
「きゃっ!」
ルーナはふらついてしまい、そのまま転んでしまった。
「大丈夫かルーナ!」
「へ、平気よ、平気」
どうやら彼女はまだ調子が良くないらしい。まぁ、あれだけの発作を起こしていたのなら無理はない。
「ルーナ、私の背中に乗れ」
「なっ!何よ急に!?」
「まだ元気じゃないんだろう?街まで連れていくよ」
彼女の頬がみるみるうちに赤らんでいく。この赤らみは発作ではなく、恥じらいだろう。
「わ、分かったわ…。重いとか言うの無しね!」
そう言って彼女は私の背中に乗る。ルーナの体は華奢で、ちょっと力を入れたら折れてしまうような小枝のような足をしていた。
「なぁポポ、ここらへんなんか暑くないか」
「なんだ兄貴、羨ましいのかぁ~」
「うるせぇぞポポ!」
私の後ろからキキたちのにぎやかな声が聞こえてきた。
それにしても、カシムは一体どんなところなのだろうか――。
先程から胸の内に違和感があった。キキたちと会話中、ルーナからの声がなかった。どんなに肝が据わっている人間も目の前で異変が起きたらさすがに何か反応するはずだが――。
――私は岩陰を覗き込んだ。
「――!?」
目の前に広がる光景にまるで耳のそばで鉄砲を撃たれたかのように驚愕した。彼女は発作が起きたように息を荒げ、痙攣し、そこに横たわっていたのだ。
「おい!大丈夫か!」
私は咄嗟にルーナの元へ駆け寄り、彼女の後頭部を持ち上げ、自分の膝元へと乗せる。彼女の頬は湯に浸かった後のように朱に染まっており、発熱しているのは一目瞭然だった。私は彼女の額に手を当て、具合を確かめる。
「ど、どうしたんだサブロー!?」
後ろを振り向くと、ちょうどキキたちがこちらに到着したところだった。彼らならルーナの状態についてなんか知っているだろうか…。
「この子に何があったんだ?」
「見て分かると思うが、ルーナは熱がある。おまけに呼吸がおかしい」
ココからの質問に答える。先ほどまでの彼女を思い返してみると、どこもおかしな様子はなかった…と思う。
「俺たちはクロムだから人間の病についてはよく分かんねぇけどよ、この前戦った人間が変な色した飲み物飲んでけがを治そうとしてたのを見たことあるぞ」
「あ~、あの葉っぱみたいな色してたやつだよね~」
後ろでキキとポポが話をしている。
――葉っぱ色の飲み物?
私にはそれに見覚えがあった。ルーナが私のことを助けてくれた時、渡された緑色の飲み物。
そう、コマリだ――。
確かルーナから受け取った後、右のポケットに仕舞ったはずだが…。
「あ、あったぞ!」
私はコマリを取り出し、それをキキたちに見せる。
「なぁ、その人間が飲んでたのはこれか?」
「お!それだよそれ」
――さて、どうしたものか。コマリを飲ませて完治するとは思えないが、せめて会話できるようになればカシムにあるルーナの家まで連れていくことができる。
私は可能性に賭けて飲ませてみることにした。
「ルーナ、コマリを飲ませるから口を開けてくれないか?」
するとルーナはゆっくりだが小さく口を開けてくれた。どうやら意識はあるらしい。
容器の栓を開け、少しずつルーナの口に流し込んでいく。
「ハァ…。」
コマリを飲み終え、彼女の顔は落ち着いた表情へと変わっていった。
「――あり――が――とう。サブロー…」
「ルーナ!目が覚めたのか?」
コマリを飲ませてからしばらく経った後、彼女はゆっくりと目を覚ました。
「えぇ…なんとか…ね。あなたが助けてくれたことは覚えてるわ」
やはり意識はあったのか。とにかく無事だったことにまずは一安心だ。
「あなたがクロムと会話していたのは夢ではなかったようね」
遠くの木の下で果実を採取しているキキたちを見ながら彼女は言った。
「正直未だに信じられないけど、そもそも会話できていなかったら今頃私たち死んでたわよ」
「そう…だな」
「只者ではないとは思っていたけれど、まさかここまでとは恐れ入ったわ」
ルーナは笑っていた。彼女の満面の笑みを見たのは初めてだ。
「お、驚かないのか?」
「えぇ、驚いてるわ。でもね、私はこういう刺激を求めてたのよ」
「刺激?」
「私ね、生まれつき病弱で今でも持病があるのよ。さっきみたいに発作が起きたり、熱出たりしちゃってさ。だからいつも家の中で一人でいるのが嫌でたまに刺激を求めて外に出て遊んでるの」
「ご両親は何も言わないのか?」
「お母さんは一年ぐらい前から行方不明になったわ。どこで何をしているか分からないけど、たぶん元気なんじゃないかしら。」
「――そうなのか」
「お父さんはカシムで鍛冶職人をしているわ。昔は有名な職人だったみたいだけど今はただのクソ親父よ」
彼女はそう言うと、深呼吸をして立ち上がった。
「ねぇ、あのクロムたちのこと紹介してよ!」
「え…あぁ、いいぞ」
私はキキたちを呼び、ルーナにの前に一列で並ばせた。
「まず、このでっかいのがポポだ」
「よろしくぅ~」
「ねぇ、この子なんて言ってるの?」
あぁ、そういえばルーナには聞こえないのか。
「よろしくって言ってるよ」
「そうなのね!よろしくポポ!」
ポポはルーナと握手を交わす。
キキたちの紹介を終え、私たちはカシムへと向かう準備を始める。
「きゃっ!」
ルーナはふらついてしまい、そのまま転んでしまった。
「大丈夫かルーナ!」
「へ、平気よ、平気」
どうやら彼女はまだ調子が良くないらしい。まぁ、あれだけの発作を起こしていたのなら無理はない。
「ルーナ、私の背中に乗れ」
「なっ!何よ急に!?」
「まだ元気じゃないんだろう?街まで連れていくよ」
彼女の頬がみるみるうちに赤らんでいく。この赤らみは発作ではなく、恥じらいだろう。
「わ、分かったわ…。重いとか言うの無しね!」
そう言って彼女は私の背中に乗る。ルーナの体は華奢で、ちょっと力を入れたら折れてしまうような小枝のような足をしていた。
「なぁポポ、ここらへんなんか暑くないか」
「なんだ兄貴、羨ましいのかぁ~」
「うるせぇぞポポ!」
私の後ろからキキたちのにぎやかな声が聞こえてきた。
それにしても、カシムは一体どんなところなのだろうか――。
0
あなたにおすすめの小説
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる